\documentstyle[a4j,ascmac,11pt]{jarticle} \pagestyle{empty} \setlength{\oddsidemargin}{18mm} \setlength{\evensidemargin}{18mm} \setlength{\topmargin}{5mm} \setlength{\headheight}{0pt} \setlength{\headsep}{0pt} \setlength{\topskip}{0pt} \setlength{\footskip}{8mm} \setlength{\textheight}{248mm} \setlength{\textwidth}{163mm} \begin{document} \sf \begin{center} {\Huge {\bf マルチメディア・ワークステーション} \\[2mm]} {\Huge {\bf による情報基礎教育の試み} \\[6mm]} \end{center} \subsubsection*{1. はじめに} 神戸山手女子短期大学における一般教養科目「情報処理入門」として、 コンピュータに初めて触れる文系女子短大学生のために、ネットワーク化された マルチメディア・ワークステーションを活用した事例について報告する。 キーボードでなくマウスによるグラフィカルな操作、さらにテキスト情報、 CG・動画・静止画の映像、音声・音響等のマルチメディア情報を扱える環境 によって、学生はコンピュータに関する専門知識なしに高度な自己表現方法を 容易に獲得できることがわかった。 また、UNIXネットワークを経由してマルチメディア情報を転送・共有する際に 提起された問題点や課題についても報告し、情報基礎教育の視点から検討する。 \subsubsection*{2. 情報教育システムの概要} 神戸山手女子短期大学では、従来からのパソコンによるワープロ・表計算等 の情報処理教室とは別に、新設の情報教育センター内にSGI社のIndyを24台と サーバ兼用のIndigo2を用いた計25台のグラフィック・ワークステーションによる 情報教育用ネットワークシステムを構築した。 教室には各種ビデオ・オーディオ機器およびMac・Indyの画面を大スクリーンに 投射するプロジェクタとPAシステム、さらにIndyによるマルチメディア作品を 記録するためのベータカム・S-VHS編集記録システム、Computer Music教育用 機材(95年開講予定)などが附属している。 学生が使用する24台のIndyは全てメモリ64MB・ハードディスク1GBに増設して、 スタンドアロンでも十分に動作できる環境とするとともに、イーサネット越しに 別室のサーバIndigo2の増設4GB内に全学生のアカウントエリアを設けた。 各学生は学内での電子メイル交換の実習、インターネットを経由した他サイトとの 電子メイルの実験を行ったり、一部の課題実習では「海外のFTPサイトから任意の 画像データを入手せよ」といったネットワーク教育も行っている。 \subsubsection*{3. 「情報処理入門」の概要} \paragraph{出席の取り方} Indyに附属しているカラーCCDカメラ(IndyCam)を用いて、動画を避けて情報量の 少ない静止画データとして、各学生は授業の冒頭に毎回の「顔」を撮影する。 次にUnixシェルのウインドウを開いて、このデータをUnixネットワーク経由で サーバ内の指定領域に転送する。これによって、「マルチメディアツールの使用」 「出席届け」「ネットワーク情報転送」を同時に実習した。 最初は戸惑って30分ほどかかったこの作業も、慣れると学生は数分で完了するよう になった。 また全体の「出席簿」制作用に、同じカメラに附属した小型マイクを用いてのハード ディスク・レコーディングツールを用いて、自己紹介のボイスメイルを記録・提出 した。この音声データツールは、のちに作品の一部として多くの学生が活用し、画像 データとリンクされた。 \paragraph{``Showcase''による作品制作} IndyにはSGI社の各種ツールが付属しており、「情報処理入門」ではマルチメディア ・プレゼンテーションツール``Showcase''を用いた「作品制作」を実習のメイン 課題とした。これは、Indyの扱うテキスト情報・音声情報・映像(2--DのCG・3--Dの CG・静止画・動画)情報を対等に扱い、「マルチメディア紙芝居」的に各種のプレゼン テーションを簡単に実現できるツールである。なお、あらかじめ制作された作品 を自動再生するだけでなく、マウスによってインタラクティブにオブジェクトを クリックしてシナリオを分岐していくような機能までサポートされているが、 大多数が1回生の前期半年の期間では、そこまで扱うことはできなかった。 授業では、お絵描きツール的簡易CADの機能、3次元モデルの描画・回転・投影処理、 カメラからの映像データの取り込みと画面内の任意のグラフィクスの取り込み、 マイクによる音声データの取り込みと張り付け、画像・音響データのエフェクト 処理、各種フォントの活用によるテキスト表示、HyperScriptによるスライド ショウ機能などを順に体験し、最終的には学生が自由テーマで「作品」を制作した。 なお、作品の提出もネットワークにより学生が自主的に行った。 作品制作風景としては、自由に回転させた3次元立体の表面にパターン を投影できるCG機能と簡易CADとを組み合わせたイラストを制作した学生、 IndyCamで身近な写真を接写して組み合わせたコラージュを制作した学生、 イラストと音を組み合わせた作品(例:蛙の絵と雨の音)を制作した学生などが 多く、あるテクニックに開眼するとそこにこだわって多用する傾向が見られた。 \subsubsection*{4. 問題点と課題} \paragraph{GUEST利用とログイン・アカウント利用} 一般の情報処理教育に見られるような、Unixのファイル構造やディレクトリ構造と いう用語すら説明せずに実習に入ったために、学生が対面している各自のIndyから ネットワーク越しにサーバ内にログインしている、という状況を理解することが 難しかった。これは、最初にGUESTアカウントでログインしたために余計に混乱を 招いたようで、学生が「いま現在、自分はどこにいる」という意識を持ったのは しばらく後のこととなった。 \paragraph{トラフィックの過剰} 授業の冒頭には出席届けのために、CCDカメラやマイクによるハードディスク・ レコーディングツールを20名以上の学生が一斉に起動した。ところが各自は サーバ内にログインしていたために、それぞれのIndyから多量のデータが イーサネットに集中することになり、何度もトラフィック過剰でネットワーク システムがダウンした。 このためシステムを変更し、ログイン時に各Indy内にローカルな作業用 ディレクトリを開く(ログアウト時に内容を含めて自動消去)ようにしたが、 自分のディレクトリ内から起動する学生がいたり、多量のShowcaseデータを 何人もがセーブする際には、ネットワークのレスポンスが極端に悪化した。 レスポンスが低下したために何度も実行オブジェクトをクリックした結果、 Showcaseやメディアツールがハングアップすることも多かった。この場合 には学生は手を出せない状態となるために、教官が別のマシンからリモート ログインしてプロセスをKILLした。 \subsubsection*{5. むすび} まったく初めての試みとして本報告の「情報処理入門」を行ったが、学生には 好評であり、短期間ながらセンスの光る作品を制作した学生も少なくなかった。 コンピュータの利用に情報処理の専門的知識は必ずしも必須ではないことが わかったので、さらにいろいろなアプローチから引続きこの試みを前進させて いきたい。 \subsubsection*{参考文献} 日本シリコングラフィックス株式会社 : IRIS Showcase マニュアル , 1992 情報文化フォーラム : 情報と文化 , NTT出版 , 1986 \end{document}