ICMC1994レポート

たった今、ICMC1994から帰ってきました。実はこの部分は、成田に
向かうSASの機内で書いています。下の=====からあとは、全て
デンマーク行きの機内から書き始めて、現地で毎日書いたものです。
おそらく最後あたりで言い訳すると思いますが、OMRONのおかげで
あまりいい文章になっていないのですが(^_^;)、こういう記事は鮮度が重要
ですので、帰宅したらそのままパソコンに吸い上げて、手を加えずに
アップすることにします。

<<注意>>
なお、この記事は僕の私的な旅行記ですので、そのところを御了承下さい。
文中に登場する実名についてはモデルが実在しますが、あまり真剣に事実確認を
しないで下さい。(^_^;)  人間の記憶というのはいい加減なものですから。
また、研究発表やコンサートに感する感想・批評・分析・解説なども全て私的
な独断と偏見に満ちたものであることを御理解下さい。

では、とりあえず、どうぞ。(^_^)

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一部の皆さん、おまたせいたしました。
ICMCレポートです。

■バックグラウンド■

何度か紹介していると思いますが、今年もICMCが開催されました。
僕はこのところ、1991のモントリオール、1992のサンノゼ、1993の
東京と連続参加しているのですが、今年はペーパーの応募も落ちてしまって(^_^;)、
ちょっと無理かな、と半分諦めていました。ところが、Niftyのレポーターとしての
参加という立場で、なんとか今年も参加できることになりました。(^o^)/
これで4年連続参加ということで、過去のICMCの流れと比較したような視点
でも報告できるかと思いますので、参考にしてみて下さい。

なお、サンノゼのICMCについては「音楽芸術」誌と「bit」誌に、東京の
ICMCについては「bit」誌にレポートを書いていますので、興味の
ある方はそちらも参考にしてみてください。

さて、何と言っても去年のICMC93は、従来の欧米交互開催のパターンを
破る初めてのアジアオセアニア地域の開催、そして実行委員会をはじめとして
音楽情報科学研究会の関係者が実質的な裏方として開催に尽力した、という
画期的なものでした。
これまでICMCに関心の少なかった多くの国内の研究者や音楽家も多数応募
して、ある程度は日本の水準を世界に印象づけられたと思います。
しかし、残念なことに今年のICMCに対する日本人の参加状況は、従来の
レベルに戻ってしまい、現地の気候と同様にかなりお寒いものとなりました。

事前に音情研関係から入手した情報によれば、音楽セッションでは音楽情報
科学研究会の幹事でもある志村さんが入選したのが唯一の日本人でした。
(タナカアタウ氏は日系といってもUSAですから。)
論文セッションとしては、志村作品のシステムをデモンストレーションで
発表するのを含めて、イメメージラボから片寄さん・金森さん・井口先生と
あと1名、そして昨年は涙をのんだ大矢さんがついに採択、あとは早稲田の
後藤さん、そして早稲田の橋本先生のところからはなんと3件の発表、
というものでした。
また、パネルシンポジウムのパネラーとして、片寄さんと橋本先生がそれぞれ
参加する、という情報もありました。
ここまでの発表者は全て、音楽情報科学研究会のおなじみさんばかりです。(^_^)
さらに、これ以外に事前につかんでいた日本人参加者としては、こちらも
音楽情報科学研究会の先日の京都のコンサートでも活躍された中村滋延さんが、
そしてICMAアワードの審査で大阪芸大の上原先生が参加する、という
ところまででした。
中村先生の奥様とレポーターの長嶋を入れても十数名、ということで、これは
東京のICMC以前の状況とほぼ同じ、というわけです。

また、例年、某楽器メーカーからは「背広を着てずっと会場後方からビデオで
べったりと記録しつつ一言も発言せずに立ち去る」という不気味な行動をとる
人達がいたのですが(^_^;)、夏シンポですら楽器メーカーの社員はほとんど
皆無(R社K社各1名、それも出張でなく自腹参加!)、それなのに元楽器
メーカーが10名にせまる人数で参加していたことを思うと、果たして今年は
またやってくるのかどうか、業界の景気を占う意味でも興味がありました。

■当日まで■

今年のICMCはデンマーク第2の都市、AARHUSで開催されました。
だいたいこの都市をなんて呼んだらいいのかも不明だったのですが、
「あーふす」
「おーふす」
「あーるふす」
「おーるふす」
「あーるず」
などの諸説が入り乱れました。だいたい、どれでも通じました。ちなみに、
現地ではARHUSと書いて、Aの上に「オングストローム」のマルを添えて
いました。
僕は知らなかったのですが、コペンハーゲンというのはヨーロッパ大陸とは
離れた「島」の中にあり、ここから国内線で対岸のAARHUSに飛ぶ、
というのは陸地のデンマークの半島部分に行くことだったのです。

現地のスタッフはなかなか事前の準備とかもしっかりしていて、参加申込に
対してもキチンとアクセプトの連絡が届きました。これは、かなりアバウトな
過去の某ICMC(もちろん東京ではありません)に比べると画期的なのです。

事前に送られてきた7/5の暫定プログラムは以下のものでした。

========== ICMC 1994 Conference Schedule ==========

Monday September 12
	10:00-13:00	Workshop 1 : DSP Tutorial
	14:00-17:00	Workshop 2 : KYMA

Tuesday September 13
	10:00-13:00	Workshop 3 : Aesthetics
	14:00-17:00	Workshop 4 : Interactive Automata
	20:00-22:00	Concert  1 : Cikaada Ensemble

Wednesday September 14
	09:00-12:00	Paper Sessions 1
	10:00-12:50	Posrers & Demonstrations 1
	13:00-15:20	Paper Sessions 2
	13:00-15:20	Studio Reports 1
	15:30-17:30	Concert 2
	18:00-19:30	Recception
	19:45-20:15	Keynote Address
	20:30-22:30	Concert 3 : Performnce & Multi Media

Thursday September 15
	09:00-12:00	Paper Sessions 3
	10:00-12:50	Posters & Demonstrations 3
	13:00-15:00	Concert 4
	15:30-16:10	Special Talk
	16:20-17:40	Paper Sessions 4
	16:20-19:00	Posters & Demonstrations 4
	16:20-17:40	Studio Reports 2
	20:30-22:30	Concert 5 : Royal Danish Ballet
	23:00-23:45	Concert 6 : Fireworks

Friday September 16
	09:00-12:00	Paper Sessions 5
	10:00-12:50	Posters & Demonstrations 5
	13:00-15:00	Concert 7
	15:30-16:20 	Special Panel
	16:30-17:20	Paper Sessions 6
	17:30-20:00	ICMA Banquet
	20:30-22:30	Concert 8 : Athelas Sinfonietta

Saturday September 17
	09:00-12:00	Paper Sessions 7
	10:00-12:50	Poster & Demonstrations 7
	13:00-15:00	Concert 9
	15:30-17:10	Paper Sessions 8
	15:30-17:30	Posters & Demonstratios 8
	15:30-16:30	Studio Reports 3
	17:30-18:30	ICMA general meeting
	20:00-22:00	Concert 10 : Aarhus Symphony
	22:30-23:30	Concert 11 : Computer-Jazz

なお、ここには「リスニングルーム」という毎日のスケジュールは書いて
いません。セッションが忙しくて、CD/DATとヘッドホンを提供されても
作品を聴く時間はないのです。

それから、事前に送られてきた暫定コンサートプログラムは以下のものです。
なお、この2枚の資料は行きの機内で打ち込んだものですので、ミススペル
等は御容赦下さい。(^_^;)

========== ICMC 1994 Concert Program ==========

Tuesday September 13

	20:00-22:00	Concert  1 : Cikaada Ensemble(Oslo)
		Montague (UK) :		Silence ...
		Truax (Canada) :	Sequence of ...
		Smith (Canada) : 	Flux
		Cipriani (Itary) :	Visibili
		Thorsen (Norway) :	AbUno

Wednesday September 14

	15:30-17:30	Concert 2
		Pecquet (France) :	Cello & Co
		Taube (D) :		Gloriette for Cage
		Eldenius (S) :		Norweigian Fragments
		Mowitz (USA)		I Talk Dalej
		Dunkelman (B) :		Rituellipses
		Tedde (CH) : 		Cello Voce
		Nunez (E) :		Jurel
		Smalley (UK) :		Piano Nets

	20:30-22:30	Concert 3 : Performnce & Multi Media
		Wallin (Norway) : 	 Yo
		Satosi Simura (Japan) :	 Tikukan no Utyu II
		Cadoz/Luciani (France) : Esquiness
		Matthews (Canada) :	 In Emptiness ...
		Waisvisz (NL) : 	 Faustos Fchrei

Thursday September 15

	13:00-15:00	Concert 4
		Hamel (Canada) :	Obsessed Again ...
		Ceccarelli (Italy) :	Birds
		Lippe (USA) :		Music for CL & ISPW
		Lunden (S) :		Noises
		Morales (Mexico) :	Cempaxuchitl
		Lee (CH) :		YunMu 3
		Tanaka (USA) :		Overbow

	20:30-22:30	Concert 5 : Royal Danish Ballet
		Ainger (USA) :		Lament
		Wishart (UK) :		Tingues of Fire
		Chen (Hong Kong) :	Huang Zhong
		Pinkston (USA) :	Margo's World
		Pamerud (S) :		Jeux Imaginaries
		Karpen (USA) :		Terra Infirma

	23:00-23:45	Concert 6 : Fireworks and Computer Music
		Dhomont (Canada) :	 Artifices
		Parmerud/Blomquist (S) : Trio,target

Friday September 16

	13:00-15:00	Concert 7
		Phelps (USA) :		Sax Houses
		Gobeil (Canada) :	Le Vertige Inconnu
		Norman (UK) :		Trilling Wire
		Stammen (Canada) :	Tuva!
		Rahn (USA) :		Sea of Souls
		Gawad (Egypt/USA) :	Taqaseem No.2
		Penrose (USA) :		Manwich
		Alford (USA) :		IMAGE:the Pop Can

	20:30-22:30	Concert 8 : Athelas Sinfonietta (Copenhaagen)
		Jaffe (USA) :		Seven Wonders
		Saariaho (Finland) :	Winter Aconites
		Frounberg (DK) :	SHaTaLe
		Fredrics (USA) :	The Raven's Kiss
		Hojsgaard (DK) :	Nocturne

Saturday September 17

	13:00-15:00	Concert 9
		Pennycook (Canada) :	Praescio-III
		Roy (Canada) :		Crystal Music 1
		Nelson (USA) :		Waves of Refraction
		Normandesu (Canada) :	Spleen
		Favilla (Austria) :	Improvisations
		Austin (USA) :		!Rompido!
		Vinao (USA) :		El Simurgh, book II

	20:00-22:00	Concert 10 : Aarhus Symphony
		Giroudon (France) :	 Double 3
		Bevelander (USA) :	 Synthecisms no.4
		Kats-Chermin (Austria) : Clocks
		Lanza (Canada) :	 Piano Concerto
		Hauksson (Iceland) :	 Bells of Earth

	22:30-23:30	Concert 11 : Computer-Jazz
		Strange (USA) :		Velocity Studies IV
		Berg (D) :		Loops, Lines ...
		Nilsson (S) :		Random Rhapsody
		Fuzzy (DK) :		ICMC 1994 Surprise

Installations

	Bosch/Simons (NL) :		Electric Swaying Orchestra
	Gronlund/Tin (DK) :		Hybrid Band
	Keane (Canada) :		Sound Lodge
	Svalkeapaa/Nousianinen (SF) :	Half-deaf

去年の東京ではなかったのですが、コンサートセッションでは現地の開催主体
が推薦して演奏される、という、いわゆるセレクションを通っていない特別
なものもある場合があるのですが、今回はヨーロッパ、特に北欧の若い作曲家
を紹介しようというのか、けっこう「招待公演」がありました。
また、全体としてヨーロッパが多いのが目立ちました。

イメージラボでは、志村さんの作品「竹管の宇宙II」のヨーロッパ初演に
向けて、機材のコンパクト化と現地調達Mac対応化が着々と進み、リハを
含めて機材送付までの準備も無事に進みました。
現地スタッフからは、リハの時間割とか機材到着の連絡などの電子メイルが
刻々と届きました。

....そしていよいよ、9月中旬、ICMC本番となりました。

■いよいよデンマークへ■

イメージラボの一行は井口先生を除いて一日早く出発していること、中村先生
たちは「青春の地ドイツ」を経由してだいぶ前から出発していることは知って
いました。
僕はこれまで、何故かヨーロッパには行ったことがなかったので、初めての
訪欧ということだったのですが、まぁそれ程トキメクということもなく、
浜松を朝7時の「ひかり」で東京へ、そしてNEXで成田空港へと淡々と
向かいました。前日の台風も遠くに去ってくれてよかったよかった。(^_^)

SAS(スカンジナビア航空)については、早稲田から今はイギリスに行っている
板垣さんから「いろいろトラブルに遭ったから避けた方がいい」というメイルを
もらっていたものの、コペンハーゲン往復で国内1箇所乗り継ぎサービスもある
ということで、結局SASにしました。
搭乗手続きも通関も快調に進みましたが、いざフライト時刻になって「シベリア
上空が混んでいるので30分ほど待つ」との機長アナウンスがあった時には、
なんか嫌な予感がしました。
まあ、あとは11時間半ほどのフライトだったわけですが、なんと機内で、実は
大矢さんと後藤さんも一緒であることが判明しました。それでなくても到着が
遅れて、乗り継ぎの国内線に間に合うかどうか不安だったために、3人が
3人ともホッとしました。(^_^;)

...ということで、出発が遅れたために30分ほど遅れてコペンハーゲンに
到着しました。ところが僕のはスムーズに出てきたものの、大矢さんと後藤さんの
スーツケースがなかなか出てこなくて、もう乗り継ぎはアウト!という時間に
なりました。そこでサービスカウンターに鼻息荒く交渉に行くと、そこの
おばさんは悠然として、

「17:30の乗り継ぎ便はありません」。(^_^;)

もはや出てしまったかとぎょっとしてさらに聞くと、なんと
「今日はストでまったく飛んでいない」
ということだったのです。国際線は正常に海外の客を運んできても、そこから
乗り継ぐ国内線がまるで止まっているのでした。そういえば、なんとなく
天下のコペンハーゲン国際空港にしては閑散としています。(^_^;)

結局、その夜の最終便だけが飛ぶのでチケットを切り替えしたから、国内線
の空港に移動して待っていなさい、ということになりました。
なんと5時間後です。(^_^;)
あとから考えれば、この5時間というのは、天から降ってきたコペンハーゲン
観光のチャンスだったのですが、なんせその時点で日本の感覚で言えば深夜の
0時頃で眠くてボケていて、僕たち3人は国内線への乗り継ぎバスに乗って
あっさりと国内線空港に行きました。ショッピングとか食事でも、ゆっくり
しましょう...というノリでした。
しかし、着いてから気付いたのですが、国内線がストで飛んでいない空港
ということは、国際線よりもさらにシーンとしていたのです。(^_^;;)
さすがに簡単なテイクアウトの食事もある売店が営業していましたが、
それだけのところで5時間待続ける、ということになりました。

空港の外は小雨がパラつく気温15度、どこに行くところもなくウロウロと
していると、やがて早稲田の橋本先生が登場しました。なんでも、ニューヨーク
からロンドン経由で25時間かけてたどりついたそうで、僕たちが乗ることに
なった国内線の飛行機に乗るように最初から予定していたのでした。
とりあえず3人が4人になり、それも世界を股にかける橋本先生とも合流した
ことで安心し、僕たちはウトウトしながら22:30を待ちました。そしてようやく
念願のフライト。なんのことはない、飛んでみれば30分ほどでAARHUSに
付き、そこから市内へのバスで45分、その駅前のホテルにチェックインしたのが
ちょうど24:00でした。本来なら19:00過ぎの筈で、日本はもう朝になっています。
ようやくそこから泥のように眠って、デンマークの初日が終りました。

 <教訓>航空会社のトラブルには冷静に対応しよう(^_^;)

■いよいよICMC開始■

さて翌朝、まるで起きてくる気配のない橋本先生を置いて、僕と大矢さんと後藤
さんの3人は、ホテルからすぐのコンサートホールに行きました。パンフレット
に写真があったものの、本物はもっとキレイでした。なんとも文字では説明
しにくいのですが、ガラス張りの垢抜けた素晴らしいホールで、いわば
「魂があって仏を作った」というようなものです。芸術の盛んなデンマーク
の中でも、このホールはオーケストラやダンスなどの活動の拠点のようです。

まだRegistrationは開始していなかったので、3人で近くのOld Town Museum
を「観光」して、午後に会場に行って参加登録を行いました。といっても、
すでに割安のEarly Registrationをしてあったので、例のズッシリと重い
論文集を含む受け付けキットを受け取っただけです。
ここでは上原先生と出会い、そして音楽情報科学研究会でも2度発表した
Ioanis Zannosさんに1年ぶりで再会しました。東大先端研で研究していた
のですが、今はヨーロッパに戻っているとのことで、日本人の奥さまも一緒
でした。そういえば今回のICMCは、なんだか奥さんを連れてきた人が
多いみたいです。さすがヨーロッパの名所デンマークですね。東京では
少なかったですが。(^_^;)

受け付けキットには、今回のICMC参加者リストも含まれていました。
国別になっていて、なんと「日本」にはホンコンの人たちも含まれているのに
驚きました(^_^;)が、そこから今回の日本人参加者が判明しました。

以下の皆さんです。(リスト順)

