疑似Granular Synthesis



このようなGrainをそれぞれ「非実時間的」に配置演算したデータを再生してGranular Synthesis音響を生成したのがいわゆる第一世代であり、 これに続いてコンピュータの処理能力の向上とともに、 リアルタイムにGranular Synthesisを行うというリバイバルが、約10年後に 第二世代として登場した。
これらは主に、ワークステーションに付加した 専用の信号処理演算ボード等を用いるか、あるいは専用のDSPエンジンによる 強力な信号処理能力によってリアルタイムGranular Synthesisを実現したものである。
これに対して、筆者は上図のような考え方で、安価でシンプルな、PCM音源を 利用した疑似Granular Synthesisによるコンパクトなリアルタイム楽音合成の制御を 提案した[10][11]。 最近のパソコンに内蔵された「PCM音源」とは、ステレオ16ビットで44.1KHz程度の固定サンプリングデータを単純に「再生」するだけのものである。
これでは1秒間に数千から数万という個数のGrainを生成するGranular Synthesisをリアルタイムに実現するのは困難である。そこで、このシステムでは市販のパソコン用MIDI音源を利用している[7]
これは内部に16音ポリフォニック・ステレオ音源となる専用DSPと制御CPUを持った一種のシンセサイザであり、多種の楽器音データを内蔵した大容量マスクROMとともに、波形データ用のRAMを搭載しているものである。
この波形RAM部分にGrainとなる音響要素をダウンロードするとともに、一般にPCM音源で用いられる「ルーピング」のパラメータを活用して「Grainの再生領域」「無音データの再生領域」をうまく設定することで、非周期的楽音要素のGrainが多量に生成され、さらに頻繁にルーピングポイントを変更することで(固定していると固定ピッチが知覚されてしまう)疑似Granular Synthesis音響を得る、というのがこの手法の中核である。


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