ICMC1998レポート
長嶋洋一

さて、今年もやってきましたICMC(International Computer Music Conference)。
いま僕は、会場であるUniversity of MichiganのMicigan Leagueという建物の
地下にあるウエンディーズ(^_^;)の中で、柱にコンセントのある席をゲット
してこれを書いています。毎年恒例のこのレポートですが、たぶん10/8に
帰国して、大阪のホテルからアップすることになると思います。
皆さんが読む時には既に過去になっているわけですが、そういう
わけで、期間中ICMCと同時進行で書いていきますので、そういう雰囲気で
時間をかけて(希望としては一日に2つの記事を読むというペースで(^_^;))
読んでいただければ幸いです。

さて、既に昨日のことになりますが、ここまでの道のりを簡単に。(^_^;)

9月30日、浜松発8:14のこだまで新大阪へ、そして「はるか」で関空へ、
と快調に来ました。僕は海外に行く時は関空か名古屋でまず捜します。成田
は不便ですからね。(^_^;) それに、成田上空の気流は悪いし。
ということで、Unitedのシカゴ行きに乗りました。シカゴで乗り換えて、
最終目的地のデトロイトに向かいます。もともとはNorthwestの関空から
デトロイトの直行便を取っていたのですが、8月末からのストでもしかする
ともしかするぞ、という脅かしのメイルが舞い込んだために、あわててHIS
に連絡してUAにしたのです。結果としてはストは解決してしまい(^_^;)、
徒労に終わってしまいました。再度NWにするのも面倒だったので、
そのままUAにしたわけです。
関空では、折からの台風が韓国を直撃しているらしく、ソウル行きは
飛んでいたのですが、釜山行きは欠航などと言っていました。

既に平田さん、平賀さん(注 : これら、あまりに近いお友達の方々について
は、いちいち「NTT基礎研の」「図書館情報大の」などとは書きません。
そこで、共立出版bit別冊「コンピュータと音楽の世界」をあらかじめお読み
になることを強くお奨めいたします)などは一昨日から渡米し、成田から昨日
には後藤さんと大矢さんが渡米している、という情報がありました。イメージ
ラボからは、今年は片寄さんと青野クンと平井さんが行く(金森さんは
今年は落ちたので留守組、井口先生は多忙なので来るか来ないかは会場で
ないといつも不明(^_^;))ですが、これも関空からのNW直行便で昨日には
出ているということで、たぶん誰にも会えないかなぁ、とターミナルに
向かいました。すると、ゲートに向かう電車の中で、しきりに僕の方を
ちらちらと見る、若くてきれいな女性がいます。(^_^) 気付いてみれば、
大阪芸大の学生の野村さんでした。野村さんは去年の音楽情報科学研究会
夏シンポ(京都)に参加していましたので、知っている人は知っている
でしょう。だいぶ去年とは雰囲気が違っていたので判らなかったのです。

前日に、大阪芸大の上原先生からのメイルで、「今年は個人的都合で
ICMCに参加できない。芸大からは学生の野村さんだけが参加するので
皆さんよろしく」とあったのを思い出しました。例年、上原先生の作品
に関して、学生がゾロゾロと「頭数」として行くのですが、今年は上原
先生の作品はテープですし、聞いてみると大阪芸大は野村さんだけの
参加だそうです。既に講義が始まっているのだそうです。(^_^;)

野村さんはNW直行便ということでゲートで別れて、Unitedに乗り込み
ました。日本を出るのが14:15、ここから11時間ほどのフライトで
シカゴに着くと(体内時計は午前1時)、現地はちょうど正午ごろ、と
いうことです。僕は例によって、機内に入ると腕時計を現地時間に合わせて
ちらちらとそれを眺めて「その気」になるように努めて、さらにいきなり
お酒でドカーーーッと爆睡して(^_^;)、目が覚めた午前5時頃(現地時間)
からは努力して眠らないようにしました。機内食は3回ありましたが、
これも周囲の人の食べ方(日本時間の生活パターンの食欲)を無視して、
現地時間のパターンで軽くしたりしました。シカゴに着く1時間半ほど
前の最後の食事は、現地て言えば朝食なのですが、僕はその前の食事
(何故か「赤いきつね」のカップメン(^_^;)その他)を軽くしておいて
お腹をすかせていたので、「チキンカツカレー」をびしばしと食べて
一日のスタートに備えました。隣の人などは食欲ゼロでうたた寝して
いました。今回は珍しくWindowシートだったので、なるべく明るい空
を見るようにもしました。他の窓は全部閉まっていましたが、脳に
太陽光を与えると目が覚めますので。
というような時差ボケ対策により、だいぶ眠いものの、シカゴに着いた
時には、ほぼ現地の体制になっていました。やはりヨーロッパよりも、
北米大陸の方がこういう調整はやりやすいですね。(^_^)

関空からシカゴまでのフライトの途中で1時間ほど、「予習」を
しました。どうせ現地に着いてみるとスケジュールは変更になっている
のが常なのですが、とりあえずICMC1998のWebにあったプログラム
を打ち出しておいたので、タイトルからだけですが、チェックすべき
発表をマークしておこう、というものです。この作業は、同時に、
頭の中を次第に英語モードに切り換える、という意味もあります。

プログラムを眺めてみると、去年とはだいぶ構成が違っていること
に気づきました。去年のギリシャのICMCでは、コンサートのセッション
が初めてパラレルになり、テープ作品のセッションがペーパーと
並立していました。従来のICMCではペーパーのパラレルはあっても
コンサートは「聖域」で、絶対にコンサートセッションでは他に
予定をぶつけていなかったので、驚いたものです。たぶんギリシャ
の僻地の開催で、多数の作品を採択しないと来場者が少ない、と
いう政治的なものだったのでしょう。今年は戻りました。僕は、
去年はペーパーのために多くのテープコンサートに行けなかった
ので、これは嬉しい「揺れ戻し」です。(^_^)

また、今年は僕はデモンスレーションの部に応募して採択された
ので、規定時間の90分はそこに詰めないといけないので、この
時間帯にパラレルで行われるペーパーセッションは聞けません。
さらに、今年は東野珠実さんの作品のコンサートにスタッフとして
協力することになっていて(数日前に、東野さんから最終版の
録音DATと楽譜が届きました)、この日はリハからホールに詰める
ので、この時間帯も聞けません。だいぶ、いくつものセッション
で穴あきになる、という事を覚悟しなければいけません。まぁ、
これは仕方ないことですが。希望としては、「行けないセッション」
には、あまり面白くないのが並んでいてくれると嬉しい(^_^;)
わけですが、なかなかそうはいきません。

さて、以下は、予習で「重要」とマークしたものです。ただし、
タイトルのみですから、実際には判りません。また、日本人の発表
にもマークしてみました。たいてい知っている人ばかりでしたが、
暗い機内で読んでいたので抜けがあるかもしれません。(^_^;)
特にマークしていないものはここではカットしました。あとで全ての
タイトルが、再度この記事に出てくる予定ですので。

ICMC1998 Program (paper, concert)

■ Thursday, October 1, 1998

● 1:00pm-3:00pm       Paper Session 1         Rackham Amphitheater

Masataka Goto
An Audio-based Real-time Beat Tracking System and Its Applications
いきなりの後藤さんの発表です。音楽情報科学研究会で既に発表して
いる、RMCPまわりの内容です。電総研に就職した後藤さんですが、
音楽情報科学ネタは本業ではなく、「5時から仕事」だそうです。

Barry Moon
score following in open form compositions
才脇さんが、「現代音楽のフリーフォーマットの楽譜に対するシステム」
を研究するということだったので、これはちょっと関係するかも。

Satoshi Usa
A Conducting Simulator
ヤマハ/工学院大の宇佐さんです。これも国内で発表したネタです。

● 3:10pm-5:10pm       Paper Session 2         Rackham Amphitheater

Costantini Giovanni
A New Interactive Performance System for Real-time Sound Synthesis
この手のタイトルは毎年多いのでがっかりすることも多い(^_^;)のですが、
やはりチェックは欠かせません。僕だってこういうタイトルで出す可能性
は今後も多いわけですから。

● 8:00pm        Concert 1            Rackham Auditorium

Mike Frengel   -   Rock Music
すごいタイトルだぁ。それだけ。(^_^;)

Daniel Trueman   -   Waltz
これもタイトルとしては凄いかも。それだけ。(^_^;)

■Friday, October 2, 1998

● 8:00am-9:50am       Paper Session 3         Rackham Amphitheater

Roger Dannenberg
A Study of Trumpet Envelopes Removing the Time Axis from Spectral Model
David Wessel
Analysis-Based Additive Synthesis: Neural Networks versus Memory
-Based Machine Learning
このセッションは、この二人のビッグネームもいるし、テーマも楽音合成の
まっとうなものです。かなりヘヴィになりそう。(^_^;)

● 10:00am-11:50am        Paper Session 4       Rackham Amphitheater

Miller Puckette
Real-time audio analysis tools for Pd and MSP
このセッションは他はイマイチそそられないのですが、この発表があるので
たぶん満員になるでしょう。ここをチェックするのは今回のICMCの一つの
大きな目標です。(^_^)

● 10:00am-12:20pm      Poster Session 1      Michigan League (Room D)

このポスターは、上記のペーパーの裏なので、たぶんパス。(^_^;)
内容もあまりソソラレルもの無し。ただし、Proceedingsを読むと、
この判断は変わることも多いです。

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 1    Michigan League (Hussey Room)

Matthew Wright
An Improvisation Environment for Generating Rhythmic Structures 
Based on North Indian "Tal" Patterns
Yoichi Nagashima
BioSensorFusion : New Interfaces for Interactive Multimedia Art
James McCartney
Continued Evolution of the SuperCollider Synthesis Language
僕の発表を含めて、この3件が並びます。お客が少なくて暇だったら(^_^;)、
他の人のも見ることができるかも。

● 1:00pm-2:40pm       Paper Session 5         Rackham Amphitheater

Eli Brandt
Low-Latency Audio Processing Using Off-The-Shelf Systems
Zack Settel
Real-time Frequency-Domain Digital Signal Processing on the Desktop
Robert Hoeldrich
Real-time Broadband Noise Reduction
Camille Goudeseune
A real-time audio scheduler for Pentium PCs
2件目のザックの発表は実は絶対に聞きたいのですが、僕の発表セッション
とパラレルなので、無理です。残念。(^_^;)
このセッションは、パソコン環境での信号処理に関したものが並んで
いますね。誰かに聞いてもらわないと。

● 3:00pm-5:00pm           Concert 2         Rackham Auditorium

Kenji Yasaka    -    Experiment 6
慶應SFCの八坂さんの作品。八坂さんは今回はペーパーでも発表です。

Cort Lippe     -     Music for Piano and Computer
芸達者なリッペですが、たぶんこの作品はどこかで聞いたものだと
思います。(^_^;)

● 8:00pm        Concert 3            Rackham Auditorium

■Saturday, October 3, 1998

● 8:00am-9:40am       Paper Session 6         Rackham Amphitheater

● 9:50pm-11:10pm        Paper Session 7        Rackham Amphitheater

● 10:00am-12:00pm      Poster Session 2      Michigan League (Room D)

Ken'ichi Ohya
Sound Variations by Recurrent Neural Network Synthesis
大矢さんの発表です。内容は国内では既に発表済み。リカレントNNで、
「男なら黙って楽音合成」をする、というもの。(^_^;)

Ichiro Fujinaga
Machine recognition of timbre using steady-state tone of acoustic musical 
instruments
1991年のモントリオールICMC以来、いつも毎年、会場でお会いするイチロー
さんです。彼はいま、ジョンホプキンス大学の先生です。再会が楽しみ。(^_^)

● 11:20am-12:10pm        Paper Session 8       Rackham Amphitheater

Todd Winkler
Motion-Sensing Music: Artistic and Technical Challenges in Two Works 
for Dance
Niall Griffith
LiteFoot - A floor space for recording dance and controlling media
この2件は実にソソラレルので聞きたいのですが、東野さんのリハに重なると
駄目となります。うーーーむ。(^_^;)

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 2    Michigan League (Hussey Room)

Yushi Aono
A Real-time Session Composer with Acoustic Polyphonic Instruments
青野クンの発表です。でも、たぶん東野さんリハで無理でしょう。(^_^;)

● 1:00pm-2:40pm       Paper Session 9         Rackham Amphitheater

Phil Burk
JSyn: Real-time Synthesis for Java
Francois Dechelle
The ERMES project: a new JAVA-based editing and control system for 
real-time musical applications.
同じ時間帯のこのセッションも、この2件あたりはぜひ聞きたいところなのですが、
リハとかち合えばパスということになります。

● 3:00pm-5:00pm           Concert 4         Rackham Auditorium

Tamami Tono-Ito     -    dinergy 2 for Sho and Live Computer
ここが東野さんの本番です。ICMFの時は、ステージセッティングの時間を稼ぐ
ためにインタビューなど入ってしまって集中できなかった、ということですが、
今回は大丈夫でしょう。聴衆を魅了したいです。ぼくはたぶん、本番では
ミキシングコンソールのところにいます。

● 8:00pm        Concert 5 -                                   Power Center

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関空からシカゴまでの機内での「予習」として、チェックすべき発表
にマークしているところです。この時点では、まだ9/30です。

■Sunday, October 4, 1998

● 8:00am-9:20am       Paper Session 10         Rackham Amphitheater

Richard Dudas
NVM - a modular real-time physical modelling synthesis system for MSP
まだMSPが出てきたばかりですが、早くもこういう発表があります。(^_^;)
ICMCの応募は去年の11月中でしたから、その段階でこれだけ出てくるという
のは凄いです。たぶんIRCAM関係者かな。(^_^;)

● 9:00am-10:50am   Studio Reports    Michigan League (Koessler Library)

● 9:40am-10:40am       Paper Session 11        Rackham Amphitheater

Atsuo Takanishi
Development of an Anthropomorphic Flutist Robot WF-3RIV.
これはたしかICMC1993東京であった、楽器演奏ロボットの関係かと
思うのですが、音楽情報科学研究会とかに出てこないので詳細は
不明です。(^_^;)

● 10:00am-12:00pm      Poster Session 3      Michigan League (Room D)

Leonello Tarabella
Free hands shape-position-rotation recognition system for interactive 
performances
Mark Bromwich
'Bodycoder': A Sensor Suit and Vocal Performance Mechanism for 
Real-time Performance.
全般には「パスもの」の多いセッションなのですが、この最後の2件の
タイトルは、要チェックです。

● 10:50am-12:10pm       Paper Session 12        Rackham Amphitheater

Tomonari Sonoda
A WWW-based Melody Retrieval System
これはNTTの人だったかな。このセッションはたぶんパスすると思うのですが。
(^_^;)

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 3    Michigan League (Hussey Room)

このセッションと、パラレルの次のセッションとは、どちらも興味あるもの
が並んでいます。どうしよう。(^_^;)

● 1:00pm-2:50pm       Paper Session 13         Rackham Amphitheater

● 3:00pm-5:00pm           Concert 6         Rackham Auditorium

● 8:00pm    Concert 7 - Percussion Ensemble               Power Center

■Monday, October 5, 1998

● 8:00am-9:30am       Paper Session 14         Rackham Amphitheater

● 9:00pm-10:50pm  Education Session   Michigan League (Koessler Library)

● 9:40am-11:50am       Paper Session 15        Rackham Amphitheater

Kenji Yasaka
Using Csound as a sound engine for interactive WWW contents
作品発表もする、SFCの八坂さんです。内容はあまり興味は無いのですが。(^_^;)

Ioannis Zannos
Designing an Audio Interaction Modeling Language: Specification, 
Implementation Issues, Prototype
かつて東大先端研に来ていた時以来のおともだちですが、去年のギリシャICMCでは、
発表予定だったのに現れなくて(^_^;)会えませんでした。彼はたしかギリシャ人
なのに。今年は会えるでしょうか。「ヤニ・ザンノス」さん、と言います。

● 10:00am-11:30am  Demonstration Session 4   Michigan League (Hussey Room)

Gabriel Maldonado
Realtime Csound Midi IN/OUT for Windows95
David Zicarelli
An extensible signal processing environment for MAX
Mara Helmuth
StochGran on Silicon Graphics IRIX
このセッションは絶対にチェックですね。ジッカレリの発表は、たぶん満員
になるでしょう。(^_^)

● 1:00pm-2:30pm           Concert 8         Rackham Auditorium

● 3:00pm-5:00pm           Concert 9         Rackham Auditorium

Kazuo Uehara    -    Pont de l'Alma de Paris
上原先生の作品です。ICMFでもやりました。当初はダンサーの入った
バージョンを計画されていたようですが、身内の事情により、テープ
のみの公演となるようです。残念。
この作品は、bit別冊の付録CDROMにも入っています。(^_^;)

Barry Truax    -    Androgyne, Mon Amour
たぶんこの先生の作品ということは、Granular Synthesisばりばりですね。
期待したいです。(^_^)

● 8:00pm     Concert 10 - Symphony Band                 Power Center

■Tuesday, October 6, 1998

● 9:00am-10:30am       Paper Session 16        Rackham Amphitheater

● 9:00am-11:30am  Demonstration Session 5   Michigan League (Hussey Room)

Seinoshin Yamagishi
Variations for MAX and the Internet
日本人ですが、詳細不明です。(^_^;)

Shigeyuki Hirai
Software Sensors for Interactive Digital Art
ラボの平井さんの、ICMCデビューです。(^_^)

● 10:40am-11:40am       Paper Session 17        Rackham Amphitheater

● 1:00pm-2:30pm           Concert 11         Rackham Auditorium

● 3:00pm-5:00pm           Concert 12         Rackham Auditorium

● 8:00pm           Concert 13                Power Center

...というところです。まぁ実際には、Proceedingsとプログラムを読んで、
作戦は臨機応変に変えていくことになります。

フライトの最後の2時間ぐらいははアメリカ大陸の上を飛んでいたと思う
のですが、たいていは色々なタイプの雲がずっと下界を覆っていて、
あまり地上は見えませんでした。ただ、ときどき見えると、そこら中に
大きな湖みたいなのがたくさんあります。高度を考えると、霞ヶ浦
クラスのものが無数にあるようなものです。(^_^;) やはりアメリカは
広いなぁ、と関心しました。フライトはまぁ順調そのもの。747です。
しかし、最後にシカゴ空港に降りよう、という時に、いきなり強烈な
乱気流がありました。僕はこれまでも、成田上空などで周囲ゲロゲロの
乱気流も体験していますが、今回のは突然にグワーッと上昇してドカーン
と下降する、という、まさにジェットコースター状態でした。(^_^;)
機内は「うひゃーぁ」という声が一斉に出ました。「キャー」でない
のは、いったん下向きのGがあってから上向きのマイナスGとなったの
で、身体に力が入らなかったからです。(^_^;)
まもなく着陸ということで全員がシートベルトしていたので助かりました
が、していなければ天井にぶつかって怪我する人が出るぐらいのもの
でした。この乱気流は、またあとで関連してきました。(^_^;)
上空から見ると、シカゴ近郊の住宅地は凄いですね。日本なら別荘地、
あるいは芦屋か田園調布か(^_^;)、という町並みで、かなりの割合で
「自宅プール」が青くよく見えました。大きさは判らないわけですが、
まぁそれぞれデカイんでしょうね。

シカゴに着いたのが、同じ9月30日の正午ころです。太陽を追いかけ
つつ日付変更線を越えたので、時間としては一日、前に戻ったという
ことになりました。シカゴからデトロイトに行くと、さらに1時間、
戻るので、シカゴからの行きは出発と到着がほぼ同時刻のフライト、
帰りは2時間ということになります。ややこしい。(^_^;)
シカゴのオヘア空港というのは、常時3-4本の滑走路をひっきりなしに
飛行機が利用している、という世界一の巨大エアポートでした。直行便
ではこの空港を体験できなかったので、トクした気分です。(負け惜しみ)
インターナショナルのターミナルで降りて、バゲージをいったん取って
入国審査、バゲージを預けて空港内の電車に乗ってドメスティックの
ターミナルへ。しかし、まぁこれが巨大なこと。ちょっと言葉にしにくい
のですが、「国内線ターミナル1」(3つのうちの1つ)に着いて、ここから
枝分かれした3つのうちの1つのゲートにさらに移動するために、空港の
地下の数百メートルの地下道を進むのに、ここを歩いている人々の数は、
たとえば大阪・梅田の地下街の混雑とほぼ同じなのです。判りますか。

通路にいくつもあるお店では、サミー・ソーサのペナントを買いました。
さすがにシカゴでは、ソーサがスターです。マグワイアはどこにも
ありませんでした。(^_^;)
そしてデトロイト行きのゲートを見つけて、DC10に乗り込んで、ここ
からは40分ほどのフライト。
...ところが、ここで1時間ほど足止めをくいました。
機内アナウンスはよく判らなかったのですが(機長はかなり気さくな人
のようで、機長アナウンスにはギャグとかが混じっていて客席の笑い
を取っていたのですが、悲しいことに僕は判らなかった...(^_^;))、
どうもシカゴ空港の付近に雷雲があるらしいのです。窓から遠くに稲妻
も見えました。乱気流の原因もこれだったようです。
ゲートから滑走路に出てからしばらく行ったところで、先に出ていた
飛行機が2機いる隣に止まったまま、30分以上、待たされました。
やがてそれぞれ動き出してみると、後ろには10機ほど、鈴なりで
さらに待機していました。さすがにトラフィックが凄いです。(^_^;)
フライト時間よりも待たされてとにかく飛んで、デトロイトに行き
ました。デトロイト空港周辺の住宅地は、シカゴに比べるとかなり
こじんまりと密集していて、まぁ工業都市というのはこういうもの
かな、とも思いました。

デトロイト空港はどうもNWの縄張りらしく(といってもサウスウエスト
航空なんてのも乗り入れていました)、間違えてNWのバゲージクレイム
に行ってしまって(人の流れに安易に乗ったのが敗因(^_^;))、空港内
を歩いて別ターミナルに戻ったりしましたが、なんとか荷物を見つけて
Commuter Transportationを利用して、会場のミシガン大学のある
Ann Arborまで行きました。とても綺麗な街で、ほとんどカナダに
近い、紅葉のもっとも美しい季節に当たったようです。(^_^)

