京都精華大学 2026 "生成音楽論" (長嶋) 第5週
Opening Remarks
シラバスにある「生成音楽論」のサブタイトルは、『音楽生成AIの理解と活用を目指す。音楽とは何かという根源的な考察を多様な視点で進める』です。
シラバス「授業の概要」では、『音楽生成AIについて、その原理や限界について理解するとともに、実際に活用していくための視点を考察する。共通ツールとして音楽生成AI「suno」を使用して、実例や課題を通して具体的に音楽生成(作曲)すると共に、「生成AIそのもの」・「音楽そのもの」についての深い考察を目指す。既に現実のコンテンツ作成の領域で実用レベルに到達している音楽生成AIなので、この科目においては「ボーカル(歌)と歌詞」については敢えて対象から除外して、テキスト(文字)文化およびストーリーテリング文化と切り離した「サウンド」コンテンツとしての音楽に焦点を絞る』と述べています。
全7週のオンライン授業では、実際にsunoで音楽を生成する演習的内容と共に、毎週テーマを設定した「解説」「資料リンク」等に基づいて、興味のある関連情報を調べて考察することで、「音楽とは何か」という根源的な考察も並行するように心掛けて下さい。また、対象から除外した「ボーカル(歌)と歌詞」を含む楽曲の生成については、授業を離れて独自に実験・発展させることも推奨します。
「音楽」と「楽器」
- 「生成音楽論」(長嶋)との関係
- この科目担当の長嶋は、
このように
過去に多くの音楽経験(演奏、指揮、作曲、編曲、歌唱指導、教育)があり、また10年間ほどKAWAIで電子楽器の研究開発を行ってきて、さらに音楽情報科学の研究者として「新楽器」・「新インターフェース」の開発研究を続けてきました。なので今週のテーマは得意中の得意(それ故に奥深さも理解)です
- 興味のある人は、長嶋が出版した以下の「コンピュータサウンドの世界」(ここのページの下の方に出てくる7枚の「システム図」は、この本の中から紹介している長嶋originalです)を参照して下さい。この本が京都精華大の図書館にあるかどうかは不明なのですが、出版元のCQ出版では「絶版」となって、長嶋は在庫最後の20冊を受け取ってプレゼントしたりして、現在の手元在庫は7冊となりました。
そして講義などで使うために、極秘に
PDF化
したこの本を資料として提供しています
- CQ出版とは↑の本の上級編としてもう1冊を同時に出版する計画だったので、長嶋はマルマル1冊分の原稿を執筆完了していたのですが、「音楽モノに弱い」というCQ出版は最終的にこの上級本の出版を断念しました。そこで長嶋はマルマル全部をWeb上に1999年からフリー公開しています。興味のある人はこちらの
作るサウンドエレクトロニクス
も参照してみて下さい
- 長嶋が「情報処理学会 音楽情報科学研究会」チュートリアルで講演した
新楽器へのアプローチ
も豊富な中身(と関連参照リンク情報)がありますので、興味のある人はぜひ参照してみて下さい
- 第4週で、クラシック音楽(芸術音楽)に関連して、長嶋の
マーラー/小澤征爾「復活」
というページを紹介しましたが、そのマーラー「復活」に関して、「楽器の音響」という音楽心理学のテーマで2016年に研究/学会発表したのが、
グロッケン音色の利用に関する考察
というものです。膨大ですが、興味のある人はチェックしてみて下さい。電子音を使って実験システムを作り、学生を被験者とした心理学実験をデザインしてのなかなか気合いの入った研究です
- このような長嶋提供(サウンドエレクトロニクス、「新楽器」の提案、音楽心理学実験)の資料を受けて、今週のmp3提出課題パターン(1)として、『長嶋資料に触発されてsunoに生成させた音楽(30秒)』というテーマを掲げます。詳しくはこのページの下部の「今週の課題」を参照して下さい
- 楽器(musical instrument)とは、「音楽の素材としての音響を発するための道具・器具」です。その「楽器」の総論としては、
Wikipedia
に包括的な記載があるので、以下にその色々な「楽器の分類」の視点を紹介します。興味に応じてそれぞれの名称から検索して、あるいはYouTube等でその楽器の演奏音響や演奏ニュアンスを、実際のサウンドとして体験して調べてみる事を強く推奨します
- 旧来(クラシック)の慣用的分類
- 管楽器
- 弦楽器
- 擦弦楽器 - バイオリン、胡弓
- 撥弦楽器 - ハープ、ギター、三味線、箏、ハープシコード
- 打弦楽器 - ピアノ
- 打楽器
- 鍵盤楽器
- 電気楽器
- 電子楽器
- 声
- 楽器分類学における分類
- 体鳴楽器 - シンバル、トライアングル
- 膜鳴楽器 - 小太鼓、ティンパニ
- 弦鳴楽器 - バイオリン、ピアノ
- 気鳴楽器 - トランペット、フルート、パイプオルガン
- 電鳴楽器 - エレキギター、テルミン、オンドマルトノ
- 音域による分類
