マーラー/小澤征爾「復活」

2006年7月 長嶋洋一

病気療養から復活した小澤征爾の、アクトシティでのマーラー交響曲第2番C-moll「復活」コンサートが近付いてきました。

 

思い返せば25年前の学生時代、この作品の合唱パートを歌いました。 京都大学交響楽団の定期演奏会、

		第128回定期(1981/1 山岡重信)
			ウェーバー「オベロン序曲」
			マーラー「交響曲2番・復活」(独唱:岩崎由紀子・安念千重子/合唱:特別編成) 
というのがそれで、山田一雄さんの指揮での練習に参加した鮮烈な印象があります。 本番では指揮者も変わり、自分の予定もあってステージに乗れなかったのですが、 ある意味でこのマーラー/山田一雄さんとの出会いは現在まで、自分の音楽を支える基礎の一つです。 Wikipediaの「山田一雄」のところには、
    ・・・・
    指揮台ジャンプは晩年まで行っており、全盛期には数十センチほど飛び上がることが
    出来た。「千人の交響曲」初演では、ルパシカを髣髴させる舞台衣装を身にまとって
    指揮をしたりもした。個性的な指揮スタイルは晩年になっても変わらず、まるで音楽
    の精に取りつかれたかのような動きをしていた。
    ・・・・
    マーラーの解釈は巨匠クラスで世界にも通用したと言われている。
などとありました。興味のある人は、Wikipediaの マーラー とか 交響曲第2番 についても調べてみて下さい。

そこで早速、アマゾンに「復活」のCDを注文しました。12枚あった中から厳選した6枚です。

2日後にはアメリカからCDが届き、毎日、スコアとともに聴いてみました。 普段であればMP3に変換して、愛用のiPod nanoあるいはiPod shuffleで聴くのですが、 ことクラシックについては音質重視なのでMP3を避けて、CDで聴きました。

 

 

 

以下は、それぞれのCDを初めて、一度ノンストップで聴いただけ、という第一印象の感想です。 さらに詳しい感想などは、いずれ書いてみたいと思います。

クレンペラー + フィルハーモニア

 
このスコアを開いたのはおそらく20年ぶりぐらいで、このCDは一連の「復活」の最初に聴いたので、 ややフィルターがかかっているかもしれませんが、巨匠にしては淡白な印象の演奏に驚きました。 他の大部分のCDは演奏時間(通常、約80分)のためにCDが2枚組になっているのに、 このCDは1枚で全てが収められているので、テンポ設定が早めであることは予想できました。 遅くドラマチックに演奏すればいいというものでもないのですが、第一印象は「とってもデジタル」な演奏です。 それぞれの部分については軽妙にテンポを変えてソツなく進めていくのですが、 全体としては「切れ切れ」「あまりに刹那的」という不満が大きく残りました。

ズービン・メータ + ウイーンフィル

 
録音も古いのだと思いますが、前日に聴いたクレンペラーに比べて、いい意味で「とってもアナログ」な 演奏に感動しました。全体の大きな流れ、うねり、といった大局観はさすが巨匠、という味でした。 指揮者はそれぞれ、他の指揮者と違うオリジナルの解釈で主張すると思いますが、 メータの第1楽章の練習番号16、これは他のどの指揮者にもない驚くほどの遅さ(重厚さ)から入り、 その後の延々たるテンポの構成力に圧倒されました。さすがです。 ウイーンフィルの響きは比較的穏健である・・・という先入観で聴き始めたのですが、 ちゃんと後半にはきらびやかな迫力で指揮に応えて「歌う「鳴る」」好演でした。このCDはお薦めです。

サイモン・ラトル + バーミンガム響

 
ラトルに対する先入観の通りに、若々しい大胆なマーラーで、前日のメータとは違った意味で 「復活」を堪能できました。メータの指揮がアゴーギク(テンポの変化による表現)の部分の名人芸であると すれば、ラトルの指揮はデュナーミク(音量の変化による表現)およびコロリート(音色の変化による表現)と いう部分で、これまた新鮮な驚きの連続でした。指揮者の持ち味によって、ここまで同じ作品の演奏が 変わるものなのだ、と発見しました。

キャプラン + ロンドン響

 
アマゾンの読者評で好評だったので買ったのですが、指揮者のキャプランという人は知りませんでした。 いざCDを聴いてみると、これがなかなかに素晴らしい、いい「復活」でまた驚きました。 巨匠のような強烈な独自の解釈の主張はないのですが、この「復活」ならお金を取れます。 そして後日、Wikipediaの解説から以下を発見して、謎が解けました。