早めに(なんと予約は去年の11月末です)予約して取ったホテルは、
大学のすぐ近くにあるCampus Innというホテルで、名前から大学関係者
の泊まる安宿、と思っていたのですが、これがまるで違いました。
凄い豪華なホテルで、東京や大阪でなら1泊で20000-25000円と
いう内容です。ICMCの宿泊は本当に場所によって当たり外れがある
のですが、今年は当たりでした。(^_^)
部屋からUAに電話して、帰りの航空券のリコンファーム、そして
帰りは通路側に座席の指定を変更して、とりあえず一段落。
フライトが1時間半ほど遅れた上にデトロイト空港でもたもたした
ので、部屋に入ったところで既に18時を過ぎていて、ICMCの
レジストレーションデスクは閉まっています。予定では、なんとか
ぎりぎりに登録して、Proceedingsを受け取って「予習」したかった
のですが仕方ありません。とりあえず夕食と探検のために、出かける
ことにしてエレベータでフロントに降りました。

フロントに降りてみると、いきなりどこかで見た顔。(^_^;)(^_^;)
平賀さんでした。一緒にあと二人の日本人。宇陀さんという方が平賀
さんのいる図書館情報大学からミシガン大学に来ていて、その関係で
図書館情報学(僕は詳しくは知りません(^_^;))のミーティング
をしたそうで、平賀さんとあと一人はそのために来たということ
らしいです。平賀さんは今年はICMCでの発表は無いのだそうです。
という話をしていたら、エレベータから出てきたのはまたまたいつも
の顔。早稲田出身、いまは英国・グラスゴーの大学で講師をしている
板垣さんです。板垣さんとはICMCのたびにだけ会います。(^_^)
去年もそうだったのですが、板垣さんによると、イスラエルの人で
過去の研究とか他人の研究をパクって内容の無い発表をしている、
というのが今年も通って発表する、ということで怒っていました。
僕に言わせれば、そういうパクり論文でも、アプストラクトを
うまく書いて審査員を騙せるだけの英語力が羨ましい(^_^;)という
のが先になります。

ということで、僕を入れてこの5人で、軽くミシガン大学のキャンパス
の案内をしてくれつつ夕食に向かう、ということになりました。
このセンターキャンパスですが、とても綺麗にしてあります。一見
すると、ちょうど今年の夏シンポのあった北海道大学のキャンパス
に似た雰囲気です。建物はとても大きく、図書館情報学も進んで
いるということで、巨大な図書館が3つも並んでいました。
途中、天気予報通りににわか雨になりましたが、傘を持って出た
ので助かりました。ここらは大陸の真ん中なので、天気予報は
異常に正確に当たる(^_^;)のだそうです。
僕はずっとフライトで食べ続けていて食欲が無いのとかなり眠い
ので、4人と一緒にヘビーな夕食をとる気分になれなかったので
分かれて、コンビニでサンドイッチとビールを仕入れてホテルに
戻りました。歩いて数分、というのはいいロケーションです。

ホテルのロビーに着いてみると、またまたいつもの顔が。平田
さんと橋本先生でした。これで平賀さんと合わせて、bit別冊の編集
委員は全員、落ち合えました。(^_^;)
平田さんはペーパーが落ちたのですが、今年からICMA のなんとか
いう役員になったので、そのミーティングのためにICMCに参加
したのだそうです。後藤さんと大矢さんは今日はデトロイト観光
だそうです。橋本先生も、ICMAのアジアパシフィックのボスと
いうことでの参加です。ICMC1999は北京ですが、どうも実行
委員長となるボスが病気で変更になったとかで、まだ全部は確定
して決まっていない(^_^;)(^_^;)、ということでした。これから
ICMCの期間中、また毎日ミーティングなのでしょう。大変です。

部屋では、パサパサして旨くないサンドイッチとビールで夕食、
そして20:00頃には爆睡モードに入りました。テレビは20チャンネル
ぐらい見れますが、全部英語なので(当然か(^_^;))、まだ初日は
内容が聞こえてきません。最終日あたりになると、だいぶ判って
くる予定です。夜中に23:00、2:00、4:30頃に目覚めましたが、
強引に寝てみるとまだまだ寝れました。これで完全に現地体調に
なりました(と思いこむことが大切です(^_^;))。

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一夜明けて、10月1日、ICMC初日の朝となりました。

まずは風呂に入って暖まり(僕はいつも出張中は夜でなく朝風呂派になります)、
今回のホテルは朝食も無いということで、会場のMichigan Leagueの地下の
ウェンディーズに行きました。ここで朝食していると8:30からの受付に
なる、という算段です。
ホテルを出てみると、日本で言えば11月ぐらいのすがすがしい朝。気持ち
がいいです。時差ボケも既に消えて、今日からバリバリいけそうです。
並木の紅葉も綺麗、キャンパス内も綺麗、いい雰囲気です。今日は荷物が
多い(レジストレーションすると、ProceedingsとかCDとか色々とある予定)
ので、明日にでもビデオで撮りながら向かおうと思いました。
木立と芝生では、リスが人間には目もくれず遊んでいます。(^_^)

ウェンディーズでハンバーガーで朝食。どうもこの街には、チャイニーズ
とかの安レストランは大学周辺にはなさそうなので、しばらくライスは
おあずけとなりそうです。まぁ、それもいいでしょ。
すると少しして、早稲田の橋本先生が降りてきました。やはり朝食は
ここが一番のお手軽のようです。(^_^;)
お話を聞いてみると、なんと今年は橋本研は応募したペーパーが
全滅で(^_^;)、大学からは誰も来ていない、とのこと。大阪芸大と
橋本研と、いつも大部隊の両方がいないのでは、かなり閑散とした
ことになりそうです。(^_^;)
しかし、橋本研は例年いくつも発表していたのですが、そんな名門でも
全滅ということもあるのですね。ICMCは厳しいですね。日本からの発表
としては、今年は阪大/イメージラボと、慶應SFCが複数発表で気を吐く、
ということになりました。

橋本先生は午前中からICMAの役員の会議がある、ということで、そこそこに
出かけていきました。

僕も、時間になったので、総合受付に行きました。今年のICMCキットは
専用のカバンもない、出来合いの袋を利用したなかなか地味なものです。
嬉しそうにICMC記念グッズとかカバンを作ることも多いのですが。(^_^;)
基本的にはCDと、論文集Proceedingsと、ペーパーとコンサートをまとめた
小冊子Program、の3点セットです。ここに今年は、地元の会社のデモの
ビデオテープが入っていました。それだけ。(^_^;)
どうもキャンパス内にもあまり「ICMC」の宣伝はないし、全体に
地味です。そなんもんかなぁ。アメリカ国内だから、十分に参加者が
多い、という強気も感じられます。

そして再び地下に降りて、コーヒーを頼んでコンセントのある机に
陣取って、レポートの(1)(2)から(3)のここまで書いてきたわけです。
途中で平賀さんが来ました。レポートの平賀さん情報はその時に
話したものです。
ここまで、レポートの(1)の最初からずっと書いてきて、3時間ほどに
なりました。いま12:15です。朝も昼もウェンディーズというのも
ナンなので(^_^;)、途中でパンでも仕入れつつ、ぼちぼち13:00からの
セッションに向かいます。後藤さんの発表の勇姿を写真に撮ります。
体調は今のところほぼ良好です。今年は「ICMC闘病記」にならない
ようにしないと。(^_^;)
では、出かけます。いったん切って、また続けましょう。

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...ということで、ペーパー会場のRackham Amphitheaterに着きました。
徒歩数分です。途中、天気のいい中庭で昼食をしている野村さんに
会いました。関空からNW直行便で片寄さんと一緒だったそうで、遠い
ホテルとの往復はタクシーにするそうです。(^_^;)

会場に着いてみると、なんとも日本人の嵐です。いま見回して
みても、後藤さん、青野クン、大矢さん、板垣さん、平賀さん、
イチローさん、平田さん、まだまだ続々と揃いました。(^_^)
たぶん発表者の初めてお会いする日本人の方もいますが、まだ
名前とお顔は一致していません。
初日は他のパラレルもないので、かなり満員です。ちなみに青野
クン情報により、イメージラボのご一行も昨日のNW直行便で野村
さんと一緒だったそうです。ラボの3人は同じホテルなので、
またこれから一緒になるでしょう。

...と言っているところに片寄さんが来て、僕が持っているのと同じ
PowerBook2400c/240を見せびらかします。なんと、G3ボード
を入れてG3化しているのでした。(^_^;)
十数万、かかったそうです。いいなぁ。
MSPも順調に動いているそうです。MacOS8.1+MAC3.5.9+OMS2.3.4
ということで、これは僕の環境と同じです。助成金が取れたのを
全部、PowerBook本体を含めてつぎ込んだそうです。(^_^;)
でも、会場を見回すと、皆んなガイジンの持っているPowerBook
はデカイです。2400はやはり日本人向けなのですね。(^_^;)

途中経過はここまで。発表中にはいちいち打ち込みませんので、
また一旦、切れます。
ここでわざわざ書いたのは、実は、さっき(ここから20数行上)
のところで、さて出かけようとしてPowerBookをスリープさせて
カバンに入れるところで、なんと、うっかり滑らしておっことして
しまったのです。(^_^;)(^_^;)
コンセントのある柱と足の間をぶつかりながらガリガリと
落ちたので、幸いにも壊れていせんでした。(^_^)
ここで壊れていたら、このレポートも幻でした。(^_^;)
そして、僕の発表は、プレゼンにもMAXのデモにも、この
パソコンを活用する予定でしたから、これは本当に助かりました。
PowerBookのフタと周辺には、付けようと思っても到底
付けられない(^_^;)、いくつものキズがつきました。ハクが
出てきてよかったです。(^_^;)
ということで、無事に再びここでスリープさせます。
(10月1日12:57、いよいよICMCの開始です(^_^))

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さて、今は10月1日の17:30すぎです。今日はさきほど、ペーパー
セッションが終わり、あとは20:00からのコンサートまで時間が
だいぶあります。でも僕は、まだ発表のためのチェックとか準備を
まるでしていないので、直前ぶっつけ準備ですがホテルに戻って
きました。ロビーには、ずらりと日本人御一行様が集まり、既に
さきほど無事に発表を終えて「打ち上げ行きましょうよぉ」(^_^;)
と誘ってきた後藤さんはじめ、皆んなで行くみたいです。しかし
僕はここはググッとこらえて、準備します。でも、忘れないうちに
さっきの二つのペーパーセッションをまとめておきましょう。

ちなみに一つだけお断りしておきますが、これからこのレポートで
紹介するペーパーや作品のタイトルですが、ICMCの開催前にWebで
公開されたものをダウンロードした、そのままです。そして現場に
着いてみると、Proceedingsのペーパーのタイトルが変更になっている
ものが結構多かった(^_^;)のですが、それをいちいち打ち込むと
いうかチェックする余裕はなかったので、そのままになっています。
正解については、Proceedingsを入手してご確認下さい。(^_^;)

● 1:00pm-3:00pm       Paper Session 1         Rackham Amphitheater

このセッションの座長は、我らがイチローさんでした。(^_^)

Jonathan Berger
A Model of Context Driven Meter Cognition During the Audition of 
Functional Tonal Music.

いきなり最初の発表(これと次のもの)は、板垣さんがボロクソに言っていた
「新しいものが何もないパクリ」(^_^;)と言われるネタのイスラエルの研究者
のものでした。でも僕は、なんせICMC初日でほとんど英語モードにも入って
いないので、なんやらよう判らないまま進みました。(^_^;)
シーケンシャルニューラルネットワークでリスナーとしての音楽認知に
使うというのは、確かにあまり面白いネタでも新規なものでもないと
思いますが、それでいて3倍近いペーパーの審査を通っているのですから、
それはそれで凄いことだと思います。(^_^;)

Dan Gang
Tuning a Neural Network for Harmonizing Melodies in Real-Time

こちらは、シーケンシャルニューラルネットワークでリアルタイムに
和声付けをする、というものでした。個々の和音を、ルートに対して重み付け
する基礎データに伝統的なものを使っているので、たとえばCのキーではCEGと
FACとGBDの和音は得点が高く、たとえばDFAに比べてDF#Aの和音は
かなり得点が低い、というアタリマエのルールで和声付けをするのに
NNを使って学習でチューニングする、というアタリマエの研究でした。
デモとして「スワニー河」を使うあたりもなかなかの低レベルなのです
が、その生成されたコードがあまりなもので(^_^;)、場内から失笑が
ドッと出てきました。(^_^;)
Dannenbergもかなりキツいつっこみを入れていたようです。

Masataka Goto
An Audio-based Real-time Beat Tracking System and Its Applications

さて、そうした重苦しい場内の雰囲気を受けて(^_^;)、我らが後藤さん
の登場です。ネタは既に音楽情報科学研究会関係者はよく知っている
ビートトラッキングねたで、デモはあのCGのCindyです。(^_^)
まぁ後藤さんの凄いのは、原稿もなくスラスラと流れる英語、そして
質疑応答でも"Any Question?"と自分から求めるほどで、相手の質問も
よく聞けてビシッと答えることの気持ちいいこと。(^_^)
デモも大ウケで拍手も多く、さらに質問ではCindyの振り付けも自分で
Cのソースとして制作した、というところでさらに場内絶賛。
オオウケでした。さすがだ。(^_^)
しかし、ウケをとるための作戦をあれこれ考えるかぁ。(^_^;)

Barry Moon
score following in open form compositions
タイトルが少し変更になっていて、中身はまったく予想と違っていました。
MAXのオブジェクトとして、スコアフォローイングのopen  formという
のを開発し、それもMSPベースで音響入力からいく、というものでした。
実際にはマシンパワーにかなり依存しそうで、本当にリアルタイムで
スムースな自動伴奏制御に使える精度とスピードとなるかは、今後の
パソコンの進歩にかかっています。(^_^;)

Satoshi Usa
A Conducting Simulator

さて、ヤマハから工学院大のドクターコースに出向している宇佐さん
と、何故かヤマハの持田さんの連名でのマルチモーダル指揮の発表です。
指揮棒のセンサだけでなく、グラスをかけて視線の動きも使っていると
いうあたりが新しいのですね。
ちょっとしたミスで(タイムテーブルが印刷されている媒体ごとに異なって
いるので、座長のイチローさんが10分短くしてしまいました(^_^;))、
10分ぶん用意したビデオのほとんどを見せずに終わってしまいました
が、無事にこれも終了です。日本人の発表が無事に済むと、皆んなホッ
とするのです。(^_^)
宇佐さんはいかにも真面目なヤマハマン(^_^;)で、いまCCRMAに
行っている藤島さん、そして既に偉くなってしまった藤森さん、と
ヤマハの中枢に音楽情報科学関係者が浸透しているのは、僕として
は嬉しい限りです。(なんて、この会議室のログは上司に読まれて
しまうらしいのでマズイかな。(^_^;))

● 3:10pm-5:10pm       Paper Session 2         Rackham Amphitheater

なんで3件なのにこの時間帯なのか不明でしたが(^_^;)、実際には3:30に
始まって4:30頃には終わりました。(^_^;)

Costantini Giovanni
A New Interactive Performance System for Real-time Sound Synthesis

発表者が不在で代読棒読み質問ナシ、という究極の作戦。(^_^;)
イタリアのグループで、例によってDSP使いまくりの力ワザ。信号処理
の部分がMSPやKymaのようにまったく出てこないので、かなり眉唾
で聞く必要がある、といういつものやつでした。(^_^;)
中身は、BETEL PRIONISというシステムで、56000DSPにSIMMの
32MBをつけたブロックを8つ並べて8チャンネルの空間音響出力
とともに並列処理させる、というものです。ホストコンピュータからは
MIDIベースのコントロールを受けて、リアルタイムの信号処理により
サンプリングした音響素材を処理するのでなく、サイン合成と
PCMをベースとした楽音合成をリイルタイムにいじる、というもの
で、発想というか目的としてはちょっと時代遅れなものです。(^_^;)
コンサートに使用した、という実績は発表にあったのですが、実際の
音はなく、なにより皆んなが知りたい信号処理アルコリズムなどの部分
がほとんど触れられていないので、なんか怪しかったです。(^_^;)

Lorin Grubb
Enhanced Vocal Performance Tracking Using Multiple Information Sources

Dannenbergと共同研究で、有名なICMAビデオにある、トランペット
をトラッキングする伴奏を声楽の伴奏に利用する、という、その
トラッキング部分の発表でした。研究としては、ピッチだけでなく、
スペクトルエンベロープ(母音とかを判定)、さらにオンセットなど、
複数の情報を利用することで確実度が上がる、というまさに研究研究
したものだったのですが、僕に言わせれば、「いけません。」(^_^;)
何がイケナイかといえば、どうも声楽の自動伴奏というのはイケナイ
のかもしれません。本質的に。
デモのビデオでは、メリスマのあるオラトリオみたいな声楽曲を歌う
ソプラノの顔、というものでしたが、音楽的には、なんとも不自然で
グロテスクなデモとなってしまいました。気付いた人は会場でも
少数派だったとは思いますが(技術サイドの人は気付かない)。
声楽の場合、伴奏がほぼインテンポで流れるところに、コブシと
いうのか、微妙にズレながらもどこかで帳尻が合う、というところに
演奏の「芸術的逸脱」の妙味があります。そこで、トラッキングの
精度が上がったのでちょっとした「変動」(リアルタイム認識結果)
に伴奏が確信をもって追従すると、テンポが演奏者の期待を裏切って
ギクシャクとルバートし、動揺を誘うのです。何度ものリハでこの
特性を知っているソプラノは、ちょっとした間延び(あとで追いつく
予定なのに)に対応して遅くなってしまった伴奏のテンポを引き上げる
ために、敢えて早く歌って伴奏をスピードアップさせますが、これだと
自分の演奏も先に進んでしまって、やりたかった表現ができなく
なります。デモのビデオでも、その一瞬の不愉快な気持ち(^_^;)
が僕には伝わりました。たぶん発表者は気付いていないのでしょう。
問題点は質疑でもつっこまれましたし、Danenbergも判っているとは
思うのですが、これは駄目ですね。追従カラオケの場合にも、直面
する問題なのですが。
ということで、研究としては進展のあったものですが、応用が悪い
とデモ見て興ざめ(^_^;)、という実例を見せつけられてしまいました。

Karen Kahn
Socio-economic, race, and gender issues in computer music composition

タイトルは"Voice and Speech in Computer Music Composition"に変更
になっていました。なんだかこのセッションは、残り物の寄せ集め
だったのだ、と理解できた発表でした。(^_^;)
Computer Musicの作品では、従来の音楽でメロディーを担当している
ボーカルを、音の素材として、あるいはナレーションの素材として
活用できる、ということを、いくつかの作品を調べて述べていました。
そんなアタリマエのこと、言われなくても皆んなやっているのですが。
なんで、こういうのが通るのかなぁ。僕には判りません。(^_^;)

...おぉ、もう18:20になりました。それではあとは、買ってきたホット
ドッグとマフィンで一人寂しい夕食をとりながら(^_^;)、MAXのデモの
パッチでも作って、20:00直前にコンサートに出かけることにします。
コンサートの感想は、また次の記事に分けます。なんせここの会議室は、
1アーティクル300行の制限がありますので。僕はPowerBookでは全ての
テキストドキュメントはJeditで書きますが、今回はいつもと違って
「行番号表示」をONにしています。ちなみにここは265行です。(^_^;)

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まだ10月1日です。今、最初のコンサートからホテルに帰ってきた
ところです。例年のICMCなら、20:00からのコンサートというのは
ラス前で、そのあとに23:00からとか25:00から(^_^;)という
鬼のようなコンサートがあるのですが、今回のICMCは毎日、夜の
最後のコンサートは20:00からです。いま22:30ほどですが、この
時間帯に帰ってこれるならかなり大人しいもんです。(^_^;)
明日に書く、と予告したコンサートのレポートですが、まだ早いので
忘れないうちに書くことにします。どうせ、途中で仕入れたビール
片手に書く、という程度のものですので。(^_^;)

今回のコンサートのホールは、ペーパー会場と同じ、ホテルから早足で
歩けば5分ほどのRackham Amphithreaterの1階でした。あとはもう少し
歩くPower Centerというのが会場ですから、今回のICMCはかなり近い
ところでまとめた、ということになります。ただし、6件に増えていた
インスタレーションのうちの2件は、バスで行くような遠いMedia Union
にあるらしいです。僕はパスとしました。片寄さんが、デジカメ片手
に行くことになりました。

ホールに着くと、平賀さんと一緒に東野さんがいました。なんでも、
今日に到着して、来たばっかりたそうで、まだレジストレーション
していないとのこと。数多い海外公演で時差ボケには強い東野さんです
が、いきなりのコンサートはキツイかも。(^_^;) どうも多数の日本人
は、コンサートとなると何故か周辺とか後ろに陣取るのですが、(^_^;)
僕はいつも中央前列なので、東野さん、野村さんなどと一緒に中央
ブロックに座りました。なかなか広いホールで、かなり前でないと
パフォーマンスはよく見えません。

開演前のホール内では、さきほどMichigan Leagueで久しぶりに会って
挨拶した、ヤニ・ザンノスさんとまた会いました。ヤニさんは、かつて
東大の先端研に来ていた時に音楽情報科学研究会で二度ほど発表して
いたのでそこで知り合いました。僕もヤニさんの研究室を見学に、
東大に遊びに行ったことがあります。凄い研究所でした。(^_^;)
研究だけでなく、作曲も自分で実際に演奏も(中東とかの吹奏楽器など
を演奏します)する人で、また耳がよく、音律ネタの研究もしていた人
です。ICMC93など、その後もときどきICMCで見かけていたのです
が、去年のギリシャのICMCでは発表者にヤニさんの名前があって、
会えると楽しみにしていたら何か都合があったらしく発表キャンセル
で会えなかった(^_^;)のです。そして、月曜日の晩に一緒に、ヤニさん
がここで発掘したスシバーに、東野さんも一緒に行きましょう、という
ことになりました。これで、だいぶディナーの予定が入りました。
今日までは二晩、粗食でしたが、明日はCMJのMITプレスがスポンサー
となる「ICMCレセプション」(要はタダで飲み食いできるパーティー)、
その翌日の3日はICMAのバンケット、そしてさらに翌日の4日は
Kymaユーザのみを招待してのシンボリックサウンド社のプライベート
パーティ、そしてその翌日の5日に、ヤニさんたちとのスシバー、
という事になりました。うーーん、充実の予感。(^_^)