- ソプラノ - フルート、ヴァイオリン、トランペット、クラリネット、オーボエ、ピッコロ
- アルト - フレンチホルン、ヴィオラ、サックス
- テナー - トロンボーン、ギター、サックス
- バリトン - ファゴット、チェロ、ユーフォニアム、サックス
- バス - チューバ、コントラバス
- 音の安定性による分類
- 定音楽器 - ピアノのような鍵盤楽器など、鳴らすだけで正確な高さの音が出る楽器。音感が育ちにくい(合唱団で音感が悪いのはたいていピアノ経験者)
- 作音楽器 - バイオリンや、尺八など、奏でる際に演奏者が音の高さを調整して作る楽器。音感が育ちやすい(長嶋は幼児にバイオリンを弾いていたので数セント以下の微細なピッチも聞き分けられる)
sunoに「メロディー楽器」(の音色)を求めてみた
- 「sunoの動作」「sunoの特性」について
- sunoは商用サイト(営利目的)なので、suno内部の動作については非公開(ノウハウ)です
- そんなsunoに関して、実験して内部動作を推定したり、解説したサイトも多くあります。以下では全て「です」としていますが実際は「と言われています」というのが正しいです
- sunoの内部パイプライン動作は「テキストプロンプト→意味解析(NLP)→曲構造の設計→メロディ・伴奏生成→歌声生成→音声波形生成→ミックス・マスタリング→完成曲」です。これがTransformer型の言語モデルとして処理され、仕組みとしてはChatGPTとかなり似ています
- 「プロンプト理解(NLP解析)」では、「ジャンル(rock, jazzなど)、感情(sad, energetic)、テンポ、ボーカル性別、曲構造、歌詞テーマ」などの要素の意味ベクトルに変換(解析)します
- 「曲の設計(作曲フェーズ)」では、「BPM(テンポ)、Key(キー)、chord progression、曲構造、verse、chorus、bridge、メロディライン、リズムパターン」などを決めます。Transformerモデルが「次に来る音」を予測していくのは、対象が「音」なだけで、LLMが次の単語を予測するのと同じ仕組みです
- sunoの「音の生成(diffusion / audio token)」は、「Transformer」・「Diffusion」を組み合わせたハイブリッドモデルであり、「ノイズから開始→音楽らしいパターンへ徐々に修正→最終的に波形へ」という感じで進みます。これは画像生成AI(Stable Diffusion)と同じ考え方で、画像ではなくスペクトログラム(音の画像)を生成するだけです
- 「ボーカル生成」では、歌声は「lyrics、melody、phoneme」を同時に生成します。sunoの内部には「Bark(歌声生成)」・「Chirp(伴奏生成)」のモデルがあり、「発音、ピッチ、ビブラート、表情」まで生成します
- 「最終ミックス(プロダクション)」では、自動で「ミックス、EQ、コンプレッサ、マスタリング」まで行います
- 「sunoは楽器を指定できない」理由
- sunoは「命令を実行するAI」ではなく「確率的に音楽を生成するAI」(音楽の確率モデル)なので、プロンプトは「命令」ではなく「ヒント」でしかありません
- 多くの場合、sunoは「ピアノだけ」と指定してもドラムが入った曲(前半は無くても後半に入ってくる曲)を生成します
- sunoは内部的には「次に来る音を確率で予測するモデル」で、「音1 → 音2 → 音3 → 音4 → …」の各時点で次に来る音の確率を計算するだけです。なので、次の音で「ドラム付き」の確率が最大となればドラムが入ることになります
- sunoは大量の音楽を学習していますが、現実の音楽(POPSなど)では「ドラム無し」は少ないので、ドラムが入ることが多くなります
- 「no drum」は駄目で、sunoには「ドラムを消す」という処理が存在しません。sunoの「audio token model」(音声→codec→audio token→Transformer生成→audio復元)では、「楽器」という概念が明確に分離されていません
- sunoの基本構造 : 音声波形→Neural codec→audio tokens で、この audio tokenは「piano」「drum」「guitar」等の情報を持っておらず、「音響パターン」を表します
- 例えば、あるaudio tokenは「ピアノ+キック+ベース」の混ざった音だったりするので、内部では「楽器 ≠ 基本単位」です
- 人間は「ピアノ」という楽器を想像するのに対して、sunoは「ピアノの音響が混ざった音響の塊」という処理をします
- sunoに楽器を指定してみた
- 上述の情報はsunoがv4だったりv4.5だったりした時代のものなので、無料(v4.5-all)ではほぼそのような事情と思われます