	Masataka Goto (Waseda Univ.)
	Pitoyo Hatrono (Waseda Univ.)
	Shuji Hashimoto (Waseda Univ.)
	Miki Horii
	Youichi Horry (HITACHI)
	Seiji Inokuchi (Osaka Univ.)
	Yoshimasa Isozaki (YAMAHA)
	Tsutomu Kanamori (LIST)
	Haruhiro Katayose (LIST)
	Ueda Mamoru (Waseda Univ.)
	Koichi Matsunuma (Kunitachi College of Music)
	Sachiko Mokusho (Kunitachi College of Music)
	Yoichi Nagashima (Art & Science Laboratory)
	Shigenobu Nakamura (Kyoto College of Art)
	Ken-ichi Ohya (Nagano National College of Tech.)
	Minoru Ono (HITACHI VLSI)
	Takayuki Rai (Kunitachi College of Music)
	Satoshi Simura Osaka University of Arts)
	Yokoyama Taiichi (LIST)
	Toshiyuki Takeda (Kwansei Gakuin Univ.)
	Taizo Tsuruoka (SONY)
	Kazuo Uehara (Osaka University of Arts)

なんと22人。ご立派でした。さらにここには、板垣さんのように海外から
参加する日本人もいるのですから。
そういえば音楽情報科学研究会の常連としては、日立中研の堀井さんも参加
していたのでした。一緒の堀井さんというのは奥さんのようです。
あと、莱さんと国立の学生さん2名、さらにヤマハ日立ソニーなど、さりげなく
増えているところがウレシイと思いました。今回はついに、ローランドは
いないのでしょうか。(^_^;)

一旦ホテルに荷物を置きに帰り、そこから2人はさらに観光でしたが、僕は
参加登録していた午後のワークショップに行きました。

■Workshop IV : Interactive Automata■

4つあるうち、唯一参加したのがこのワークショップでした。もともとICMC
のワークショップというのは、ベテランの研究者だけでなく、新しくこの世界
に入ってきた学生などの視野を広げる、それと同時に
	その分野のバリバリの権威の解説に触れる
	他分野の専門家がなにかヒントを得る
という機会として、若手から大御所まで、興味と熱意のある人々が集まる
という独特の関連イベントなのです。

講師はヘビー級のジョージ・ルイス氏。ジャズの人です。
今回はレジュメもなく、ひたすら早口でしゃべり倒されて、ちょっと英語に
ついていくどころではなかったのですが、個人的には大いに得るところが
ありました。

ここではキーワード的に、このワークショップで登場した言葉を、僕のメモ
から以下に紹介しておきます。

	Algorithmic Composition + Improvisation
	Emotional Transduction
	Improvisation = Generating Structure
	materials
	tools
	goal
	plan
	strategy
	memory
	personality
	motif
	learning
	timber control
	local announce
	community framework
	local intelligence

本当は、ここで参加者を交えて全員が実際に体験した「ある実験」の話を
したいのですが、あまりにオイシイので、どこかで実践してから報告する
ことにします。(^_^;;)

嵐のように飛び交った英語の議論はほとんどわからなかったのですが、自分
なりに興味のあるテーマだったこともあり、来年に向けてのネタとか、いま
現在やりつつある作品にも参考になるネタを多く仕入れることができました。

■コンサート1■

Tuesday September 13 20:00-22:00 Concert 1 : Cikada Ensemble(Oslo)

ICMCの正式な内容としてはワークショップはカウントされませんから、
例年通り、このコンサートはICMCのオープニングとなりました。ホール
前にはなつかしい人達がたくさん集まりました。

このコンサートは、Cikada Ensembleという現代音楽を得意とする室内楽の
メンバーが中心となったために、ほとんど「いわゆる正統的な現代音楽」が
中心となりました。
なお、以下のプログラム順は本番で実際に演奏された順番です。

Stephen Montague (UK) : Silence: John, Yvar & Tim

タイトルの通り、ここ3年以内に亡くなった友人に捧げて作曲された作品
のようです。弦楽4重奏にピアノとエフェクタとテープを使った作品で、
なんといっても最初の部分は圧巻でした。弦楽器を打楽器として使う、と
いえばそれまでですが、バイオリンを股にはさんで指で叩く、という単純な
演奏法で、いいビートを刻んでいました。ちなみにピアノはプリペアード
にしていて、低音を除いてまともな音は出ないようにしてあります。
もっともこれはチェロなども同じで、でかいクリップで弦を4本とも挟んで
鳴らないようにしていました。
けっこう和音はポップで、リズムもポップで、聴きやすい音楽でした。
生身の人間のアンサンブルらしく、全体のクレシェンドやデクレシェンド
のなめらかなこと。(^_^)

Ronald Smith (Canada) : Flux

フルート、クラリネット、バイオリン、チェロ、シンセ+銅鑼、パーカッション
に指揮者という編成の作品で、ビブラホンは弓で弾く、というありがちな
演奏法でした。
これもまともな現代音楽で、個々の演奏者の技巧もアピールし、12音技法
的なところはきっちりと12音していました。
SY77は単にベルの音を鳴らしていただけで、どうやら「たまたまそこに
あったMIDIキーボード」ということで使われていたようです。(^_^;)

Alessandro Cipriani (Itary) : Visibili

2人のバイオリンとテープのための作品。二人のバイオリンのピチカート演奏
とともに、テープでもピチカート音を素材として処理された音響がかけ合う、
というスタート。ところがやがてテープの音響はピチカート音のリピート速度
が次第に速くなり、ついにはバースト周期の別の音響となって溶けていく、
というものです。これは、いわばグラニュラーサンプリングに近い手法です。
曲の最後には、二人のバイオリニストがステージの後ろに立ち去り、あとは
テープの音響が分厚く残りましたが、ここで二人の映像をステージ後方に
映写したのには笑いが起きていました。

Thomas DeLio (USA) : anti-paysage

フルート、ピアノ、パーカッション、テープのための作品。
スタートはフルート奏者がヘッドホンのドンカマでテープと合わせる、という
古典的な形式でした。
「沈黙」「間」の多用された作品で、なかなかの緊張感が漂いました。
たとえばテープから2秒間だけ音響が出て、そのあと15秒の空白のあとに
1秒だけ演奏してまた20秒の空白...といった音楽です。
ただ、ここのところのICMCで忘れられていた「生理学的にアブナイ音」
というのが久しぶりに登場しました。(^_^;)
キーンと耳に突き刺さる高音がそれで、客席では多くの人が、このキーン
がフェイドインしてくるとすかさず耳を両手で被う、という、かつての
ICMCでよく見られた正統的な聞き方が復活しました。
作品の最後はこの空白がさらに長くなり、最後は1分近くの沈黙で終了、
というのが見事に読めました。

Barry Truax (Canada) : Sequence of Later Heaven

またまた、グラニュラーシンセシスの権威のTruax先生の、重厚で美しい
グラニュラーサンプリング音響を聴くことができました。
満足です。(^_^)

Lasse Thorsen (Norway) : AbUno

バイオリン2名、ビオラ、チェロ、フルート、クラリネット、パーカッション、
シンセに指揮者という、アンサンブルを全員活用しての、まともな現代音楽
でした。フィボナッチ数列などいろいろな数学を駆使して音程などを決定
したという、かなり伝統的な作曲手法の作品ですが、これならコンピュータ
どころか電卓、いや手計算でもできるなぁ...という下馬評でした。
まぁ、アンサンブルの技量そのままフューチャリングしたということで、
うまくできた作品でした。

...ということで、いきなり最初から現代音楽のフルコースのような晩
になりました。まだ時差ボケの残る身にはややつらかったかもしれません。
ホテルに戻ってこの記事を打ち込んで、またまた0時になってしまいました。

.....さて、翌日からはいよいよ、ICMCのもう一つの柱であるペーパーセッション
が始まりました。
基本的にシティホールとBrobjergという2つの会場での2パラレルセッション
なので、同時に行われているセッションの片方しか参加できません。さらに、
どうしても聞きたい発表はセッションの途中で抜け出して、徒歩5分ほどの
もう一方の会場まで急ぐ、ということになりました。

また、さらにコンサートホール内の2つの会場でもポスターセッションと
デモンストレーションセッションが進んでいる、という鬼のような状況
でした。(^_^;)
ポスターやデモで見たいものがあれば、なんとか時間を作って会場に駆けつける
のですが、朝イチではセッティングができていなくて待たされたり、デモ時間
として掲示されている時間は他に行く予定があったりして、なかなか十分に
行きたいところで収穫を上げることはできませんでした。

それで、以下に報告するのは、あくまで僕が興味のあるセッションということに
なります。
他のセッションの報告については、大矢さん片寄さん後藤さんたちのレポート
を待ちましょう。(^_^;)

■ペーパーセッション1B■

Wednesday September 14 09:00-12:00 Paper Sessions 1B : Brobjerg
Johannes Goebel,chair

[Performance Interface]

Toward a new model of Performance
Mon-chu Chen

視覚的要素を入力としてグラフィクスを創造する画家の生成プロセスと、
聴覚的要素を入力としてサウンドを創造する作曲家の生成プロセスとを
入れ換えたらどうなるか? というなんとも素朴というか乱暴な発想から
スタートしているらしい研究で、まだ構想だけという台湾の学生の発表
でした。(^_^;)

具体的なモデルとして、
	Video Source Module
	Video Digitizer Module
	Video-Audio Transformation Module
	Sound Generation Module
という4種類のモジュールからなるプロセスをモデル化して、ここに
ビジュアル情報を食わせてサウンドを生成させよう、という無謀な発表
に、なんとも会場の反応はやや冷やかなものでした。とりあえずは
「ゴッホの絵を音楽にしてみる」という次の成果を期待しましょう。
(ただし僕はここで、関連した「次へ」のネタを2つ、ノートにメモしています)

A Meta Trumppet(er)
Jonathan Impett

志村さんのために作られた「サイバー尺八」と同様の、トランペット版の
開発報告でした。
トランペットから単にピッチtoMIDIでセンシングするだけでなく、
3次元位置センサでトランペットを振り回す位置に追従し、ブレスセンサで
息の量をセンシングし、ピストンの底にホール素子を入れて微妙な
ピストンの運動を拾う、というものでした。
これも志村さんの場合と同様でしたが、デモのテープを聞いた感じでは、
結局は演奏者しだいだなぁ、という感想でした。(^_^;)

この次は早稲田の発表だったのですが、すでによく知っているのと、ポスター
を見る時間が他にとれないために、涙をのんでここでスキップしました。

■ポスター/デモンストレーションセッション■

Wednesday September 14 10:00-12:50 Poster & Demonstrations 1

Real-time Spectrum/cpstrum games
Peter Pabon

タイトルからしてソソラレル発表だったのですが、行ってみるとまだパソコン
を立ち上げているところ(パソコンはノート版のPC互換機でした)で、
結局はデモに参加できませんでした。残念。
内容はどうやら、タイトル通りのもののようです。

MacMusic: the MUSIC N Environment for Macintosh
Isidoro Perez

まだ今でもMUSIC Nなんてやっている人もいるのか、と感心しました。
一応、アカデミックサンプルとしてPDSを送ってもらうように頼みました。
(森さん、解凍とかの方法を教わりに、いずれいきますからね)
どなたか、やってみる人はいませんかねぇ。

A Graphical Interface for SVP on the Macintosh Platform
Philippe Depalle, Chris Rodgers, Marie-Helene, Alain Lithaud

SVPというのはフランスIRCAMで開発された音声合成支援環境です。
実際には、これも時間が合わなくて見れませんでした。

The MARS Station: Algorithm Design and Real-time Performance
Enzo Maggi, Fabio Armani

MARSというのは、まだやっているのか、という恐怖のイタリアのグループです。
詳しくは過去のICMCプロシーディングスを読んでください。
ほぼそのまんまです。(^_^;)

....ここで、デモから戻ってセッションの後半に再び合流しました。

■ペーパーセッション1B■

Wednesday September 14 09:00-12:00 Paper Sessions 1B : Brobjerg
Johannes Goebel,chair

[Musical Language]

Lambda Calculus and Music Calculi
Yann Orlarey, Dominique Fobber, Stephane Latz, Mark Bilton

ラムダ関数というのを定義して、数学的に音楽を生成する、という典型的な
アルゴリズミックコンポジションの紹介でした。

この特徴を一言で言えば、
	階層的
	オブジェクト指向的
	再帰的
な多くの関数を組み合せて記述に使おう、というもので、僕も関心のある
フラクタルの記述には本質的に向いています。そのものズバリではないの
ですが、この発表の最中にノートに2件も新ネタのアイデアを書きました。
ただし惜しかったのが、Macによるカラースライドでグラフィックを
例に説明した時は面白そうだったのに、具体例としてNoteレベルに
置換して表現するとドッと地味になってしまうところです。
せめて、実際の音響として一部でも聞きたかったところでした。

Abstract Time Warping of Compound Events and Signals
Roger B. Dannenberg

誰もが注目するダネンバーグの今年の発表は、やや気抜けしたものでした。
あらゆる音楽情報に対して作用させる「タイムワープ」という概念は
面白いと思うのですが、最後に聞いたデモがあまりにもチープだったので
がっかりしました。(^_^;)

考え方としては、システムに記述される「論理的時間」(簡単には楽譜の
イメージ)と「リアルタイム」(演奏における実際の時間)とのマッピング
関数、ということなのですが、
	Shift
	Strech
という2種類の関数を基本として規範的に構築する、というものでした。
人間のリアルタイムの演奏から逆関数としてまず時間抽出して、それを
さらに関数に代入してコントロールタイム関数の値を得る、というのは、
楽音合成のAnalysis-Resynthesisを思わせるものでした。
会場もフンフンとうなって聞いていたのですが、それだけにデモが残念
でした。

...ここでお昼となり、僕は一旦SASのオフィスに行ってストの状況を聞いたり
しましたが、まだストは終っていない、ということだけで、なんとも帰国に
不安を残したままとなりました。

■ペーパーセッション2A■

Wednesday September 14 13:00-15:20 Paper Sessions 2A : City Hall
Adrian Freed, chair

午後はICMCの一つの「華」である楽音合成のセッションだったのですが、
これがなんともお寒いセッションでした。今回のICMCで最初に体験
した、まぎもない今年のトレンドの第一は「楽音合成の不作(凶作とまでは
まだ言えませんが)」でした。

[Additive Synthesis]

A Multirate Optimisation for Real-time Additive Synthesis
Desmond Phillips, Allan Purvis, Simon Johnson

最初の発表は、楽音合成の永遠のトップスターである加算合成について、
規模とコストの点での欠点を補うためにマルチレート化して、オーバースペック
な部分を出さないように効率化しよう、というものでした。

確かに経済的にはわかるのですが、基本的に「いいものには代償を惜しまない」
というICMCの暗黙のポリシーからすると、別にそれほど新しいアイデア
もなく、単に経済性のために技巧を凝らしてみただけ、という「後ろ向き」
の姿勢に会場も冷やかでした。(^_^;;)

僕はディジタルフィルタのアルゴリズムなどはなかなか面白いと思った
のですが、リアルタイムのレスポンスが悪くて(5.8msec)、VLSI化には
あまり向いていなくて、それで7倍程度のパフォーマンス、というのは
やや許せないかな、と思います。

Neural Networks for Musical Tones Compression, Control and Synthesis
Roberto Bresin, Alessando Vedovetto

音色の特徴パラメータとしてfloatの値をとる入力ノードが3ノード、
隠れ層として10ノード、そして出力24ノードを何にアサインして
ニューラルネットを使ったか、と思ったら1倍音から24倍音までの強度
でした。(^_^;)
これには僕や大矢さんでなくても誰でもアキレルところで、会場には明らかに
しらけ鳥が飛んでいました。
ちなみに、僕は途中からノートへのメモを内職モードに切り替えました。(^_^;)

[Sound Synthesis]

Control of Frequency and Decay in Oscillating Filters using Multirate Techniques
Frode Holm

Karplus-StrongのStringモデルに関して、再帰的フィルタをリサンプリング
して周波数とディケイレートをコントロールした、というものなのですが、
これも会場は冷たかったです。なんせ、質問ゼロで何もなく終る、というのは
きわめて稀なことで、僕には「もーいいから終れ」という英語の独り言が
あちこちからテレパシーで感じられました。
なんといっても、デモのテープで比較して、明らかにこの手法の方が音が
悪いのですから...。

ただし、僕もサンノゼのICMCの時にスタンフォードのブックストアで
買ってきた、Mooreの教科書をReferしてアルゴリズムを拡張しているあたり、
まだまだこの教科書には未開の宝庫が眠っているのかなぁ、とちょっと反省
しました。
......実は、必要なところだけで、まだ全部は読んでいないのでした。(^_^;)

Circulant Feedback Delay Networks for Sound Synthesis and Processing
David Rochesso, Julius O. Smith

フィードバックループを複数個並べて、パラメータ行列をかましてディレイ
系列ごとに相互作用をもたせよう、というなかなか面白そうなアイデア
の楽音合成・信号処理手法です。
行列のとろをニューラルネットにするだけで、来年に応募できそうです。(^_^;)
僕はここから自分のアイデアに引き込んで、ここでも新ネタのメモを2つ
書いたのですが、デモは悲惨でした。
単なるリバーブで、違いがほとんどわからなかったのです。

こうして見ると、残念ながら今年のトレンドとして「楽音合成の低迷」という
傾向がハッキリしました。新しいアイデア、新しいアルゴリズムでさえ
あれば、デモの音質が悪くても皆んなは注目して、議論して、コメントもくれる
のですが。
単なるアレンジやGUIやコントロールものでは、会場は冷たいのも当然でしょう。

WSでもパソコンでも、DSPやソフトで自由に音響合成できる環境になってきた
というのに、ここにのせるべきソフト/アルゴリズムがない、というのは
寂しいことです。
逆に言えば、この状況はチャンスです。
荒木さんのように実験的に音響合成アルゴリズムを試せる環境にある人は、
ここで荒削りでもなにか、ひと山当てるというのはどうでしょうか。(^_^;)
おそらく、しばらくは楽器メーカからも何も出てきませんから、ここはアマチュア
がなにか新しいアルゴリズムを発明してPDS化してしまいましょう。

Real-time Synthesis on a Multi-processor Network
Takebumi Itagaki, Allan Purvis, Peter D. Manning

セッションの最後は、板垣さんが発表したイギリスのグループです。
イギリスの、というのはここでは必要条件でした。
なんせ、インモス社のトランスピュータを4*4で16個搭載したボードを
10枚使って、1400MIPSの力ワザで加算合成をする、という
鬼のような物量作戦なのでした。(^_^;;;;)

デモとして、88音ポリのオルガンを構成して、32KHZサンプリングで752個
のオシレータを使って倍音成分にダイナミックアサインしていました。
デモがコヒーレントなオルガン音だった(せめて、倍音が別個にエンベロープ
を持つピアノにして欲しかったです)ためだけというのでもないでしょうが、
会場はなんとなく静かだったようです。(^_^;;)

...ということで、従来のICMCでは一度もなかったことなのですが、
僕はやや重い足取りでコンサート会場に向かいました。

■コンサート2■

Wednesday September 14 15:30-17:30 Concert 2

このコンサートでは、当初予定されていた1件がキャンセルになり、代わりに
Interactive AutomataのWorkshopでスピーカをしたGeorge Lewis氏が自らの
作品を演奏したのですが、これでかなり「儲けた」コンサートとなりました。
こういうハプニングも、いいものです。(^_^)

Frank Pecquet (France) : Cello & Co.