とあれこれしていたら、コンサートが始まりました。ほとんどが
テープというハードなコンサートです。(^_^;)

● 8:00pm        Concert 1            Rackham Auditorium

Allan Schindler   -   Breath of Life

なんとトップバッターはいきなり20分の作品。時間が書いてあるだけ
でびびります。(^_^;)
ありがちな自然音・楽器演奏音(ノイズ含む)のフラグメントを配置した
作品。ただし、作曲者自身がプログラムしたソフトウェアでこの配置
(作曲)を行っているというもので、僕はちょっと思いついたアイデアを
さっそくメモしました。(^_^)
でも20分は長かった。冒頭の7分ぐらいで終わったら、ブラボーもん
だったのですが。(^_^;)

Mike Frengel   -   Rock Music

タイトルでそそられた唯一の作品。そしてなんと、演奏時間は1分35秒。
絶対、前の作品と意図的に並べた(^_^;)(^_^;)と思います。
プログラムノートを見ると、「これがロックだ」という特徴は何か、
を考察して、そういうサウンドを楽音合成で新たに作り(アリモノの
サンプリングは無し!)、さらにComputer Musicの世界で一般的に
使うテクニックでこの素材を下加工した、というものです。つまり、
ロックの単調なビートとかはなく、音響断片が行き来するという
意味では現代音楽なのですが、香りとしてロックになるかどうか、
というものです。アイデアの勝利です。(^_^)
ディストーションのかかったギターとか、ギターのハウリング奏法
とか、そういう「これぞロック」という印象のサウンドを集めた
ものです。だいたい想像つきますでしょうか。
結果は大好評。(^_^) 短かったのも理由の一つかも。(^_^;)

Daniel Trueman   -   Waltz

昔のLPの、ノイズに埋もれたブラームスのワルツをイメージ素材と
して使ったコンクレート作品。これも12分はちょっと長かったという
感想です。でも、これを聞きながら、またまた新しい作曲アイデアを
一つメモできたので、許す。(^_^;)

Aquiles Pantaleao   -   Concreta

休憩後のこの曲とその次の曲は、プログラムノートを見ると、音響処理
にほぼ同じ手法を使っています。つまり、これが現在のComputer Music
の信号処理の主流なのでしょう。一つは、スペクトルの処理(クロス
シンセシス)、そしてフェーズボコーダ、最後にグラニュラシンセシス。
もういずれのサウンドも定番となっていて、音が鳴った瞬間に、ああ
アレだ、と判ります。(^_^;) それもその筈、今ではパソコンでも
これらの処理はフリーウェアでもいくつも入手できる時代ですから。
そこで問題となってくるのは、やはり曲の構成と長さ、です。(^_^;)
作曲家は何度も何度も練っていて思いこみのあるサウンドでも、
一度だけ初めて聞くと、やはり、長い。この12分の曲も、最初の6-7分
ならブラボーしたかったのですが。(^_^;)

Seunghyun Yun    -   The Halo - for Guitar and Live Electronics

韓国の作曲家の作品。ギターの演奏とテープによるもので、ギターに
かけていた深いリバーブは、ミキシングコンソールのところの
パソコンでかけていたようですが、それ以上の信号処理はあまり
していなかったようです。信号処理は、あらかじめ同じギターの音を
録音して、非実時間に制作したようです。14分と長かったのですが、
生身の演奏者が熱演すると救われる、というのは事実でした。

Daniel Worley   -   Words

奥さんが朗読した詩のボイスなどを素材にしてタイムストレッチとか
フラグメントのよくある手法を駆使した作品。これも7分間というのは
ちょっと長いと感じました。「おっ、いいな」という感激が持続
しないのは、まだ完全にICMCモードに入っていないからかなぁ、とか
思いました。(^_^;)

Kilian Schwoon    -   Orpheus und Demokrit - Eine Klaviermusik mit 
Tonband

最後はスタインウェイの中に手を伸ばして弦をつまびいたり(^_^;)の現代
奏法をまじえたピアノとテープの作品。インタラクティブな仕掛けは
なくて、演奏者はテープに応じて演奏を進めていくのですが、あまり
練習していないらしく(^_^;)、いつもテープの音が来るとあわてて
ついていく、というディレイが丸わかりでした。(^_^;)
テープ部分は持続音系のサウンドが中心で、普通には「ピアノ」と認識
できる音色ではないのですが、どうも僕にはピアノ音の倍音構成が
聞こえましたので、たぶんピアノの音を素材としたものだと思います。
ここまで「受け身」の立場だと、ちょっと演奏者というよりも作品が
かわいそうかなぁ、と思いました。

ということで、初日のコンサートはおしまい。明日の朝は、8:00から
いきなり、大矢さん曰く「男は黙って楽音合成」もありますし、僕は
午後には発表です。まだデモ用のMAXパッチは未完ですが(^_^;)、
まぁ現場でなんとかしましょう。そろそろ23:25。これで、おとなしく
寝ることにします。7時間睡眠で明日も元気に行きましょう。(^_^)

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10月2日の朝です。いい天気です。テレビの天気予報では、明日か明後日
には雨を降らす前線が五大湖のあたりに来そうですが、今日はいい天気の
ようです。
7時半すぎにホテルを出るところで、昨日、無事に発表を終えた宇佐さん
と一緒になりました。ドキドキだったということですが、いやいやなかなか
素晴らしい発表でした。僕はああはできません。(あんなにキチッと準備
しませんので(^_^;))

宇佐さんはホテルで朝食を済ませたのでペーパーセッション会場に直行と
いうことで別れて、開いているお店を捜しました。多くの店は平日は8:00
オープンですが、既に開いている店を発見。ここは日曜日でも8:00スタート
ということで、これで朝食のアテは確保できました。(^_^)
しかし、なんでこうもアメリカのハンバーガーというのは巨大なのでしょう
かねぇ。僕も口は小さくないと思うのですが、どうしてもパクついている
と溢れて爆発して破壊されてしまいます。(^_^;)

巨大ハンバーガーと悪戦苦闘しているところに板垣さんが来ました。
誰も同じ行程をとるようです。(^_^;)
板垣さん情報によると、来年のICMC1999北京ですが、実行委員長の
筈だった北京大学の教授が脳卒中で倒れてしまい、なんとICMC1996
香港をオーガナイズした人たちが代打になりそうだ、ということです。
僕は1991からのICMCで、この香港1996だけ行かなかったのですが、
どうもこのオーガナイザーは宗主国イギリスからリモコン支配して、
現地の音楽家はほとんど無視して参加しなかった(^_^;)とか、一部に
かなり抵抗のある人たちなのだそうです。その連中がまたオーガナイズ
するなら、もう来年のICMCはパスだ、という人もいるとかで(^_^;)、
かなり紆余曲折ありそうです。もっとも、いつも板垣さんのこういう
話はけっこう大袈裟モードが入っているので(^_^;)、割り引いて聞く
必要はありますが。

というような話をしながらペーパー会場に着きました。5分遅刻ですが、
もう始まっていました。実はここまで、会場でPowerBookを起こして、
2件目の発表の間に書いてきました。朝イチは楽音分析合成の話で、
けっこう中身が見えることもあり、同時進行で書いていきたいと思います。

■Friday, October 2, 1998

● 8:00am-9:50am       Paper Session 3         Rackham Amphitheater

このセッションのテーマは、楽音合成のセッションとして見るとどうも
技術的にはツギハギなのですが(^_^;)、「アコースティック楽器」という
キーワードで集まっているようです。こういう構成もあるのですね。

Rafael Irizarry
A Direct Adaptive Window Size Estimation Procedure for Parametric 
Sinusoidal Modeling

加算合成方式において、局所ハーモニクスとノイズ成分とに分けて、前者に
ついてアコースティック楽器の音を統計的に分析したものです。ウインドウ
サイズを最適に動的に変化させることを提案していました。

Davide Rocchesso
Subjective evaluation of the inharmonicity of synthetic piano tones

合成させたピアノ音のインハーモニシティを減算方式の手法で評価する、と
いう「分析」のお話。僕はどちらかというと「生成」に興味があるので、
この手の話はちょっと苦手です。(^_^;)

Roger Dannenberg
A Study of Trumpet Envelopes Removing the Time Axis from Spectral Model

さすがのDannenbergでした。彼の得意なトランペットに限定して、まずは
エンペロープの形状と重心が音楽的要素(スラー、スタカート、音型の上行
下行など)によって変化することを分析してルール化し、あわせてスペクトル
の変化も補間によって実現します。これを自動演奏のトランペット合成音に
適用して、なかなかにソレっぽいサウンドにしていました。「楽音合成に
おいて(一般的には音色に皆んなが注目しているが)エンベロープというの
もクリチカルに効いてくる」というこの言葉は、ちょっと心して記憶して
おきたいと思いました。やっぱり、さすがです。(^_^)
そういうつもりで、MIDIシーケンサでMIDI音源をトランペット音にして
いろいろなニュアンスの曲を聞いてみれば、たぶんハンで押したように
同じエンベロープでは聞いていて耐えられなくなりそうです。(^_^;)
考えてみれば、レガートとスタカートとで同じエンベロープで演奏など
する筈もないのですが、ノートONイベントの瞬間にはMIDI音源はそれを
知るよしもないのです。(^_^;)

David Wessel
Analysis-Based Additive Synthesis: Neural Networks versus Memory
-Based Machine Learning

加算合成方式で、少ないパラメータ(周波数、アンプリチュード、ブライトネス程度)
で音楽演奏情報(サウンド)を生成するのに、パラメータマッチングの生成部分に
ニューラルネットワークを使ったのと、メモリベースモデルでパラメータ補間する
のとを比較しました。NNは学習によって性能向上するのでちょっと反則だと思う
のですが、案の定、デモの音はNNの圧勝でした。(^_^;)

Bernd Schoner
Data-driven Modeling and Synthesis of Acoustical Instruments

MITメディアラボの人の発表で、目標はずばり、ディジタルバイオリン。(^_^)
この研究者自身がバイオリンを弾くようです。よくあるパターンです。
まず入力として、センサーバイオリンがあります。弓の部分に二つの
センシング部分(持つところとボウイング接触部分)があり、もちろん
本体にもフィンガリングのセンサとかがあります。
ここで演奏情報をまず、多数、獲得します。たとえば、ボウイングの位置、
ボウイングの速度、フィンガリングの位置、ボウイングの圧力、弓と
ブリッジの位置などを、刻々と時間軸に従ってセンシングします。
そして次に、この情報を3次元以上の予測空間にクラスタリングして
マッピングして学習データとします。
生成部分は、Cluster-Weightened Modelingというちょっとよく判らない
(改良型のニューラルネットワークのようですが、数式の嵐に参った
というところです(^_^;))学習できるネットワークで行います。
その結果、デモでウケたビデオですが、左腕の上をセンサーバイオリンの
弓で「弾く」だけで、いいカンジのバイオリンの音がリアルタイム
生成されていました。MITはいつも、この手のデモが上手いです。(^_^)
詳細はちょっと理解しきれなかったのですが、サンプリング方式の
リアリティと物理モデルの自由度の両方を持つ新しい楽音合成、と
いう能書きには、ちょっと来年以降も注目していきたいと思いました。

...ということで、ここで休憩。アナウンスがあって、以下のポスター
セッションのポスターは、午後まで現場に張っておくので見て下さい、
とのことでした。僕は次のセッションもペーパーですし(注目のが
あります(^_^))、午後は自分の発表とかあるので、以下のポスター
はパスとなりました。あしからず。(^_^;)

● 10:00am-12:20pm      Poster Session 1      Michigan League (Room D)

Martin Alejandro Fumarola
Report of the COMDASUAR: a significant and unknown Chilean contribution
in the history of computer music

Martin Alejandro Fumarola
Change and Permanence in Latin American Electro-Acoustic and Computer Music

Dale Millen
The First Buchla 300 Series Music Box

Elizabeth Hinkle-Turner
Coming Full Circle: Composing the Cathartic Experience with CD-ROM Technology
Substructure Discovery of Symbolic Musical

Tang-Chun Li
Information using Minimum Description Length Principle

Elizabeth Hoffman
Animated Score for Electro-acoustic Tape/Live Performer Compositions.
AVA: An experimental, grammar/case-based

Wolfgang Chico-Toepfer
composition system to variate music automatically through the generation 
of scheme series

そして、引き続きペーパーセッションが始まりました。ここも、ほぼ同時進行
で現場で書いています。(^_^;)
このセッションは「分析・合成」の二つ目のセッションで、テーマとしては
「Timbre」ということで寄せ集めたようです。技術的にはこれまた色々な
ものがごった煮になるのですが、考えてみると、ほぼ同じような技術テーマが
並ぶよりも、このようにキーワードを揃えたセッションの方が、見方によって
は面白いような気もしてきました。(^_^)

● 10:00am-11:50am        Paper Session 4       Rackham Amphitheater

Shlomo Dubnov
Timbre Characterisation and Recognition with Combined Stationary and 
Temporal Features.

分析系での音色の認識のテーマで、Xabier Rodetさんが連名なので、きちんと
したものです。ケプストラム分析(エンベロープ、分散など)にベクトル量子化
の手法を用いることで、スペクトル変化の特徴パラメータを抽出する、という
もののようですが、難しいです。(^_^;)(^_^;)
デモを聞くと、「そんな難しいことしなくても、これは分類できるんちゃう」
というような例が出てきて、ちょっとがっかり。(^_^;)

Miller Puckette
Real-time audio analysis tools for Pd and MSP

さすが、この時間になると場内は満員になりました。(^_^)
ミラーパケットとジッカレリの名前が並んで、タイトルにPdとかMSPの
文字があれば注目してしまいますが、ここは生成モノではなかったの
でした。(^_^;)
ところで、ちょっと脱線です。MAXはこの二人がIRCAMで作ったもの
ですが、今は二人ともIRCAMを去っています。パケットはUSCD、
ジッカレリは「サイクリング74」というベンチャーみたいです。
これはIRCAMで仕事している後藤スグルさんの話にもありましたが、
どうもおフランスというのは保守的なところで、IRCAMのスタッフ
といっても、技術系の若い人というのは最初に採用された段階で、
作曲家とかの「サポーティングスタッフ」として採用されていると、
そこからMAXとかの凄いソフトやシステムを開発しても、作品を
発表して国際的に一人前の研究者や作曲家として認知されても、
IRCAM内での地位というか扱いは変わらないらしいです。(^_^;)
後藤さんは、毎年更新する(いつ切られるかもわからない(^_^;))
契約の作曲家で、いわばこれらスタッフを「使う」立場にあるので、
まだいいのだそうです。そこで、若手で実力あるパケットやジッカレリ
は、いい研究等の条件を提示する(力量を正当に評価する)アメリカの
大学とかに移ってしまうらしいです。タナカアタウもそういうことで
いま、日本にいるのかもしれません。(^_^;)
さて、その発表ですが、PdやMSPに使える、リアルタイムのピッチ
トラッカーのオブジェクトについての発表です。
Fiddleというのは、単音または複音のピッチトラッカーで、入力された
サウンドから、もっとも近いメロディーラインのピッチを抽出する
のですが、同時にその音色の各倍音のサイン成分の強度を出力
するらしいです。簡単に言いますが凄いですよね。(^_^)
Bonkは、主にパーカッション楽器系のトラッキングに使うもので、
エンベロープのフォローイングのアルゴリズムを適用しています。
いずれも、マシンパワーに大幅に依存することなるみたいです。
実際に会場でWindowsマシンにPdを走らせてデモをしました。
スティックで、机、カウベル、鐘、など4種類の楽器を叩くと、
ちゃんとそれぞれの音色をリアルタイム分析してそれぞれ
対応させた異なるピッチのMIDI音を鳴らしたのですが、設定が
ちょっとずれると、同じカウベルで鐘の音が出たり、とウケ
ていました。(^_^;)
僕などは、打楽器の全体をマイクで拾ってライブで使うとしたら、
こういう誤認識はちょっと使えない(^_^;)ので、それぞれの
打楽器に衝撃センサを別個に仕込んで、と考えてしまうのです
が、あくまでシステムの能力向上でソフトでいくのだ、という
のも一つの方針なのだと思います。
この発表が終わると、会場からはドッと人が去っていきました。
やはり、彼は人を集める「有名人」なのです。(^_^)

以下の3件の発表は僕は聞いていた筈なのですが、ちょっとメモが
出てきません。なんだったのかなぁ。(^_^;)

Amar Chaudhary
Open Sound Edit: An Interactive Editing Framework for Timbral Resources

Damian Keller
Ecologically-based Granular Synthesis

Richard Boulanger
Teaching Software Synthesis through Csound's New Modelling Opcodes

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さて、今はコンサート3の会場でインターミッションの最中です。
さきほど、無事に盛況のうちに、僕のデモセッションも終わった
ところで、気分は早くレセプションで旨いビールを飲みたい! と
いうところです。(^_^)

とりあえず、今日の午後についてまとめておきましょう。
まず、僕のセッションの裏の以下のセッションは、行きたかったのです
が、行けませんでした。(^_^;)

● 1:00pm-2:40pm       Paper Session 5         Rackham Amphitheater

Eli Brandt
Low-Latency Audio Processing Using Off-The-Shelf Systems

Zack Settel
Real-time Frequency-Domain Digital Signal Processing on the Desktop

Robert Hoeldrich
Real-time Broadband Noise Reduction

Camille Goudeseune
A real-time audio scheduler for Pentium PCs

片寄さんの話では、ザックとコートリッペの漫才が絶好調というか
度を過ぎていたそうです。(^_^;)
そして、以下のセッションが僕の参加したデモンストレーションでした。
でも、僕のブースはずっと盛況で、僕は他の二人のところにも行けません
でした。(^_^;)

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 1    Michigan League (Hussey Room)

Matthew Wright
An Improvisation Environment for Generating Rhythmic Structures 
Based on North Indian "Tal" Patterns

Yoichi Nagashima
BioSensorFusion : New Interfaces for Interactive Multimedia Art

James McCartney
Continued Evolution of the SuperCollider Synthesis Language

実際には、僕のセッティングはばっちり完了したのに、ブースのビデオ
モニタの入力をビデオのラインに切り換えるためのリモコンが無くて、
始まるまで捜していました。なんとか5分遅れで開始しました。
あとはもう、夢中の1時間半でした。このあたりは、またいずれ、
思いだしつつ書いていくことにします。まだ、内心の興奮が
覚めやらないので。とにかく、無事に終わって良かった。(^_^)
ということで、そろそろインターミッションも終わり、コンサートの
後半になります。続きは別の記事にしましょう。

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ここからは、いろいろあって、ホテルの部屋で書いています。いま10月2日の
23:00です。書き終えると日付は変わっているでしょう。

今日10月2日、午後のデモセッションで無事に発表をしました。
ブースには、多数の日本人のオトモダチだけでなく、熱心な多数の
お客さんが来てくれました。テーマとして関心のあるものだった
ようです。(^_^)
内容は夏シンポとほぼ同じ、照岡さん協力で製作したMiniBioMuse
のデモ、色々なセンサを利用した僕の作品のビデオ紹介などです。
実際にその場で筋電センサを使ってMAXパッチ(前夜に作ったもの)
でデモり、最前列のお客さんにも体験してもらったので、よーく
判ってもらえました。(^_^)
何人もに聞かれたのは「お前はタナカアタウとBioMuseを知って
いるのか」(^_^;)というものでしたが、「オトモダチで、先々週
はコンサートで一緒、再来週もパネラで一緒です。このセンサは
アタウにもウケてます」と答えると、相手も納得していました。
まぁ、なんとかいけたかな、というところです。
最後のあたりで、このセンサをもう1台作ってくれないか、いくらだ、
コマーシャルベースで売らないのか、会社を作らないのか(^_^;)、
等々のリクエストが相次ぎました。(^_^;)
僕はフリーターで、自分の興味で音楽家や研究者に実費のみの
儲けナシでオリジナルマシンを作ってプレゼントすることはあるが、
時間は暇に合わせるのでかかるんだよ、という事を説明するのに
苦労しました。(^_^;) 何人もと名刺交換しましたが、どうも、
いずれ後藤さんからのように、「センサ作って」という怪しい
英語のメイルが続々と届くのかもしれません。(^_^;)(^_^;)

デモ終了の時間となって、コンサートに間に合うようにと片づけている
と、そこにかけ込んできた女性の研究者がいました。かなり注目して
いたのに終わってしまった、とOhMyGod状態だったのですが、こちら
もここでサービスしてまたやったのではコンサートに行けなくなるの
で、せっかくしまったMiniBioMuseを出して見せたりしました。
センサのサンプリングレートとか、なかなか専門的なことを聞いて
きました。話をしていると、僕もチェックしていた、ダンスの
センシングのテーマでペーパーの発表をする人でした。その時に
また、ということで、無理やり終了してコンサート会場に向かい
ました。(^_^;)

● 3:00pm-5:00pm           Concert 2         Rackham Auditorium

さて、発表直後という精神的にハイな状態のために、このコンサートは
まったく眠くなることもなく聞けましたし、僕の印象としてはかなり
「いい作品」が並んでいたと思います。以下、簡単にコメントします。

Matthew Smith    -   Puzzels & Pagans

この作品は当日配布のプログラムから消えていました。どこかに移動した
のかもしれません。(^_^;)

Douglas Geers   -   Ripples

個人的には気に入りました。綺麗でした。眠る人は眠るでしょう。リズム
の錯覚を利用している、という仕掛けに気付いた人には興味ある作品だった
と思います。リズムの錯覚については、たしか去年のギリシャのICMCの
レポートで触れたと思いますので、この会議室の過去の部分を捜して
みて下さい。なかなか上手く、この錯覚を音楽的に利用していました。
(判った人はどれだけいたか、は別ですが。(^_^;))