- ただし現状(2026年3月以降)では、sunoはPro版ではv5.0が出て、さらにv5.5Betaも出てきていて、「楽器を指定できない」というユーザの不満に対応してシステムをtune upしている可能性もあります
- そこで長嶋が「楽器を指定してみた」実験について紹介します。v5.5なので有料ユーザでのみ追試可能です
- 「Instruments」を指定して、ボーカル(歌詞)は禁止していますが、生成された2曲のうち2曲目では歌詞ボーカルが出てしまいました
- 与えたプロンプトは「Instrumental session, fusion, crossover, instruments of melody will be changed: 1st melody is Electric Guitar, 2nd melody is Grand Piano, 3rd melody is Saxophone, 4th melody is female vocalize without lyrics, 5th melody is vibraphone, middle tempo, exciting and happy feeling」として、(1)Electric Guitar、(2)Grand Piano、(3)Saxophone、(4)female vocalize without lyrics (歌詞の無い女性の母音唱法 : 楽器としての「声」)、(5)Vibraphone、の5種類の楽器がメロディーを次々にバトンタッチする・・・と想定しました
- sunoが付けたタイトルは「Bright Melody Relay」
- sunoが出してきたプロンプトは「Fusion crossover instrumental in a mid-tempo upbeat groove with crisp syncopated drums and a buoyant bass line; verse-like sections pass the lead from electric guitar to grand piano to saxophone, then a wordless female vocalise carries the lift, and a vibraphone answers in the final turn, Add brushed fills, handclap accents, and quick risers into each change, Bright, punchy, and glossy in the mix, exciting, happy, electric, saxophone」
- 生成された2曲(duration : 2min59sec, 3min15sec)は
この曲
と
この曲
で、1曲目ではほぼ指定の楽器交代の意図が反映されました
- 「sunoのpromptに楽器名を指定しても無視される理由」に関する考察は、第7週のテキストでも再び深く紹介します
音響物理学と音響心理学と楽器音響学
- この領域では上の3つの領域が大きく関係していますが、Wikipedia日本語版となっているのは「音響心理学」だけでした
- 音響心理学では、以下のようなキャッチーなテーマがよく知られています。興味のある人はそれぞれ調べてみましょう
- 可聴周波数帯域(20Hz〜20000Hz) → モスキートサウンド(若者だけ追い払うサウンド)
- マスキング効果 : 同時マスキング、経時マスキング
- ミッシングファンダメンタル (小さなスピーカなのにベースやバスドラムが聞こえる)
- カクテルパーティー効果 (ザワつく会場の遠くで自分についてヒソヒソ噂話しているのが聞こえる)
- 音響兵器
- 音響物理学には、音楽を離れて「建築音響」とか「騒音工学」とか「超音波(ソナー)探索」などの応用領域が広がっています
- 楽器音響学についてはここでは深入りを避けますが、一つ一つの楽器についてのマニアックな研究には圧倒されます。入り口としては「楽器名」でWeb検索すればどんどん出てきます。興味のある人は調べてみましょう
「楽器」の歴史
- 「楽器の歴史」の総論については、まずは何をおいても
Wikipedia
をチェックして、その中で興味を持ったものを「各論」として掘り下げることをお勧めします
- バンドとか吹奏楽とかで何か楽器を演奏している場合には、自分の音楽活動/体験に絡めて、その楽器ファミリの歴史を広げて調べると、自身の音楽が広がるのでこれもお勧めです
- 楽器は最終的には空気振動として人間の聴覚に働きかけます。その原理的な歴史としては、(1)楽器自体が空気を振動させる、(2)楽器内部からの振動をピックアップなどで電気信号に変換→アンプ→スピーカ、というルートで空間に音響を出す、(3)最初から電子的な信号を生成して→アンプ→スピーカ、という3段階となりました
- この3段階は「電気以前」→「電気(electric)」→「電子(electronic)」という、技術的な進展と完全に歩みを揃えています