フルート、ホルン、チェロとエレクトロニクス、という編成の作品で、タイトル
通りチェロのスキルをフューチャリングしたものでした。
システムとしてはおそらくISPWをリアルタイムに使って、ピッチシフトや
ストレッチ、エフェクト、リバーブなどをかけていました。
(もっともこれはICMC的な好意的な解釈によるもので、普通のエフェクタ
を使ってMAXでコントロールとても、ほぼ同様のことはできます。)
全体としていいバランスの模範的な現代音楽で、「生楽器のよさ」を
あらためて実感しました。

なお他の作品も全てそうですが、プログラムのライナーノーツを事前に読んで
しまうとテクニカルなレポートになってしまうことに懲りたので、今回は
演奏の前には(実は後でも(^_^;))、プログラムの能書を読んでいません。
つまり、僕の見立ては間違っているかもしれないのですが、今回は「そう
聴こえた」という予備知識ナシの印象を全体として書くことができたと
思います。

Heinrich Taube (Germany) : Gloriette for Cage

足踏みオルガンの音を素材として次第に厚くしていった、ポップなテープ
作品。ジョンケージのCAGEという音列をモチーフにアルゴリズム作曲
していますが、全体は次第に一気にもりあがるだたけの4分間。
変化するミニマルミュージック、そして瞬間芸(^_^;)の世界でした。

Magnus Eldenius (Sweden) : Norweigian Fragments

北欧の民俗楽器らしい、<弦の多いバイオリン>とテープの作品。といっても、
テープの部分の音素材にそのHardanger Fiddleという楽器の音を使っている
だけで、演奏者はエンエンとテープの音楽があった最後のあたりで、テープと
合わせて弾いただけでした。

これは日本の民俗音楽の素材を使っても同じように感じるですが、いわゆる
西洋音楽とは異なった枠組の音楽というのは、その素材をバラバラッと
ばらまくだけで「いい雰囲気」が出てくる、というポイントを再確認しました。

そしてこの曲では、全体としてツェッペリンのサウンドを彷彿とさせました。
根がプログレの人間にとっては、うれしい時間でした。(^_^;)

Ira Mowitz (USA) I Talk Dalej

かなり長いテープ作品。
隠れプログレが聞けばプログレだと叫ぶようなプログレ風の聴きやすい音楽
で(^_^;;;)、能書はどうあれポップな音楽でした。

効いた限りでは、MIDIシーケンサとシンセとエフェクタで多重録音すれば
できる音楽なのですが、ICMCとはもともと、そういうものなのだ、と
ここで改めて悟りました。
コンピュータと名がつくからといって、
	アルゴリズム
	オリジナルのプログラム
	オリジナルのシステム/ハード
などが必要である、などということはないのです。

現代音楽がかつて「電子音楽」「デープ音楽」としてやってきたことを、
ハードディスクレコーディングのコンピュータを単なる装置として使って実現
しても十分だし、MIDIのシーケンサとシンセと市販ソフトでも十分なのです。
いまだに主流としては現代音楽やフリージャズ(この両者はボーダーレス)
が多いようですが、別にポップスやロックを禁止しているわけでもないのです。
まあ、カモンのソフトとSC55でICMCの音楽セッションに応募して通る
としたら、それはそれでかなり画期的なものですが、アルゴリズム作曲の中には
この環境でできる作品も通っていますから、不可能ということではありません。

Stephan Dunkelman (Belguim) : Rituellipses

自然音とパンポットと「間」を駆使した、伝統的なICMCらしいテープ
作品でした。毎度毎度、こういう作品が必ずあります。(^_^;)
...このような感想記事では何も作品の内容が伝わらないのはわかりますが、
結局は音楽なんて文字で伝わるものではないですし、まぁそんなものです。(^_^;)

George Lewis (USA) : Voyager

この作品は、直前にキャンセルになった別の人の代打として急遽やることに
なったらしいのですが、これは実にラッキーな変更となりました。(^_^)
さすが、インタラクティブ・オートマタのワークショップでエンエンと能書を
語り倒すだけのことはありました。自分でトロンボーンを吹いて、システム
内マルチエージェントは相互にもソリストとも作用し合って、見事な
テンションのフリージャズを実現できていました。

まずトロンボーンを持ってルイス氏がステージに登場、いきなりパワーブック
をクリックして、ドラム・ベース・管・弦などのBGMが始まりました。
といっても、リズムとかビートの感じられない断片的な羅列で、もしかしたら
何かトラブルがあるのかな?と思わせるスタート。そしてルイスはトロンボーン
を吹こうと持ち上げるやいなや、「Oh...」と言ってステージのそでに
引っ込んでいってしまいましたが、シンセはそのまま鳴っています。
実はソフトウェア内の複数の演奏エージェントは、それぞれ独自に勝手に
他のパートやソリストの様子をうかがいながらも自分で好きなことをする、
というものなので、勝手に走らせておけばそれでちゃんとフリージャズに
なっているのでした。
そでから出てきたルイスのトロンボーンには、ちゃんとワイヤレスがついて
いました。これを付けにいっていたので、別にこれはパフォーマンスでは
なかったのです。(^_^;)

自分がジャズプレイヤーでもありソフトも書いてしまうルイスの作った
演奏エージェントですから、ルイスがジャズのインプロビゼーションとして
期待する「性格」はことごとく入っています。たとえば、
	他の人を聴く
	他の人に合わせる
	他の人とわざと合わせない(イケズー...)
	勝手に仕掛ける
	ドンととこられたら一瞬おとなしくなる
	ドンとこられたらガンと返す
	他からのモチーフをエコーする
	他からのモチーフを変形して返す
	ちょっと遅れて返答する
	同じ音程で合流する
	ハーモナイズして返す
	同じフレーズを倍速のリズムで刻む
	音量の盛り上がりに追従して大きくする
	あまり回りが大きくなってきたら休んでしまう
	他のパートと「次はどちらが出るか」にらみ合う
	しばらく様子を見る
	誘いに乗って盛り上げる
	敢えて誘いに乗らない(^_^;)
	しばらくテンションが高かったので疲れた
	そろそろ終りにしたくて音を減らして様子を見る
などといった、ミュージシャンなら当り前の多重人格を持たせているみたいです。
(上に書いたのは僕の勝手な解釈の例で、これはワークショップでのルイスの話
を含めたものです。実際にはどうかは知りません。)
このような連中と、ルイスも完全にフリーにやりあって、全体としてテンション
の高いアドリブが実現された、というものでした。当然ながら、エンディング
は全体の収まったあたりでルイスがMacをクリックすると、なんとなくそれっぽく
終りました。(^_^;;;)

......「スゴイ」の一言。これがタダとは儲けました。(^_^)

Adolfo Nunez (Spain) : Jurel

フラメンコの音素材を駆使した、コンピュータミュージックでやるとこうなる、
という現代のフラメンコでした。僕は個人的には好きでした。
ただし、さすがにスペイン人でないとここまでは作れないかもしれません。
やはりコンピュータミュージックでは「音素材」として自然音を使うと
いいなぁ、とまたまた感心しました。これからはHDレコーディング、さらには
HDレス(全部RAM)になって、ますます使われることでしょう。
コンピュータは便利なサンプラーになってきたというわけです。

Denis Smalley (UK) : Piano Nets

ピアノがテープを聞いて合わす、非インタラクティブ作品。
今年もまたまた登場の某ピアニストおじさんに助けられて、名演となりました。
まったくソリスト次第だなぁ、とまたまた思い知りました。

■レセプション■

Wednesday September 14 18:00-19:30 Recception

ICMCでは、レセプションというのは開催主体が参加者に無料でサービス
する簡単なパーティで、バンケットというのは有料の懇親会ということに
なっています。中身はいずれも単なる飲み食い会です。(^_^;)
デンマークの通貨はDkk(デンマーククローネ)というのですが、日本円で
15円くらいで計算していました。そして最初は参加するつもりのなかった
バンケットも、270Dkkと結構安かったので、今年は参加することにしました。

レセプションの場となったホールのホワイエで、僕はグラニュラーシンセシスの
権威のBarry Traux教授とようやく話をすることができました。
なんせあまり英語がうまくないので、100%内容をつかめたわけではないの
ですが、システムの話(CMJを読みなさいと言われました(^_^;;))、作曲の手法
などの有意義な情報を仕入れました。これはマル秘ですね。(^_^)
こちらからも、いずれグラニュラーシンセシスの聴取心理実験をしてみます、
と伝えたのですが、どうもあまり興味はなかったようです。人がどう聞こう
と、自分が気に入っている音ならそれでいい、ということかもしれません。(^_^;)

そういえば、今年もモントリオール以来のお友達になったIchiro Fujinagaさん
と再会しましたが、イチローさん(彼は日系で、日本語もできるので嬉しい
ことです。それにしても今イチローといえば日本ではポピュラーですね)も
グラニュラーシンセシスをやっていました。
彼の今年の発表はグラニュラーシンセシスのパラメータ処理に遺伝アルゴリズム
を使った、というもので、「ナガシマさんの論文もReferしてありますよ」との
ことでした。確かに論文集のReferencesのとこころには、僕がサンノゼのICMC
で発表した論文名が載っていました。他人の研究に自分の論文がReferされて
初めて一人前だ、という話を聞いたことがありましたが、確かに、とっても
ウレシイ気持ちになりました。(^_^)

.....そして食べ物がなくなってきたので、早々にホテルに戻って記録の整理を
していました。

■基調講演■

Wednesday September 14 19:45-20:15 Keynote Address
[Touching a Public]
Trevor Wishart

ホテルでワープロしていたところ、ふと気がつくとすでに時間になっていました。
原稿書きをしていると時間のたつのが早いです。
そこであっさり、基調好演はプロシーディングスにあったので、今回はパス
しました。中身の知りたい方は、ICMAに問い合わせて入手して下さい。
(^_^;;)

■コンサート3■

Wednesday September 14 20:30-22:30 Concert 3 : Performnce & Multi Media

それまでの2回のコンサートは小ホールでしたが、初めて大ホールでの
コンサートがやってきました。なんといっても我らが志村さんの作品の本番
ということで、井口先生と一緒に緊張していました。僕は片寄さん金森さん
たちとは敢えて別行動の「お客さん」していましたが、ステージ上の志村さんの
足元のMIDIディスプレイ(いまどのあたりまで進行しているかを簡単にモニタ
できるLEDのディスプレイ)も、コンピュータ付近にある2台のMIDIマージャも、
僕の作ったものが日本からここに来て働いているのですから、まったく人ごと
というわけでもないのです。

このコンサートはマルチメディアと題するだけあって、ステージ後方の
タテヨコ10メートルぐらいの巨大スクリーンに映像を投射したり、マイム
やダンスという要素もあるバラエティに富んだものになりました。

Claude Cadoz, Annie Luciani, Jean Loup Florens (France) : Esquiness

最初の作品は、大勢のスタッフによって実現されたという能書の割には、
ごく普通の「CGと音」というビデオの再生でした。(^_^;)
泡がポコポコ流れていったり、水滴の波紋がひろがったり、というのは
最近ではスクリーンセーバにも多いものですが、そこに合わせて電子音響
がついている、というものです。

...イマイチでした。(;_;)

Rolf Wallin (Norway) : Yo

作曲者自身がセンサを張り付けたスーツを着て登場しました。
ステージ上のモニタを見ながら、両手のグローブ(指先が金属スイッチ
になっている)を、全身に張り付けた導電ゴムにタッチするとサンプラー
から音が出る、というものです。
なんとなく仕掛けがわかると、そこでパフォーマーとしての限界が
見えてしまいました。(^_^;)
左肩のセンサが不調で何度も触れても反応がなかったり、首の後ろを
タッチすると次のシーンに行くところなど、見えるべきでないところが
ミエミエで見えてしまいました。
センサをいろいろ使う僕としても、教訓が収穫になりました。(^_^;;)

Satosi Simura (Japan) :	Tikukan no Utyu II

そしてついに志村作品。(^o^)/

出だしのビデオ映像がなかなか出なくてハラハラしましたが、始まってしまえば
会場を圧倒しました。
よく知っている身内としてはあれは100%ではなく95%、というところはある
のですが(一度センサの反応が鈍くてキメがキマらなかったのです(^_^;))、
無事によくできました。

.....これでようやく、井口グループは安心して眠れます。(^_^)

Michael Matthews (Canada) : In Emptiness, Over mptiness

冒頭のテープの電子音響で、志村さんの尺八の潤いのある自然音響の世界から
ICMCに一気に引き戻されました。(^_^;)

ピエロのような白塗りの顔、黒と真っ赤の印象的なコスチュームのソプラノが
マイムをしながら歌って、そこにリアルタイムのエフェクトがかかる、という
ものでした。
なかなかよかったのですが、あまりに視覚的なインパクトが強烈で、さらに
歌詞のわかる人にはそちらからの情報も過剰にあって、相対的に音楽を
あまり聴けずに終ってしまいました。マルチメディアアートの課題を感じた
作品でした。

Michel Waisvisz (Holland) : Faustos Fchrei

最後は「Hands」というセンサを作曲者自身が使って(これは他に使う人は
いない(^_^;))、さらに肩の上に女性ダンサーを載せて幕が開きました。
最後には少年も登場して、ステージ上のスタッフがリアルタイムに手作業で
サンプラーに取り込んだ声までこのセンサで発音させていたのですが、どうにも
基本的に大音量すぎて、会場のあちこちで耳をふさいでいました。(^_^;)

いかにもヨーロッパ的な、生理的に苦痛のある音量も作品のうちなのでしょう
が、このコテコテには参りました。
時間は長かったものの、そして現地の特別推薦でプログラムに入っていた
作品ではあるものの、......イマイチでした。(^_^;)

.....3日目となったICMCですが、この日は朝からかなりの雨降りになりました。
どうもこの季節のデンマークというのは、雨期というか日本の梅雨のような
気候だそうで、初日は小雨のパラつく曇り空、2日目は一転して暖かい
晴れ間、そしてこの日は雨、と天気もその日にならないとわからなないと
いったものでした。(^_^;)
実際にホテルを一歩歩きだしてみると、まるで台風のような雨と風で、
これでは遠くのホテルの人はタイヘンだなぁ、と同情しました。

■ペーパーセッション3B■

Thursday September 15 09:00-12:00 Paper Sessions 3B : Brobjerg

この日の午前は、シティホールでは大矢さんが座長をしているのですが、
低迷といっても低迷なりに楽音合成の状況を見届けようと、3Bの方に
行きました。

Julius O. Smith, chair
[Physical Models - Control Level]

Stability/Instability of Periodic Solutions and Chaos in Physical Model of 
Musical Instruments
Xavier Rodet

ディレイのフィードバックループに非線型要素をかます、という「非線型変換の
プロ」Rodet氏が物理モデルを扱った発表でした。
Indigoでリアルタイムにトランペットの楽音合成をデモすると、なるほど
唇の状態で倍音が次々とシフトしていきました。
ところが、このローパスフィードバックの解が一意に決まらない領域があり、
ここでは振舞いがカオスになる、というところが新しく、有名なメイの式と
グラフも登場しました。
カオスの領域では見事にノイズの音がでて、こういうインタプリタ感覚で
使えるIndigoはやっぱりいいな、と感心しました。

Dynamically Configurable Feedback/Delay Networks: A Virtual Instrument 
Composition Model
Micheal Hamman

楽音合成の世界ではユニットジェネレータを多数使用して楽音合成をするのが
古典的な方法だ、と今月の情報処理学会誌にも書いたところなのですが、
ここでは
	入力段の加算器
	遅延要素
	フィードバックアンプ
という1セットのブロックを、いわば新しいUGとして自由に組み合せて
楽音合成する、というコンフィギュレーションについての発表でした。