Barry Moon    -   Interact I

フルートとライブエレクトロニクスの作品で、どうもミキシングコンソール
のところのPCで、リバーブ程度ですが、刻々と変化させてかけていました。
僕はうかつにもここで気付いたのですが、「スコアフォローイング」と
いうのは、こういう場合に活用されるのでした。自動伴奏だけでなく、と
いうか、これも一種の自動伴奏なのですが、演奏者がいま楽譜のどこを演奏
しているのか、というのをシステムが自動判別してリアルタイム信号処理
のパッチやパラメータを切り換えれば、演奏者はペダルとかセンサなどの
特殊なコントロールを気にせずに、フルートとかピアノなどの本来の
「演奏」業務に専念できるわけです。こうなると、生成側の僕にとっても
スコアフォローは要チェックだな、そういえばタイムリーにペーパー
でMSPのフォロワーが発表されていたっけ、などと気付いていました。
作品としても、なかなか好印象でした。(^_^)

Richard Karpen    -    Mass

これは、いまいちよう判らない作品でした。サウンドのコラージュです。
短かったのが、救いでした。(^_^;)

Kenji Yasaka    -    Experiment 6

慶應SFCの八坂クンの作品です。なかなかポップなプログレ、として
僕は楽しめたのですが、こう書いたら怒られるかなぁ。(^_^;)

Cort Lippe     -     Music for Piano and Computer

世界で一番ISPWを使いこなす男の長大な作品でした。ピアノの演奏に、
刻々とリアルタイムスコアフォローして千変万化の信号処理が包み込む、
というもので、寝る人は寝ますが(隣の野村さんは初めての国際会議
参加ということで時差ボケがつぼにハマッてきたのか爆睡(^_^;))、
僕はギンギラで興奮しました。一つ一つの信号処理が手に取るように
明解で、音楽的にもなかなかよく出来ていました。なるほど、センサ
を使わないでソフトで全てをやるというのはこういう世界なのだ、
と徹底的に見せつけられて圧倒されました。
減衰音のピアノをリアルタイムサンプリングして信号処理する、
「リアルタイムBGM」(当然、テープのパートなどはありません)は、
対照的に持続音系、あるいは豊富で魅惑的な残響サウンドとして
まさに演奏とインタラクティブに「対峙」していました。

Jon Appleton    -    Yamanote Sen To Ko

これはICMFでも流れたテープ作品です。外人に日本の「音環境」
の醜悪さをこう異国情緒的にデフォルメされると、なんか、
とっても恥ずかしい感じでした。(^_^;)

Leslie Stone    -    Short Answers

「mmm」「ンフ」「アハ」などの声のコラージュというかDJという
か、だけで押し切ったポップな作品。爆笑を呼び、ウケていました。
やられた、という感じです。(^_^;)

Alexander Mihalic   -   DNA

ちょうどコートリッペの作品と対照的なものが、これです。こちらも
また、僕はすごい感銘を受けました。フルートの独奏者が、テープなし
で演奏して、そのリアルタイムにエフェクトされた音響とともに
協奏する、という意味では同じなのですが、ここではエフェクトは
言ってみたら市販のエフェクタ程度(実際のところは不明)なのです。
そして、スコアフォローイングをまったくしていません。すると
どうなるか。
椅子に座ったフルート奏者は、足下に1個のダンパーペダル(主に
サンプリングやエフェクト期間の指定)、そしてずらりと並んだ
7個のフットペダルを、両足を巧みに駆使して押したり踏んだり
して(楽譜に指示あり)、要するに「全てを仕切って」いくのです。
まぁちょっと見ていても、これは大変です。現代奏法のフルート
のみならず、自分でなく作曲家の書いた楽譜に従って、両足ジタバタ
状態(^_^;)でペダルをいろいろ踏みます。パイプオルガンとか
エレクトーン奏者の足を想像して下さい。(^_^;)

さて、ここからが僕が考え込んだことです。この作品はそれでは、
フルート奏者に大変な練習と演奏テクニックの修得を強要する
ので、コートリッペの作品のようにシステムが自動判定・追従して
くれる作品よりも古くさくて劣っているでしょうか。
僕は、否、と言いたいのです。
確かに、フルート奏者があれだけの演奏を実現するためには、
彼女は凄い努力をしたと思います(素晴らしい演奏で、この努力は
見事に報われました(^_^))が、それだけでなく、彼女はこの作品
を自分の感性と演奏技量で実現した、と100%、実感していると
思います。ところがスコアフォローによるシステムと協演した
場合には、ちょっとした追従ミスや遅延があっても聴衆はあまり
気付きませんが、演奏者本人は「なんだ、こんなところでミス
するのかよぉ(^_^;)」と思いながら、仕方なく合わせてあげて
演奏を進行していくでしょう。果たして、このいずれがハッピー
な状態でしょうか。僕はこっちの作品だと思うのです。

唯一の例外としては、作曲家本人が演奏家であり、スコアフォロー
の仕掛けまで自分で組み込んで演奏する場合です。木村まりさん、
志村哲さんの世界です。(^_^) これはベストです。
そうでなければ、全てを仕切るまでシステムを身に付けるのが
面倒としても、演奏者はそれを進んでトライする、というのが
音楽家の姿勢だと思います。この作品は、敢えてISPWの方針
に対するアンチテーゼで作曲したのでは、と勘ぐるくらい
です。でないと、8個もペダルは並ばないです。(^_^;)
そして、僕がやっている、色々な単純なセンサによって演奏者
が自分でコントロールする、という方針は、まさにこの作品と
同じアプローチなのです。これでいいのだ、とか今後もこれ
でいくのだ、などというつもりは毛頭ないのですが、そんな
事をしみじみ考えさせられる作品でした。エフェクトは
びっくりするほどのものは無いのですが、作品としては
とても気に入りました。(^_^)

...コンサートが終わると、同じ建物の4階に上がって、ホールで
CMJのMITプレスがスポンサーという「レセプション」、
要するにタダの立食飲み会(^_^;)、がありました。
場内の片隅では、生のジャズトリオが演奏しています。
僕は発表が終わった、という「自分を誉めてあげたい」(^_^)
状態だったので、快調にワインを赤白白白(^_^;)、と飲んで
いました。東野さんが「CNMATの重鎮を紹介する」といって
会わせてくれたのが、さきほどデモのブースで「あとで時間
があったら話をしよう」と言ってくれていたDavid Bessel
さんだったり(^_^;)、色々な人と楽しく話しました。

こういうパーティーは1時間もあればもう退散モードなので、
僕はデモ機材も含めて重たい機材をホテルに片づけに向かい
ました。すると前方を歩いていた集団、後藤さん、野村さん、
そして国立音大の3人(莱さんは今年は来ていません)、と
合流しました。後藤さんには、RMCPネタで研究助成金を取れた
お礼に一度奢る、というギリシャICMC以来の約束があったので、
ホテルに荷物を置いてからゾロゾロとお店を捜したのですが、
軽食屋しか開いていなくて、また懸案は繰り延べになりました。
そして、もうワインも効いてこりゃ今度は寝るな(^_^;)、と
思いつつ、再びコンサートホールに向かいました。

● 8:00pm        Concert 3            Rackham Auditorium

今度のコンサートは、ヤニ・ザンノスさんと並んで聞きました。彼は
いまベルリンで教えているということで、ドイツの厳しい聴衆の
ツッコミコメントを体験させてもらいました。(^_^;)
このコンサートはそういうことで、半分眠りモードで聞いた(最後の
曲を除く全て)、ということで割り引いて下さい。簡単に書きます。

Rodney Waschka   -   Xuan Men (Mysterious Gate)

生バイオリニストが、早いパッセージをせかせかと演奏しては
「****」と言葉を叫ぶ、という繰り返しのスタイル。(^_^;)
どこがComputer Musicだったのか、不明。電子音ナシ。

Robert Mackay   -   Environs

ドアの閉まる音を素材にコンクレートした作品。僕には眠かったの
ですが、ヤニさんはウケていました。繰り返しドアの閉まる音を
聞くのは心理的に効果がある、と言いながらプログラムノートを
見ると、この作曲家はミュージックセラピーをしている、という
ことで、ナルホド、と一人で納得していました。(^_^;)

John Mallia   -    Rue de la Cage Verte

生クラリネットとテープ、Computerは不明。もろ電子音でした。

Joseph Hyde   -  nightfalling III: BURNT OUT (ends)

ピアノとパーカッションとテープの電子音、という、まさに古典的な
現代音楽。書いているのはけっこう若い作曲家なのですが、ヤニ
さんに言わせれば、「こういう苔の生えたようなものをいつまでも
再生産しているのは、いけません」(^_^;)ということでした。
僕にとっても、イマイチでした。
ピアノのコガミドリさんはミシガン大学の助教授という人で、
なかなか魅力的・情熱的な演奏でした。小柄な日本人は、ピアノの
中に身体をつっこんで擦ったり叩いたり、という現代奏法は大変
ですね。(^_^;)

Simon Kunath  -   Love Pavement

単調なナレーション。英語の判らない僕にはなんのことやら。(^_^;)

Paul Koonce  -   Walkabout

長い。Computerの影なし。うーーーむ。(^_^;)

William Albright  -  Sphaera

最後のこの曲は、僕もヤニさんも共に絶賛でした。この作品の作曲家
は、この作品がICMCに通ったというのに、なにか事情は不明ですが
急死されたということで、なんと作品の発表が本人の追悼(^_^;)と
いうことになりました。スタイルは古典的な、電子音響パートと
ピアノ、というだけなのですが、これが、実によかったです。
全般にそうですが、最後のあたり、まるで本人が自分の死期を予感
してでもいるかのような、鬼気せまる無常観というか、なんか、
凄く、沁みました。ピアノ演奏のコガ先生がまた、よかったのです。
度重なるアンコールで、本人は控えめに(笑顔も控えて)、楽譜を
掲げて天に捧げているのが、またよかったです。こういう作品を
書けたら、死んでもいいなぁ。
ということは、まだまだ死ねないなぁ。(^_^;)(^_^;)(^_^;)

ホテルに戻ると、部屋に電話がありました。東野さんからです。
明日は朝イチで8:00-9:30が東野さんのリハで僕も一緒に行く
のですが、そのKyma(capybara)がまだ来ていない、とのこと。
日本から持参するのが大変なので、Symbolic Soundの社長のカーラ
さんと副社長のカートさん(この二人しかいないベンチャーですが)
が、AES会議のあったサンフランシスコから、今日にはこっちに
着く筈だったのです。仕方ないので、最悪はCDと「生笙」だね、
と話していました。

するとちょっとして、また電話。東野さんからしか電話など
かかってこないのが判っているのに英語で「Hello ?」と聞く
わざとらしさ。(^_^;)
なんでもメッセージが入っていて、もう着いているので、下の
ロビーで会いましょうとのこと。そこで僕も、約束のbit別冊
(Kymaの記事があるのでプレゼントする約束でした)を持って
行きました。そして、ついに、Kymaの生みの親の二人と会えました。
西海岸から7時間のドライブだったそうです。凄い。(^_^;)
カーラおばさん、などと言っていましたが、小柄な素敵なレディ
でした。WEbで見た通りの本人でした。(当たり前か(^_^;))
ところが、連絡ミスとかあって、彼らの持ってきたインターフェース
はデスクトップ用のものでした。ピーーーンチ。(^_^;)
とりあえず、明日のリハで現場に行って、東野さんと僕は
バランスとセッティングをしていて、その間に彼らにKyma
のインストールとPowerBookからのパッチの移植をしてもらう
ことになりました。着いてそうそう恐縮ですが、そんなこと
言ってられません。(^_^;) 僕が予備に持ってきた、PowerBook
2400用のFDDも役立ちそうです。

ということで、明日の朝に現場で集合ということで、別れました。
いよいよ明日は東野さんの新作の「笙」と、僕のセンサ(^_^)が
デビューです。今日はここまでで、寝ます。24:10です。

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10月3日です。ちょっと雨の降りそうな朝です。
僕は時計の日付を現地時間にしたのはいいのですが、曜日を変えるのを
忘れていて、ずっと曜日を勘違いしたまま来ていました。(^_^;)
そこで、今日は日曜日で朝食屋が休みだと思いこみ、ホテルのレストラン
に行って、初めての立派な朝食をとっていると、ホリデイインに泊まって
いる後藤さんが来ました。そして、曜日勘違いを知りました。(^_^;)

後藤さんと一緒にホテルを出ると、KymaのCapybaraをかついだシンボリック
の彼(コート?カート?)と一緒になり、ちょうど8時にリハーサルのために
ホールに行くと、もう笙の音が聞こえてきました。さすが東野さん、早い。
大阪芸大に報告のためにビデオを撮る野村さんも来ていました。
さっそくミキサーのところでMacを開けてインターフェースカードを入れて
もらい、僕はバランスに専念しました。会場のPAは、正面ステージ後方の
センター(これは笙の生音をPA。僕が曲の冒頭と最後にコンソールから
フェーダーで操作)、そしてフロントLRにはCDとKyma、さらに中央のLRと
リアのLRにはパランスを変えてCD、という7チャンネルサラウンドでいく
ことにしました。スピーカーはここのテクニカルスタッフのお手製だ
そうで、小型ですがなかなか良く鳴りました。(^_^)

怪我の功名で、ICMFでは東野さんのPowerBookからのKymaのパッチの
ロードに2分近くかかっていたのですが、彼らがそれしか持ってこなかった
PCIバスのカードを借りたところ、そのおかげで数秒でできるように
なりました。これは素晴らしい。(^_^)
そして、何度かリハをして、音量、バランス、照明、などを固めて、
リハは十分にうまくいきました。もう大丈夫です。(^_^)
本番でミキサー卓に座って僕のする仕事は、以下の通りです。
 ・東野さんがステージ上でセンサをONにしてスタンバイしたら
  Kymaのパッチを再ロードする
 ・東野さんが笙を持ち上げたら、隣の照明係にちょっと暗くする
  ようにキューを出して、CDのスタートボタンに手を伸ばす
 ・東野さんの演奏開始とともにCDスタート
 ・約1分したところで照明係にちょっとアップするキューを出しつつ
  笙ダイレクトのフェーダーをじりじり上げる
 ・約10分のところの盛り上がり部分でCDを少し持ち上げる
  (現場でのバランスにより臨時に追加)
 ・最後のところでダイレクトのPAをフェイドアウト
というところ。シンプルなものです。(^_^;)
自分の作品なら、いつもの癖で本番でも思いつきでパランスとか
いじったりするのですが、今回はググッと抑えることにします。

無事にリハも終わり、14:00に集合、ということになり、ペーパーの
会場に向かいました。ロビーから外を見ると、なんとしっかりと雨に
なっていました。これはなかなか移動したくなくなります。(^_^;)
本当は今日はペーパーとポスターを行き来する予定だったのですが、
ちょっと変更になりそうです。

ということで、まず、リハのために以下のペーパーセッションには
行くことができませんでした。中身に興味のある方は、ICMAにコンタクト
してProceedingsを入手して下さい。来年になったらたぶん販売を始める
でしょう。(^_^;)

■Saturday, October 3, 1998

● 8:00am-9:40am       Paper Session 6         Rackham Amphitheater

S. Canazza
A Model to Add Expressiveness to Automatic Musical Performance

Satoshi Nishimura
PMML: A Music Description Language Supporting Algorithmic Representation 
of Musical Expression

Riccardo Di Federico
Toward an integrated sound analysis and processing framework for 
expressiveness rendering

Joachim Stange-Elbe
Computer assisted Analysis and Interpretation of J.S. Bach's 
"Art of Fugue"using RUBATO

そして、4階のペーパーセッション会場に着いてみると、ヤニ・ザンノスさんが、
誰かのペーパーの代読をしていました。上の最後のペーパーだった
ようです。場内はけっこうな人で埋まっていました。まだICMCは始まった
ばかり(1/3が過ぎたところ)ですし、この雨では観光も無理ですので(^_^;)、
隙あらば観光モード、という人(^_^;)も参加するしかありません。

このセッションは以下のものですが、最初の2件を聞いたところでMichigan League
に移動してポスターに行く、という作戦をとりました。大矢さんとイチローさんの
名前があったからです。

● 9:50pm-11:10pm        Paper Session 7        Rackham Amphitheater

Haruhiro Katayose
Physiological Measurement of Performer's Tension and its Utilization 
for Media Control.

さすが英語力の片寄さん、質疑もちゃんとスラスラと受け答えできるのが羨ましい
です。テーマは、竹管の宇宙を演奏する志村さんとそれを聴く聴衆のそれぞれの
生体情報をセンシングして、パフォーマンスの内容と呼応するかを調べた実験
についてのものでした。これは阪大テーマです。

Teresa Marrin
The "Conductorユs Jacket": A Device for Recording Expressive Musical Gestures

昨日、終わった僕のデモのブースに来て残念がっていた女性の発表でした。
彼女はMITのメディアラボの研究者だったようです。コンダクタージャケット
というのを着て、指揮のセンサとして使うというもので、両腕に筋電センサ
がありました。なるほど、僕のセンサも見たかったわけです。(^_^;)
デモのビデオをかけたら、なんだか上書きしてしまったCNNニュースか
なんかが出てきて(^_^;)、笑いを取っていました。そういう手があったか。
というところでスキップして出てきて、以下の2件はパスしました。

Adrian Freed
Communication of Musical Gesture using the AES/EBU Digital Audio Standard

Matthew Wright
Implementation and Performance Issues with OpenSound Control

さて、小雨振りしきるキャンパスを、芝生で遊ぶリスなど見ながら建物移動
しました。デモブースに着いてみると、なんやら午後にデモのある青野クン
が焦っています。なんでも、ブースのOctane(リッチだぁ(^_^;))とヤマハの
Disklavierを使うデモのソフトで、バージョンアップのために現場でコンパイル
しようとしたらコンパイラが入っていないので、SGIと連絡をとってfetch
しようとしている、ということでした。
もう本番まで2時間ぐらいしかなのに。(^_^;)

とりあえずその場で、電話しながらOctaneを叩いているおっちゃんを
青野クンと一緒に見ていても仕方ないので(^_^;)、3階のポスターセッション
に上がりました。
予定では以下のものの筈でしたが、実際には大矢さんの発表は明日だそうで、
僕が行った時には、もう最後のイチローさんのものでした。これも尻切れ。

● 10:00am-12:00pm      Poster Session 2      Michigan League (Room D)

Timothy Stilson
Implementing Efficient Frequency Variation in Coupled-Mode Synthesis and 
Other Cosine-Frequency Systems

Timothy Stilson
Examples of Using Amplitude Control Systems in Music Synthesis

Ken'ichi Ohya
Sound Variations by Recurrent Neural Network Synthesis

St?phane Rossignol
Feature extraction and temporal segmentation of acoustic signals

St?phan Tassart
Infinite length windows for short-time Fourier transform

Ichiro Fujinaga
Machine recognition of timbre using steady-state tone of acoustic 
musical instruments

また、当初予定の以下のものは、絶対に聞きたかったのですが、どうも
10/6の朝イチに移動になっていました。これで確実に聞けます。(^_^)
へたするとリハと重なって駄目か、と心配していたので、まずはヨカッタ。

● 11:20am-12:10pm        Paper Session 8       Rackham Amphitheater

Todd Winkler
Motion-Sensing Music: Artistic and Technical Challenges in Two Works 
for Dance

Niall Griffith
LiteFoot - A floor space for recording dance and controlling media

ということで、いま僕は、Michigan Leagueの地下のウェンディーズでここまでを
打ちながら休憩しています。朝食をしっかりとったので、腹もあまり減って
いません。どうせ今晩はバンケットですから、昼食は軽くていいのですが。
さすがにこう毎日の攻撃で、ハンバーガーとかサンドイッチ(アメリカのは、
日本で言うような地味なものではないです。超ヘヴィー級です(^_^;))とか
ホットドッグ系には、食傷してきました。体調は別に悪くないのですが、
食欲が落ちてきた感じ。あっさりお茶漬け、あるいはせめてふりかけご飯でも
食べたいところです。(^_^;)
今なら、大好物の王将の餃子も食えないかもしれません。(^_^;)
自分の発表よりも、東野さんのコンサート本番が終わるまでは、昨日よりも
ずっと緊張(いい緊張です(^_^))しています。そんなものでしょうか。
ということで、これから午後には以下のデモセッションをちらっと覗いたら
ホールに早めに行きますので、特に感想は書かないでパスします。そういう
気分(客観的に冷静に分析的に思考する)に、コンサート本番前なので、とても
なれないのです。

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 2    Michigan League (Hussey Room)

Francois Dechelle
Ermes/FTS: demonstration of an integrated environment for real time 
musical applications

John A. Biles
Interactive GenJam: Integrating Real-Time Performance with a Genetic 
Algorithm

Yushi Aono
A Real-time Session Composer with Acoustic Polyphonic Instruments

また、以下のペーパーはこの裏なので、これもパス。(^_^;)
ダネンバーグの発表はいつも示唆に富んでいるし、最後の2件は本当は要
チェックなのですが、やはり、コンサート本番前に聞いて感想を、という
ことにはなりません。Javaものは集合時間なので無理ですし。今日はそういう
わけで、ほとんどペーパーの内容が無かったのですが、ご容赦下さい。(^_^;)

● 1:00pm-2:40pm       Paper Session 9         Rackham Amphitheater

Roger Dannenberg
Interpolation Error In Waveform Table Lookup

Adrian Freed
Music Programming with the new Features of Standard C++

Francois Dechelle
Latest evolutions of the FTS real-time engine: typing, scoping, 
threading, compiling.

Phil Burk
JSyn: Real-time Synthesis for Java

Francois Dechelle
The ERMES project: a new JAVA-based editing and control system 
for real-time musical applications.