- 以下では、この3段階の楽器の歴史を概観します。最後の「サンプリングとコンピュータ」というのも、歴史的に見れば「電子(electronic)」に含まれますが、音楽に関しては「sunoで生成」(ソフトウェア的に音響を生成)というところまで繋がるものなので、項目を分けました
民族楽器・伝統楽器
- インドネシアの民族楽器「鼻笛」(
ここに発見しました
)はちょっとユニークな楽器で、普通は音楽は「他人に聞かせる」ものですが、この「鼻笛」の音楽は他人に聞こえないほど小さな音量であり、自分だけに聞かせるための音楽のための楽器です
- 「民族楽器」・「伝統楽器」については、第4週の「民俗音楽」・「伝統音楽」のあたりで触れた内容と重複するので、ここでは深入りしません。興味に応じて、「楽器」という切り口から、再び「民俗音楽」・「伝統音楽」を掘り下げて調べることも推奨します
- 本当に民族音楽や伝統音楽で使われている楽器だけでなく、観光客のための土産物として入手可能な「楽器おもちゃ」もあります。以下の事例は、
長嶋のComputer Music作品の公演記録
の中で、長嶋が国際会議出張の北京で仕入れた「琵琶」おもちゃを楽器に改造した例と、長嶋が蚤の市で仕入れたインドネシア「Kendang」(太鼓)おもちゃを楽器に改造した例です (同じ公演を複数のカメラで記録したものは列記しています)
- 上の新楽器"Cyber Kendang"について興味のある人は、長嶋の学会発表
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を参照して下さい。関連した話題(Live Computer Music)については、第7週で紹介します
自然楽器
- 「自然楽器」とは、楽器自体が空気を振動させて空間に楽器音響を広げるもので、ここでの分類で言えば「電気を使わない」とも言えます。ただし現実には、他の楽器とのアンサンブルでは音量で負けないようにマイクで拾ってPAから出すのは普通です
- クラシック楽器や伝統音楽の楽器では、「その楽器本来の演奏方法」(その楽器を用いた音楽の作曲において指定/推奨)というものがあります。その一方で、現代音楽(→第6週)やComputer Music(→第7週)の領域では、その自然楽器の演奏方法として推奨されていない演奏音(
シンバルの縁をチェロの弓で弾く、バイオリンの本体を拳骨で叩いたり引っ掻く、楽器本来の音域よりずっと上とかずっと下のピッチで演奏、吹奏楽器を吹きながら同時に歌う、ピアノの中に鎖を投げ込む、などの現代奏法
)を敢えて求めることがよくあります。これは、古典的な演奏方法での「綺麗な」音響だけでなく、現代奏法での「ノイズに溢れた」音響が音楽の素材として有効な場合が多いからです
- 長嶋はComputer Musicの作曲において、基本的に「電子楽器」カテゴリ(サンプリング/コンピュータ)に属するサウンドを用いていますが、作品としては「自然楽器とComputerとの共演」というスタイルも多くあります。その理由は、個々の自然楽器の持つ音響キャラクタを尊重して作品に適用したいためです。ただし自然楽器のサウンドそのものをPAしただけというのはごく少数で、自然楽器のサウンドをライヴ・サンプリングしてコンピュータに取り込んで、さらにライヴ音響信号処理(固定したエフェクトでなく、演奏者のライヴ演奏に対応して変化)を施して最終的な音響に反映させることが多いです
- 以下は、
長嶋のComputer Music作品の公演記録
の中で、「自然楽器と共演」スタイルをとったものですので参考にしてみて下さい。ここでは「声」も自然楽器に含めています (同じ公演を複数のカメラで記録したものは列記しています)
- "Brikish Heart Rock" (1997) , "Brikish Heart Rock" (1997)
- "Ogress" (1998) , "Ogress" (1998)
- "Scenary" (1998) , "Scenary" (1998)
- "Visional Legend" (1998)
- "Mycoplasma" (1998)
- "Arrow of Time" (1999)
- "Voices of Time" (1999)
- "Piano Prayer" (1999) , "Piano Prayer" (1999)
- "Eternal Traveller" (1999) , "Eternal Traveller" (1999)
- "Great Acoustics" (2000) , "Great Acoustics" (2000)
- "tegoto" (2001) , "tegoto" (2001)
- "tegoto" (2001)
- "Visional Legend ver.2001" (2001)