僕は面白いと思って聞いていたのですが、どうやらあまりに当り前のこと
らしく、ここでも会場の反応は思わしくありませんでした。
自分としては、ちょっと実験してみたいネタをメモできたのですが。(^_^;)

Organizing the parameter space of physical medels with sound feeature maps
Bermard Feiten, Gerhard Behles

物理モデル楽音合成のパラメータを、対称性を用いてマッピングしてコントロール
しようという、ちょっとアリガチなものでした。
楽音から「feature map」をとって、そこからさらに「parameter map」を作る、
という意味がよくわからなかったのですが、SGIで作ったデモ音響を聞いて、
ようやくその狙いがわかりました。
画面の2次元空間内をマウスでぐりぐりと動かすと、物理モデルの楽音合成
のパラメータが連続して変化し、見事にレゾネーションから発振まで
いきました。(^_^)

先日の京都のコンサートで、僕はマウスで描かれる「絵」から発音するのに
MIDIベースの音高とカットオフ周波数を使ったのですが、これが物理モデル
楽音合成の次元でできる、というのは、なかなか可能性があると思います。

Intelligent Synthesis Control with Applications to a Physical Model of 
Acoustic Guitar
Zoltan Janosy, Matti Karjalainen, Vesa Valimaki

物理モデルのPlucked String Modelによるギター音の合成に特化させて、
ギター特有の演奏法と対応したコントロール体系を作った、というブタペスト
の人の発表でしたが、これもやや空を切っていました。(^_^;)

一応、ちゃんとTIのDSPでやっているということで、最後のデモを
聞いて、会場も納得していました。なかなかリアルな音がするのですが、
残念ながらノイズがありません。最近のMIDI音源のように、ミエミエで
ノイズを足した方がそれっぽくなるのですが、
「フレットノイズは別PCMチャンネルで同時に再生できる」
と、そっけない回答でした。(^_^;)

Kevin Elliott, chair
[Composition Systems and Techniques]

Formal Processes of Timbre Composition Challenging the Dualistic Paradigm 
of Computer Music
Agostino Di Scipio

アルゴリズミックコンポジション、音色のデザイン、マイクロコンポジション
となかなかソソラレル用語の並んだロングペーパーで期待していたのですが、
会場は極限までシラケまくりました。(^_^;;;;;;;;)
OHPもナシ、イタリアの人で英語が苦手らしく、30分間、単にプロシーディング
を棒読みしまくり、というだけの発表で、内容もよくわかりませんでした。
自分もああいう発表をしているのかな、と思わず過去を振り返ってしまいました。
(^_^;)

Algorithms Adapted from Chaos Theory: Compositional Considerations
James Harley

ICMC91の会場だった、モントリオールのマッギル大学の発表で、
「カオス理論を作曲に適用するアルゴリズム」という、どこかで聞いた
ような(^_^;)もので期待したのですが、イマイチでした。

発表の中で用いられたのは僕と同じメイの式なのですが、Myuの値が4.0という
ことは、完全なカオス状態で、いわば一種のランダムというだけで、僕は
面白くないので使っていない領域です。(^_^;)
そこからの扱い方もアリガチなもので、果たしてどんな音楽になっているのかな、
と不思議でした。

ところがデモを聴くと、これは反則スレスレ、生のオケでした。(^_^;;)
つまり、カオスを利用して伝統的なクラシックの現代音楽を書いているので、
僕もいつも言われる「どこがカオスかわからない」という問題点がさらに
鮮明になるのです。
質疑応答でも、この音楽美学的なところがつっこまれるとともに、Ioannis
さんも「カオス利用に関する音楽心理学的な検討が必要ではないのか」と、
僕にも耳が痛いつっこみをしていました。(^_^;)

The Morpho Concepts - Trends in Software for Acousmatic Music Composition
Daniel Teruggi

どうしてもポスターを見たかったので、この発表はパス。
外は一応、雨の合間でしたが、まだまだ寒々としていました。
日本でいえば12月です。(^_^;)

■ポスター/デモンストレーションセッション■

Thursday September 15 10:00-12:50 Poster & Demonstration 2

Dynamic Intonation for Keyboard Instruments
Roger Munck-Fairwood

Live Performance and Virtuosic Pitch-bend Technique for the Synthesizer
Stuart Favilla

The LDR Controller
Stuart Favilla

The MIDI Time Clip: A Performance/Machine Synchronization System for
 Live Performance
Bruce Pennycook, Dale Stammen

Using HyperInstruments for the Redistribution of the Performance 
Control Interface
Tim Andersen, Debbie Hearn

The Digital Trautonium
Jorg Spix

Using the Digital Compovistation to Arrange a Performance for Piano, 
Computer, and Synthesizer
Hilmar Thordarson

....ちなみに、Interactive Systemsというサブタイトルのこのポスター
ですが、結論としてはあまり面白いものはありませんでした。(^_^;;)

最後に立見のIRCAMデモをちらっと覗いたのですが、金森さんと志村さん
がいたので、MAXのSGIへの話はあとで聞くことにしました。

■コンサート4■

Thursday September 15 13:00-15:00 Concert 4

外はどしゃぶりの雨ですが、コンサートもだいぶ調子が出てきて、今回は
いろいろ面白い収穫がありました。

Keith Hamel (Canada) : Obsessed Again ...

バスーンとインタラクティブ・エレクトロニクス、ということで、バスーン
からピッチtoMIDIあたりでMAXの処理、という仕掛けは始まる前から見えて
いたのですが、なんと演奏の途中でソフトがソリストを見失ったらしく、
独奏者は演奏を止めてMacを再クリックする、という展開になってしまいました。
(^_^;;;;;;;;;)

......「MIDIのライブは恐い」とまたまた体感してしまいました。
ただし作曲の方法から言えば、どう転んでも止まらないように作るべきで、
そのへんの危機管理というかフェイルセーフが甘い、ということも言えます。

Luigi Ceccarelli (Italy) : Birds

テープ音楽にしては、ちょっと長かったです。
ICMCの作品の場合には、「長い」ことに意味を持たせたものもあるので、
まぁこんなものかなぁ、というところでした。

Cort Lippe (USA) : Music for Clarinet & ISPW

クラリネットとISPWのための作品で、僕は去年のICMC93のポスト
イベントである神戸国際現代音楽祭で、リッペさんと御一緒(IAKTA
ワークショップでやった作品を再演)したのですが、そこでリッペさんが
発表したこの作品を再び聴きました。その時よりもだいぶ改訂されて、完成度が
上がっていたように思います。

まさに「ここまでやれるのはISPW」という強烈なアピールとなりました。
僕は以前にもISPWは単なる高価なエフェクタである、と書いたことが
ありましたが、ここまでくればISPWでないとできない、という世界でした。
ただし、これだけ使えるのは世界中でもリッペさんぐらいだと思います。(^_^;)
音の素材として事前に用意するものは不要であり、DSP-MAXのパッチとして
リアルタイムにサンプリングした音響を素材として、パッチに書いた
信号処理を施す、という最新の手法による理想的なサンプル作品となりました。

Peter Lunden (Sweden) : Noises

スウェーデンの人の電子音響テープ作品で、なんとなくタイトルから警戒
していたことが現実になりました。(^_^;)
モントリオールでは一部であったのですが、サンノゼと東京と、過去の最近の
ICMCの音響は「ソフト&マイルド」である、と僕は書きました。
それが今回は電子音楽のメッカのヨーロッパということで、きっと人間の
聴覚に挑戦するような厳しい音響の作品が来るゾ、と心配しつつも内心は
期待していました。
...そして、ついに、ありました。(^_^;)

出だしは普通のプログレてなもんでしたが、後半は来た来た、強烈な音響
が聴衆を圧倒しました。これぞヨーロッパの電子音楽。多くの聴衆が
耳をおさえて、ひたすらこの「嵐」がおさまるまでじっと耐える、という
音楽です。(^_^;)
やっぱり、欧州は奥が深かったです。

Robert Morales-Manzanares (Mexico) : Cempaxuchitl

メキシコの篠笛と太鼓、そしてフルートの演奏を作曲家自身が行った、
民族音楽の香り漂う作品でした。
いわゆる電子音響は極力少なくて、自分の演奏をあらかじめサンプリング
した素材をフルに使っていて、ほとんどコンピュータ音楽と感じさせない
ものでした。
それにしても、僕は一瞬、ステージに坪井さんがいるのかと思ってしまい
ました。(^_^;)

Junghae Lee (Switzerland) : YunMu 3

テープ作品。かなり音素材と時間的配置にこだわった、同じ東洋人として共感
できる作品てした。こういう若い女性作曲家が、もっと日本でも活躍して欲しい
ものです。(^_^;)

Atau Tanaka (USA) : OverBow

コンサートの最後は、タナカアタウ氏のBioMuseのソロでした。世界で初めて
のBioMuse演奏家、と紹介されていましたがそれもその筈、これは誰にでも
できるものではなく、個人向けのチューニングが必須のものです。(^_^;)

BioMuseについては、東京のICMCでアタウ氏が自分で筋電位センサの
バンドを腕に巻いてデモしながら発表していましたが、なるほど作品
としてはこうなるのか、と感心しました。

開始前のセッティングでいきなりMacをリブート(^_^;;)したので心配した
のですが、始まってしまえばどう転んでも自分の作品、問題なく通るのでした。
(^_^;)

音源として専用のFMや非線型変換音源を用意して、センサに合った音響
をうまく活用していました。
なんせ両腕の筋肉の緊張が全ての「演奏」ですから、見ているとこちらも思わず
力が入りました。演奏はそのままマイムのようなものです。
ここまでのコンサートで一番のブラボーで終ったあたり、まさに今回の
ICMCのテーマであるHumanな作品だったと思います。

■特別講演■

Thursday September 15 15:30-16:10 Special Talk
[Is There Life After MIDI ?]
Miller Puckette

あのMAXの作者ですから、話を聞きたかった気もしたのですが、なんせSASの
ストのこともわからず帰途に不安があるので、この時間を利用して街に出ました。
ということで、この講演も聞いていません。詳しくはプロシーディングスを
どうぞ。

メモをとっていたシステム手帳が、ここまでですでに20ページになってしまって
リフィルがなくなってきたので、まずは文房具屋さんを探すことから始めた
のですが、なんせ英語がどこにもない国です。いちいちショーウインドウを
覗きこんでいきました。結局、2件目の本屋で無事に見つかりました。(^_^)

英語がない、という意味では最初に困ったのがトイレです。どっちが「男」
かわからなくて、いちかばちかで入ったHarrer?(ウロおぼえです。
Hで始まるのが男子用、たしかDで始まるのが女子用)が男子用だったので
そこで覚えたようなものです。(^_^;)

まずはAARHUSの市内中心部(ホテルの目の前です)にある、大きな駅に
行きました。ストで飛行機が飛ばないなら、AARHUSの港からフェリー
で対岸に渡り、そこから列車でコペンハーゲンに行かなければなりません。
ところが、駅構内のInformationに置いてある時刻表はデンマーク語で
書いてあって、まったく完璧に読めません。(^_^;)
値段もわからず、とりあえず駅の隣のトラベルビューローに駆け込みました。
そこでコペンハーゲンまでの行きかた、料金がおよそ200Dkkであること、
約3時間で行けること、という情報を仕入れて、ちょっと安心しました。

そして昨日に続いて再びSASのオフィスに。なんとこのオフィスは、僕の
泊まっているホテルの1階にある(ドアは外にある)のです。
そこで確認してみると、なんと本日、ストが終了したとのこと。今日の便は
混乱しているが、日曜日は正常に運行されるということでした。(^_^)

しかし、コペンハーゲンでのSASのいろいろなところを見ていたので(^_^;)、
とても成田へのフライトにダイレクトに接続している国内線ではアブナイ
とみて、チケットを変更して10:20の便にしました。これなら荷物が1時間程度、
迷子にされても大丈夫です。(^_^;)
大矢さんたちは朝7:00のフライトで、午前中だけやっている土産もの屋に
行くとか言っていますが、前夜のコンサートが0時に終るのに、6時のバスと
いうのはあまりにリスクが大きいので、こちらにしました。

帰路の確保ができたこと、SASのストが解決したことを皆んなに伝えられる
ことなどを収穫に、再びセッション会場に向かいました。(^_^)

■ペーパーセッション4A■

Thursday September 15 16:20-17:40 Paper Sessions 4A : City Hall

[Foot Tapping]

このペーパーセッションは、ビートトラッキングやビートインダクション
の研究に興味のある者がE-mailで連絡を取り合って、一緒に行ったという
ユニークなものでした。
正面の壇上には、われらが後藤さんもビシッときめて座っています。(^_^)

Foot-tapping: a brief introduction to beat induction
Peter Desain, Henkjan Honing

Rulebased models of initial beat induction and an analysis of their behaviour
Peter Desain, Henkjan Honing

A Model of Beat Induction Accounting for Perceptual Ambiguity by 
Continuously Variable Parameters
Richard Parncutt

Rhythm Tracking Using Multiple Hypotheses
David Rosenthal, Masataka Goto, Yoichi Muraoka

An Auditory Motor Model of Beat Induction
Neil P. McAngus Todd, Chris Lee

The Resonant Dynamics of Beat Tracking and Meter Perception
Edward W. Large

Advanced issues in beat induction modeling: syncopation, tempo and timing
Peter Desain, Henkjan Honing

ステージ上のデザインとホーニングのところには、Macのパワーブックが
あって、それぞれの研究成果をシーケンサでデモするようになっています。
....これが傑作で、システムに食わせる入力リズムはMIDI音源のタッピング
として鳴らされるのですが、システムの解釈したビートをデモるのが、特製
のタッピングマシンなのです。これはMacにつながった「箱」で、ビート
のたびにソレノイドで棒を突き上げるのですが、ここにハイヒールとか長靴
とかスリッパをわざわざ発表者ごとにネジをゆるめて付け替えていました。
クリックに合わせて靴がタッピングし、これが木でできた「箱」を心地よく
鳴らしていました。なかなか、やることがイキです。(^_^)

僕の手帳には、それぞれの短時間の発表の簡単なメモが残っているのですが、
なんせこのセッションは後藤さんがいましたので、詳しくはいずれの機会に
後藤さんにサーベイしてレポートしていただきましょう。(^_^;)
.....以下、チャチャ入れ程度の「感想」だけ。

後藤さんは英語スラスラ、鬼のように練習したであろう成果をバッチリと
きめていました。なかなか、かっこよかったです。(^_^)

単にビートのインダクションといっても、
	ルールベース
	オプティマイズ(最適化)
	サーチ(探索)
	コントロール
	ディストリビュート
	ミンスキー方式(エージェント?)
	ニューラルネット
	統計的
	musicological
	....
など、いろんなアプローチがある、という指摘に感心しました。

壇上に並んだ研究者の顔ぶれを見ていて、フト気がつきました。ICMCに
見る、「研究分野とその研究者のタイプ」の分類です。(^_^;)
これは過去何回も参加していないとなかなか確信できません。
 ・ビート検出を研究している人
	→スッキリとあかぬけた繊細タイプ。目が涼しげにスルドイ。
 ・楽音合成・信号処理の人
	→偏執狂的な異常性。オタク的な雰囲気がオーラのごとく漂う。
 ・インタラクティブをやる人
	→もろB型のファンキーな人が多い。トラブルなんて気にしないさ!!
 ・音楽認知をやる人
	→学者肌。(○矢説)
 ・IRCAMの人
	→みんなホモである(○矢説)
ちなみに○矢さんによれば、後藤さんはあの風貌なので、IRCAMに行ったら
アブナイのではないか、ということてした。(^_^;)
(さらにあとで聞いたところでは、このIRCAMホモ説は片寄さんから聞いた
のだそうです。念のため)

■コンサート5■

Thursday September 15 20:30-22:30 Concert 5 : Royal Danish Ballet

後藤さんの発表、大矢さんの座長も無事に終ったということで、コンサート
前に3人でビール付きの夕食をとったこともあって、このコンサートは
すごく眠かったです。もっとも前日のコンサートの前の方が、レセプションで
はるかに飲んでいたのにちゃんと聞けましたから、これは今回の曲にも
問題があるのだと自分に言い訳していました。(^_^;)

このコンサートは、6作品のうち4作品にデンマーク王立バレエ団?の
バレエがつきました。
通常のICMCと違って、コンサートセッションの募集の段階からバレエの
音楽に対応できることを宣伝していたわけで、いかにもそれっぽい作品が
集まりました。

ところがバレエいう視覚的なパフォーマンスのためか、あとになってみると
ほとんど、作品ごとの印象の差がありません。ホールからの帰途に井口先生
と一緒だったのですが、「皆んな同じようにしか思い出せない」というような
ことを言われていました。まさにその通りです。
ロックやディスコのようにまったくコンスタントビートということでは
ありませんが、やはり舞踏を意識して冗長性の高い音楽であったのも
共通しています。

...ということで、以下の曲については、とりあえず順序が変更になった
ので並べましたが、コメントは特にありません。(^_^;;;;)

Russell Pinkston (USA) : Music for Margo's World
テープとバレエの作品。

Ake Pamerud (Sweden) : Jeux Imaginaries
テープのみの作品。

Kwok-ping John Chen (Hong Kong) : Huang Zhong Elements
テープとバレエの作品。

Marc Ainger (USA) : Lament
テープとバレエの作品。

Trever Wishart (UK) : Tingues of Fire
テープのみの作品。長い長い25分。(^_^;;)

