\documentstyle[a4j,ascmac,11pt]{article} \pagestyle{empty} \setlength{\oddsidemargin}{15mm} \setlength{\evensidemargin}{15mm} \setlength{\topmargin}{5mm} \setlength{\headheight}{0pt} \setlength{\headsep}{0pt} \setlength{\topskip}{0pt} \setlength{\footskip}{9mm} \setlength{\textheight}{246mm} \setlength{\textwidth}{170mm} \begin{document} \sf \begin{center} {\huge {\bf マルチメディア・アート開発支援環境における} \\[2mm]} {\huge {\bf 生成系エージェントのための制御構造モデル} \\[6mm]} \end{center} \subsubsection*{1. はじめに}  本研究ではコンピュータ音楽(Computer Music)創造環境に関して、 マルチメディア・アートとしての検討と、具体的な作品としての実験的な 応用 \cite{ss94} \cite{hci95} を試みてきた。 そして、汎用の芸術創造/表現のためのプラットフォームの実現を目標として、 音響のモデルと画像のモデルとを対等なオブジェクトとして統合的に駆動する 「ネットワーク化されたオブジェクト指向型マルチメディア情報生成環境」 \cite{ipsj9503} \cite{ss95} \cite{icmc95} の構築を目指してきた。 本稿では、マルチエージェントを利用したマルチメディア・アート開発支援 環境における、音響生成エージェントおよび画像生成エージェントの実現のため の制御構造モデルについての考察と、具体的な試作モジュールの開発研究に ついて報告する。 \subsubsection*{2. システム構成と入力情報}  システムを実現するためのプラットフォームとしては、オーサリング環境として SGI Indy上でXのMotifを用いるとともに、映像系はOpen-GLによるCG、音響系は 当面はMac上のMAXを用いている。なお、近い将来に音響系もSGI-MAXを利用する 予定であり、さらにMIDIやイーサネットによって複数のマシンによる分散処理を 行うシステム構築を目指している。 音響生成エージェントと画像生成エージェントを構成する各モジュールへの 入力情報としては、シナリオ記述/駆動エージェントからのリアルタイム制御 情報と、音響/画像/演奏等のセンシングを行うパターン認識エージェントから のリアルタイム入力情報がある。これらはMIDI情報として特別なプロトコルと して規定され、複数のセンサからの情報はセンサフュージョンとしてマージ されるとともに、MAXによるパターンマッチングによって、より高次のパフォー マンス情報として情報圧縮を行う場合もある。 \subsubsection*{3. 汎用の制御構造モデルの検討}  これまでの実験的作曲に対する調査から明らかになったことは、時間的構造と パフォーマーによるリアルタイム制御を伴うマルチメディア・アートの大部分 が、図のように一種のイベントシーケンス・モジュールの集合として構成されて いる、という傾向である。ここでのイベントシーケンスとは、単一の音から一連の フレーズや楽章まで含まれ、いずれもその前後にスタートに関する制御要求と ストップに関する制御要求があることが特徴である。また、このような構造は さらにその内部に同様のモジュール構造をサブシーケンスとして再帰的に呼び 出したり、以前のイベントシーケンスへの復帰パスを持つことも少なくない。 たとえばMAXでこのような構造の作品を作曲する場合、イベントシーケンス内の 音楽情報に関する記述と、センサ情報やパフォーマーの制御に関する記述が 複雑にからみ合ってしまう。その結果、特定の作品に使用されたアルゴリズムは 別の作品に再利用することが難しく、汎用のプラットフォームとしての問題点 が指摘されていた。 そこで本プロジェクトでは、各生成エージェント内の制御構造モデルとして、 (1)時間的制御、(2)トリガ駆動制御、(3)バリュー制御、の3種類を自由に組み合わせ られる汎用の駆動モジュールを検討した。これは、図におけるコントロール部分 と真のメディア・イベントシーケンスの部分とを分離して、コントロール部分を 汎用化することを目指したものである。 このモデルを基本要素として組み合わせることで、任意のコンテンツに対する 生成エージェントを構造的に実現することが可能となる。 \subsubsection*{4. 制御構造モデルの実現と動作}  実験的に試作した制御モジュールのスタート部分では、前段のモジュール あるいはメイン制御ブロックからのスタートコマンドを受ける部分、その後に センサトリガ入力を許可するまでの時間データ、センサトリガによって実際の 外部イベントシーケンスを駆動する部分などがある。センサ入力に対する不感 領域の設定は、リアルタイム・パフォーマンスの信頼性確保にとって重要な 要因であり、またセンサ入力はリハーサルにおけるデバッグ入力としても利用 できる。 ストップ部分では、センサ入力やメイン制御ブロックからのストップコマンド によって強制的に外部イベントシーケンスの駆動を停止するパスと、逆に 外部イベントシーケンスが先に終了したことを受けて次段に引き継ぐパスの両方が 必要となる。ここでもストップのためのセンサ入力に対する不感領域の設定は重要 であり、ストップコマンドを許可するための時間データは必須となる。 このような制御構造とその動作は、汎用化のために内部情報としてのステータス データを外部に提供することで、作品全体の大局的構造の把握とリンクされる。 図のモジュール例では、Phaseとして7種類の情報が出力され、シーンの推移など、 より高次の演奏情報の処理に利用される。 \subsubsection*{5. むすび}  本稿では、各メディアの生成エージェントの実現のための制御構造モデルに ついて考察し、具体的な試作モジュールの開発研究について報告した。 このような研究においては実際の作品として成果を試すことも重要であり、 今後も音楽情報科学研究会(SIG-MUS)やコンサート等の機会に積極的に発表して いく予定である。 %%%%%%%%%%%%%%%% \vspace{70mm} %%%%%%%%%%%%%%%% \begin{small} {\sf \begin{thebibliography}{99} \bibitem{ss94} 長嶋洋一 : マルチメディアComputer Music作品の実例報告. 情報処理学会研究報告 Vol.94,No.71 (94-MUS-7), pp.39--44, 1994. \bibitem{ipsj9503} 長嶋洋一, 片寄晴弘, 由良泰人, 井口征士 : 画像情報と統合されたコンピュータ音楽創造環境の構築. 情報処理学会平成7年度前期全国大会講演論文集I, pp.363--364, 1995. \bibitem{hci95} Yoichi Nagashima : Multimedia Interactive Art : System Design and Artistic Concept of Real-Time Performance with Computer Graphics and Computer Music. Proceedings of Sixth International Conference on Human-Computer Interaction, pp.89--94, 1995. \bibitem{ss95} 長嶋洋一, 片寄晴弘, 由良泰人, 藤田泰成, 井口征士 : マルチメディア生成系におけるプロセス間情報交換モデルの検討. 情報処理学会研究報告 Vol.95,No.74 (95-MUS-11), pp.63--70, 1995. \bibitem{icmc95} Y.Nagashima, H.Katayose, S.Inokuchi : A Compositional Environment with Interaction and Intersection between Musical Model and Graphical Model --- ``Listen to the Graphics, Watch the Music'' ---. Proceedings of 1995 International Computer Music Conference, pp.369--370, 1995. \end{thebibliography} } \end{small} \end{document}