- "Visional Legend ver.2001" (2001)
- "Japanesque Germanium" (2001)
- "Japanesque Germanium" (2001)
- "Moya" (2002)
- "Berlin Power" (2002)
- "Quebec Power" (2003)
- "Moya-III" (2004) , "Moya-III" (2004)
- "Coin's Journey-2" (2004)
- "Cyber Kendang" (2006) , "Cyber Kendang" (2006) , "Cyber Kendang" (2006)
- "Cyber Kendang" (2007)
電気楽器
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
「電気楽器」とは、上では簡単のために「楽器内部からの振動をピックアップなどで電気信号に変換→アンプ→スピーカ、というルートで空間に音響を出す」楽器としましたが、実際にはもう一つのタイプとして、テルミンやオンドマルトノのように「電気信号を人間が操作して生成して→アンプ→スピーカ、というルート」というものもあります
- クラシックでも使われたり、最近ではクラブ音楽などでも使われている代表的な電気楽器は以下です
- テルミン
- アンテナと人体(両手それぞれ)との距離に対応したピッチと音量で鳴る単音楽器。信号はピックアップでなく発信器から生成している
この動画は必見必聴
- Wikipediaの解説
- Youtubeで「テルミン」と検索すると演奏動画が膨大に出てくるのでぜひ調べてみましょう
- オンドマルトノ
- 鍵盤でなく連続したピッチを指定できるリボンに触れて演奏する単音楽器。信号は発振回路による電気信号
- Wikipediaの解説
- Youtubeで「オンドマルトノ」と検索すると演奏動画がそこそこ出てくるのでぜひ調べてみましょう
- POPS(Rock, Jazz, etc)に欠かせない代表的な電気楽器は以下です
- ハモンドオルガン
- 多数の「トーンホイール」の縁に刻まれた波形をピックアップで検出するタイプの電気オルガン。パイプオルガンのような音色生成が可能で、JazzやRockなど世界のポピュラー音楽を席巻しました
- Wikipediaの解説
- Youtubeで「ハモンドオルガン」と検索すると演奏動画が膨大に出てくるので、是非そのサウンドを味わってみましょう
- 興味のある人は長嶋の
Arduinoによるハモンドオルガンの実現
を参照してみて下さい
- フェンダー・ローズ(電気ピアノ)
- 鍵盤で音叉を叩いてピックアップで検出するタイプの電気ピアノ。その独特なサウンドはSoulやRockなど世界のポピュラー音楽を席巻しました
- Wikipediaの解説
- Youtubeで「フェンダー・ローズ」と検索すると演奏動画が膨大に出てくるので、是非そのサウンドを味わってみましょう
- 原理的にはここにも分類される弦楽器は以下です
- エレキギター(ソリッド)
- ピックアップで弦の振動を電気信号として出力するギター
- Wikipediaの解説
- 弦とネック(フレット)とピックアップがあれば形状は問わないので、膨大な「ヘンな形のエレキギター」があります。興味のある人は →
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- エレキベース
- エレキギター(セミアコースティック)
- フォークギター(ピックアップ内蔵型)
- 電気バイオリン
- 電気大正琴
電子楽器
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
- 「電子楽器」とは、最初から電子的な信号を生成して→アンプ→スピーカに繋がる、というタイプですが、さらにシステム的には歴史に基づく以下のような分類があります
- 単音楽器と複音楽器
- 初期のシンセサイザーは「単音楽器」(モノフォニック)でした。
ミニムーグ
が有名です。
サウンドを全て電子的に生成する電子回路は複雑で大規模なので、頑張っても1音しか鳴らず、「最後に押されている鍵盤」の音だけが鳴りました
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
- 一方、電子オルガンや電子ピアノなどの鍵盤楽器は同時に複数の鍵盤を鳴らす必要があるので、シンセほど高度でない音源回路で妥協しつつ、同時に複音(ポリフォニック)を鳴らしました
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
- 「同時発音数 = 鍵盤数」の楽器(マイコン以前)と、「同時発音数 < 鍵盤数」の楽器(マイコン以後)