Richard Karpen (USA) : Terra Infirma
テープとバレエの作品。

ちなみに、これは話すと(書くと)長くなるので笑えないかもしれませんが、
連日はやったギャグを紹介します。

まず伏線として、初日のコンサートから始まります。
コンサート冒頭に、ちょっと気の弱そうな(なんせICMCの参加者は、圧倒
させるような風貌のコテコテか多いですから)コンサート担当のスタッフの人が、
「プログラム変更」をアナウンスしました。ところがうまく英語の発音が
通じなくて、ちょっとザワザワ(といっても単にひやかしただけです)しました。

そして2回目のコンサート。
コンサート冒頭にまたまた同じ彼がステージに上がり、またまたプログラム変更
のアナウンス。
ところが日本人なら機械的にやるのでしょうが、
「Bad NewsとGood Newsがあります」
と切り出しました。なかなかウマイです。皆んな注目しました。(^_^)
「Bad Newsというのは、予定していたTedde氏の作品がキャンセルになりました」
ということで、会場がザワザワ...。
「Good Newsとして、代わりにジョージルイス氏がやります」
ということで、一転してブラボー!!
...なかなかうまいこと、直前のドタバタをカバーしていました。

そして3回目のコンサート。
別にプログラム変更のプリントも配られていないのに、またまた彼がステージ
に立ちました。
「Bad NewsとGood Newsがあります」
こうなると、いやがうえにも皆んな注目しました。(^_^;)
「Good Newsとして、今回はプログラムの変更がありません」
これはウケました。(^_^)
...そして、
「Bad Newsというのは、.....今日は雨です。ごめんなさい」
これはサイコーです。大ウケでした。
これぞICMCのノリです。

さらに4回目のコンサート。またまたありました。
「Bad NewsとGood Newsがあります」
また来たか、と皆んな待ちます。(^_^;)
「Bad Newsというのは、会場での写真撮影などはお断わりします」
ちょうど前回のコンサートでストロボが何度もたかれていたので、一同、納得。
このコンサートで最前列で写真をとったプレスの人には、周囲からブーイング
が出ました。(^_^;)
そして...
「Good Newsとしては、..........」
なんとなく勢いで切り出したものの、アドリブでは何も思いつかず、そのまま
笑って退場。(^_^;)
....これもまた、ウケました。

そして、この5回目のコンサートです。
後半のテープ作品の冒頭で、作曲者自身がステージに上がって、この曲の聞き方を
解説しました。最初の音響をいろいろに変形していくとこころを聴け、とか
そういうことです。

そして、
「Bad NewsとGood Newsがあります」
ときました。ついにギャグとして走り出したのです。(^_^)
「Bad Newsというのは、このテープ作品は25分間もあります」
会場にOh My God的なドヨメキが走ります。
「皆さんは時計を見ながら、あと何分と思って聴かなければなりません」
作曲者からこう言われると、返す言葉もありません。(^_^;)
「しかし、Good Newsがあります」
誰でも、こうなると、なんだ??と思います。
「どこまでいったかわかるように、曲の1/3のところで時計の音がなります」
...大ウケ。
「そして、さらに曲の2/3のところで、また合図の音が入ります。これを参考
にして耐えてください」(最後のところは僕の意訳です)
....なかなか笑えました。

このフレーズは、ICMC94のギャグとしてこれからあちこちで使える
と思いますので紹介しました。

また、結局、この日は終日雨だったので、以下の野外コンサートは翌日に、
ということになりました。明日も雨ならキャンセルです。ぜひ晴れてほしい、と
誰もが思いました。

■コンサート6■

Thursday September 15 23:00-23:45 Concert 6 : Fireworks

Francis Dhomont (Canada) : Artifices

Ake Parmerud and Anders Blomquist (Sweden) : Trio

Ake Parmerud and Anders Blomquist (Sweden) : Target

.....いよいよICMCも後半戦に入りました。連日、コンサートが23:00ぐらいに
終ってホテルに戻り、忘れないうちに(ペーパーはあとから論文を読んでも
思い出すことができますが、コンサートはあとになったらもうダメです)
ワープロに記事を打ち込んで、フロにつかって暖まって眠るのが25:00あたり、
というパターンを繰り返していますが、まだ日本の体内時計があるために、
午前6時より前には目が覚めてしまいます。(^_^;)
ちなみに同じホテルに泊まった大矢さんや後藤さんの部屋はシャワーだけだ
そうですが、僕の部屋にはゆったり全身が浸せるバスタブがあって、
夜にも朝にもフロを楽しめました。これで同じ料金ということで、やはり
速攻で予約したのは正解だったみたいです。(^_^)

...この朝は例によって6:00に目が覚めたのですが、ベッドの中でムラムラと
いろんなアイデアが湧いてきました。さっそく忘れないうちにとノートを
ベッドに持ち込んで、一気に1ページ半、びっしりと書きました。(^_^)
これは今までのセッション中のメモよりもはるかに大ネタ、なかなか
自分でも驚いたテーマです。

正確に言えば、これは全く突然に浮かんだというものではなく、それまで
何度もトライしていた「漠然としたもの」が一気にスッキリとまとまった、
ということなのですが、AARHUSだからこそ浮かんだと思いました。
ICMCのいいところは、日本というか自分の日常にいては絶対に
出てこないアイデアや視点が、朝から晩までコンピュータミュージック漬け
になることでハッキリとしてくる、というところなのです。
今回はちょうどICMCのまんなかで最初のコレがあったということで、
ますます後半が楽しみになりました。(^_^)

■ペーパーセッション5B■

Friday September 16 09:00-12:00 Paper Sessions 5B : Brobjerg
Xavier Serra, chair

前に「今回のICMCでは楽音合成が寂しい」と書きましたが、この中で
唯一、元気だったのが「物理モデル」の一派だったように思います。
このセッション、そして続いてスキップして覗いたポスターの賑わいは
なかなか印象的なものでした。

[Modeling Instruments]

A Simplified Approach to Modeling Strings and Plates
Scott A. Van Duyne, Julius O. Smith

まずはいきなり、同じメンバーで2件連続の発表。一人で両方をエンエンと
やりました。(^_^;)
ストリングとプレートのスティフネスを考慮した微分方程式をまじめに
とらえて、1ポールのオールパスフィルタを使って近似的に実現していました。
デモの音響を聞くと、確かに弦の振動がそれっぽく、インハーモニシティが
うまく実現できていました。サンノゼの頃に比べると、なかなかいいセンに
行っていると思います。これがヤマハの物理モデルシンセとして実現される
のは果たして何年後でしょうか。(^_^;)
(藤森さん、頑張って下さい。応援しています)

Traveling Wave Implementation of a Lossless Mode-coupling Filter and 
the Wave Digital Hammer
Scott A. Van Duyne, John R. Pierce, Julius O. Smith

同じ人の連続発表。ストリングの振動だけでなく、ピアノのイメージでハンマー
の打撃まで物理モデルとしてアタックするというのは、なかなかいい根性です。
Wave Digital Hammerモデルを2次元メッシュとしていました。たしか去年の
ICMCであった発表の、より具体的な進展というところです。

ここで印象的だったのは、弦をハンマーが叩く瞬間のシミュレーション
のグラフィクスで、ハンマーで叩かれて変形した弦が、バウンドしてきて
ハンマーを跳ね返し、さらにもう一度、しばらくしてからハンマーに触れる
まで振動する、という様子でした。
現実のピアノでは、ハンマーフェルトにあのような微妙な2度タッチがあって
音色が形成されているとすると、これはイニシャルタッチなどでは、とうてい
制御できない微妙な音色変化となると思います。
(さらに言えばジャックの抜けのところも重要だと思うのです)

また、このモデルについての音のデモでは、
	弦 → 強く弾くとうまく歪んだ
	プレート → コンコンがうまくキンキンに変わった
	叩いたハンマーが再度バウンドするモデル → なかなかそれっぽい
	非線型変換の応用 → 自然楽器でない、新しい音の可能性がある
という感想を持ちました。
特に最後の可能性については、ちょっと今後もしばらくチェックしたいと
思います。(^_^)

On the Use of Schrodinger's Equation in the Analytic Determination of 
Horn Reflectance
David Berners

トランペットの物理モデルから、ホルンの朝顔のテーパの効果を記述するために
なんとシュレジンガー方程式を持ち出した、という、大矢さんとともにウケた
発想の発表でした。...ちゃんと境界条件を与えてやっています。

ただしデモの音を聞いた限りでは、
「プワー」
という管楽器の音の後半の
「ンワー」
の部分はいい味を出しているのですが、肝心の
「プ」
のノイズ成分が寂しいものがありました。こうしてみると、とりあえずノイズ
でも何でもPCM化して付加している、という民生の楽器メーカーの方便(^_^;)と
いうのは、なかなかウマい手なのです。

Digital Waveguide Modeling of Wind Instruments Bores constructed 
of Truncated Cones
Vesa Valimaki, Matti Karjalainen

音声合成と楽音合成のフィールドの両方の人の発表でした。
従来の管楽器(というより声道)のモデルが、複数の区間で太さの異なるパイプ
を連結させているのに対して、それをテーパ状のパイプ連結として精度を上げた、
といえばそれまでですが、反射や拡散のファクタを考慮していた力作です。
できれば、デモとして音を聞いてみたかったです。

■ポスター/デモンストレーションセッション■

Friday September 16 10:00-12:50 Poster & Demonstration 3

なんだか「音響信号処理」というタイトルの割にはゴッタ煮のポスターセッション
で、ひとわたりサーッと通り抜けました。(^_^;)
この時間にパラレルの裏セッションには、おそらく森さんの興味のある

	Networking: MIDI - ISDN

なんていうセッションもあったのですが、おそらくヤ○ハの磯崎さんがチェック
しているでしょうから、磯崎さん、ROMばかりしないでここで報告して
下さいね。
...といっても会社の出張では無理でしょうかね(^_^;)

[Audio Signal Processing]

Efficient Fourier Synthesis of Nonstationary Sinusoids
Michael Goodwin, Xavier Rodet

いつも常連のロデさんの情熱的なポスター。僕はつかまるのが恐いので、
遠くから見ました。(^_^;)

Connections between Feedback Delay Networks and Waveguide Networks 
for Digital Reverbration
Julius O. Smith, Davide Rocchesso

こちらも物理モデルの王道を行くスミスさんたちの発表。ちょうどペーパーで
聞いていたので近付いていくとツカマリ(^_^;)、基本的な原理からこと細かに
レクチャーしてくれました。

Combined Linear and Nonlinear Periodic Prediction in Calibrating Models of 
Musical Instruments to Recordings
Gray Scavone, Perry R. Cook

Analysis/Synthesis of sound Using a Time-Varying Linear Model
Charles W. Therrien, Roberto Cristi, Olav Kjono

この2件はなんだか印象が残っていません。ペーパーの内容をフォローするような
ポスターだったと思います。(誰もいない部屋もありました)

Geometric Sound Transformations
Gordon Munro, Jon Drummond

この人は、去年のICMCで「アトラクタシンセシス」というなんだか不気味な
発表(^_^;)をした人で、僕も今年の春の情報処理学会全国大会で関連ネタの発表を
しました。

今年はなんと、グラフィクスにますますハマッているようで、ICMCにしては
非常に珍しく、音をグラフィック化してまったく音の無いビデオをいろいろ
見せていました。(^_^;)
なんとなく、関連ネタの発展しそうな、しかしメジャーになれそうのない
発表というところでしょうか。

Synthesis of Trumpet Tones Using a Fixed Wavetable and a 
Centroid-Controlled Second Order Filter
Andrew Horner, James Beauchamp

ビショップさんにはカ○イ時代からお会いしていて、ICMPC、3回のICMC
でも話をしたりしていたのですが、今回は部屋にいなくて、すれ違いとなって
しまいました。(;_;)

■コンサート7■

Friday September 16 13:00-15:00 Concert 7

Ronald E. Alford (USA) : IMAGE:the Pop Can

始まる前から、なにやらステージの上に空缶がごろごろしているので何かやって
くれると思っていたら、やっぱりやってくれました。(^_^;) 

ステージ上で作曲者と助手の女性が一緒に空缶を落とすところからスタート
で、いわゆる自然ノイズを活用した音楽でした。
あちこちのマイクから、
	カンを落とす
	カンをころがす
	カンを開けてグビグビと飲む
	カンを踏み潰す
などの音響をサンプリングして、即時にMIDIシーケンスデータとしてBGM
とともに再生する、というものです。

別にISPWなど使わなくたってできるよ、とでも言いたいのか、いちいち
ラックのサンプラーのところで手でトリガをセットしていましたが、これも
一種のパフォーマンスということで、違和感はありません。
サンノゼの時にいろいろあった、人によっては怒る瞬間芸のような作品と
言えますが、ようやくヨーロッパでも、ありました。これがないとICMC
としては片手落ちですから。(^_^;)

Katharine Norman (UK) : Trilling Wire

クラリネットとテープの、きわめてスタンダードな現代音楽。電子音響と
ソリストのインタラクティブな仕掛けもなく、安心して聴けました。
BGMとしてはかなり限定された素材として、狭い音域の電子音とクラリネット
のサンプリングされた音が使われて、それでも結構、女性作曲家ならでは、
ということでもないのですが、こだわりを感じて参考になりました。

Gilles Gobeil (Canada) : Le Vertige Inconnu

テープ作品。ハイクオリティの音響でした。
自然音響のサンプリング音を中心に、グワーーッとクレシェンドしてはドカン!!
と終る、という決まりパターンをエンエンと繰り返します。この繰り返し、
これれでもかこれでもかこれでもかというところが重要なのですね。(^_^;)
ハイクオリティの音楽かというのは意見が分かれると思いますが、間違いなく
ハイクオリティの音響でした。

James Phelps (USA) : Sax Houses

サックスとNeXTとテープのための作品。
ところがNeXTという割には、どうも単なるエフェクターのままで、さらに
音質が悪いのです。あとでプログラムを見ると案の定、ISPWでなく
「素の」NeXT、つまり内蔵DSPだけでした。
それならこんなものでしょう。(^_^;;)

John Rahn (USA) : Sea of Souls

テープ作品。素材としてサイン波だけでここまでの音響を作りあげる、という
のは、もう尋常ではありません。超オタクの域です。(^_^;)

ピンクフロイドのECHOESという僕の大好きな曲に、これとまったく
同じ音響があったなぁ、ということはこの音はアナログでもできる、というか
ようやくディジタルがあのピンクフロイドのアナログの音を作れるまでに
出世したんだなぁ、などと考えていました。(^_^)

Riad Abdel-Gawad (Egypt/USA) : Taqaseem No.2

作曲家自身のバイオリン演奏で、途中でテープが入って途中でテープが
おしまいになって、結局バイオリンがずっと演奏し続ける、というスタイル
の音楽でした。

これまでの中では、もっともコンピュータを感じさせなかったかもしれません。
このバイオリンというのが超絶技巧で、たとえば
	弓で弦を弾く
	弓を持つ手の指でピチカートする
	左手の指でも弦を弾く
ということを、完全に同時にしているのです。つまりこの時、バイオリンは
同時に3種類の音を鳴らしていました。
音楽の雰囲気は、もろ「エジプトの喧噪」でした。いい味を出していて、
僕は気に入りました。

Christpher Penrose (USA) : Manwich

テープ作品。ナレーションやクラシックからロックまでのありものの音楽の
断片を切り貼りした、ミュージックコンクレート作品でした。
どんなハードディスクレコーディングツールにも付いている「リバース」を
多用して、これもなかなか手のかかる作品でした。
実はこれを聴きながらメモした、ちょっとしたアイデアがあるのですが、
これは秘密です。(^_^;)

Dale Stammen and Sean Terriah (Canada) : Tuva!

モントリオールのICMCでお世話になった、マッギル大学のDale氏がサックス
を吹いて、もう一人がMIDIギターを弾く、というこの二人の作品でした。
どんな音楽になるのかな、と期待していたのですが、....これがまぁ何というか、
日本で言えば、ズバリ「演歌」というところでしょうか。(^_^;)

ときどきサンプルされた電子音響や自然音も出しましたが、基本的には甘い
ロックというのかポップスというのか、僕には「北米のムード演歌」と
聴こえるものでした。
DSPでサックスの音にリアルタイムのエフェクトをかけているのはわかりますが、
コンサートでこういう曲が出てくるたびに「選曲審査はどうなっているの?」
と考えさせるのも、ICMCの持ち味です。

■特別パネルセッション■

Friday September 16 15:30-16:20 Special Panel

コンサートのあと、午後のペーパーセッションまでの間に、

Touched by Machine? Composition and Performance in the Digital Age

という特別パネルがあり、片寄さんと志村さんがパネラーで出ていたのですが、
僕はこの時間に一旦ホテルに戻って、記事をまとめていました。まぁ、他の
日本からの人は皆んなここに参加しているでしょうから、いずれこのセッション
の報告はアップされることと思います。

このパネルのあとの時間帯は地獄のような時間帯で、行きたいセッションが
4つ、完全に重複していました。
何度も作戦を練って、途中で出会った片寄さんとも立ち話で検討して、結局
はGAのセッションを片寄さんと金森さんに任せて、FMIDIでも知りたい人の
多いIRCAMの発表を聞いてから、デモ会場に走ることとしました。

■ペーパーセッション6A■

Friday September 16 16:30-17:20 Paper Sessions 6A : City Hall

Carla Scaletti, chair
[Music Workstation]

さて、いよいよIRCAMの「今後」についての話となりました。といっても、
実際にはこれまでに出ていた情報の現在のところの確定話、ということでした。
まぁ結論としては、「皆さんIndyを買いましょう」というところでしょうか。
(^_^;;)

なお、記録はペラペラの英語とともにほんの一瞬だけで取り去られるOHPを
必死にリアルタイムに訳しながら速記メモったものですので、いろいろ間違い
があるかもしれませんが、御容赦を。
(全体にハイテンションで参加した今年のICMCですが、このセッションの
30分間がもっとも集中したものだと自分でも思いました)

The IRCAM 'Real-time Platform' Evolutions and Perseptives
Francois Dechelle, Marurizio De Cecco, M. Puckette, D. Ziccarelli

まず冒頭に、「NeXTの教訓により(^_^;)、今後は長く続くプラットフォームで
あるために、特定のハードウェアに依存しないことにしていく」とありました。
確かに、せっかく作ったシステムが、肝心のコンピュータがメーカから(あるいは
メーカごと(^_^;))消えてしまうのでは、ちょっとたまりませんよね。
僕も、そろそろ作曲のためのオリジナルソフト(作品の一部)としては、
PC9801で作るのはやめていかないといけませんね。(^_^;)

そこでIRCAMでは、FTSというオープンプラットフォームの構想を
進めています。従来のNeXTとISPWボードにしばられていたシステム
と同様(そして今後さらに成長する)の環境が、
	NextStep
	DECのAlpha
	PC互換機にTIのDSPボードを増設したもの
	SGI
などのいずれでも同等に走る、というものをほぼ同時に開発していける、
というわけです。
(ただし、GUIの点でSGIはかなり強いと思いますが...)

