MIDI 2.0 について
長嶋 洋一
2019年1月21日(月)
昨日の日曜日、ネットニュースからは 「MIDI 2.0」が発表 約38年ぶりとなるメジャーアップデートへ というのが流れてきて我が目を疑ったが、なんと以下のようにガセでは無かった。 しかし38年も続いたこれまでのMIDIと接続互換ということは、「31.25kbps」は継承されるらしい。 今更velocityを7ビットから16ビットにしたり、ピッチベンドやプレッシャーやコントロールチェンジを32ビットにしても、まぁ自己満足的な感じで、なんというか、もう消えかけている「電子楽器(メーカ)業界」の断末魔のような印象である。
一般社団法人音楽電子事業協会(AMEI)とThe MIDI Manufacturers Association(MMA)(米国MIDI管理団体)は、従来のMIDI規格に、 新たに拡張性を持たせたプロトコルなどを含んだ次世代のMIDIとして「MIDI 2.0」の開発・規格化および実装作業を進めていくことを発表しました。 MIDI 2.0とは、最初にMIDI機器間でネゴシエーションを行い、既存のMIDI 1.0対応機器との運用性を維持した上で、現在のMIDI 1.0から チャンネル・メッセージの分解能拡張、ノート・コントロール、タイムスタンプなど、演奏の表現力やデータ再現性を大きく向上させる規格です。 AMEIとMMAのメンバー企業は、現在プロトタイプの開発を進めており、初期のMIDI 2.0プロトタイプ機器間の接続、およびMIDI 1.0対応機器 との間の変換テストを行う、メ ンバー専用のplugfestがThe 2019 NAMM Showにて計画されています。このMIDI 2.0プロトタイプの開発には Ableton/Cycling‘74, Art+Logic, Bome Software, Google, imitone, Native Instruments, ROLI、Steinberg、TouchKeys、クリムゾン テクノロジー株式会社、株式会社コルグ、ローランド株式会社、ヤマハ株式会社、株式会社ズーム等、日本・アメ リカをはじめ各国の電子楽器 メーカー・ソフトウェアベンダーが参加しています。 今後MIDI 2.0 対応機器の開発及びAMEI/MMA会員企業向けのMIDI 2.0 規格準拠を表すロゴデザインの制作も行う予定です。 このMIDIのメジャーアップデートは、MIDI 1.0対応機器との接続互換性を維持した上で、高度な接続性によって様々な分野におけるMIDIの 新たな世界を築くべく、規格提案・開発を行ってまいります。何より、このニュースに対する「5ちゃんねる」の食い付きが殆ど無い、というのがなかなか淋しく悲しい。 かつてであれば「MIDIネタ」のニュースに対しては、あれこれと意見や議論やツッコミが殺到していたものだが、もはやMIDI関係者の高齢化とともに、「打ち込み猛者」とか「こだわりのマニア」などが刻々と絶滅しているのだろう。 ここで「MIDI2.0」などと提案されたところで、過去に累々と屍を晒している「拡張MIDI」や「改良MIDI」などの「新提案」と同様に、世間からは暖かくシカトされてそれほど普及せず、静かに静かに忘却されていく(今までのMIDIが主流でずっと続く)・・・という未来をここで予言しておこう。(^_^;)
上の図は、今朝になって米国のMIDI Manufacturers Associationのサイトから入手した ドラフト などから取り出したものだが、やはり、予想というか懸念は当たっていた。 「MIDI 1.0対応機器との接続互換性を維持」ということは、MIDI機器を接続したらまず、お互いに「貴方はMIDI2.0対応ですか?」と 双方向通信でネゴシエート する必要があり、つまりは、これまでMIDIケーブル1本で片方向通信してきたMIDI機器を、いちいちもう1本も繋いでみる必要があり、さらにTHRU端子によるイモヅル接続(これがMIDIの便利なところ)に関しては、下の図のように「知りません(^_^;)」という仕様なのだった。
これまでのMIDIにも「エクスクルーシブ」という機能拡張の仕様はあるものの、機能をきちんと拡張するためにはMIDIを双方向接続してネゴシエーションする必要があって、実質的には「誰も使わない」廃墟の仕様だったのだが、それをまた再興しようとしている姿勢が基本的に無茶である。 これまでMIDIを愛用活用してきた人たちはここに付いていく筈もなく、かといってこれからこのややこしいMIDIオタクの世界に入ってくる人は期待できない。 世界中の市場(楽器店だけでなくヤフオク等を含む)には、これまでぶれずに続いてきたMIDI文化の資産として、膨大な「MIDI 1.0」の電子楽器/MIDI周辺機器群が、新品・新古品・中古品(綺麗にリペア)として存在していて、MIDI機器を活用した音楽制作・音楽パフォーマンスにおいて、これを捨て去って何か新しいところに踏み込む必要性がまったく存在しない。 つまり、これはもう決定的に、駄目だろう。 MIDIはこれからも今までのMIDIなのだ。