- マイコン(CPU)の登場によって、単音シンセサイザのブロックを複数個(8音ポリなど)並べた「ハイブリッドシンセサイザ」が登場しました。これは「同時発音数 < 鍵盤数」のために、「アサイナ」(発音割り当て)動作によって成立しました
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
- さらに音源部分を完全にディジタル信号処理によって生成する「音源LSI」(時分割多重化信号処理による同時発音数は16〜24〜32音)によって、その後のディジタル電子楽器のシステム構成は外見上は同じになり、システムに作り込まれる「ソフトウェア次第」という時代になりました。ただし「同時発音数 < 鍵盤数」という性質は継承されています
「コンピュータサウンドの世界」(長嶋洋一)より
長嶋が開発した2種の音源LSI
(右側はCPUも載せた優れ物)
サンプリングとコンピュータ
- 広義には「電子楽器」の一部ですが、ここでは「サンプリング」と「コンピュータ」とを分けてみました
- サンプリング
- 自然楽器の音、マイクで拾えるあらゆる自然音、電気楽器や電子楽器の音、などを全てディジタルサウンドとして「記録」して「再生」する、というのが「サンプリング」です
- Wikipediaの解説をよく調べてみましょう
- 初期には「サンプラー」というMIDI電子楽器がありました。詳しくは
Wikipediaの解説をよく調べてみましょう
- 最近では「著作権侵害」の問題があり、既存の音楽の一部をサンプリングして利用するには注意が必要です
- コンピュータサウンド
- パーソナルコンピュータ(PC)が非力だった1980年代は、「コンピュータ(シーケンサ)→ MIDI → 電子楽器」という流れでした。サウンドの生成処理は楽器メーカが開発した「音源LSI」が担当しました
- PCの性能向上で、1990年代にはPC内部でサウンドファイルを「再生」したりムービーを「再生」できるようになりました
- さらにPCの性能向上で、2000年頃にはPC内部でディジタルサウンドを「生成」したりサンプリングできるようになりました
- その後のPCの性能向上により、ディジタルサウンドやCGは「再生」だけでなく「エフェクト」・「ライブ生成」・「ライブサンプリング」など自在になって現在に至ります
(参考) 長嶋オリジナルの「新楽器」の例
- 長嶋が2000年にドイツ・ベルリンで開催された国際会議ICMC(International Computer Music Conference)2000で行った
ワークショップ
の資料には、長嶋が開発したオリジナル「新楽器」などの例がいくつも載っています。興味のある人はチェックしてみて下さい
- 長嶋が2010年にロシア・エカテリンブルクで開催された国際会議SYNC2010で行った3件の
レクチャー
のうちの1つの資料には、長嶋が開発したオリジナル「新楽器」の事例がいくつも載っています。興味のある人はチェックしてみて下さい
- 長嶋が2014年に京都精華大で行った特別講義(落先生のミンミンゼミ)の記録が
ここ
と
ここ
にあります。
この場では、作りたての新楽器
GHI2014
を紹介しました。興味のある人はチェックしてみて下さい
- 長嶋が過去に製作したオリジナル新楽器のうち、以下の2種類については、音楽仲間の誼みとして、2024年3月頃に京都精華大の落晃子(RAKASU PROJECT.)先生にプレゼントしました
- いずれもセンシング出力はMIDI情報として出して、第7週で紹介するMaxによって音響生成したりライヴにグラフィクスを駆動したりするものです
- 興味のある人はぜひ、落先生にアポをとって体験させてもらって下さい。この楽器を使ったパフォーマンスを行った人は、ぜひ長嶋にその記録動画を送って下さい
- 新楽器「光の絃」
- 命名は相愛大学の作曲家・(故)辻井英世 先生
- OMRONの赤外線ビーム(切断)センサを13列*3段 → MIDI出力
- 1995年に開発、マイコンは秋月電子の"AKI-80"
- 「光の絃」に関する学会発表など
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- インスタレーション作品"Light Harp"に活用した事例
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- 作品公演 - 1997年・神戸でのコンサート(演奏は神戸山手女子短大音楽科ピアノ専攻学生)
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- 作品公演 - 2005年・バンクーバー(NIME2005)でのコンサート(オリジナル筋電センサ"MiniBioMuse-III"と共に)
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- 新楽器「Pella-min」
- 「テルミン」とは?