MAX/FTSでは、
	ファイル
	パッチ
	コンフィギュレーション
	コントロール
	DTD(これだけ意味不明(^_^;))
	DSP
	A/D,D/A
	MIDI
などの要素を、全てブラックボックスとして扱うことになります。
そして、UNIXのサーバとして、これらをネットワーク越しに自在に配置できる
ことになります。イメージとしては、ネットワークのどこかにDSPエンジンを
ぶら下げておいて、自分のマシンの中のMAXパッチウインドウから、それを
自在に使える、というものです。当然、ハードには依存しないわけです。

FTSの現在のところの特徴としては、
	データの表現形式を限定しない
	トランスポートレイヤのバイトストリームとして実現する
	今のところ、TCP/IPとUnixのパイプとシェアードメモリで実現
	マルチプルクライアントはOK
	イベントハンドリングなどのgenetic abstractionを含む
	ユーザのサブプロトコルを許す
となっています。
徹底したオープン思想ですね。(^_^)

FTSライブラリとしては、
	C/C++、コモンリスプのサポート
	イベントドリブンOK
	ポーリングOK
	フローコントロールOK
	プロトコルの拡張も許す
というあたりが特徴として紹介されました。

ここで会場に1枚のペーパーが配られたのですが、このMAX/FTSの
イメージをよく伝える図がありました。
ここでは図を描くのもカッタルイので言葉で伝えますが、MAXを使ったことが
ある人にはピンとくるでしょう。
要するに、自分のマシンのMAXパッチとして、たとえば「dac」という
オブジェクトを置きます。ところが、ネットワークの向こうのサーバのMAX
パッチにも「dac」というオブジェクトを置いていれば、このオブジェクト間
でメッセージやデータが送られる、というものなのです。sendとreceivee、
あるいはサブパッチと完全に同じ感覚です。(^_^)
たとえば、PCMデータファイルをあらかじめいろいろ用意しておき、パッチとして
こちら側の「playpcm」というオブジェントがbangされると、サーバに
PCMデータが送られてD/A出力される、ということのようです。

その他に報告されたものとしては、
	プロファイルtoolを用意する
	半自動プロセッサロード/repartitionのツールも用意する
	コントロール系もコンパイル可能
	DSPに対してグローバルに最適化してくれる
などの、これも言うは易し行うは難しという、美味しいサポートがあります。
まあなんというか、さすが世界のコンピュータミュージック研究を支える
のはIRCAMである、という自信がそことなく漂ってくる話でした。

さて、ここで当初の予定では以下のセッションに行くつもりをしていました。
論文をちらっと読んだところでは大したことはなさそうなのですが、なんせ
ネタがGAということで、一応チェックしておきたかったのです。
しかし、ちょうど朝に片寄さんと出会ったので、ここをお願いしてデモに
行くことにしました。
なお、あとで聞いたところでは、やっぱり予想通りだったようです。(^_^;)

■ペーパーセッション6B■

Friday September 16 16:30-17:20 Paper Sessions 6B : Brolerg

Ole Caprani, chair
[Genetic Algorithm]

GenJam: A Genetic Algorithm for Generating Jazz Solos
John Biles

Genetic Algorithms as a Method for Granular Synthesis Regulation
Ichiro Fujinaga, Jason Vantomme

■ポスター/デモンストレーションセッション■

Friday September 16 16:30-17:20 Poster & Demonstration

[Performance Systems]

The Granulation and Time-Shifting of Sampled sound in Real-time
Tim. Bartoo, David Murphy, Rusell Ovans, Barry Turax

思えばグラニュラーシンセシスの音に出会ったのはモントリオールのICMC。
そして自分でこれを作ってNNでパラメータ制御して発表したのが翌年の
サンノゼのICMC。ところがそこではTurax教授の不思議なグラニュラー
サンプリングの音響を聴いて感動し、この音響が翌年のトウキョウICMC
では一つのブームになっていた、という、僕にとってICMCそのものでも
ある、グラニュラーシンセシスの権威のデモセッションでした。

過去のペーパーが豊富な権威といってもスグに抜かれるのが仁義なきICMC
の世界(^_^;)(いいものはいい、誰がやってもいい)ですが、こちらはリアル
タイム処理のためのエンジンを実現していました。
実は僕もちょっと狙っていたのですが、やや僕のDSP環境では力不足です。
しかし、会場で配られていたレジュメに書かれていたDSPアルゴリズムは、
まさに僕が考えたアイデアと同じでした。ちょっとくやしい...。(^_^;)

ちなみに、Truax教授の最新CDを購入していたのですが、あとでコンサート会場
でたまたま前列にいたので、お願いしてサインしてもらいました。(*^_^*)
作曲者自身のサインの入ったCDなんていうのは、ICMCでないとなかなか
手に入りません。

■バンケット■

Friday September 16 17:30-20:00 ICMA Banquet

バンケットでは、またまた例のギャグとかもあったのですが、とりあえず
速報として、
	「ICMC1996はホンコンで開催」
と発表されたことだけ、記すことにします。
(ちなみに来年のICMC95はカナダのBanffです)
...他にもいろいろ話題はあったのですが、まぁいいでしょう。(^_^;)

■コンサート8■

Friday September 16 20:30-22:30 Concert 8 : Athelas Sinfonietta

このコンサートは、テープ音楽の1曲を除いて、すべてアンサンブルを
伴うものでした。大ホールにずらりと楽器が並ぶと、なんとなくICMC離れ
した雰囲気でスタートしました。

David A. Jaffe (USA) : Seven Wonders

マックス・マシューズさんの、あのラジオドラムがヤマハのMIDIピアノの
演奏用として使われて(当然MAXが間に入っています)、あとハーモニウム、
チェンバロ、ハープ、ギター、コントラバス、バンジョー、マリンバ2人
というわけのわからない編成を指揮者が振りました。(^_^;)

ハーモニウムだけが持続音楽器ですが、ビブラートや微小音程のない無機的な
楽器ですから、全体としてかなりドライな音素材を配置したことがわかります。
冒頭からいきなりラジオドラムのバトンを下げると、ピアノの鍵盤が
さざ波のようにわらわらと動き、ほとんどいつも同時に数十音のイベント
がMAXから送られていました。
最初はシリアスかな、と思ったのですが、何故か途中でポップになり、結局
この曲はラジオドラムを目立たせるためのものなのかなぁ、と思っていたら
終ってしまいました。(^_^;)

Frances White (USA) : Winter Acoustics

クラリネット、ビブラホン、エレキギター、ピアノ、チェロ、ダブルベース
にテープ音響と指揮者、というこれも大げさな編成の作品。
始まる前にピアニストがなにやらごそごそやっているので、ハハアこれは
プリピアードピアノかな、と思っていたら、なんと弦のところにタコ糸みたい
なのをあちこちにひっかけていました。(^_^;)

で、演奏が始まると、ピアニストはピアノにおおいかぶさって、両手でこの
糸を左右にボウイングするのです。すると、けっこうバイオリンというか
チェロみたいな音がしました。どうせならバイオリンに弾かせればいいのに、
なんて思ってはいけません。ピアノでボウイングしてバイオリン風の音を出す
ところに意義があるのです。(^_^;)

...で、音楽ですが、おとなしいというか静かであるというレベルを越えて
禁欲的なまでになんともおだやかな曲で、もう眠い眠い。(>_<)
作曲家というのは、聴衆をなるべく眠らせる音楽というのを一度は書いてみたい
のだそうですが、もしこれがそうだとしたら、かなり成功していました。

Erik Hojsgaard (Denmark) : Nocturne

Ivar Frounberg (DK) : SHaTaLe

この2つの作品は、いずれもこのアンサンブルをフルに使って、あとコンピュータ
というものでしたが、共通した感想としては、「これだけ現代音楽として
完成しているのなら、コンピュータ音なんていらないじゃないか」(^_^;)という
ちょっとICMCでは顰蹙のものでした。
しかし、オーソドックスではあるのですがやはり眠くなるということは、
まだなんとなく不満が残りました。
本当にレベルの高い現代音楽作品を聴いていると、一寸先も読めない緊張感
がもっとあるものです。

Howard Fredrics (USA) : The Raven's Kiss

テープ作品。ボイスをいろいろに料理する、というアリガチなものでした。

ここでインターミッションで全員がロビーに出たのですが、そこで香港の
ICMC96のchairwoman(というのでしょうか)のLydia Ayers女史と話を
することができたのですが、かなり日本を期待していました。(^_^;)
返還の前年ということで、香港市内のホテルは異常に高く、そこでドミトリーを
使える時期ということで、なんと開催は8月の第3週ということでした。
こうなると、1996の音情研の夏シンポは、香港ですね。
平田さん、検討しましょうね。(^_^;)
ただしこの時期は航空運賃が相当に高い、と板垣さんはボロクソに言って
いました。まだまだいろいろ考えないといけませんねぇ。
...と、皆んなで盛り上がっていると、開演のベルが鳴りました。

Kaija Saariaho (Finland) : Amers

ソロのチェロと、全部で12人の演奏者、そしてコンピュータと指揮者という
編成の作品。ほとんどチェリストの熱演に支えられていた作品ですが、完成度
は高いものを感じました。チェロの音って本当にいいですね。(^_^)

それにしても、この作品なら、わざわざピアニストにシンセを弾かせてベル
みたいな音をMIDI音源から出さずに、生のパーカッションに割り当てて、
いっそのことノイズの気になる電子音をなくしたらどれほど良くなるか、と
ここでも感じました。(^_^;)

.....ちょっと驚いたのは、ピアニストの女性がガムをかみながら弾いていた
ことです。
別に管楽器じゃないからいいのかな。

それにしても、このコンサートでいろいろな楽器を眺めて思ったのですが、
タナカアタウ氏のBioMuseでもそうなのですが、単にいろいろなセンサというか
「新楽器」を考えても、自然楽器に比べるとまったく歯がたたないなぁ、と
つくづく思います。(^_^;)
ラジオドラムによってMIDIピアノを「弾く」、というその事実が目標なのでは
なく、あくまでビアノの音響が音楽の時間内にコントロールされることが
音楽の要請である筈です。

BioMuseの演奏はとってもよかったのですが、あれを巨大ジョイスティック
(ブルーワーカーに歪みゲージセンサをつけたものだと思ってください(^_^;))
でやった方が、見ている方もコントロールする方も、そして肝心の音響も
スムースだったのではないかな、とも思いました。アタウ氏の作品が
よかったのは、筋電位センサではなくて、それのつながった音源の扱いに
あったと思うのです。
最初は「あ、僕も新センサで何かやろう!!」と軽薄にも思ったのですが、
さっそく反省しました。

■コンサート6■

Friday September 16 23:00-23:45 Concert 6 : Fireworks

前日の雨で流れた野外コンサートが、なんと夜中の11時過ぎから始まりました。
僕は寒さを覚悟して、チョッキを着込んでの立見です。強風で傘が壊れた
井口先生は、その代わりにと買ったカラフルなウインドブレーカーを頭から
スッポリかぶって、なかなかカワイイ姿でした。(^_^)

Ake Parmerud and Anders Blomquist (Sweden) : Trio

ホール内の照明が暗くなったので外に出ると、広場の池の向こう側にステージ
ができていて、演奏が始まりました。上からバスドラムを3つ吊して奏者
が踊るように乱れ打ちをする、という、日本のあちこちの祭や鬼太鼓座の
ようなパフォーマンスでした。ビートのあるノリノリの音響で、同期して
バスドラムの後ろの照明が点滅するのが見える、というのがミソです。
まあここんなもものかなぁ、ということで終りました。
この曲は次の曲と同じ人の作品ですから、まぁ前座というところでしょう。

Ake Parmerud and Anders Blomquist (Sweden) : Target

そしていよいよ、話題の「花火とコンピュータミュージック」になりました。
野外なので、そしてかなりの横風が吹いているので、それに負けないような
強力なPAです。さらに音楽の音響も相当に強烈なもので、これをホールで
聴くのはちょっと勘弁(^_^;)...というものでしたが、野外には合っていました。

そして途中からいきなり、花火が打ち上がり始めました。横風がすごいので
煙はまったく漂わないのはいいのですが、むこうの建物の屋根にドカドカと
まだ火の出ている破片が落下したり、もうハラハラもの。(^_^;)
花火というのは腹にズシンときますから、あの過激な音楽もこのためか、と
納得するほど花火とマッチしていました。
さすがに「たーまやー」という声はかかりませんでしたが、数分間で尺玉クラス
の乱れ打ち、これはスゴイお金がかかったと思います。
それより驚くのは、深夜11:30過ぎに、市内中央の野外であの大音響の演奏に
花火ドカンドカン、というのを何事もないように許す、というこの街の
ほうです。芸術に対する理解がものすごく奥深いのだなぁ、日本では逆立ち
したってできないよなぁ..などと考えながらホテルに向かいました。

.....さて、いよいよICMCも最終日になりました。まだまだ大矢さんのポスターも
これから、早稲田の発表も2件が残っています。
朝食の時に橋本先生と一緒になりましたが、昨夜は発表の準備などで
たいへんだったようです。
ちなみに、僕は行きたいセッションがあちこちにあり、残念ながら橋本研の
発表も大矢さんもパスで、ひたすらスキップしまくる予定を立てていました。
なんせ国内ですでに知っている研究ですから、まぁお許しください。(^_^;)

なんとか雨は降っていないものの、日本でいえば12月といった肌寒さです。
とはいっても大矢さん言わせれば、長野の10月だそうで、「日本で言えば」
でなく「浜松で言えば」ということだったようです。(^_^;)

■ペーパーセッション7A■

Saturday September 17 09:00-12:00 Paper Sessions 7A : City Hall
Glovanni de Poll, chair

[Audio Analysis and Re-Synthesis]

Real-time Musical Applications using FFT based Resynthesis
Zack Settel, Cort Lippe

これはなかなか強烈なセッションでした。だいたい、壇上に登った二人は
世界をリードするIRCAMのスーパースター。なんと「掛け合い漫才」
をしているものの、中身はといえば、ISPWの超強力なお話です。
論文集の図を見るだけで、ほとんどその内容の凄さが理解できる、実のある
ホンモノの発表でした。(^_^)

中身は簡単明瞭です。
「DSP-MAXのオブジェクトとして、FFTやIFFTがある」
これだけです。しかし、この意味はとてつもなく大きなものです。
FFTやIFFTのオブジェクトにはちゃんと実数部と虚数部の出力があり、
ここにルックアップテーブルやsin/cosなどを使えば、ほとんど自在に
あらゆる信号処理が、それも「リアルタイムに」できるのです。
これはもう、現在のところ世界でもISPWだけの独壇場です。
(...小坂さん、NTTあたりでビシッとやってくれませんか?)