アメリカの経済誌の社長ギルバート・キャプラン(1942 -)は1965年にレオポルド・ストコフスキーが指揮したこの曲を聴いて感動し、自らこの曲を指揮するために本格的な指揮を勉強、1983年以降、世界中のオーケストラを指揮してこの曲のみ50回以上上演している。日本でも1984年4月に新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮した。1987年にはロンドン交響楽団とこの曲を録音、1996年にはザルツブルク音楽祭でフィルハーモニア管弦楽団を指揮して演奏するなど、「復活」専門の指揮者として知られる。

「復活」専門の指揮者、というのは凄いですが(^_^;)、その思い入れはよーーく判ります。 そしてこのCDの、ある意味で模範的という演奏の理由も判りました。おそらくキャプランは、 指揮法の勉強とともに、古今東西の巨匠の「復活」を全て勉強して、その「いいとこ取り」を実践しているのだと 思います。これは決して悪いことではなく、彼もまた音楽に導かれている仲間だと思いました。

スラットキン + セントルイス響

 
スラットキンという指揮者もよくは知らないのですが、アマゾンのコピーで「ソプラノはキャスリーン・バトル」というので つい買いました(^_^;)。もっとも「復活」においては、2人のソリストのうち主役はアルトであり、声楽のパートの中で もっともアルトに惹かれる作曲家が多い、という事実をこの作品では納得してしまいます。 CDの演奏ですが、オケはおそらく管が鳴るのかな・・・という先入観に反して、弦もなかなかに鳴って、 バランスよく小気味いい演奏、という感じでした。ちょっとまだ指揮者の若さ、あるいはアメリカ人指揮者の 色合いが出ているカンジで、ヨーロッパの陰鬱さと重厚さ、という点では不満が残りました。

バーンスタイン + ニューヨークフィル

 
自宅には過去にNHKで放送した「復活」のビデオが2本、小澤征爾とバーンスタインがあったので、 このCDだけはちょっと予見できましたが、期待に違わない好演でした。このCDもお薦めです。 冒頭のテンポの遅さ、重厚さは他の全てのCDを圧倒しますが、遅くすることは音楽のテンションを持続しにくくする デメリットもあり、簡単に取れる戦略ではありません。しかしバーンスタインは確信をもって、遅いところは 徹底的に遅く、あるいは長い長い(気付かないほどの)アッチェランド、その他、ロマン派とはこうである、 と随所に見せつける圧巻の演奏でした。


・・・ということで、このあたりを予習として、「小澤征爾音楽塾」のマーラー「復活」に行くことになりました。 久しぶりにスコアを追いながら、多くの指揮者・オーケストラの挑んだマーラーを聴くと、 あらためてあれこれと新しい発見がありました。 勢いでたくさんCDを買ってしまいましたが(^_^;)、モトは取れたと思います。

本当は、日本のアマゾンにもさらに5枚の「復活」のCDを注文したのですが、コンサートには間に合いませんでした(;_;)。 いずれ機会があれば、以下に書き足すことにします。

ブーレーズ + ウイーンフィル

 

ブルーノ・ワルター + ニューヨークフィル

 

インバル + フランクフルト響

 

シノーポリ + フィルハーモニア

 

小澤征爾 + サイトウキネン

 

(お願い)

・・・ここまで読んでいただいた皆さんにお願いがあります。
このページに行って、 いちばん下にある リクエストのページに、 以下をコピペしてリクエストに協力していただければ、とっても嬉しいです。
	★交響曲第2番「復活」をリクエストする場合★
		●アーティスト 山田一雄
		●タイトル マーラー交響曲第2番「復活」
		●レコード会社 ビクター音楽産業
		●レーベル ビクター
		●レコード番号 SJX- 7575〜6
		●ジャンル クラシック
		●備考(仕様など) CD化
		●収録曲タイトル マーラー:交響曲第2番「復活」
		●参加ミュージシャン 京都市交響楽団
		●再プレスへ向けたコメント、レヴュー等の意気込み等お書きください! 
		●名前またはニックネームをお書きください。
		●メールアドレスをお書きください。

	★交響曲第8番「千人の交響曲」をリクエストする場合★
		●アーティスト 山田一雄
		●タイトル マーラー「千人の交響曲」
		●レコード会社 CBSソニー
		●レーベル CBSソニー
		●レコード番号 40AC918〜9
		●ジャンル クラシック
		●備考(仕様など) CD化
		●収録曲タイトル マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」
		●参加ミュージシャン 東京都交響楽団
		●再プレスへ向けたコメント、レヴュー等の意気込み等お書きください! 
		●名前またはニックネームをお書きください。
		●メールアドレスをお書きください。

こんなカンジにお願いします。