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- 名称の由来は"Propeller"プロセッサ(8個の内部32bitCPUが並列動作)を活用したテルミンという意味
- SHARPの赤外線距離センサ8個のループを二重 + [ブルーLED→光センサ]*8個を左右に並べたテーブル、計32チャンネルのテルミン(MIDI出力)
- Parallax社"Propeller"プロセッサ活用に関する学会発表など
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- 開発時の動作確認の様子
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- 作品公演 - 2009年・国立音大でのコンサート
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- ロシア公演(持参が困難)のため[4+4]チャンネル限定の新versionを製作(秋月電子"AKI-H8"、DoubleMYOと共に)
→2010年・エカテリンブルクでのコンサート
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→2011年・オスロ(NIME2011)でのコンサート
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→2011年・東京電機大(ACMP2011)でのコンサート
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今週の課題
- 今週の課題は、以下の2パターンのいずれか一方です
- パターン(1) : この教材ページの冒頭付近で紹介した長嶋提供の資料
コンピュータサウンドの世界
、
作るサウンドエレクトロニクス
、
新楽器へのアプローチ
、
グロッケン音色の利用に関する考察
を受けて、[1]長嶋資料に触発されてsunoに生成させた音楽(30秒)mp3、[2]suno生成条件と100文字以内の感想/質問[テキスト]。この場合、触発されて楽曲を生成させるために考察・検討して与えた「suno生成条件」を明記して下さい
- パターン(2) : [1]今回のテーマ「楽器と音楽」を意識/追求したsuno生成曲[mp3]、[2]suno生成条件と100文字以内の感想/質問[テキスト]。この場合、対象として選んだ「楽器」と、それを意識・追求するために考察・検討して与えた「suno生成条件」を明記して下さい
- 課題のsuno生成曲には「ボーカル(歌)と歌詞が入っていない」という条件があります
- mp3については、sunoで生成された楽曲を第1週テキストの「イントロダクション」に書かれているように「30秒以内」(あまりに短いのは不可。25秒以上)に切り取ったmp3ファイルとして下さい。シラバスでは「課題提出mp3のduration」を1分間(60sec)と書いていましたが、受講者数がかなり多いため「30秒」に改訂します。このトリミングをしないでsuno出力そのままの長い楽曲の場合には「形式不備」として大幅減点になります
- 添付提出mp3ファイル名は適当な名前で結構です。SEIKA PORTALが学籍番号などをファイル冒頭に自動付与するシステムと判明したので、なるべく短めでOKです。例 : 「1.mp3」
- 課題提出は「クラスプロファイル」から行い、「ウェブ提出」でなく「ファイル提出」として行います
- 「ファイル提出」の「添付ファイル」としてmp3ファイルを提出すると共に、「コメント」欄に課題回答(「suno生成条件」と100文字以内の感想/質問)をテキスト入力して提出します。「suno生成条件」(3つ)については第1週教材ページをよく確認して下さい
- 長嶋は「ファイル提出」の「フィードバック」欄には個別回答しません。長嶋が「共有するに値する」と思ったごく少数のmp3と、長嶋が「共有するに値する」と思った「コメント」欄の内容/質問に対する共通なフィードバックは、提出期限以降に、この公開ページの最下段に追記します(←mp3作成者および内容/質問の発言者は全て匿名となります)
- 「クラスプロファイル」の「掲示板」機能については、「学生(同士)の意見交換の機会」(←教務課の説明)として開設します。ただし中身については長嶋は基本的に関与しません。「学生の自主性に任せる運用」(←教務課の説明)です。掲示板(全体で1つのチーム)開設のためには、形式的に誰かをチームリーダーとして登録する必要がある(システム設定上チームリーダーは1つのチームに必ず1人設定しなければなりません)とのことなので、まったく形式的に誰かをリーダーとして毎回設定しますので了解して下さい。ディスカッションは「第◯回授業内容についての意見交換」という形になるようなので、基本的にディスカッション期間は1週間ほどと設定します
提出された課題に対するコメント
- ★ ピアノだけでも強弱や響きによって豊かな感情を表現できることを実感しました。シンプルな構成でも印象に残る音楽になると感じました
→ prompt「Solo grand piano, emotional contemporary piano, delicate and expressive performance, slow tempo, cinematic atmosphere, melancholic yet hopeful, rich dynamics, beautiful arpeggios, resonant acoustic grand piano, intimate, instrumental only, no vocals」で表現されている色々な情緒は、30秒の中では十分に満たされていない感じでしたね。さすがに「Solo grand piano」は多くの先例があるので受け入れてくれます。ただし僕が気になるのは、sunoのgrand pianoの音色や響きは全体にモワッとしていて、あまり本物の「煌びやかさと奥行き」を感じないのが個人的な不満です
- ★ シンセサイザーとグロッケンが合わさったような音がどんなものになるのか気になったのでこのような曲にしました。神秘的なイメージだと思い、プロンプトにmysteriousと入れました