一つ一つ、ていねいにデモ音響を交えて紹介してくれましたが、これを聴く
だけでモトが取れました。(^_^)
信号入力とスペクトルエンベロープのコンボリューションを取ると、簡単に
フィルタができます。さらに、コンボリューションの相手として普通の信号
を使えばダイナミックフィルタリング。
音声の喋りをピッチトラッキングとエンベロープフォロワを通してFMに
畳み込んだクロスシンセシス。
バンドエリミネートフィルタとしてアクティブノイズゲートに使う、などという
リッチな、というか勿体ない例もありました。成分ごとにパワーゲインを
制御できるので、当然と言えば当然ですが、ノイズに埋もれた演奏を抜き出す
ことも簡単なのですね。(^_^)

最後のQ/Aで、デモで聞かせた例ではサンプリングがいくらか、というところで
(32KHzでも44.1KHzでもOKだそうですが)、リッペが「ISPWを1枚でできる」
と言えばザックが「これは2枚必要だ」と言い、二人で言い合いを始めました。
もう完全に漫才で、会場は爆笑。IRCAMの余裕というかなんというか。

...このセッションはとりあえずここの1件だけで、道路を渡って別会場に。
ここでは、パラレルだった冒頭の発表のあとにすべりこんで、2件を聞いて、
さらに再び抜け出して別会場に、という目論見です。(^_^;)

■ペーパーセッション7B■

Saturday September 17 09:00-12:00 Paper Sessions 7B : Brobjerg
Shuji Hashimoto, chair

[When Computer Listen]

Pattern Processing in Music
Robert Rowe, Tang-Chun Li

過去のサーベイをよくしているのは判ったのですが、お話が多くて、自分が
なにをしているのかがよく判りませんでした。セグメント化したテンプレート
マッチングということだけで、グルーピングのところは片寄さんのところの
アプローチと同じような気もしました。
...詳しくは片寄さんの報告を待ちましょう。(^_^;)

Automating Ensemble Performance
Lorin Grubb, Roger B. Dannenberg

ダネンバーグと連名の発表なので期待したのですが、ちょっとイマイチでした。
ちょっと「伴奏ネタ」も低迷しているのかもしれません。
ソリストと伴奏というところから、アンサンブルのトラッキングで伴奏する
システムに行こうとしているのでしょうが、デモのビデオで見ると、なんとも
能書の割には完成度が不満でした。
ICMAの、ダネンバーグのトランペットに追従するデモビデオの印象が
あるからなのかもしれませんが、モーツァルトというのもなんか反則だし(^_^;)、
とにかくちょっと物足らない印象でした。
ただし、なんとなく感心したのは、「これぞ発表論文」という見本のような
すっきりしたペーパーだったところで、思わず論文集の全体をペラペラと
全部、比べて眺めてしまいました。

■ペーパーセッション7A■

Saturday September 17 09:00-12:00 Paper Sessions 7A : City Hall
Glovanni de Poll, chair

[Re-Synthesis of Human Voices]

A Real-time singing voice analysis/synthesis system
Peter Pabon

マイクからリアルタイムに音声を分析してグラフィック表示をして、さらに
この逆にグラフィックのパラメータから音声合成をできる、という発表。ちょうど
X軸方向がピッチで、Y軸方向が強さ(音量と音色)ですから、僕が京都の
コンサートでやったものと同じようにマウスでぐりぐりと動かすと、MIDI音源
の代わりにシンセが歌う、というものです。
Male/Female/Childなども切り替えできて、さらに母音もいろいろと選べる
ものです。ただし、DSP96000ということで、そう簡単に一般に出回ると
いうには、まだまだ高価なシステムのようです。(^_^;)

A Virtual Castrato (!?)
Philippe Depalle, G. Garccia, Xavier Rodet

IRCAMホモ説(^_^;)をまたまた裏付けるような、しかしIRCAMでないと
できない話の発表でした。

「カストラート」というのは、ボーイソプラノの声を大人になっても使う
ために去勢して変声させない歌手のことというのは知っていましたが、ホテル
に戻って辞書を引いたら、「去勢する」という普通の動詞でもあったのですね。

それで、この研究の目的というのが、18世紀の有名なカストラート(歌手)の
映画のサウンドトラックとして、39分間のカストラートの歌声を作る、という
ものなのでした。さすがフランスというか。
ところが、今世紀最後のカストラートも1922年にいなくなったとかで、歌手
がいないのです。(^_^;)

このへんの話も、本人が真面目にするほどおもしろいです。
「誰かボランティアでカストラートしてくれますか?」
一同爆笑。
「というわけで、Digital Processingでやることにしました」
...という論理的な展開(^_^;)で、IRCAMのボイスシンセサイザSVPを
使っての挑戦ということでした。

実際には、最後のカストラートのわずかに残った録音を参考にして、ソプラノ
やカウンターテナーの歌に対してリアルタイムにフィルタリングするという
もので、完全な音声合成ではないようです。
半自動セグメント化でラベリングして、データベースを引いていくという
ものですが、
	実際に聴ける、という芸術性
	リアルタイム処理の技術的課題
の両方とも、ちょっと真面目に考えてみるととてつもないもので、よくこんな
話をIRCAMは受けるなぁ、と感心しました。

[Interactive Performance System]

The Virtual Piano Acction: Design and Implementation
Brent Gillespie

サンノゼのICMCで、オタッキーなブレスコントローラで力量を見せた
CCRMAが、今度はなんとピアノアクションにまともにアプローチして
きたようです。

OHP用に透明プラスチック板で作った「動く」アクションには驚きました。
僕はかつて、ピアノアクションの部品の一つ一つ作りから響板・張弦・調律まで、
全てのピアノの行程を一年近くやった経験がありますが、それだけにピアノの
音に関しては、シンセの合成やPCMの議論はもちろん論外として、音響屋
さんのアプローチも「そんなのピアノのメカの闇の中さ」と、比較的さめて
見ていました。(^_^;)

しかし、もしかするとCCRMAが本気でしっかりとアプローチすると、この
神秘がベールを剥されるかもしれません。簡易的モデル、と言いながらキチンと
微分方程式を立てていますし、このモデルがCCRMAのこれまでの研究の、
	弦の剛体振動モデル
	ハンマーの打弦モデル
	響板のプレート振動モデル
などの物理モデル楽音合成に結び付いたら、いよいよ夢の「本物のピアノ音
合成」に向かっていくかもしれません。
ついに、PCMでごまかしてきた楽器メーカの最後の砦に手がかかったのです。
(^_^;)

実際にはまだ始まったばかりで、今回は有限ステートマシンとして、ハンマーと
鍵盤とメカ部分の相互作用を4つのステートとして状態の推移を記述する、
という程度でした。しかし、来年は何か「音」が出てくるかもしれません。

The use of active tactile and force feedback in timbre controlling 
electronic instruments
Bert Bongers

インタラクティブシステムに必須の、センサからのフィードバックなどについて
の発表でした。
VRの世界では常識となってきましたが、人間からのアクションを拾うセンサ
だけでは人間は十分にコントロールできません。アクションに応じたリアクション
が必要で、VRの世界ではフォースディスプレイなどと言いますが、ここでは
フォースフィードバックと言っていました。
図にすると簡単なのですが、要するに

 	      <人間>←−−−−−−−
 	↑	↓       |
	アクチュエータ/センサ     |Sound
	↑	↓       |
	             |
	↑	↓       |
	               |
	↑	↓       |
	   −−−−−−

という、Sound以外に人間に戻るパスを作る、という当然の話でした。

それにしてもこの人のところ、「ハーグの王立コンサルバトワール音響研究所」
とでもいうのでしょうか、過去に

	The MIDI Conducctor		1990
	Mini Hand			1992
	The Web			1991
	Gloves :		The Beast	1992
			Virtual Piano	1993
			Sonolo Glove	1994
	The 3-DOF Pedal			1994
	The Ball			1993
	Laser Bass			1994

などというセンサ類を作っているのです。とんでもないと言うべきか、
とにかくなかなかやっていますね。(^_^;)

僕も、また何か作りたくなりました。
ちょうど今、長野高専の学生がパワーグローブを使ったシステムを作っている
ので貸してあるのですが、また何か改造しようかな。

このセッションがほぼ正午に終り、12:50までのポスターを覗くために、僕は
速攻で町中のチャイニーズレストランに行って、前にも一度食べたヤキソバを
かっこみました。ところが作ったコックが違うのか、前とは味も違えば、
だいいち麺の硬さから具まで、まるで違いました。
まぁ、誰もわからないからいいんでしょうね。(^_^;)

■ポスター/デモンストレーションセッション■

Saturday September 17 10:00-12:50 Poster & Demonstrations 7

[Music and Graphics Education, intelligence, pereption]

A Modular Construction Set for Time-Domain Editors
Bernhard Feiten, Markus Spitzer

A Rhythm Perception Model by Neural Rhythm Generators
Ken'Ichi Ohya

SYnthia: Interactive Multimedia Software for the Teaching of 
Sound Synthesis Techniques
Michael Clarks

SST: A program for Teaching Sight Singing
Lloyd Smith, Trever Monk

Generating Rhythms with Genetic Algorithms
Damon Horowitz

NoteAbility: A Music Notation System that Combines Musical 
Intelligence with Graphical Flexibility
Keith Hamel

このポスターも例によって駆け足でした。
期待した「GAでのリズム生成」というのもイマイチでした。残念。
大矢さんが颯爽と英語で説明しているのを見に行ったところ、なんと日本語の
わかるイチローさんと後藤さんがいただけで、日本語が溢れた部屋となって
いました。これも、ちょっと残念。(^_^;)

...ということで嵐のような最終日の午前のセッションも終りました。
どうも寒いためか、コンサート中も、あちこちで咳やクシャミが聞こえて
きました。
一度は僕の両隣の人がそれぞれ風邪ひきっぽかったために、あわててホテル
に帰ってイソジンで嗽をしたのですが(スティック状の、水に溶かせる顆粒の
イソジンがあるのです)、時差と寒さもあって、もしかしたら僕もヤラレタ
かなぁ、と思うような咽のイガイガが気になりました。

■コンサート9■

Saturday September 17 13:00-15:00 Concert 9

またまた冒頭に例のギャグがありました。ところでこの人はどうやら、単なる
スタッフでなく、実はICMC94の実行委員長のWayne Siegelさんである
らしいことがわかりました。(^_^;)
どうりで会場のつっこみにも動じなかったわけです。

Bruce Pennycook (Canada) : Praescio-III: the desert speaks

プログラムにあったこの曲はキャンセルで、イチローから聞いていたように、
やはりMcGillのブルースは来なかったようです。再会したかったのですが。
代わりに演奏されたのが、同じくMIDIチェンバロとコンピュータののための作品
で、

Piesse Des Rocher (France) : Cinema Mods D'emploi

というものでした。これは昨日のラジオドラムと一緒に使われたMIDIピアノと
同様に、MAXによってさざ波のような、ミニマルっぽい音響がずっと続くなか、
チェンバロ奏者もなにやら弾いている、というものでした。(^_^;)

ところがチェンバロは音量の差が出ないので、ソリストの弾いていることが
音の渦に埋もれてよくわかりませんでした。
聴衆はミニマルミュージックの眠さをひたすらこらえる、という雰囲気の
音楽で、やはり代打だからかなぁ、ブルースの作品が効きたかったなぁ、
などと思いました。

Stephane Roy (Canada) : Crystal Music 1

テープ作品。自然音を中心とした音響にエフェクトのかかった、よくある
音響処理の作品で、まとまっているがこんなものかな、という感想でした。

Jon Christopher Nelson (USA) : Waves of Refraction

ギターとテープによる作品。
電子音響部分にもギターの音が多く、緊張感のある、いい「掛け合い」が展開
されました。
ギタリストの力量に負うところが大きかったとはいえ、なかなか好評でした。

Robert Normandesu (Canada) : Spleen

テープ作品。ただし、これまでの「音響断片が音量とパンポットを頻繁に
行き来する」というものとは違って、明確に「ノリのいいビートの効いた」
音楽でした。ただし簡単にロックになる、というものでもなく、局所的な
ビートのばらまかれ具合が僕は好きでした。
単調でないビートを駆使して簡単にはポップにしないで難解にもしない、という
うまいバランスとセンスを感じました。

Stuart Favilla (Austria) : Improvisations No.1: Alapana

ライトハープを使った作品です。ライトハープというのは始めて見ましたが、
なんというか、僕も欲しくなった楽器です。いかにもインド風、という竜の
頭のついたシタールのような風貌で、ライトで竿のところを照明して、光センサ
を遮って演奏する楽器です。ビデオハープに近いものですが、知らない人に
言葉であの楽器を紹介するのは無理だと思うので、あきらめて下さい。(^_^;)

実際にはなにかの事情があって(よく聞き取れなかったです)、この曲ではない
作品が演奏された模様で、バスクラリネット?と「声」の女性と、ライトハープ
を演奏する作曲者自身の二人によるパフォーマンスでした。

音楽はと言えば...「もろインド」でした。(^_^;)

シーケンサで鳴らす、いわゆる「例のタシール」(オクターブと5度だけを
非周期的な周期で無限に繰り返す)音響の中、楽器や声などでソロを
とりました。
後半になってライトハープがトラブったのか、シンセでソロをしていましたが、
ベンドホイールに棒をつけて微妙なビブラートをかけて、なかなか手慣れた
演奏をしていました。
好評でした。やはり、ライブパフォーマンスはいいですね。(^_^)

Larry Austin (USA) : Rompido!

テープ作品。ガムランのような鐘系の音響があっちにコロコロ、こっちにコロコロ
という始まりで、それほど単調でない、かといってないわけではないリズムが
楽しいスタートでした。

ところが第2パートになると、最初こそ水滴のしたたる音だったものの、
機械というか金属的な繰り返し繰り返し責めてくる、という
これぞICMC(^_^;)という強烈な音響攻撃になりました。
多くの聴衆が耳を塞いでひたすら耐えていました。

終ってからプログラムを見ると、なんとICMAで長らく会長をやっていた
ラリー・オースチンさんではないですか。
あの強烈な音量は、もしかするとやや老人性難聴になっているからなのかも
しれない(^_^;;;)...などと思ってしまいました。

Ezequiel Vinao (USA) : El Simurgh, book II "The Seven Valleys"

バイオリンとテープのための作品。ただし、バイオリニストは片耳だけヘッドホン
をつけていて、別トラックのクリックかなにかを聴いているために、テープとの
かなり細かな同期はバッチリでした。
全体としてリズム感・躍動感・メリハリのあるいい曲で、もしかすると今回の
ICMCで一番の収穫かな、と思いました。
バイオリニストの技術と音楽性もよく作品に応えていて、噛み合っていました。

...「よかった」の一言。

■ペーパーセッション8A■

いよいよ最終日の午後のペーパーセッションになりました。
僕はちょっと目先を変えて「音楽記述」のセッションに行きましたが、そろそろ
帰国とか観光にうつる人も出てきたためか、会場はかなり閑散としていました。

Saturday September 17 15:30-17:10 Paper Sessions 8A : City Hall
Gerhard Widmer, chair

[Music Data Structure]

Musically Salient Control Abstractions for Sound Synthesis
G. Eckel, R. Gonzales-Arroyo

この発表はキャンセルとなっていました。ペーパーではよくわからなかったので、
発表を聞きたかったのですが。

Music Space: A Metaphor for Music Representation and Music Generation
Ioannis Zannos

音楽情報科学研究会でも2回ほど発表したことのある、ヤニさんの発表です。
あれだけ数カ国語がペラペラのヤニさんでも、発表前は緊張するのだそうです。

話としては、Tonally Spaceという限定された条件の下ですが、音楽表現・作曲
のメタファーをメトリックに規定/構築したい、ということのようです。
音楽学・音楽美学・音楽理論のからむ難しい話なのですが、僕はエピソード
として紹介されたVogelの「Economy of Hearing」:
「人間は聞こえる音がもっとも数学的に単純な関係になるように知覚する」
(OHPからの僕の訳なので間違っているかもしれませんが)
というのが、とにかく印象に残りました。

そしてこのあと、周波数比を素因数分解してconsonance Vectorというのに
表現する、という話とか、コードのプログレッションを4次元のグラフィカル
表現として体系化しよう(コードの構成音のベクトルから作られる多面体の
重心の移動と解釈)という話など、よくわからないのですがいろいろと
刺激される話がありました。
後半のMAXへのインプリメント話もよくわからなかったのですが、「バッハ」
とか「ジュズアルド」とかの名前が登場するあたり、なんとなくやりたいことが
理解できました。(^_^)
この分野でも、ちょっと検討してみたいネタがメモできました。

Complex Musical Pattern Description in Common Music
Heinrich Taube

この発表は、ポスターに行くためにパス。
実は論文をちらっと見たら、見るからに「別にいらない」ものだったのです。

■ポスター/デモンストレーションセッション■

そして最後のポスター/デモを、これまた駆け足で眺めました。

Saturday September 17 15:30-17:30 Posters & Demonstratios 8

[New Instruments]

Demonstration of Gesture Sensors for the Shakuhachi
Haruhiro Katayose, Tsutomu Kanamori, Satoshi Shimura, Seiji Inokuchi

志村さんのサイバー尺八のデモには、さすがに人が集まっていました。
解説よりも実演、ということで、志村さんが熱演していました。(^_^)

The SoundLab: a wearable computer music instrument
Steven Curtin

タイトルからは中身がわからないのですが、携帯ラジオ程度の薄い箱にDSP
を積んで、ポケコンからLCAにコンフィギュレーションをロードして任意の
シンセを実現できる、というプロトタイプの基板を胸にぶら下げたおっちゃん
がいるだけでした。(^_^;)
「デモしてくれるか?」と聞いたら、「プロトタイプでまだ何も鳴らない」
とのことでした。いったい、何のためのポスタープレゼンテーションなんだか。

An invisible instrument
Godfried-Willen Raes

3D Sentograph
Tamas Ungvary

この2件は、なにやらアヤシゲな「新楽器」のようでしたが、人だかりがしていて
よくわかりませんでした。(^_^;)

A Virtual Piano Concerto - Coupling of the Mathews/Boie Radio Drum and 
the Yamaha Disklavier Grand Piano in 'The Seven Wonders of the Ancient World'
David A. Jaffe, Andrew Schloss

これは、コンサートでイマイチだった曲のメイキング話です。
イマイチだった作品の解説を聞いても仕方ないので(^_^;)、パスしました。

■ICMAメンバーミーティング■

Saturday September 17 17:30-18:30 ICMA general meeting

毎年恒例のICMAメンバーの総会です。僕は過去3回とも出たのですが、
今年は橋本先生とか井口先生が出られるだろうから、とパスしました。
いずれ何か、音楽情報科学研究会としてもオフィシャルにお伝えする動きが
あるかもしれませんが、ここではまだ書かないことにします。