そして、東野さん作品の発表がある以下のコンサートについても、僕はスタッフ
として陣取っていることもあり、とうてい客観的に聞いて感想を書いて、という
モードにないので、ここでリストだけ紹介しておくに留めます。仕方ないですね。

● 3:00pm-5:00pm           Concert 4         Rackham Auditorium

Benjamin Broening  -  5 Microludes

Roger Luke DuBois  -  Things That Go Beep In The Night

Robert Newcomb   -   Linguistics of Change

Ryan Ramirez   -     Regions

Rajmil Fischman   -   Alma Latina (Soul of a Latin)

Hartmut Wohlleber -  Rundungen, weissgesiebt (curves, sieved white)

Tamami Tono-Ito     -    dinergy 2 for Sho and Live Computer

Matthew Burtner   -   Fern

Eric David   -   Chasalow Left to His Own Devices

さて、これでとりあえず一区切りです。上記のコンサートの全体的な感想
からバンケット以降の話は、次の記事にすることにしましょう。

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いま、10月4日の朝です。昨夜は早めに爆睡したので、日本にいる時と
同じ生活パターンに戻ってきて、朝5時には目覚めてしまいました。
今から無理に眠ると寝坊しそうなので、起き出して昨日の続きを書く
ことにしました。過去形で昨日の立場で書いておきます。

前記事の続きから言えば、デモブースの青野クンは結局、日本は深夜の1時から
2時なのですが、まだ大学にいた研究室の学生に電話してアカウントを作って
もらい、ここからtelnetして阪大のマシン内で改訂ソフトをコンパイルし、
それをfetchしてこっちのマシンに走らせる、ということで、開始15分前に
なんとか準備が完了しました。(^_^)
そして、無事にデモをしているところをビデオに撮って、いったん徒歩5分の
ホテルに重たいProceedingsとビデオを置いて、僕は早めにコンサート会場
に向かいました。コンサート当日なんてのは、ここで色気を出してペーパー
を覗いたところで集中できませんし、自分がこれからコンサートで担当する
仕事を頭から押し出すのがいやだったのです。結局、コンサートの1時間半
前から静まり返った客席で「幸せな予感」を楽しみました。本番前のホール
って、とても好きです。(^_^)

そしてコンサート。東野さん作品はインターミッションのあとなので、まだ
KymaもMacも立ち上げず、僕はミキサーのすぐそばで本番の前半をよく
見ることができました。個々の作品へのコメントはありませんが、この会場の
PAシステムの活用法がよく判りました。テープ作品で、CDやDATは単純な
ステレオであっても、PAにフロント、ミッド、リアと6個のスライダーが
ミキサーに並んでいるので、何人もの作曲家が公演の本番ではミキサー席に
陣取り、リアルタイムにこのフェーダーをぐりぐりと操作していました。
すると、たとえばある音がLからRにパンしている時にフロントからリアに
バランスを振ると、その音は客席では対角線上にナナメに、ちょうど
頭上を飛び越えるように聞こえます。数限りなく聞いたであろう自分の
作品ですから、ここで次にどんな音が来る、と熟知しているので、
デタラメでなく、確信をもってスライダーを適切に操って、見事な
3Dの空間音響が実現できしてまうのです。Computer Music版のDJです。

そしてインターミッション。僕はKymaを立ち上げ、Macを立ち上げ、Kyma
を起動し、東野さんパッチを呼び出し、ロードしてから一旦ストップして、
準備完了。(^_^) 本番はテープ作品の次です。
この本番の演奏が聴衆にどうだったのか、は僕は客観的には語れないの
ですが、リハの時よりもうまくいった、自分としてはベストな公演に
なったと思います。テープがとても多い今年のICMCで、それもライブで
Computerシステムとやりとりしているものは少ない中で目立ったこと、
あの東野さんが凛として演奏している美しい姿、そして去年のギリシャ
での東野さんの演奏に触れていない大部分の人にとってはおそらく初めて
体験する「笙」のサウンド。受けないわけがないのです。(^_^)

コンサート後、僕はただミキシングコンソールにいただけなのに、
何人もに呼び止められて笙のことや作品について質問されました。
笙の内部に僕のオリジナルセンサが仕込んであって、リアルタイムに
演奏者自身がコントロールすることであの緊張感が実現できている、
とタネ明かしすると、皆んな納得していました。そしてもちろん、
東野さんはこのコンサート以降、どこに言っても声をかけられる
今年のICMCの「スター」となりました。(^_^)

そしてコンサートも無事に終了。これで初めて、僕も自分の発表と東野
さんサポート、というICMCでの二大仕事を無事に完了したわけで、本当の
意味でようやく「ホッ」としました。(^_^)
あとはもう、バンケットで美味しく飲むだけです。

バンケットは、Michigan Leagueの2階のホールで行われました。こちらは
立食でなくもちろん机があるのですが、到着してみると、どうも様子が
ヘンです。(^_^;) バーカウンター、そしてオードブルなどのある周囲の
テーブルに、まるで立食形式のように皆んな行列しているのです。
ICMCの過去のバンケットといえば、もうフランス料理あたりのフルコース
をリッチに、という思い出がいくつもあったのですが、どうも今回は
かなりボラれたようです。アルコールは有料、そしてオードブルも
しけたものばかり。これで40ドルも取るかぁ(^_^;)、と皆んなで
怒りました。怒っても仕方ないのですが。
無事に発表の終わった青野クンは何度もビールを買いに並んでいます。
僕も「自分を誉めてあげたい(こればっか)」打ち上げモードに入って
いたので、何度もワインを美味しくいただきました。まぁ飲めればOK、
というところです。(^_^;)

僕のテーブルには、東野さんとシンボリックのKurt Hebelも来て、
いろいろとKymaの話に盛り上がりました。(^_^)
Kurtとカーラとは夫婦だったのですね。二人でハードとソフトを
開発してベンチャーをする、という美しい話です。二人とも、
アメリカ人ばなれして(^_^;)、物腰も大人しく、図体もでかく
なく、なんか日本人としては嬉しいです。Kymaオリジナルの
リストバンドもいただきました。(^_^)

しばらくして、今年からICMAのボスになったステファン・アーノルド
さん(ICMC93の実行委員会で準備した時には、何度も来日して僕たちと
ミーティングを重ねました)が挨拶、そして色々な報告の「儀式」が
ありました。ここでは、皆さんに関係する情報を速報としてお知らせ
しましょう。

まず、来年のICMC1999ですが、予定通り、ペキンBeijingで開催
されます。ただし、当初予定の北京大学の先生が倒れてオーガナイザ
が変わったということで、精華大学で開催されるようです。実際の
ところは、まだスポンサーの関係でボスは変わる可能性もあります。
そして、実行委員会の母体としては、悪名高きICMC1996香港を
オーガナイズした香港(実体はイギリス)の連中が仕切るということ
らしいです。今から見える、いやな予感。(^_^;)
たとえば、中国はたぶん、SGIはもちろん、Macも持ち込み禁止
です。Pentiumマシンも駄目です。持ち込むとミサイル制御とかに
利用される、というココムの関係です。OKなのは486マシンなら
クロック50MHz以下、HDは150MB以下だそうです。そんな
マシン、今どき捜しても出てきません。(^_^;)(^_^;)
僕など、このPowerBookはもちろん、AKI-80とかAKI-H8とか
を使ったオリジナルセンサを持ち込もうとするだけで税関で
捕まるかもしれません。(^_^;)
例年なら、このICMC会場で、来年のICMCの紹介とか応募要項とか
の小冊子が配られるわけですが、準備不足でそれもナシ。葉書
がたった一枚です。ここには、
「http://www.cs.ust.hk/icmc99/を見よ」
とだけ書いてあります。(^_^;) やはりアドレスは香港です。
ということで、いずれ11月以降に、ここに情報が出てくるよう
です。皆さんも定期的にチェックして、情報が載ったら、教えて
下さい。また、噂では応募締め切りが来年の2月だそうで、十分に
準備をできそうです。これだけは本当にラッキー。(^_^)
なお、実行委員長の挨拶では、ICMCの模様を中国のテレビで
紹介するというような話をしていました。中国ではチャンネルとか
の選択の余地がないので、皆さんの作品を10億人から20億人
が見るかもしれない(^_^;)(billionなんていうのは滅多に出会わ
ない数字です)ということでした。うーーーーむ。(^_^;)

そして、その翌年のICMC2000ですが、ベルリンで開催、と発表
されました。挨拶に立った二人のうちの一人はヤニさんでした。
明後日に一緒に夕食なので、そこで詳しいことを聞いたら追加したい
と思います。僕はICMCではデンマークとギリシャ、ということで、
ドイツやフランスやイギリス、という、もっともヨーロッパらしい
ところに行っていなかったので、やっとドイツに行けるという
のは嬉しいです。たぶんこのICMCでは、久しぶりにハードな
サウンドの嵐(^_^;)となるでしょう。

また、その翌年はアメリカ大陸(アメリカかカナダ、どこでもやれます)
で、その次の2002年はスウェーデン、と宣言されました。これまでは
3年周期でアジアオセアニアで、2002年は莱さんのところ(国立音大)
という話だったのですが、香港は不評だわ韓国は経済状況で逃げ出す
わ中国も今回の混乱だわ(^_^;)、ということで、ちょっと懲りたの
でしょうか。僕もそのぐらいの方がいいと思います。

ということです。最終日にはICMA総会もありますし、ICMC1999に
ついてはまた、橋本先生にでも取材して追加があればしたいと思います。
そして、空きっ腹にだいぶワインを仕込んで、晩のコンサート会場
であるPower Centerに向かいました。これも近いところにある
会場で、楽勝でした。

● 8:00pm        Concert 5 -                                   Power Center

William Alves  -   Collateral Damage

Nicholas Brooke  -  Pemangku

Kui Dong     -    Youlan: Long Winding Valley

Diane Thome   -   UnfoldEntwine (ICMC98 Commission)

Karl F. Gerber  -   Improvisation with Integers

Roger Dannenberg   -   In Transit

Gerhard Ginader   -    nonstop

このコンサートは、なんかダンスの振り付けの人がフューチャリング
されていて、Computer Musicのテープ作品を演奏しながら、照明とダンス
を組み合わせたものになりました。ちょっと異色なものです。
ですが、残念なことに、まったく僕のレポートは、ありません。(^_^;)
賢明なここの会議室の常連諸氏には理由はお判りだと思いますが、
ICMCの晩のコンサートでバンケット等の飲み会のあとにあるものの
場合、それでなくても多数の聴衆がよく寝るComputer Musicですから、
これを起きていて聴け、というのがどだい無理です。(開き直り(^_^;))
僕は東野さんの隣で(彼女はちゃんと起きていたようです)、爆睡そして
熟睡ときどき激睡しかるに完睡(^_^;)(^_^;)(^_^;)。
気付いてみるとコンサートが終わっていました。迷彩模様のCDをバック
にダネンバーグがトランペットを吹いた作品も忘却の彼方。
全部、まったく感想どころか記憶も印象もありませんでした。まぁ、
この日はコンサート本番のある特別な日ということで、お許し下さい。

そして、ICMCの前半が、これでちょうど終わりました。いよいよ後半戦
です。(^_^)

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10月4日、午前11時45分、例によってMichian Leagueの地下のウェンディーズ
でサンドイッチを食べて、今日の午前中のまとめにとりかかっています。
午後のペーパーセッションは13:00から。1時間ちょっとあります。(^_^)
今し方まで、隣に橋本先生がいたのですが、ここで出かけるということ
は、ちゃんと外のお店でマトモな昼食なのでしょう。(^_^;)

実質的にはまる2日間程度のセッション参加ですが、ちょうど今朝の段階
でICMCは半分が終わったところ。今朝はつらつらと、とりあえず前半戦での
「今年の傾向」なんぞをメモしていたのですが、まずは午前のセッションに
ついて書いて、余裕があったら「傾向」に触れたいと思います。

■Sunday, October 4, 1998

● 8:00am-9:20am       Paper Session 10         Rackham Amphitheater

まずは朝イチで、基本の楽音の分析合成のセッション。最初からいる人は
日に日に少なくなります(^_^;)が、まだまだどうして、来る人は最初から
ちゃんと来ています。

Federico Fontana
Signal-Theoretic Characterization of Waveguide MeshGeometries for 
Membrane Simulation

2次元ウェーブガイドの楽音合成で、平面を蜂の巣のようにメッシュにして、
まともに物理モデルとして攻めていました。こういうのは、聞いていても
好きなのですが、本当に理解できているかと問われると、苦手です。(^_^;)

Vesa Valimaki
Signal-Dependent Nonlinearities for Physical Models Using 
Time-Varying Fractional Delay Filters

ディジタルフィルタの物理モデル楽音合成で、時間的変化をするディレイフィルタを
使ってどーのこーの(^_^;)というものなのですが、デモのサウンドを聞くと
いまいち、というものでした。

Richard Dudas
NVM - a modular real-time physical modelling synthesis system for MSP

IRCAMの人の、さりげないのですが凄い発表。MSPのオリジナルオブジェクト
として、物理モデル楽音合成のすっごく簡単に凄いバリエーションのサウンド
をびしばし生成する(物理モデルだから当然)ものの発表でした。会場の
質問は「それはいつ公開されるのか」「いつ買えるのか」「いつ入手できる
のか」(^_^;)(^_^;)の一点です。
しかし返答はきわめて淡泊に、「予定ナシ」。(^_^;)
個人的に趣味で作ってみたものを発表しただけなんだよ、ということなの
ですが、こうもサクサクとMSPのパッチで凄いデモを、簡単にサウンドを
鳴らしながら見せつけられたら、誰だって欲しくなります。まったく
意地悪なんだから。(^_^;)
これを買えるなら、僕もいくらでも絶対に買います。MSPもついでに買います。
うーーーん、欲しい。(^_^;)

...というあたりで、会場に井口先生が登場しました。本当は昨日のバンケット
から来たかったのだそうですが、到着が遅くて間に合わなかったらしい
です。いつも忙しいので、井口先生が現れるかどうかはその場にいないと
判らないのですが、やっぱりおいで下さいました。(^_^)
ちなみにこの時、会場にラボ関係は誰もいませんでした。きっと、昨日
のデモ成就を祝って、青野クンを中心に盛大に盛り上がったのでしょう。

さて、朝から計画していように、ここで僕は以下のセッションをスキップ
して、ポスターセッション会場に向かいました。

● 9:00am-10:50am   Studio Reports    Michigan League (Koessler Library)

Neil B. Rolnick
Teaching More Students: Multimedia Education & Growth at 
Rensselaer's iEAR Studios

Richard S. Andrews
Center for New Music and Audio Technologies(CNMAT): Studio Report

David Cooper
Studio Report of the Leeds University Electronic Studio

Fernando Lopez-Lezcano
Center for Computer Research in Music and Acoustics (CCRMA)

Wayne Seigel
DIEM - The Danish Institute of Electroacoustic  Music

McGregor Boyle
The Computer Music Department of The Peabody Conservatory of Music: 
Studio Report

● 9:40am-10:40am       Paper Session 11        Rackham Amphitheater

Duane Kent Wise
The Recursive Allpass as a Resonance Filter

Amar Chaudhary
A 3-D Graphical User Interface for Resonance Modeling

Atsuo Takanishi
Development of an Anthropomorphic Flutist Robot WF-3RIV.

このすぐ上の早稲田の「フルート吹きロボット」というのはちょっと興味
あったのですが、Proceedingsの写真を見ると、完全にメカ系の研究と
いうのがよく判ったので、以下のポスターを優先しました。(^_^;)
(工作機械のようには見えますが、音楽を演奏するロボットには見えません)

● 10:00am-12:00pm      Poster Session 3      Michigan League (Room D)

Kai Renz
An HTTP Interface to SALIERI

サリエリ(^_^;)という、古典的な記述的システムによる音楽情報処理システム
をサーバに置いて、CGIを経由してHTTPでどこからでもアクセスできるように
した、というものです。しかし、僕にすれば、サリエリというシステム
そのものにほとんど魅力も目新しさも感じない(国内の某研究室のものも
似たようなものですが(^_^;)(^_^;))ので、Web版になったぞ、と嬉しそうに
言われても、「それが何か?」という状態で空を切っていました。
次はJava対応するぞ、ということでしたが、それでも同じです。(^_^;)

Matthew Wright
New Applications of the Sound Description Interchange Format

SDIFという、またまた新しい「標準規格」ねた、ということのようで、最初は
ほとんど無視していました。次が大矢さんの発表なので会場にいた、という
程度です。しかし、もしかしてもしかすると、これは面白いのかもしれない、
と意外な可能性に興味を持ちました。以下、僕の理解で紹介してみます。

現在、リアルタイムで音楽情報を伝送する(いったん非実時間で蓄積して、
あとで「再生」するのでないもの)方式としては、MIDI(インターネットの
パケットにMIDIメッセージを入れるのも含む)によって高次の演奏情報を
転送するのと、じかにサウンドのサンプル情報を送る(MPEG2とかパケット
に分けてのストリームも含む)、というのの二つがあります。後者について
は、転送中にたとえばリバーブぐらいのエフェクトをかけることは可能
ですが、ピアノの音をフルートにしたり(^_^;)するのは無理でしょう。
一方、MIDIレベルなら、間にMAXのパッチが入っているようなことを
想像すれば、音色切り替えとかハーモナイズとかも、かなり自由にできます。
これは、MIDI情報の受け手の側に「音源」(かつてはハード、今ではソフト
シンセを含む)があるから可能なわけです。また、SMFによって、蓄積型
の転送で多量の演奏情報を簡単に交換したり、エディットできます。

さて、そこでSDIFです。これを発表したのが、IRCAMとCNMATの共同、と
いうのがカギです。この両者はフランスとカリフォルニアに離れています
が、いずれも世界の楽音合成をリードするトップ巨頭です。そこで、SDIF
というのは、「楽音合成パラメータ単位での転送フォーマット」という
ことのようです。たとえば、IRCAMのマシンでリアルタイム楽音合成ソフト
が走っています。昔ならKymaのようなDSPが必須ですが、今ならマシン
パワーによって、ソフトだけでリアルタイム生成します。そして、その
出力を、MIDIエクスクルーシブレベルでもなく、サンプサウンドのレベル
でもなく、楽音合成のパラメータ単位でパケット化して送る、という
のはどうでしょうか。受け手の側にも、同じような楽音合成システムが
走っていれば可能です。そして、オンラインで途中にパラメータのエフェクト
をかますことも可能です。たとえば、送り手はサックスを吹いているのに、
受け手では人工合成音声が歌う、みたいなものです。(^_^;)

ちょうど僕の座った椅子の横にパネルがあったのでメモしてみたのですが、
以下のような事を考えているようです。SMFのような「チャンク」とか
フレーム、それぞれのブロックのID、というような概念を持ちます。例と
して「フレームID」としていま定義されているものを見てみましょう。
1FQ0 --- fundamental frequency ---基本周波数
1STF --- 離散短時間FFT --- 実数と虚数の係数のセット
1PIC --- Picked Spectral Peaks --- 物理モデルの強度、周波数、位相
1TRC --- Sinusoidal Tracks --- インデックス、強度、周波数、位相
1HRM --- Psuedo-harmonic Sinusoidal Tracks --- ハーモニクス番号、他
1RES --- Resonance
     /Exponentially Decaying Sinusoids --- 強度、周波数、バンド幅、位相
1NOI --- Noise Banks --- 強度、周波数帯域
1FRM --- Formants --- 強度、中心周波数、バンド幅
ということです。まさに、これまでの楽音合成のサーベイみたいなもので、
必要なものは全て完備しておこう、ということなのでしょう。(^_^;)
ヘッダにはID、サイズ、時間、ストリームID、マトリクス数などを定義する
ようなので、リアルタイムと蓄積型の両方を視野に入れているのでしょうか。

まあこんなのは、IRCAMやCNMATやCCRMAなどでないと使う意味もなかなか
無さそうなのですが(^_^;)、ソフトシンセの進展は、こういうスタイルの
標準化を進めるのかもしれません。MSPのパラメータはFTSならじかに
バイナリデータとして共有交換できるわけですが、このような視点が出て
くるというのは、なかなか柔軟な発想だなぁ、と感心しました。

Ken'ichi Ohya
Sound Variations by Recurrent Neural Network Synthesis

さて、我らが大矢さんの発表です。(^_^)
今年のICMCでは、ポスターセッションに大波乱がありました。従来は、
ポスターというのは、それぞれの発表者に小部屋が割り当てられて、
発表者はパネルにポスターを張って、規定時間内、そこで待機しています。
そして来場者が三々五々、やってきてはポスターを見て、発表者と議論
する、というスタイルなのです。ペーパーセッションでは、発表は用意
した英語を棒読みでもいいのですが、あとの質疑で困る(質問が判らない)
ので、僕もこれまでポスター発表を選んできました。対面なら、身振り
手振りでなんとかなるからです。(^_^;)
ところが大矢さんによると、今年はICMCの1週間ぐらい前に突然の
電子メイルで、「今年はポスター発表者は同じ大部屋で、時間を
分けてプレゼンすることになったのでヨロシク」(^_^;)ということ
なのでした。これは、じかにお客が目の前にいる分、ペーパーよりも
キツイです。僕なら逃げたいです。(^_^;)
しかしそこは大矢さん、控えめな声量でぼそぼそと、しかしなんとか
無事に発表をし倒しました。よかったよかった。ネタは、リカレント
ニューラルネットワークによる「男は黙って楽音合成」のネタで、
国内では既に発表しているものでした。

Elizabeth Hinkle-Turner
Coming Full Circle: Composing the Cathartic Experience with 
CD-ROM Technology
Substructure Discovery of Symbolic Musical

これは最悪。(^_^;)
Directorを使って、CDROMという媒体で作品を制作した、というメイキング
話を嬉しそうにしていたわけですが、「それが何か」(^_^;)ものでした。
ICMCの人はDirectorは知らないと思っているのかなぁ。(^_^;)

Leonello Tarabella
Free hands shape-position-rotation recognition system for 
interactive performances

この発表者は現場に現れず、パスとなりました。そういう事もあります。(^_^;)

Mark Bromwich
'Bodycoder': A Sensor Suit and Vocal Performance Mechanism for 
Real-time Performance.