→ あなたのprompt「synthesizer、Electronic sound、Glockenspiel、mysterious」というのはけっこう矛盾していて、ある音を聞いてそれが「synthesizer」「Electronic sound」だと判断できるものの、逆にいざ「synthesizer」「Electronic sound」ってどんな音? というのは一つに決まりません。曖昧に指示して出てきた音楽を「synthesizer」「Electronic sound」と言うのは容易ですが、それは「sunoに作らせた」のでなく「sunoに従った」だけでちょっと残念です。なお出てきた音はまるでGlockenspielの特性を欠いています。
グロッケン音色の利用に関する考察
の音色と解説をぜひ確認して下さい
- ★ 普段自分で作曲をする際に管楽器をあまり使わないので勉強になりました。定音楽器という言葉や作音楽器という言葉を初めて目にしたので、これを機に更に深く探求してみたいと考えました
→ あなたのprompt「管楽器と弦楽器がメインだけど打楽器や電子楽器も取り入れて、定音楽器を入れずに作音楽器をメインで、歌声は無しでメロディーのみ、30秒程度」に対して、この音楽はほぼ弦楽器だけで、管楽器や電子楽器は皆無なのですが、聞いていて気付かなかったのでしょうか
- ★ ハープの音色や響きを意識してプロンプトを作成しました。楽器の特徴を意識することで、曲全体の雰囲気が変わることを実感し、音楽の面白さを改めて感じました
→ あなたのprompt「Solo harp, delicate arpeggios, clear resonance, gentle dynamics, expressive performance, instrumental only, no vocals, no singing, no choir, no spoken words」では冒頭に「ハープの独奏」と書いていますが、最初からチェロみたいな通奏低音楽器とのアンサンブルとなっています。音楽としてはせっかくの「Harp Solo」とは全く別のものなっているのですが、それでいいのでしょうか
- ★ 何度か試しましたがサイレンのような音色になってしまってなかなか難しかったです。資料で説明されていたようにsunoは音響パターンを学習しているため、楽器の特徴を完全に再現することは難しいのだと改めて感じました
→ あなたのprompt「haunting theremin lead, expressive vibrato, smooth portamento, continuous legato melody, eerie 1950s sci-fi atmosphere, pure sine-wave tone, spacious reverb, minimal accompaniment, slow cinematic ambient, no vocals, no lyrics」で求めた、「theremin」・「vibrato」・「pure sine-wave tone」などが悉く無視されている、なかなか典型的な事例となりましたね。どのように指示したら昔ながらのテルミンの音が出てくるのか、ぜひ実験してみて下さい
- ★ テルミンの参考動画の雰囲気を連想するようなプロンプトを生成し、テルミンに似た音を出すことに成功しました。しかしその他のプロンプトに左右される部分があり、想定外のジャンルで使用するには厳しそうです
→ テルミンの再現に挑戦というのは素晴らしいです。長大なprompt「Ultra-minimal ambient centered around an expressive theremin. Evoke the profound silence of a snow-covered landscape under an overcast winter sky. Long reverberation, near silence between notes, no percussion, no vocals. Slow, fragile theremin melodies drift like falling snow, accompanied by soft piano harmonics, gentle analog synth pads, distant drones, and subtle wind-like textures. Every note dissolves into vast white emptiness before the next begins. Cold yet comforting, melancholic yet peaceful, conveying stillness, impermanence, solitude, and quiet acceptance. Sparse arrangement, slow evolution, cinematic atmosphere, deep emotional restraint, spacious mix, delicate dynamics」は頑張りました。テルミン「ぽい」サウンドは、sunoが「雰囲気(の表現)」で音響を生成するというノウハウとして活かせそうですね
- ★ マンドリンの特徴的な音色を意識して生成しました。温かい音楽になるようにしました。AIでも楽器の特徴を活かした曲を作れることがとても興味深かったです
→ prompt「Instrumental music featuring mandolin as the main melody instrument, Mediterranean style, warm acoustic sound, gentle strings, flute, adventurous and uplifting atmosphere」が、おそらく楽器としてのマンドリンというよりもジャンルとしてのマンドリン音楽に反応した感じです。撥弦楽器としてのマンドリンに近いサウンドですが、残念ながらマンドリンに定番のトレモロ奏法が無いのでちょっと不自然な気もします