■コンサート10■

Saturday September 17 20:00-22:00 Concert 10 : Aarhus Symphony Orchestra

いよいよコンサートも大詰め、フルオーケストラが大ホールのステージに並ぶ
と壮観です。(^_^)
このコンサートには、チケットを買って聞きにくる市民も多く、当然のこと
なのですが、普通のオーケストラのコンサートと同じような雰囲気となりました。
考えてみればICMCというのは、1回2000円とか3000円というコンサートを
10回も11回もタダで聞けるコンサートツアーである、ということでもあるの
です。事実、ペーパーセッションにはまるで参加しないで、コンサートの「通し
チケット」代プラス論文集代として約4万円の参加費を払う人もいます。(^_^;)

James Giroudon and Jerome Dorival (France) : Double 3

弦楽オーケストラとテープののための作品。
いきなり冒頭から、バイオリンのピアニシモのハーモニクス奏法の重なりで
音楽がスタートします。この瞬間、「やはり自然楽器はいい!」としみじみ
思い出しました。
なんといっても生のストリングス、これはいかにサンプリングして再生しても
コーラスとかフランジングのエフェクトで広げても、マネできない音響です。
この作品の場合、電子音響とてしても弦楽の音を使っていて、いわば生オケと
電子オケ音の2群の掛け合い的な効果を狙っている部分も多かったのですが、
相対的に音響の貧弱な電子音響の方がややバランス的に大きいために、
「電子音が邪魔だなぁ」(^_^;;)
という印象を与えてしまうのが、やや不満でした。

Brian Bevelander (USA) : Synthecisms no.4

ピアノの連弾とオケとテープの作品。
冒頭から二人のピアニストが立ち上がって身を乗り出して、ピアノの中に
手をつっこんで弦をジャラジャラと鳴らす、というスタートで、ははあ
そういうのか、と思っていたら、あとはほとんどマトモに弾くものでした。
音楽としてはまぁオーソドックスな現代音楽ですが、やはり電子音響は
周波数特性というのか音響のつややかさが不足して、電子音が止んでオケ
だけの部分になると何故かホッとする、という気がしました。
ただしバランスもよくピアノも上手く、やや単調なリズムも許せるかな、
というところでした。
オケの切れ味も指揮者もGoodで、相当に練習してきたな、と実感できました。

考えてみればICMCの参加者にとっては次々と聴いては通り過ぎる個々の
作品ですが、それぞれが、半年前に世界中からスコアが届いて、演奏者を
手配して、たとえば指揮者がスコアとテープを入手してアナリーゼして、
一方でライブラリアンが楽団員のパート譜などを手配して、何度も練習をして、
ICMC直前にデンマークに来た作曲家と打ち合わせをして、リハをして、
ホールでリハとゲネプロをして、そして本番、というプロセスをきちんと
積み上げて来た成果なのです。凄いエネルギーですよね。(^_^)

Elena Kats-Chermin (Austria/Germany) : Clocks

20人の演奏家とテープのための作品。
今度は二人のピアニストはステージ左右に分かれました。2台のフルコンに
あとで出てくるヤマハのDisklavier(MIDIグランドピアノ)と、なかなか
豪勢なピアノの使い方です。
(この会議室では、ここのピアノのブランドが気になるギョーカイの人もいる
と思うのですが、もう僕は別に興味がないのでチェックしていませんでした)

電子音響として、エンエンとメタモルフォーゼしながら続くチクタクの音響が
重要なテーマとなっていましたが、なんとなく物足りない気もしました。
普通のオーケストラ作品と違って、このようなテープ音楽とのアンサンブルでは、
指揮者は電子音響のビートを楽団員に伝える単なる人間メトロノームになって
しまいます。指揮者のすぐ横にモニターがあってテープ音を聞けるのですが、
オケが盛大に盛り上がってくると(なんせ生オケのダイナミックレンジは
電子機器では実現できないほど広いですから)、一瞬チクタクが聞こえなく
なり、この曲の場合には致命的なズレとなりました。(^_^;)
さすがにすかさず指揮者が収束させてはいましたが、もっと何か工夫が必要
だとも思いました。

たとえば志村作品では、志村さんの足元に僕の作ったLEDモニタを置いた
のですが、MAXから特別プロトコルのMIDIを送ると3ケタの数字を表示する、
というだけのものです。取柄はグリーンの大型LEDで見やすい、というだけ。
ところがあとで志村さんが、「あのインジケータで、現在どの部分であるか
を確実に把握できて、とても助かった」と言ってくれました。(*^_^*)
もともと僕も自分の作品で、ピアニストに現在の小節番号を知らせるために
作ったものですが、こういう工夫も大切なのでしょうか。

Alcides Lanza (Canada) : Piano Concerto

MIDIグランドピアノとオケのための作品。
DisklavierはMIDIを受けて自動演奏する道具としてでなく、ピアニストが
ピアノを弾きながら同時にシンセを鳴らすためのMIDI演奏情報センサとして
使われていました。ただし、あくまでピアノとしての音とオケがメインで、
電子音は彩り程度。この、たまに鳴らすというバランスが最高でした。
非常に完成度の高い作品で、オケもよく作品に応えていました。
Very Goodでした。

Thorstein Hauksson (Iceland) : Bells of Earth

オケとテープの作品。
テープ音響は国立音大のスタジオでリアライズされたそうで、完成度も高く、
電子音とオケのバランスもよかったのですが、ちょっと全体として「コテコテ」
というか(^_^;;)、情報量の多い作品でした。
ノートのメモには、
「それにしてもオケはよくやった...」と書いてあります。

ついに、とうとう最後のコンサートとなってしまいました。
僕が思っていたこととちょうど同じことを、コンサート冒頭にステージに
上がったAllen Strangeおじさんが言ってくれました。
僕の記憶力と英語力では正しく伝わりませんが、最後ぐらい英語で書いて
みましょう。(^_^;)

"There are good news and bad news."

	(everyone laughing ^_^)

"Good news is ... we have nothing of bad news."

	(apprause !)

"Bad news ... the fantastic ICMC94 is over now.."

	(;_;)//

というわけで、一抹の寂しさとともに、ファイナルコンサートが始まりました。

■コンサート11■

Saturday September 17 22:30-23:30 Concert 11 : Computer-Jazz

Allen Strange (USA) : Velocity Studies IV:: Flutter

アルトサックスとテープのための作品。ICMC92のホストとして
おなじみの陽気なストレンジ氏です。

....いやぁ驚いた。というか、当然と言えば当然ですが、とにかく、
「JAZZのImprovisationは凄いぜ」の一言に尽きます。
クラシック系のコンピュータミュージックでは、ソリストがBGMとしての電子音響
に「合わせる」ことに苦労する姿をたまに見ますが、JAZZならアドリブは
当り前、まるでバンドとセッションするノリで、「カラオケ+独奏」を
まったく感じさせない演奏でした。もっとも、そういうふうに作曲されている
という事実があるのは当然ですが。

そして、ストレンジ氏と同系統の体系(^_^;)のこのサックス奏者も、なかなか
すごいテクを見せてくれました。
コンピュータミュージックのうちインタラクティブなものについては、
ジャンルとしてJAZZはよく合っているようですね。

Henning	Berg (Germany) : Loops, Lines and a Somple Song

作曲者自身がトロンボーンを手に登場し、ステージ上のコンピュータの
CRTを見ながら対話的な音楽を自己陶酔的にエンエンと展開するのを
ひたすら眺める(^_^;;)、という演奏になりました。ちょっとアブナイものもある
世界です。

使っているコンピュータはAMIGAみたいだったのでMAXではないと
思いますが、ジョージルイス氏のように複数のパートがトロンボーンの
音響をエコーバックしたり変形して返したり、さらに他の楽器音のパート
もセッションに加わり、なかなかいい雰囲気でした。

しかしこの演奏を聴いての大矢さんの発言は、
「JAZZってのはこんなものじゃないということを、俺が来年見せてやる」
というものでした。詳細は意味不明。(^_^;)

....皆さん、期待しましょうね。(^_^)
(そういえばサンノゼのICMCでも、大矢さんと平田さんは「あんなアドリブ
なら俺だってできるぜ!!」とナメたことを言っていたと思いますが...(^_^;))

PerAnders Nilsson (Sweden) : Random Rhapsody

サックスとコンピュータによるライブ作品。
まず冒頭で、サックスを吹く作曲者がおもむろにMacの前で手を合わせで
十字を切ったあたり、わかる人には笑えないギャグでした。(^_^;)

演奏はMAXとサックスのコンボということですが、フットスイッチでコード
を切り替える、というお手軽な方法(^_^;)には参りました。
ちょっと、トリとしては物足りない気もしました。

これでホールでの演奏は終了しましたが、最後にスタッフ全員を紹介して
聴衆がスタンディングオベイションで讃える、という、いつもの感動的な
フィナーレとなりました。
最後に「Banffで再会しましょう」といういつもの言葉で終りました。
そう、来年のICMCはカナダのBanff(バンフ)です。
McGillのDaleは、「Banffは一年中いいところだし、是非ともおいで!」と
言ってくれました。

Fuzzy (Denmark) : ICMC 1994 Surprise

ホールから出ると、ホワイエでビデオとかレーザーを使ったパフォーマンス
が始まっていました。
僕はもう眠かったので、ちらっと見て帰りました。そのあとで何か面白い
ことがあったようなら、どなたか報告して下さい。(^_^;)

	*	*	*	*	*	*	*	*

...ここから帰途の機内です。SASは満員です。

朝、ホテルで会ったDaleの話では、ブルース・ピノコックの曲がキャンセルに
なったのは、MIDIチェンバロが壊れてしまったためだったことが判りました。
ヨーロッパのあちこちで演奏してきたそうですが、パリからオーフスに送る
ところで壊れたらしく、いくつもの鍵盤が鳴らない状態になって、とても
そこから8日間では修理できないので断念したそうです。
MIDIチェンバロ、というかチェンバロという楽器は繊細なものですから、
仕方ないというところでしょう。

市内からSASの国内線でコペンハーゲンに向かう飛行機では莱さん一緒に
なり、アムステルダム観光に行く大矢さんと後藤さんは「アブナイからここ
には行かないように」というアドバイスを真剣に受けていました。(^_^;)
コペンハーゲン空港で3人と別れて、チェックインするとお土産が高くなるので
キオスクでチョコレートだけ買いました。今は重たい洋酒を海外から運搬する
時代ではないですからね。(^_^;)
そして、いざゲートインしてみると、なんと井口先生とまたまた出会いました。
同じフライトで成田なのでした(クラスは違いますが...)。
井口先生はデンマークには関西新空港からだったのですが、関西空港は毎日
運航しているわけではないので、コペンハーゲン発18日(日)15:40のフライト
で11時間、成田に19日(月)9:30に着いてそのまま新幹線で大阪に帰って大学の
会議のようで、ちょっとあまりに効率が悪い移動ですが仕方ないのだそうです。
まぁ、一切観光ナシで即日帰国して浜松に速攻で帰る僕も同じような
ものですが。(^_^;)

...ということで、カフェでぼちぼち振り返ったICMC94のまとめです。

去年のICMCは、日本ではあれが限界だったとはいえ、音楽セッションの
比重が従来にないほど低いICMCでした。それに対して今回は、まさに
ICMCの王道というのか、相当に音楽系が強力でした。十分に多くの
作品を楽しめました。作品を迎える演奏者、アンサンブル、ダンス、
そしてオーケストラのレベル、さらにスタッフの素晴らしい運営が光って
いました。

一方、ペーパーセッションはやや低迷という印象はあったのですが、やはり
現在の世界のコンピュータミュージック研究の先端が集結しました。
プログラムから各セッションのサブタイトルを拾ってみると、

3D Sound Simulation
Pitch, Timbre, and Loudness Perception
Performance Interface
Music Languages
Composition Systems & Workstations
Music Workstations
Additive Synthesis
Sound Synthesis Methods
Music and Graphics
Music Notation
Teaching Compute Music Engineers
Expressive Performance Analysis
Neural Networks
Physical Models - Control Level
Composition Systems and Techniques
Interactive Performance Systems
Foot Tapping
Acoustics
Aesthetics, Philosophy and Criticism
Networking: from MIDI to ISDN
Modeling String, Plates, and Horns
Music Analysis
Audio Signal Processing Techniques
Genetic Algorithms
Interactive Performance
Audio Analysis and Re-Synthesis
Re-Synthesis oh Human Voice
When Computer Listen
Composition Systems
Education, intelligence, perception
Data Structures and Reprensations
New Instruments
Studio Reports

.....ということで、まあまあほとんど全ての領域をカバーしていました。

プラットフォームとしてはMIDIレベルではMAXの独り舞台、信号処理関係
ではNeXTにISPWが今のところメインでしたが、一部では既にSGIで音を
出していました。
おそらく今後は、ICMCの会場ではIndigoかIndyを多数用意しておく、
という方向になっていきそうです。なんせNeXTは消え去るだけですし、
Ariel社のISPWボードも製造中止なのですから。(;_;)

研究の方向についても自分なりにトレンドをつかんだつもりですが、それは
ここでは書きません。自分の判断が正しい方向であるかかどうかは、来年
のICMCに採択されるかどうかで判ることです。(^_^;)
(こうやって、やらなくてもいい宣言をして自分にプレッシャーをかける
のが、僕のポリシーです(^_^;))

ICMC期間中に、自分のシステム手帳にメモした分量はびっしり41ページ。
赤ペンでマークした「アイデア・新ネタ・要検討ネタ」のメモは、まるまる
1ページの大ネタを含めて21件ありました。消化するのが大変です。
だれか共同研究しませんか?
(楽器メーカであればG10Hに出せそうなネタも多数ありますが、どこかで
このネタを買ってくれませんかねぇ...。まぁ、特定のメーカに独占される
よりも、この会議室でアイデアを公開してパブリックにしてしまった方が
人類のコンピュータミュージックの発展のためにはいいですけどね(^_^;))

今回はレポーターということでプレッシャーも大きく、今まででも最高に
密度の高いICMC参加となりました。納本さん、このぐらい書けばOK
でしょ?  (^_^;)
それにしてもレポーターというのは大変ですね。発表参加で、発表して
しまえばあとは気楽にウロウロ、というのが理想的です。(^_^)

ヨーロッパは初めてでしたが、コンセントが違うので、ワープロは電池使用
で正解でした。
持って行ったのは、OMRONのMassifという電子手帳なのですが、電子手帳と
してはまったく使わず、PC互換機のDOSマシンとして使っています。今も
FDからエディタを起動してこれを書いているのですが、他に
	ダイナブック用のゲーム
	Cコンパイラ(行きの機内で1本、新しいソフトを作りました(^_^))
	MIMPI(ちゃんと鳴ります)
などがのっています。
これで単3アルカリ乾電池を4本で8時間もって、重さは電池を入れて
880グラム。ただし、メモリ拡張のICカードを入れているので、もうちょっと
重いかもしれません。RAM容量は合計5MBです。(^_^)

レポートとしてのこの一連のテキストファイルの容量合計は130KBほどに
なりました。これを帰宅してパソコンにRS232Cで転送すれば記事をアップ
できます。本当はモジュラージャック内蔵なので、このまま成田で電話につなげる
のですが、僕はそこまでしないのが自分なりのブレーキです。(^_^;)
先日書いた単行本の原稿が270KBでしたから、本を半分書いてしまったような
ものです。
....そう考えると、なんか疲れてきました。(^_^;)

ただし、ここからは声を大にしていいたいのですが、OMRONの人が
いたら、ここをしっかり読んで下さい。
皆さん、知合いにOMRONの人がいたら、以下のことを伝えて下さい。
この部分だけは転載を許諾します。(^_^;)

 「Massifのキーボードはひどすぎる!!!!!!!!!!」

基本的に遅い8086であること、FEPや辞書が馬鹿であることなどは我慢します。(^_^;)
ところが、キーボードスキャン用のダイオードを惜しんだばかりに、
キーボードをちょっと速くタイピングすると、あるいは電池の電圧が低下
してくると、普通に打っても、チャタリングのように勝手に文字がダブるのです。
それも、あきれるほど頻繁にです。
偶然のトラブルでなく、文句なく設計不良の欠陥商品です。
                              ^^^^^^^^^^^^^^^^^^
僕はデンマークで、この馬鹿なキーボードのために、記事を書きながら、
何度心の中で「OMRONの馬っ鹿野郎!」とつぶやいたことか、
何度エスケープキーで変換をキャンセルしたことか、
何度バックスペースキーで入力した文字を消したことか、
どれだけ思考と執筆意欲を中断させられたことか!!!!

いつもの執筆ペースと冷静に比較して、この馬鹿なキーボードのために
執筆効率は半分程度にまで悪化しました。もしスキャンダイオードがあれば、
このICMCレポートはこの1.5倍以上の分量を書けたと思います。
いちいち瞬間的にイライラしながらのストレスのために、文章もあまり
スムースになっていません。注意したつもりですが、文字がダブッている
ところは全て、この馬鹿キーボードののせいです。(^_^;)
                 ↑
             こういうところ

...ということで、日頃書いている環境よりもかなり悪い状況での文章
であることをお詫びします。
なお、OMRONのためにフォローしておけば、それでも今回のレポートは
Massifがなかったら絶対に書けなかったのは事実で、僕はこのマシンに感謝
しています。

これまでのICMCでは、帰国後にメモを見ながら書いたのですが、それでは
ここまで書けなかったです。ショルダーバッグに入れて持ち歩き、ホール
のレストランでコーヒーを飲みながらちらっと書く、ということを繰り返せた
から、ほぼ同時進行でレポート化できたのです。
もし、OMRONから「スキャンダイオードの入った、チャタリングの無い
Massifにグレードアップ」という連絡があれば、3万円までだったら払います
から、是非、改善して下さい。(^_^;)

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以上でICMC1994私的レポートはおしまいです。
最後まで読んでくれた皆さん(いたでしょうか?)、ありがとうございました。