僕のデモの発表で、最前列で熱心に聞いてくれて、自分でもMiniBioMuseのセンサ
を身に付けて体験していたおばさんは、この発表の人なのでした。なるほど。
イギリスの大学には、Electronic Dance Theatreなんてのがあるのですね。
曲げセンサを膝とか肘とか肩とかに仕込んだオリジナルの服を着て、シーン
チェンジのマイクロスイッチのある手袋をはめたダンサーが踊ると、音が
出たり変化したり後ろのスクリーンの映像が変化したり(^_^;)、という、
まるでどこかで見たような(僕もこのスタイルの作品をだいぶ発表してきた
ことになります)パフォーマンスのビデオを見ました。(^_^)
でも、音楽のスタイルがロックというかビートが等間隔のものなので、
それに合わせてダンサーがセンサーでトリガを送って音や絵を変えて
いるのが、MIBURIダンサーと同じように「当て振り」に見えてきてしまう
のが、ちょっと寂しかったです。やはり、こういうのは変拍子ビート無し
の(^_^;)現代音楽のほうがいいのでしょうか。うーーーむ。(^_^;)

ということで、このあといったんRackhamに行って、二つのインスタレーション
のビデオを撮りました。これは公開講演会とか音楽情報科学研究会の12月例会
で紹介できると思います。ちょっと面白い体験でした。(^_^)
そして、以下のセッションは重複していたのでパスして、ここウェンディーズ
に来た、というわけです。

● 10:50am-12:10pm       Paper Session 12        Rackham Amphitheater

Shlomo Dubnov
Universal Classification Applied to Musical Sequences

Kjell Lemstrom
Musical Information Retrieval Using Musical Parameters

Tomonari Sonoda
A WWW-based Melody Retrieval System

...いま、12:45です。ちょうど1時間でこの記事を書いたことなります。
ぼちぼち午後のペーパーセッションに向かいます。「今年の傾向」は、
またいずれ、書きましょう。(^_^;)

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いまは10月4日の午後10時30分、夜のコンサートが終わって、途中のカフェ
でなにやら超甘いコーヒー(なんだかよく判らないのを注文したので(^_^;))
をすすりながら書き始めました。酒屋コンビニじゃないところがミソで、
今日は休肝日ということになりました。(^_^;)

さて、午後イチのペーパーセッションからの続きです。
「傾向」は、もう少しお待ち下さい。ねたメモはぼちぼち書いています。
まず、迷った末に、以下のデモセッションはスキップして、ペーパー
の方に行くことにしました。今年の会場は近いといえば近いのですが、
移動時間は早足でも5分以上はかかるので、行ったり来たりというのは
現実的ではないので、しませんでした。(^_^;)
以前にこれをやって、行く先々で汗をかいては冷える、というので風邪
ほひいて参ったこともありましたし。(^_^;)

● 1:00pm-2:30pm  Demonstration Session 3    Michigan League (Hussey Room)

Perry Cook
NBody: A multidirectional musical instrument body radiation simulator,
and a database of measured responses.

David Gamper
Expanded Instrument System: Recent Developments

Harry Castle
On convincing human/machine improvisation

ということで、こちらのペーパーセッションです。音楽情報を楽音波形とかよりも
高次の階層で生成する、というようなあたりのテーマのようです。Music Generation
と言うこともあります。シーケンサ万能の日本ではあまり馴染みがない世界ですが、
ここらで何か発掘すると、日本では独壇場となる可能性もあります。ただし、独善の
「なーに言ってんだか」と無視されるリスクもあります。(^_^;)

● 1:00pm-2:50pm       Paper Session 13         Rackham Amphitheater

Michael Hamman
From Symbol to Semiotic: Using the Computer as a Tool for the 
Composition of Interaction

英語力がないので、とICMCに辞書を持参したのは、たぶん最初に参加したICMC1991
モントリオールだけだと思います。現場ではまったく辞書など引けないので。(^_^;)
ところが、semioticというキーワードが判らなくて、どうにも困りました。これを
書いている今も、まだ知りません。(^_^;) さっき平田さんに会ったので、聞けば
よかった。
現在、たいていのMusic GenerationシステムはSymbolicなので、このタイトルは
かなり挑戦的なものです。僕のつたない理解ですが、音楽要素を個々に明示的に
記述する、という従来の作曲支援システムと違って、イベント間の相互関係を
記述するのが作曲だ、という視点から構築しよう、という机上の空論を提案した
発表だったようです。そこで、シーケンサのように毎回同じものが生成される
のでなく、ハプニングを生み出すアルゴリズム作曲が可能になる、というもの
です。お題目としては、僕はちょっとソソラレました。この視点、検討してみたい
と思いました。実は2日ほど前に、コンサートだったかペーパーだったかの最中
に思いついて、「ネタ帳」に書いたことと通じるところがあるのです。(^_^)
これがうまく行くと、研究と作品と両方に成果がある筈です。

Michael Gogins
Music Graphs for Algorithmic Composition and Synthesis with an 
Extensible Implementation in Java

皆さん、MMLって知っているでしょうか。BASICの時代かそれ以前、日本では
MSXという各社共通仕様8ビットパソコン(^_^;)(^_^;)というのがあったのです
が、その時代の音楽自動演奏標準言語です。僕もそうは知っていますが、実際に
MMLでメロディーを記述して鳴らした経験はありません。(^_^;)
なんとこの発表は、そのMMLを拡張して、VRMLの枠組みにはめ込んで、Javaで
実装する、という「ようやるわぁ(^_^;)研究」でした。
MMLのメリットとしては、音楽情報をたとえば行列として表現して、これに
数学的に演算子行列を作用させる、というような、かなり形式的数学的な
処理のアルゴリズム作曲に便利だ、というところです。デモの自動生成例でも、
なるほどなぁ、というのが聞けました。
しかし、僕が感心したのは、VRMLに組み込んだところです。VRMLはデータを
単純なテキスト列として表現します。3次元CGで言えば、ワイヤーフレーム
モデル程度の高度に抽象化した情報だけで立体のスケルトンを表現できるので、
その少ないデータを元にサクサクと回転や変形などの演算処理(アルゴリズム
作曲と対応しているのですよ)ができるわけです。最終的な立体CGにする時に、
テクスチャーマッピングとレンダリングをするのは、コンピュータのマシン
パワー向上やOpen-GLでなんともなる、ということです。そして、この発想
は、音楽でも同じなのだ、という主張です。僕にとっては目から鱗でした。
MMLは、CGで言えばワイヤフレームモデルなわけです。少ないデータで色々に
加工できます。そして、実際に音にする時に、ソフトシンセとか物理モデル
でリアライズ(CGのテクスチャーマッピングとレンダリングに相当)する、と
いうことなわけです。なかなか凄い視点だと思いました。そんなの当然じゃん、
と判っていた人にはなんでもないのですが、僕には新鮮な意見でした。
もっとも、これは明示的にこの発表で言ったことではなくて、僕が勝手に
発表から思い至ったことなのですが。(^_^;)

Stephane Letz
The Role of Lambda-Abstraction in Elody

Elodyというシステムによる、音楽演奏情報の抽象化の発表。デモを聞いても
いまいちで、能書きに負けていたと思います。(^_^;)

しかし、毎年思うことなのですが、朝イチの8:00のペーパーからきちんと
やってきて、今年はかなり大人しいのですが(^_^;)晩のコンサートが終わる
のが23:00ぐらい(例年は25:00とか26:00というのが2晩ぐらいはある)、
というのを6日間、まったく欠かさず繰り返し続けている、というICMCは、
かなりタフでクレイジーな会議です。(^_^;)
そして僕などは、この機会にしか英語のシャワーを浴びる機会がないので、
テクニカルタームには反応できても、このセッションのようにペーパー
が何を言っているのか、を理解するのに20分のセッションの後半まで
かかることもあり、さらに質疑応答の速いやりとりはほとんど全滅
状態です。まぁ、中身としては30%ぐらいしか理解できていないので
しょう。(^_^;)
そして僕の場合、フリーターですから、こうやってICMCに参加している
期間は仕事ができない、つまり収入の可能性を絶って、毎年参加している
わけです。自分で客観的に見ても、もしかするとクレイジーかなぁ、と
思うこともあります。(^_^;)
でも毎年フト思うのですが、セッション会場を見回して、そういうクレイジー
な(ひとごとみたいに言ってます(^_^;))ガイジンの海にぽつんと一人、
参加している、というこの一瞬が、生きていてよかった、また今年ここに
いてよかった、と泣きたいほど幸せな気分になる、というセンチな一瞬
があります。今日あたりは、その至福を感じていました。これが、ICMC
にハマるきっかけだったのかもしれません。いつも言うことですが、
国内で情報処理学会だけでなくあらゆる学会の音楽情報科学関係の
大会や研究会やイベントに参加したとしても、その世界は非常に狭い
です。特に視野・視点・アイデアの点では、おそらく国内で活動している
20年分ぐらいの刺激が、たった1回のICMCで得られます。日々の稼ぎを
つぎ込んででも参加するだけの相手だなぁ、とつくづく思います。(^_^)
ぼちぼち学生さんとか一部の日本人参加者はギブアップ状態の人もいる
ようです。明日あたりから観光モードも出てくるかもしれません。(^_^;)
でも、僕はもう、この至福の期間、ばりばり全開です。早起きしてペーパー
セッションに向かう時、今日はどんな刺激に出会えるか、どんなにクレイジー
にComputer Musicを愛している人の言葉と出会えるか、思いもよらなかった
どんなアイデアを自分の中から引き出してくれるか、というワクワク感
で、足どりも軽くなるのです。これだけ長いレポートを書いているのも、
一銭にもならない、というより自腹で通信課金を払いつつ自分で勝手に
書いているわけですから、まぁボランティアというか、僕がこれだけ
幸せなのを一人だけで終わらせたくない、という気持ちのみです。この
会議室の皆さんにも、気分だけでもICMCに少しでも参加してもらいたい、
チャンスがあればいずれ一度ぐらい参加してみるか、という人が出てくる
可能性へのタシにでもなればうれしいのです。この熱い気持ち、判って
いただけますでしょうか。
...やっぱり、ちょっとだけ、クレイジーかなぁ。(^_^;)(^_^;)

Holger H. Hoos
SALIERI - An General, Interactive Computer Music Environment

サリエリはポスターでちらっと知ったので、聞く必要もない(^_^;)と
あっさりパスして、いったんホテルに荷物を置きに戻りました。
そして、夕方のコンサートとなりました。昨日の夜のコンサートは
爆睡で失敗したので、朝4時起き(4時には目が覚めていて、ベッドで
不眠していて5時に諦めて起床したのです(^_^;))のせいか、なんか
眠いのですが、気合いで頑張ることにしました。

● 3:00pm-5:00pm           Concert 6         Rackham Auditorium

Horacio Vaggione   -   Nodal

金属的なサウンドを中心としたテープ作品。よくある、と言えばそれまで。

Brad Garton   -     Dan's Toys

これが今回のコンサートの大ウケ作品。「ヤラレタ」というところ。
作曲家自身がなにやら両手に紙袋を下げてステージに上がります。既に
音楽はスタートしています。赤ちゃんをあやす卵形の人形で、中に
リンリンと鳴る鈴が入っているのがありますが、それが鳴り続いている
ようなサウンド。するとおもむろに、「赤ちゃんをあやす卵形の人形で、
中にリンリンと鳴る鈴が入っているの」を袋から取り出して、譜面台の
上に置きました。(^_^;)
すると音楽には、なにやらおしゃべり人形の合成音声みたいな声が
出てきます。するとすかさず、袋から「合成音声を話すおしゃべり人形」
を取り出し、それを指さします。(^_^;)
つまりこの作品、袋から次々に出てきた、子供のための「音のでる玩具」
をサウンドの素材として、エフェクトとコンクレートで作った作品で、
一種のギャグなのです。作曲家は次々に足下に並べた玩具を、その
サウンドのところで持ち上げて示す、というパフォーマーだったのです。
こういうのはICMCでは、アリなのです。やられました。大ウケ。(^_^)

Elizabeth Anderson   -  L'eveil

テープ作品なのですが、人工と自然の二面性をテーマにする、と能書きに
あるのですが、サウンド素材として、自然音と人工音の両方を豊富に
使うことで、なにやら雑然として焦点がボケていました。いい教訓
になりました。(^_^;)

Neil B. Rolnick   -   Screens Scenes

フリージャズのバンドがステージに上がり、ビデオモニターに刻々と表示
される情報をもとにアドリブとセッションとを進める、という作品の
ようでした。(^_^;)
というのも、このホールはステージ後方がカーテンになっていてスクリーン
がなく、このビデオモニターの情報は、ミキシングコンソールの真横に
置いてあり、それを見てくれ、と自分もキーボードを弾く作曲家が言った
のですが、僕はミキシングコンソールの真ん前、つまりビデオモニタが
まったく見えない位置にいたので、なにがなんだかまったく仕掛けが
わかりませんでした。(^_^;)

Celso Aguiar   -    ICMA Commission

ICMAコミッション(委嘱作品の世界初演)の筈なのに、何故かキャンセルに
なりました。作曲が間に合わなかったのでしょうか。(^_^;)(^_^;)

Colby Leider   -    Veni Creator Spiritus

テープ作品ですが、長い音をトレモロをかけてエンエンと振り回す、という
テクにこだわったものでした。僕はこのテクは個人的には好きではないの
で使ったことがないのですが、ここまで徹底的に聞かされると、それなり
に「いいかな」と思ってしまうところが恐いです。次作では使ってしまったり
して。(^_^;)

Jeffrey Hass   -    Keyed Up

この最後の20分の曲ですが、なかなか圧巻でした。スタインウェイのフルコン
が2台、そして二人のピアニストは十分に練習を重ねて呼吸もぴったり、そして
当然ですが、チョー上手い。また3部構成の作品なのですが、まんなかの第2曲
は、なんとまったく電子音もピアノのPAも切って、完全なアコースティック
曲でした。ベルクかなんかの、もう正統的ばりばりの現代音楽ピアノ曲。
そして、これが圧巻で素晴らしかったのです。リズミックなところもピシッ
と合い、叙情的なところも美しい。とても気に入りました。(^_^)
終演後、青野クンが興奮して、「これだ、これですよ。Computer Musicと
いっても、電子音など要らないのですね」(^_^;)と絶賛していました。
もちろん、3曲全て、つまり電子音とピアノの対峙した第1曲と第3曲も、
僕の目にも秀逸の作品だったのですが、この作曲家、敢えてICMCに
「どうだ、アコースティックの現代音楽、これが芸術というものだ」と
強烈なアンチテーゼとしてぶつけてきた、という感じすらしました。
作曲家として、電子音とかComputerに頼らずにこれだけ書けてから
Computerを駆使した作品を書きなさいよ、Computerに頼っては駄目だよ、
と叱られたような気もしました。辛い。(^_^;)(^_^;)

さて、そしてホテルに戻ると、いよいよKyma Userのメンバー限定招待
の特別レセプションになりました。(^_^)
詳細はいずれ、写真とかをからめて僕のWebに英語版として置きたいと
思います(彼らに見せたいので)ので、重要な情報だけ書きます。ソフト
シンセ全盛の昨今ですが、Kymaは強力にパワーアップしました。(^_^)
ここの情報は、今回参加できなかった吉田靖さんにも速報しないと。

まず、ハードのCapybaraですが、現状のCapybara-66からコストダウン
しつつ、処理能力が5-8倍になったCapybara-320になりました。
本体の大きさは今までと同じなのですが、マザーボードにDSP56309
(80MHz)が4個と96MBのRAMが標準で載っています。これで$3300。
ここに、拡張スロットが12個(今までは8個)あり、拡張カード1枚には
同じDSPが2個、RAMが48MB載っています。つまり、マザーボードに
拡張ボードの2枚分が最初から入っているわけです。拡張カードは
$595。つまり、価格はこれまでと据え置きで、処理能力が数倍以上
になった、というわけです。(^_^) 全部入れると、DSPが28個、
RAMが672MBになります。これだと、カードの枚数が増えているので、
僕がフルセット揃えたよりも少し高くなります。(^_^;)
そして、東野さんも僕も気になっていたことですが、今までのシステム
で、カードだけ差し替えも可能。さらに今までのユーザは、ディス
カウントで買い換え、つまり下取りみたいなものですが、そういうのも
対応する(詳細は後日メイルで確認します(^_^;))ということでした。

これがどのくらい凄いのかを、マザーボードだけのベースユニット
と、拡張カードを全部入れたフルセットとで書いておきます。
・リアルタイムボコーダ
   ベースユニット --- 75バンド これだって凄い(^_^;)
   フルセット ------ 675バンド(^_^;)
・リアルタイムサイン合成
   ベースユニット --- 200パーシャル
   フルセット ------ 1856パーシャル こんなの聞いたことない
・グラニュラシンセシス(連続生成グレイン)
   ベースユニット --- 108グレイン
   フルセット ------ 972グレイン
・サンプラとして生成する場合のボイス数
   ベースユニット --- 70ボイス
   フルセット ------ 640ボイス(^_^;)(^_^;)
このハードは既に受注生産可能です。そして、コントロールソフトの
Kymaが、ついにバージョン5.0になります。これは来年1月提供予定。
一番凄いのは、タイムラインに対応したことです。Kymaを触っていない
人にはピンとこないので詳細は省略しますが、Directorのスコアみたい
なところに、Kymaの信号処理パッチをドラッグドロップするだけで
多重アサインできるのです。わっかるかなぁ。凄い進展なのです。
もう、そこに居合わせた作曲家たちは、期待に目を輝かせました。
作曲する立場からすれば、MAX以前と以後、くらいの違いがあります。
このソフトは従来のハードでもコンパチなので、僕も来年になったら
これを使うことになります。そして、助成金が取れたら、ハードも
超強力なやつにバージョンアップしたいです。ただし、まだ現状で
使いきっていないので、いましばらくは66で頑張ることにします。

...と、興奮さめやらぬまま、夜のコンサートに向かいました。しかし、
早起きの影響か、そしてあまり面白かった作品が無かったために、
パーカッション作品を集めた以下のコンサートは、特にコメント
するものもありませんでした。(^_^;)
なつかしい、「シンバルを弓で擦る」のが続出してました。(^_^;)

● 8:00pm    Concert 7 - Percussion Ensemble               Power Center

Wayne Siegel      -     Match I

Michael Gogins    -     Cloud Strata

James Brody     -       Background Count

Edmund Campion     -    Losing Touch

Peter McIlwain    -     Percussion Miniatures

Natasha Barrett    -    Microclimate I: Snow and Instability (ICMA Commission)

Jon Christopher Nelson  -  Other Terrains (ICMC98 Commission)

ということで、充実の4日目が終わりました。これでICMCも3分の2が終わり
です。ちょうど24:00になりました。ここで大人しく寝て、また、明日
も元気に朝イチから頑張りましょう。(^_^)

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10月5日の朝になりました。昨夜も0:00過ぎに寝たのですが、どうしても
5時前に目覚めてしまいます。僕は普通は7時間睡眠から8時間睡眠が基本
なので、どうあっても睡眠不足です。でも、ICMC期間中は一種の「ハイ」な
精神的高揚状態にあるので、なんとか持ってしまうようです。ただし、
コンサートであまり刺激されないのが並ぶと、もう寝てしまいます。(^_^;)

起床して、のこり3分の1となったプログラムを眺めてみると、今日も明日も
午後はそれぞれ、コンサート3連発という凄いことになっていました。
ペーパーは午前で、あとは採択したコンサートセッションの件数をこなす
ということになります。どうも、インタラクティブものは少なくて、テープ
中心になりそうです。(^_^;)

しかし、これでは家族から暗に強くリクエストされている(^_^;)お土産の
買い出しにも行けません。(^_^;)
今回は空港での乗り継ぎが不安なほどタイトなので(^_^;)、空港でも
仕入れることができませんが、ダウンタウンに買い物に行く時間はまったく
なさそうです。Michigan Leagueの建物の1階に、いつもミネラルウォーター
を買う売店があるのですが、ここでミシガン大学の「M」の入ったグッズ
でも買ってお茶を濁すしかなさそうです。テレビの天気予報では、今日の
午後から明日あたりはこのあたりは雨みたいですし(今日はジッカレリ
のデモを撮るのにビデオも持参ですがこれで傘をさすのは大変です(^_^;))、
まぁ、もう開き直ってお土産無しモードでいくことにしましょう。
いざとなったら、関空に着いてから、マカデミアナッツの宅配を頼むこと
にして。(^_^;)

さて、例によって朝風呂をあびて、ここまでちらっと書いて、いま7:00に
なりました。今日は街のカフェも開いている筈なのでホテルの割高な朝食
(といっても、目玉焼き、ベーコン、ポテト、オレンジジュース、コーヒー
で10ドルちょっとですが)を避けて朝食に出ますので、あと十数分だけ、
今年の「傾向」について触れておきましょう。

まずコンサートについては、テープが多いのは機材とかの関係で判る
のですが、素材としてのサウンドが、かなり画一化されてきた、という
のがあります。今ではフリーウェアのパソコン用のちょっとしたサウンド
録音切り貼り編集ツールでも、「エフェクト」のメニューにボコーダ
だのグラニュラだのが普通に並んでいますので、リアルタイムにKyma
やMSPでやろうというのでなければ、世界中の誰でも手軽にこのサウンド
を使えるわけです。そこで、多くのテープ作品で、その音が聞こえた瞬間
に、「あ、これはフェーズボコーダでああやった音だ」「あ、また
グラニュラだ」(^_^;)、みたいなことになります。誰がどんな音を使おう
と余計なお世話なわけですが、こう作品として似たサウンド処理が並ぶ
と、さすがに考えさせられてしまいます。まず、これは一つの傾向。

それからテクニカルな方では、まずいつものこととして「新しいっぽい
テーマ(^_^;)にからんだもの」という一群があります。たとえば、AES、
USB、IEEE1394、などの新しいインターフェースが世の中に登場して
くると、その年のICMCに限っては、他よりも速くそれに従来のシステム
をからめたネタは、ちらほらと採択されます。ただし翌年では遅くて
駄目です。(^_^;)
これは、後藤さんのRMCPとか今年もちらほらあったJavaもの、HTTP版
のWebもの、などもその一種です。コンセプトで言えば、かつてのカオス
やニューラルネットやファジイや遺伝アルゴリズムなどもそうです。
僕だって、ICMCへのデビューはグラニュラとニューラルネット、そして
カオスからだったのですから大きな顔をするつもりはありません(^_^;)
が、こういう「色もの」はいつもありますが、決してメインストリーム
ではありません。その証拠に、パラレルでポスターとかデモがあると、
あからさまにここらの発表の直前には人がゾロゾロと立ち去ります。
なんせ、そういう僕だって、この手の発表は同じ対応をしています
から。(^_^;)

そしてもう一つ、ICMCの王道の一つ、楽音合成の関係です。今回は
第一印象として、楽音合成は元気がありません。セッションのテーマの
構成指針にもよるのですが、「これぞバリバリの楽音合成セッション」
という、新参者を圧倒するセッションがありません。ごった煮ばっかり
です。これはどうも、アルゴリズムとしては物理モデル等で地道に
進展しているものの、昨今のパソコンのマシンパワーの向上で、
思いつくことは特定の研究機関の本格的環境とかがなくても、誰でも
できてしまう、という状況への移行がその理由のようです。
片寄さんが力説していたのですが、MatLabというソフトがあります。
もともと、音楽というよりも計測用途の信号処理ソフトで、当然です
がMIDIもなければノンリアルタイムです。ゆっくり時間をかけて
FFT分析したり波形処理してファイルに書けばよかったからです。
ところが、最近のパソコンのパワーアップで、今ではMatLabで
リアルタイムに楽音合成までできてしまうのです。(^_^;)
MIDIとは別にRS232CとかUSBで制御する必要がありますが、MAX
だのMSPだのという一般にはマイナーな環境でなく、Windows95/
98/NTのポピュラーな環境で、一般的なMatLabでサクサクと楽音
合成ができてしまうのです。事実、MITメディアラボの発表の音源
部分は、既にMatLabでした。(^_^;)

さて、そういう状況で、僕が個人的に感じたことを独断で書きましょう。
(もともとこのレポートはそういうもんですし(^_^;))
ICMCのメインストリームの一つ、僕がbit別冊にも書いたように、
楽音合成、というか「音の追求」というテーマは、永遠に無くならない
ものですし、地道に続いています。そして今年のこの部分のトレンド
ですが、僕は「陣痛」と感じました。産みの苦しみです。(僕はラマーズ
法の「ひっひっふー」も立ち会ったので、生理的実感はないですが、
少しは判っているつもりです(^_^;))
つまり、楽音合成の一つの本流の広義の「分析・合成」ですが、
アルゴリズムがあれば合成するという環境はすごく揃ってきたの
ですが、その基本となる「分析」の対象を模索しているのです。
一つのアプローチは間違いなく、「自然楽器に学ぶ」「人間の音声
に学ぶ」ということです。そのつもりで見てみると、そういう発表の
多いこと。

そしてもう一つ、これはもう勘というより霊感の世界(^_^;)ですが、
「人間」に回帰すると思います。「人間はどう聞こえているのか」
という聴覚に回帰し、「人間はどう感じているのか」という感性の
世界に来ると思います。ヒューマンインターフェース、KANSEI、と
いう我々のテーマは、チャンスかもしれません。(^_^)

これらをまとめて、今のところ(まだこれから2日間でどう変わるか
は判らないですよ(^_^;))の僕の印象としては、一見「不作」の
今年のICMCペーパーセッションですが、「分析・合成の新時代への
陣痛」、と言わせていただくことにします。これが今のところの
「傾向」の見立てです。さて、最終的にbitに記事を書いてみた時
にはどうなっているでしょうか。(^_^;)

...ということで、おぉ、もう7:23です。では、ぼちぼち出かけること
にします。またまた朝イチのペーパーからいきましょう。(^_^)

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朝食は、なんだかよく判らない重くて堅いドーナツでした。
ペーパー会場の前でヤニ・ザンノスさんと会いました。今晩の
スシバーですが、もしかするとベルリンICMCのミーティングの
声がかかる可能性がゼロではない、という事でしたが、それが
なければ、適当に声をかけて日本の音楽情報科学関係者とともに
行きましょう、ということになりました。

さて、朝イチのセッションですが、さすがに今日はちょっと
スタート時には少ない「入り」です。(^_^;)
でも、さすが、宇佐さんはちゃんと来ています。日本人で毎朝
書かさず最初から、というのは僕と宇佐さんぐらいですね。
でも、ICMCの有名人ダネンバーグも、ちゃんとギリギリに
やってきました。ここらのビッグネームでも、ペーパー
セッションをきちんとフォローしているのは、さすがです。(^_^)

■Monday, October 5, 1998

● 8:00am-9:30am       Paper Session 14         Rackham Amphitheater

Matthew Malsky
A Compositional Amanuensis on the Web

MIDIイベントとして記述できるレベルの音楽演奏情報に
対する操作アルゴリズムによる作曲支援環境をMAX上に構築
した、という話そのものはあまり(というか全然)目新しい
ものではありません。(^_^;) それをインターネットを
経由して共有しよう、という事のようですが、これまた
あまり(というか全然)目新しいことではありません。
うーーむ、客席の入りが悪い理由はこれだったのか。(^_^;)

Sever Tipei
Manifold Compositions, Music Visualization, and Scientific Sonification 
in an Immersive Virtual-Reality Environment

DIASS(digital instruments for additive sound synthesis)と組み合わ
せて、VR環境で「音の可視化」をする、というもので、システム
はIBMの超並列マシンとかOnixとかを使う、という凄い話です。
ただし、中身としてはかなりイマイチでした。(^_^;)
どうも、化学反応とか超伝導とかの科学シミュレーションの
可聴化、というのがもともとのネタらしいので、楽音合成と
してはもはや苔むしたレベルなのでした。これで、「今後の
展開としては作曲家ともコラボレーションしていきたい」
とか「科学シミュレーションと芸術との関係は」などと
嬉しそうに言われても、ちょっと皆んな「引いてしまう」
という反応でした。

Gerard Assayag
Objects, Constraints and Time in OpenMusic 2

途中、思わずウトウトしてしまいました。内容がソソラレない
と眠くなるようです。さすがに、ICMC後半戦で恒例の蓄積疲労
が出てきたようです。(いまこの発表中ですが、黙って聞いて
いると寝てしまうのでPowerBookを起こしたところです)
IRCAMのOpenMusicというシステムのPRでした。(^_^;)

以下の教育セッションは、個人的にはあまりソソラレないの
ですが、神戸山手の音楽科での講義(音楽情報科学研究会12月
例会で、ふーみんこと中村文隆さんが僕と連名で発表の予定)
の今後、というあたりでは関係しそうなタイトルが並んで
います。でも、まぁ今回はパラレルなので行けませんでした。
あとは、Proceedingsをふーみんに読んでもらい、著者と
メイルで情報交換してもらいましょう。(^_^;)

● 9:00pm-10:50pm  Education Session   Michigan League (Koessler Library)

Alessandro Cipriani
Three Levels of Education in Electroacoustic Music: the Example of the 
'Virtual Sound Project'

Peter Raschke
Music Technology as a Tool for Exploring the Creative Aspects of Music

Juan Reyes
Education with Computer Music in Colombia MusicWeb Den Haag- 
Developing new tools for higher

Karst de Jong
music education, using wide-area networks and hypermedia technology

午前の2コマ目の以下のペーパーセッションについては、どうしても
ジッカレリのデモに行きたいので、ヤニさんの発表まででスキップ
する作戦にしました。最後の2件など、かなり怪しい(^_^;)ので、
まったく後ろ髪は引かれません。(^_^;)

● 9:40am-11:50am       Paper Session 15        Rackham Amphitheater

Eric D. Scheirer
The MPEG-4 Structured Audio Orchestra Language

MPEG-4についての解説が最初にエンエンとあって、どうだこれは
ソフトシンセとかリアルタイムのエフェクトまで出来るんだぜ、
と強気でスタートしたのですが、最後には「このプロジェクトには
皆さんのヘルプが必要です」と泣きになってしまいました。(^_^;)
どうも、半分はペーパーマシンのようです。
ここでは、SAOLという言語を提案しているのですが、これが
テキストベースでユニットジェネレータを使うというもので、
どうにもアンバランスでした。(^_^;)

Kenji Yasaka
Using Csound as a sound engine for interactive WWW contents

今回のICMCでは、僕の気付いたところではダンネンバーグとこの
慶應SFCの八坂さんだけなのですが、コンサートとペーパーの
両方での発表となりました。さすが慶應、英語スラスラでした。
(何故かそういう思いこみがあります(^_^;))
テーマとしては、CsoundのサウンドジェネレータをWebにリンク
してサーバに置き、CGIを使って、Csoundのプログラムをアップ
ロードして楽音合成したサウンドファイルを(URLが返される
ことで)ゲットしたり、サウンドファイルをアップロードしたり
できる、というものでした。
それほど画期的なものではないと思う(^_^;)のですが、ネタが
Csoundということもあり、ICMCではウケたようです。(^_^)

Ioannis Zannos
Designing an Audio Interaction Modeling Language: Specification, 
Implementation Issues, Prototype

ヤニ・ザンノスさんの発表は、第一印象としては地味なものだったの
ですが、僕の興味は尻上がりにアップしました。コンセプトとしては、
従来の音楽生成システムでは、
  スコア → パフォーマー → サウンド
という一方向だったのが、最近では
  スコアモデル←→パフォーマーモデル←→サウンドモデル
というようにインタラクティブになっている(上の場合、人間の
パフォーマーは「パフォーマーモデル」の部分と相互作用する)、
というイントロで、ふむふむ確かに(^_^;)、という程度でした。
そしてinteractive audio design systemsの問題点として、
 ・タイムオフセットの問題
 ・モーションキャプチャの問題
を提起したのも、ふむふむ確かに(^_^;)、でした。
しかし、ここから面白いことになってきました。実際にヤニ
さんが開発したシステムの話になっていったのですが、モジュール
として、
 ・サウンドのリアルタイムマネージャ --- SoundManager
 ・GUI、パラメータの制御構造の構成 --- SoundPallate(!!)
 ・サウンドのライブラリ --- SoundLib
という名前には、思わず笑ってしまいました。(^_^;)
そしてデモをしたのですが、Mac上で、けっこうスマートなGUIを
カスタマイズしていて、サクサクとサウンドが生成され、リアル
タイムにパラメータ制御に反応しています。まるでMSPを見ている
ようなのです。こんなのをMac上で素で開発したとしたら凄いな、
と感心したわけです。
ところが、質疑応答のやりとりで判明したのですが、これは
SuperCollider上に、たとえばMSP上のパッチのように作った、
つまりリアルタイムのサウンドシンセシスはSuperColliderが
やっているのだ、ということでした。直後にイチローさんに
聞いたところでは、250ドルぐらいで入手できるそうで、そう
いえばICMAかIEEEのMLで情報が流れてきたことのある名前で、
聞き覚えがありました。赤松さんも使っていたんじゃなかった
かな。
...ということで、帰国したらさっそく、チェックしてみる
ことにします。今度IAMASに行くので、赤松さんに聞いてみれば
いいのかな。(^_^)
もしかしたら、これは凄いものなのかもしれません。いいもの
を発見しました。(^_^)

...おぉ、この下までさらに書いていて突然に気付きましたが、
300行を越えていました。(^_^;)
突然ですが、ここで記事をいったん切って、続きは次に
しましょう。(^_^;)

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10月5日の午前のペーパーセッションのあたりからの続きです。
実際には、例によって地下のウェンディーズで打っています。

会場では、慶應SFCで明日にデモ発表する山岸さんが僕の
ところに来ました。なんでも、ブースにパソコン画面を出す
プロジェクタはあるが、パソコン対応でない普通のビデオ
プロジェクタだ(^_^;)というのです。ちょうど僕が持参した、
同じPowerBook2400cの800*600を出せるスキャコンが
あるので、これを貸して欲しいというわけです。もちろん
OKで、コンサート会場で渡すことにしました。その後、
同じ明日にデモ発表するイメージラボの平井さんから、
今度は僕の持参したMac用のMIDIインターフェースを
貸して欲しい(^_^;)、という話も舞い込み、僕の機材は
自分の発表だけでなく、十分に活躍することになりました。
持ってきた甲斐があるというもんです。よかったよかった。

というところで、このセッションの以下の3件は確信を
もってパスして(^_^;)、デモセッションに行きました。
ジッカレリのMSPの最新のデモをビデオに撮らなければ。
(この会議室の多くのMAXユーザの皆さん、MAXを起動した
時に出てくる眼鏡をかけたあのキャラクター、作者の本人
の顔を知りたいでしょ。当人はとっても静かな紳士です
よ。(^_^))

James R. Lendino
Scoring for the modern computer game

Holger H. Hoos
The GUIDO Notation Format - a Novel Approach for Adequately 
Representing Score-Level Music

Kai Renz
A WEB based approach to Music Notation using GUIDO

● 10:00am-11:30am  Demonstration Session 4   Michigan League (Hussey Room)

Gabriel Maldonado
Realtime Csound Midi IN/OUT for Windows95
 
デモ会場では、この発表はまるで無視していました。(^_^;)

David Zicarelli
An extensible signal processing environment for MAX

でた。MAXのジッカレリ。フリーランスとなってベンチャーを
しているようです。サイクリングとかいう会社名。(^_^;)
これが本命です。もう凄い人だかりで、僕などは背伸びしても
後ろの机に乗っても、見えません。なんでガイジンはこうもデカイ
のか。(^_^;)(^_^;)
ビデオカメラを回しながら、じりじりと取材モードのふりをして
前に進んでいきました。(^_^;)
まぁ、中身としては、G3ノートをさくさくと操作して、ジッカレリ
がMSPのデモをしている、というそれだけなのです。でも、ここ
ICMC会場で、MSPの最新状況に触れる、ということ自体が、一つ
の儀式のようでもあります。「MSP詣で」をする人波は延々と
続きました。(^_^;)
まだ僕はMSPを使っていないので、このデモでどこが新しくて
どこが凄いのかは不明です。(^_^;) あとで慶應の学生にでも
聞くことにします。

Mara Helmuth
StochGran on Silicon Graphics IRIX

通りがかりに見たら、毎年やっているここでは、SGI上のグラニュラ
シンセシスのパラメータ制御GUIをデモっていました。同じテーマ
でDSP鈴なりの力ワザをしている板垣さんが言うには、リアル
タイムではなくて、パラメータを設定すると2-3秒後に出てくる、
というセミリアルタイムなのだそうです。このソフトはWebで
公開している(いつもそう)のですが、誰がダウンして使うのか、
というのはちょっと疑問です。(^_^;)

さて、通りがかったブースでは、ICMC1999Beijing(「ペキン」で
なく「ベイジン」)のオーガナイザの作曲家がいました。そこで、
まだ決まっていないと知っていながら、質問しました。
Q「ICMC1999の、応募デッドラインを教えてくれ」
A「いや、まだ決まっていないんだ。この紙にあるように、
  http://www.cs.ust.hk/icmc99/ を見てくれ」
Q「いや、未定なのは知っているが、あちこちで1月とか2月
  とかの噂を聞いている(^_^;)。暫定でも教えてくれ」
A「よしきた。(^_^;) あくまで暫定、仮の情報だよ。
   テープ作品 12/28
   ライブ作品 1/10
   ペーパー  2/7 だ。あくまで暫定(^_^;)。」
Q「ありがとう。そしてもう一つ質問。中国には、この(示して)
  PowerBookとか、色々な機材は持ち込めないという噂が
  あるけれど」
A「いや、ちゃんと内容に関する書類を書いて、持ち込んだ本人
  が帰国の際に持ち出せば、MacやPCなら問題は無い。ただし
  SGIは駄目だ。(^_^;)
  持ち込んでそのまま中国に居座る(それを売って商売する)
  というのが困るだけの話だ。
  ちゃんと、機材持ち込みに関する書類を用意するので、そこに
  書き込んでくればOKになるようにする」
...というような英語のやりとりがありました。ちょうど隣に
橋本先生もいたので、まぁ安心の情報でしょうか。でも、
レントゲンでは何やら怪しげなICとかバッテリとか電線とか
電池の映るであろう僕のオリジナルセンサなどは、持ち込み
できるのかなぁ。(^_^;)(^_^;)
ちなみに、会場の精華大学(京都にも同じ名前の大学があります
ね(^_^))ですが、TSINGHUA University、チンホワだいがく、
と発音するそうです。

ということで、いったんホテルに戻ってビデオカメラとProceedings
を置いて身軽になり、貸し出す機材を持っていくということに
なりました。いよいよ午後はコンサートの3連発です。つまらない
作品だと寝てしまいます。良いのが続きますように。(^_^;)
ここでいったん、移動します。記事も区切ります。

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ホテルの部屋に戻ると、ドアの下に山岸さんからのメモがあり、
どうやら僕のスキャコンはなくてもできるように解決した
ようでした。それならベストです。よかったよかった。(^_^)
さて、平井さんに貸すMIDIインターフェースを持って、再び
コンサート会場に向かいます。あたりの風情はもう秋そのもの。
京都・嵯峨野あたりの紅葉の絶景を想像していただければ。
もしかして、日本に戻ったらまだ暑いのかなぁ。(^_^;)

● 1:00pm-2:30pm           Concert 8         Rackham Auditorium

ホールでは機材を借りるという平井さんを待っていたのですが、
結局この日は現れませんでした。(^_^;) どうも、平田さん
後藤さん片寄さん青野クンなど御一行で、どこぞに観光に行った
らしいです。確かに、午後にペーパーが無くなってブチ抜きで
コンサートというのは、コンサートをパスする組にとっては
チャンスなのかしれません。このコンサート会場はドッと
人が減っていました。(^_^;)

Dennis Miller  -  Granulations

最初の音を1秒聞いただけで、あぁこれは古典的なGranular Synthesis
の音だ、とホッとしつつスタート。いい電子音の音楽で、ぜんぜん眠く
ならずに楽しめました。どことなく湿度(潤い)のあるサウンドでした。

Pete Stollery  -  Onset/Offset

前の曲がWetなら、こっちはもろDryなサウンド。冒頭、いきなり
金属製の重いドアがガシャンと閉じる音から始まり、それ系の音が
色々にコラージュされて暴れ回るのですが、これがナイスなのです。
だいぶ久しぶりに「カッコイイ電子音楽」を堪能した気がしました。
対照的なサウンド素材のカラーですが、この2曲はいきなり好きに
なりました。(^_^)

Martin Gotfrit  -  On The Air

冒頭、よくあるラジオのチューニング選曲の演出から次第にこれが
グラニュラーサンプリングされていく、というアリガチな展開。
でも、15分という長さには閉口したものの、これまたけっこう
聞けました。眠くないと、こうも楽しめるものだったのですね。
(楽しめるから眠くないというか(^_^;))

Thomas Neuhaus  -  5 little pieces about the little noises of a 
little person

これはもろ反則。(^_^;)(^_^;)
冒頭、たぶん作曲家自身の子供である赤ん坊の声が出ました。そして、
これを素材に色々とポップに遊びました。反則だあ。(^_^;)
言葉になっていない赤ん坊の声というのは生々しくていいですね。
よだれが伝わってきそうなサウンドです。これを越えるとしたら、
誰か熱烈カップルに協力してもらって、ぶちゅーーーっと唾液が
糸を引くような熱いキスをしてもらうか、あるいは魅力的な女性の
吐息でもサウンド素材として録音してこないと勝てそうもありません。
どなたか、サウンドを提供していただける方はいませんか。ぜひ、
この作品の艶かしい世界に挑戦してみたいな、と思ったのですが。

Pedro Rebelo   -  Mapa

最初は邦楽器らしきもの、次第に西洋楽器の音、とまるで節操なく
各種の楽器音、というかフレーズ演奏断片を色々と持ち寄って
コラージュした作品。なにかもの足りませんでした。それぞれの
楽器の単純な音でなくフレーズを演奏した断片ということで、その
個性がかえって災いしているように思いました。教訓ゲット。(^_^;)

Robert Doati  -  IV Felix Regula

これも同じような楽器音のコラージュ。いけません。(^_^;)
このコンサートは結局、尻つぼみになってしまいました。
休憩もなしに全てテープだったコンサートが終わり、そのまま
客席でうとうとして待機して、次のコンサートになりました。

● 3:00pm-5:00pm           Concert 9         Rackham Auditorium

Juan Reyes       -     Straw-berri

冒頭の音で目覚めました。(^_^;) 本当に寝てました。
物理モデル方式の楽音合成にこだわって、自然音をサンプリングした
素材を敢えて使わない、という主張でしたが、残念ながらその欠点
がよく見えました。音に潤いがないのです。いけません。(^_^;)
なにがなんでも自然音サンプリングが優位だ、などというつもりはない
のですが、この作品は大いなる課題をつきつけてくれました。

Ron Parks      -     Residual

ダブルベースの音を素材としたコンクレート。このあたり、メモが
あまりないので、ちょっとうとうとモードだったのかもしれません。

Larry Polansky     -   choir/empi's solo

女性のボイスだけで延々とコンクレートしていました。この人のは
いつもとにかく「(よくもまぁ)延々と」というのが感想になる、と
いうICMCの常連です。(^_^;)

Jerry Tabor    -    engaging Causey

金属的なサウンドで、プログラムノートによるとCsoundだそうです。
ふーーむ、Kymaでも出るけれど、これはちょっと試してみようかな、
という気になりました。SGI版のCsoundもフリーで出ているという
ことなので、いずれトライしてみましょう。

Linda Antas     -   Still, Yet, Again

この曲もCsoundだ、ということでした。「こんなんでいいのか」と
いう意味不明のメモが残っています。(^_^;)

Kazuo Uehara    -    Pont de l'Alma de Paris

もう何度も聞いている、上原先生の作品。ICMFでも流れました
し、bit別冊の付録にも入っています。僕は個人的には、パリの
音風景とピアノ音による部分とのアンパランスというか雑居
状態がちょっと「?」だったので、終わった直後の拍手に注意
していたのですが、果たしてというのか、どちらかといえば淡泊
だったようです。一つのテーマに絞ってガンガンにそこを攻めた
作品の方が、そのツボを外していなかった場合には絶賛の拍手を
受けるようで、ICMCコンサートの拍手というのはかなりシビア
なバロメータだと思います。(^_^;)

Barry Truax    -    Androgyne, Mon Amour

Granular Synthesysをリバイバルさせた張本人のバリー・トロウ
先生ですが、この作品ではなかなかやってくれました。言葉で
説明するのは大変なので詳細省略しますが、コントラパス奏者と
コントラバスがステージ上で愛し合った(^_^;)、というような
もので、決してパフォーマンスでごまかすのでなく、背景音響
(レゾナンスをかけて詩の朗読、ときどきグラニュラ(^_^;))
ともベストマッチしていました。チャンスがあれば、また
聞きたい作品です。

Christopher Bailey   -  Duude

なかなかポップなノイズミュージック。

このあと、ヤニさん、そのお友達の**さん、東野さん、板垣さん
と僕とで、日本食レストランに行きました。寿司は明後日からという
ことで駄目、お酒も許可申請中で駄目(^_^;)、ということでしたが、
僕はとんかつ(緑茶と味噌汁が最高(^_^))を食べました。お米は
おいしかったですが、顎が疲れました。凄く固かった(^_^;)。
ここでの話題も色々あるのですが、もう省略します。いまホテルに
帰ってきて23:15なのですが、どうもかなり疲労してきているので、
明日の朝イチに備えて、今日のうちに寝たいので。(^_^;)
ヤニさんはベルリンICMC2000のco-organizerということで、
これから忙しそうです。

● 8:00pm     Concert 10 - Symphony Band                 Power Center

Ann Warde       -      Helios

Christopher Cook    -   Bluescape

Rasmus Bruuse   -   Lunding Det Nodvendige

Larry Austin     -     Quadrants: Event/Complex No. 1

Bret Battey     -      Distance, Dance, Discern

Sean Varah     -       Slipping Image

David Jaffee    -      ICMC98 Commission

この夜のコンサートは、爆睡はしていませんでした。(^_^;)
でも頻睡、あるいは浅睡ぐらいかな。(^_^;)
個々にはコメントのメモがありますが、ぼちぼちリミットも
近いのをいいことに、省略してしまいます。ブラスの盛大な
オーケストラが頑張りましたし、カルテットもよかったです。

宿題としては、Csoundを入手して実験、それからSuperCollider
もKAGIでオンライン購入して実験、という課題ができました。
でも、日本に帰ったら(というか帰りの機内から(^_^;))、
山手の公開講演会で初演する新作の作曲に没頭しないと
いけません。まだこれからなのです。構想はあるのですが。

...ということで、いよいよ明日はICMC1998最終日です。いつも
この時期になると、あぁ今年も夢のような幸せな期間がもうじき
終わってしまうんだ、と感傷的になってきます。これがまた、
いいんだな。(^_^)

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10月6日の朝になりました。いよいよ今日はICMC1998の最終日
です。またまた4時には目が覚めてしまい、ベッドの中で色々と、
考えを巡らせていました。来年のペーパー発表などは、既にタイトル
も決まってしまいました。(^_^) まずはこのネタは挑戦しましょう。
今年のダネンバーグなどはコンサート発表だけでなく、ペーパーも
3-4件発表していましたから、いくつも出してみようかな、とも
思っています。例年に比べて時間があるのが幸いします。
そして、神戸山手公開講演会コンサートで発表する新作。タイトルと
構想のみだったのですが、具体的なアイデアが沸々と湧いてきました。
これは、ひょっとするとひょっとして、けっこうクルかもしれません。
でも、実現する時間が足りないです。困ったなぁ。(^_^;)

これだけ同時進行で書いたレポートですが、初日だったかにPowerBook
を落として冷や汗をかきましたが、万一このPBがクラッシュしたと
したら、絶っっっ対に、もう一度打ち込むということは不可能です。
そこで、ちょうど東野さんがフロッピを持っていた(FDDは無し。僕は
逆にFDDは持ってきたのですが、必要なら生協で買おうと持っていません
でした)ので2枚もらって、ここまで12本のファイル(これは13本目
ですよね)をバックアップしました。東野さんはICMCからいったん日本
に帰って1-2日だけ雅楽のリハに参加して、すぐにイギリスに飛んで
公演だそうです。昨夜は、ICMCのボスとなったステェファン・アーノルド
さんに東野さんを紹介しましたが、ちょうどアーノルドさんのいる
グラスゴーも行くらしいので、きっと東野さんはそこで奢ってもらえる
のでしょう。(^_^)
そして、このバックアップが僕のところと東野さんのところに分散した
ので、万一僕の乗った飛行機が落ちても(^_^;)、この記事はいずれ東野
さんが日本に紹介してくれる可能性が残ったわけです。この場合、この
ICMCレポートが僕の「遺書」となりますが、「死んでも悔いなしICMC」
という気分は半分以上、本気です。(^_^) あ、思いついたアイデアの
作曲とペーパーを実現できないと、悔いが残りますね。(^_^;)

昨日は観光グループもいたようですし、国立音大の学生さんが風邪で、
あるいは井口先生も時差で、とホテルの部屋に篭る日本人も出てきた
ようです。考えてみれば、いきなり時差つきの12時間フライトで到着
して以来、朝は5時起きで8時からのペーパーから一日ぎっしり、そして
夜にホテルに戻って寝るのは24時過ぎ、というのをまるまる6日間、
休み無しにきっちり繰り返しているのですから、こんな勤勉な毎日と
いうのは、日本でも無いですよね。(^_^;)
そして、今年は病み上がりということもあって、毎日欠かさず、
ドリンク剤代わりに「カッコントウ」とビタミン剤(ビタミンCと
チョコラBB(^_^;))を風邪でもないのにきちんきちんと飲み、寝る
時にはマスクをして乾燥に備えたこともあって、なんとか風邪は
ひかなかったようです。でも、それでも、蓄積疲労というのか、
だいぶ限界に近づいているかなぁ、という最終日の朝です。
東野さんも同じように朝4時頃には目覚めてしまうそうで、体内
時計が現地時間と戦っているのでしょうね。日本人はたぶん誰も、
20:00からのコンサートは眠いのだ。僕だけではないのだ。(^_^;)

ということで、いつものように風呂を浴びて出かける前に、ということ
でここまで書いてきました。出かけるまであと少しあります。せっかく
なので、今日も朝食と昼食はいつものようにいこうと思います。(^_^;)
テレビの天気予報では、どうも今日はシャワーがあり、明日には前線
がシカゴ付近で絶好調で、雷雨とかヘヴィーレイン、とか言って
います。無事につつがなく帰れるかどうか。うーーーむ。(^_^;)

しかし困ったのは、お土産です。どうしよう。(^_^;)
観光なんてのは僕はいつもICMCでは無縁なのですが、まったく生協の
売店にも出かける時間がありません。今日はデモセッションを覗く時間
を切り上げて、とにかく初日に案内してもらったMichigan Union(生協)
の売店で、お土産のショッピングに挑戦しましょう。今回は奥さんが
「お土産リスト」を渡すのを忘れてしまったようなので、自分でメモ
しないといけません。ウチと、実家と、大学の研究室と、えーと、...。
こういうのはとっても苦手なんだけどなー。(^_^;)

さて、ところで。
ICMC1991モントリオール(カナダ)、ICMC1992サンノゼ(アメリカ)、
ICMC1993トウキョウ(日本)、ICMC1994オーフス(デンマーク)、
ICMC1995バンフ(カナダ)、唯一のスキップICMC1996香港(残念)、
ICMC1997テッサロニキ(ギリシャ)、そしてICMC1998ミシガン。
とりあえず、僕もこれだけICMCに参加してきたのですが、いつも
見かける顔の人にそういう話題で近づいて話をしてると、「なに言って
んだ、俺は1978のミシガンからずーーーっと20年間、皆勤だぜ」
みたいな猛者が、もうモサモサといます。(^_^;)
まだまだ僕は尻の青い駆け出しなのですね。
でも、普段は日本という井戸の中にいる僕が、こうしてICMCに参加して
世界中の柔軟で好奇心に溢れたアイデアと交流して刺激(と翌年に
向けての元気(^_^))を得るのより以上に、これらタフでクレイジー
な連中だって当然、毎度のICMCでそういうアイデアの刺激交換をして
います。作品でも研究でも、先に成果まで実現したものの勝ち、この
アイデアはウチものだから勝手にパクらないでね、などという某国の
某学会のようなこと(^_^;)はありません。ライバルの研究機関や大学
ともテーマによっては柔軟に共同研究するし、相互にスタッフが
行き来したり、転職引き抜き独立起業化、なんでもありです。(^_^)

さて、そこで、そんな唯一の機会とも言えるICMC、来年はお隣の
中国ですし、興味のある方は一緒に行きましょう。といっても、僕と
同一行動をとるとたいてい相方はダウンしてきましたので(^_^;)、
一緒なのは飛行機とホテルぐらいです。どうも噂では、外貨獲得の
ために、ICMC1999で「推薦」されるホテルというのはかなり古い
国策のホテル(2000人収容、フロアごとに電話交換がいるとか)で、
ボロなのに高いそうです。(^_^;) 外資系の、綺麗でちょっとしか
値段の違わないホテルを自力で捜した場合(そこに滞在するという
証明をあらかじめ入手してビザを取る必要があるようです)、
ペーパーとコンサートの会場がかなり離れているらしいので、
移動のタクシーをご一緒できる人がいるだけで、だいぶ助かる
のです。(^_^;)
僕にとって生存証明とも言えるICMCですので、たぶん来年も、審査
を通っても通らなくても参加します。スキップすると世界からひどく
遅れるのを香港で実感していますので。助成金が取れるか、単行本の
印税を狙うか、旅費のアテはこれからですが、もう家族も諦めてくれて
います。(^_^;) 来年のICMCは10月の下旬、10/23-29だそうです。
正式なアナウンスは、今日の晩のICMA総会であります。

というところで7:30になりました。これから最終日のペーパーに
出かけます。(^_^)

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■Tuesday, October 6, 1998

● 8:00am-9:00pm        Paper Session 15       Rackham Amphitheater

Todd Winkler
Motion-Sensing Music: Artistic and Technical Challenges in Two 
Works for Dance

VNS(very nervous system)という凄いネーミングのシステムで、
ダンスをセンシングして使う、というもの。今回はこの手のものが
多かったのですが、このグループは実際に振り付けして公演で使った
ものをデモしていました。
VNSとは、ハード的にはMacにSCSIバスを経由してつないだもの
で、ソフト的にはMAXのエクスターナルオブジェクトとして機能
します。中身はイメージラボのDigitEyeと同じようなもので、
二つのCCDカメラで128*240ドットの画面内のピクセルを
6ビットのグレイスケールで処理し、グループ化したピクセルの
輝度の変化をフレームごとに追従する、というものです。具体的な
輝点とかでなく、前フレームとの変化をセンシングするようです。
カメラごとに画面内の16個のブロックをセンシングしていける
そうです。デモビデオの公演を見ると、変化イベント検出のために
サウンドもトリガ主義のパーカッシブなものばかりなのですが、
僕にはなかなかよくやっている、と思えました。「いまいちじゃん」
と思って見ていた日本人も少なくないとは思いますが。(^_^;)

Niall Griffith
LiteFoot - A floor space for recording dance and controlling media

これは同じダンス関係ですが、LITEFOOTという、光学的センサを
仕込んだfloorを作ったものです。凄い力ワザでした。(^_^;)
縦横1.76メートル、厚さ10cmのfloorステージの中に、11*11
のブロックに仕切りを入れて(人間が乗るので当然ですね)、
それぞれの中にプリント基板がずらずらと121枚、並んで
います。各プリント基板には4cm間隔で縦横4個ずつ、合計
16個の光センサが仕込まれています。つまり全部では、
44*44=1936個のセンサ!!!(^_^;)
それぞれのセンサは、LEDから出た光が人間の足で反射したのを
フォトTrで拾う、というだけのもので、場合によっては、
このreflectionモードでなく、上からの照明を当てている
ところで人間の影を拾うshadowモード、というのもあります。
センシングは各センサを全て10msecでやっているようです。
応用としては、
 ・ダンスの振り付けのレコーディング
 ・アートパフォーマンス
 ・子供の体験できる施設
というあたりです。このシステムは、
http://www.ul.ie/~pal/lifefoot/
で見られるようです。興味のある方はどうぞ。

ここで、懸案のお土産を仕入れるために、以下のセッションは
パスして(^_^;)、Michigan Unionの地下の生協のギフトコーナー
に行きました。でもあまり何もなくて、ハロウィンのギフトカード
でお茶を濁すことになりました。(^_^;)

● 9:00am-10:30am       Paper Session 16        Rackham Amphitheater

Brad Garton      A Sense of Style

Roger Dannenberg
Synthesizing Trumpet Performances Preparation for Improvised 
Performance: Machine

David Wessel
Learning, Knowledge Representation, Listening, and Synthesis in 
Collaborations with a "Kyal" Singer

● 10:00am-11:30am  Demonstration Session 5   Michigan League (Hussey Room)

そして、生協から最終のペーパーセッションに向かう途中で、以下の
最後のデモを覗きにいきました。ラボの平井さんと、慶應SFCの山岸さん
の発表があるので、bit記事のために専用に関空で買った白黒カメラを
持参しました。

Angelo Bello
An Application of Interactive Computation and the Concrete 
Situated Approach to Real-Time Composition and Performance

Keith A. Hamel
NoteAbility - A Comprehensive Music Notation System

Seinoshin Yamagishi
Variations for MAX and the Internet

慶應はもっぱらWebもの、ということで、サーバにアクセスして
アルゴリズム作曲のパラメータをCGIに渡すと、ここからサーバが
MAXのアルゴリズム作曲パッチを起動して、生成されたサウンド
をストリームオーディオで返す、というものでした。

Shigeyuki Hirai
Software Sensors for Interactive Digital Art

これはいつものソフトセンサ。音楽情報科学研究会の夏シンポで、
札幌でデモしたものです。なんとか準備も間にあったようです。

このあと、どうしても奥さんお土産が見つからなかったので、
Michigan Leagueの売店に寄って、なんとか仕入れてきました。
ここで媚びておかないと、来年もありますので。(^_^;)

● 10:40am-11:40am       Paper Session 17        Rackham Amphitheater

Jean-Loup Florens
A real-time workstation for complex physical models of multi-sensorial 
and gesturally controlled instruments

けっこうこの発表を期待して会場に人が来たのですが、なんと当日に
なっても発表者が現れず(^_^;)、ドタキャンとなりました。
実はいま、この時間に皆んながダベッているところで打っている
のです。隣では大矢さんと板垣さんと宇佐さんが、昼食のステーキ
について議論しています。議論はもちろんそれだけでなく、来年ICMC
のコンサートセッションに大矢さんも応募したい、などと言っています。
Jazzギターを弾いて渡辺香津美になればいいのに(大矢さんがまだ
浜松にいた時には、僕と一緒にJazzバンドしてました(^_^;))。
果たしてどうなるか。

Insook Choi
ScoreGraph: Dynamically Activated Connectivity Among Parallel 
Processes for an Interactive Performance

いよいよ最後の発表は常連の女性のChoiさんです。今回は彼女の作品
(インスタレーション)はかなり離れたMedia Unionでやっていたので、
僕はまったく作品も見れませんでした。CAVEを使ったものだった
ようです。このペーパーもそれに関したものでした。もろにVRでの
各種センシング情報をもろにVR上で3次元映像とか楽音合成に反映
させる、という正統的なアプローチです。凄い。スポンサーを確保
しないと、とてもできない研究です。(^_^;)

...というところで、ついに今年のペーパーセッションも終わりました。
あとは午後に3つのコンサート、そしてICMA総会で終わりです。
日本からの研究者とか学生さんとかは、既に二日目の観光モード
に突入している人もいるみたいです(出たところで後藤さんに会いました
が、今日はずっと議論をしていたそうで、決して「今日は」観光モード
ではない、と力説していました(^_^;))。僕はお土産探しの時間、ずっと
パソコンとProceedingsを背負っていたら疲れが腰に来た(これを「トシに
来た」とつっこまれます(^_^;))のですが、もう一頑張り、いって
みたいと思います。

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ペーパー会場からいったんホテルに戻って、重いProceedingsとパソコン
を置こう、その前にどこかでまた昼食を仕入れて、と歩いていると、
毎日いつも通っていたビルの奥の方に、「井」という大きな漢字が
見えました。「井」ってなんだろう。昼食をまたどこのサンドイッチ
にしようかな、と思っていた僕の頭には、もしかして「丼」という字の
真ん中の点が取れたのでは、と思い至りました。(^_^)
そしてこれは正解でした。毎日気付かずに通り過ぎていたこんな
至近のところに、日本レストランがあったのです。それも安いのが。
最終日とはいえ、気付いてラッキーでした。さっそく、TANIN DONBURI
と有料の緑茶を頼みました。お店の人はたぶん韓国かチャイニーズ
でしたが、十分に日本の他人丼の味でした。これで、なんか一気に
元気が出ました。やっぱり日本人はこうでなくっちゃ。(^_^)
ホテルに戻ると、ちょうど帰国するために東野さんがロビーで
コミューターバスを待っていました。バックアップのFDを渡して、
「ご苦労さま」の別れとなりました。またいずれ、日本で打ち上げ
をすることになりそうです。一時帰国している後藤スグルさんがいる
間に再会できるといいのですが。

...ということで、他人丼で元気が出てきたので、コンサート会場
にパソコンを背負ってきて、合間に打ち込んでいます。(^_^)
ここで、受付で取材した情報を含めて、今回のICMC1998を簡単に
まとめておきましょう。ここの部分は、当然ですが、bitのレポート
で使うと思います。(^_^)

参加者 --- 約350名 (参加国:  多数(^_^;))
ペーパーセッション 17回
デモセッション 5回
ポスターセッション 3回
教育セッション 1回
スタジオレポート 1回
以上、いわゆるペーパーセッションは、249件の応募から
109件が採択されて発表(倍率は約2.3倍)。
コンサート 13回、97作品。
インスタレーション 6作品。

というところです。まぁ例年規模ですね。場所によっては、
開催施設をあげてICMC一色になるのですが(たとえば早稲田
などは、偉いさんがオープニングイベントに来たり、歓迎
行事とかありました)、ここは何もナシ。ちょうど新学期
が始まって学生が多いのですが、ほとんどICMCの存在は
知られていないようでした。(^_^;)

さて、10月6日の午後になりました。いよいよ最後のコンサート
3連発です。今日こそ眠らずに全部聴きたいところです。(^_^;)
ところでこの午後イチのコンサートは、どうも日本人はついに
僕一人だったようです。「そして誰もいなくなった」(^_^;)。

● 1:00pm-2:30pm           Concert 11         Rackham Auditorium

Katharine Norman   -   Hard Cash (and small dreams of change)

タイトルからちょっと警戒(^_^;)していたのですが、そんなに
過激なものではありませんでした。冒頭でコインが落下する音が
あり、これをベースにピッチをつけてハモらせてキレイに構成
していました。でも、ちょっと雑多な印象がありました。

Joyce Tang    -    Suite for Virtual Double Bass

これはこのコンサートの愁眉でした。最初はなんの音かな、と
思ったのですが、ダブルベースから出される音響(たんに弦を
弾くだけでなく、擦る、叩く、等々も重要なソースです)を
素材として、あまりエフェクトに走ることなく正統的な
コンクレートで、4楽章構成の美しい作品に仕上げていました。
これは、もう一度でも、チャンスがあれば金を払ってでも
聴きたい曲です。もうけました。14分の長さをまったく感じ
ませんでした。(^_^)

Elizabeth Hoffman   -   Vim

プログラムノートに、またまたCsoundとGranular Synthesisを
使って、と書いてあったので期待しました。なるほどキレイな
作品でしたが、ちょっと12分はつらかったです。この違いは
なんなんでしょう。(^_^;)

Mikel Kuehn    -     Music Through Prisms

これは、同じ12分なのに苦痛を感じました。この違いはなんなの
でしょう。(^_^;)(^_^;)

Lawrence Fritts    -   Thought-Forms

よくあるサウンドで、あまり印象に残りませんでした。救いと
しては、時間が6分と短かったことでしょうか(^_^;)。

Scott Adamson    -     scent of lilac drifts the bank of county 272

プログラムノートに、全てMac上で作った、とわざわざ書いて
いました。たいていの作品はUnixを使っている、ことに対する
意識が感じられます。ただし、信号処理はKymaです。(^_^;)
ところがこの作品は、どうも作曲家の好みなのでしょうが
異常に音量が大きく、さらにはKymaをぶいぶい言わせて
高音がキンキンに伸びていて、要するに耳にとってアブナイ
演奏となりました。僕の前列(僕はミキサーのすぐ前、ステージ
に近いブロックの中央にいつも陣取っていました)のすぐ前
の二人はそれぞれ、おもむろに耳栓をサッと出して耳につっこむ
と、何事もなかったように聴いていました。僕を含めてその
周辺では、皆んな耳を押さえて聴きました。商売道具を
壊されてしまってはいけませんので。(^_^;)
作品も、いま一つのものでした。うーーむ、残念。
なんか、Kymaユーザには「ああ、あれか」と判るサウンド
のオンパレードでした。これはいけません。(^_^;)

● 3:00pm-5:00pm           Concert 12         Rackham Auditorium

このコンサートには、ようやく日本人がちらほら来ました。後藤さん、
国立音大の学生さんたち、野村さん、ぐらいですが。(^_^;)
いよいよ最後のテープコンサートです。本当のこのホールのスタッフ
は優秀でした。客席の奥行きよりも横幅があり、そこにうまくスピーカ
を配置しているので、音の空間移動も十分に楽しめました。PAの
ウーファを手作りしているというミキサの人も、かなりいいセンス
の「プロ」だったと思います。(^_^)

John Young    -   Virtual

プログラムノートでは、「風」にこだわり、風のノイズを録音して
あれこれした、と書いてあります。どんなふうに空間をぶん回して
くれるかな、と期待しました。でも、あまり大したことはなかった
です。(^_^;) 14分の作品としては、そこそこ楽しめましたが。

David Hainsworth   -    Shady Origins

オリジナルに拡張したグラニュラシンセシスを使った、という能書き
に期待しました。自分でプリピアードピアノでサウンドの素材を
録音してグラニュラした、という事でしたが、プリピアードピアノ
というのは、既にそのサウンド自体がとても印象的なキャラクタを
持っているので、それに負けるところがあったのと、ちょっと音量
過多で(前列の二人はまたまた耳栓)、参りました。まあ好きな作品
でした。

Riccardo Dapelo   -   Sul cuore della terra

「長いだけ。つまんねー」という冷淡なメモだけが残っています。(^_^;)

Robert Hoeldrich   -    Advanced Exercise No. 3a, Transformation

「長い。イマイチ」という淡泊なメモだけが残っています。(^_^;)

Elsa Justel    -    Au Loin...Bleu

この会場で最後の作品ですが、「声」を素材(どうもフランス語の
ようです。フランス語の発音の響きというのは風情がありますね)と
して、なかなか楽しめました。ベテランの女性作曲家のようで、
手慣れたテクとしっかりした構成でした。これももう一度聴きたい、
と思える作品でした。(^_^)
(テープのComputer Musicの場合、そういう頻度は低いものです)

...さて、ここまで打ってきて、いまRackhamの4階のペーパーを
していた会場にたった一人です。これから、毎年恒例のICMA総会が
あります。ここで正式にICMC1999とかICMC2000とかがアナウンス
され、役員と会員との討論とかがあります。どうせ英語びしばしが
行き交って、僕はほとんど判らないのですが、参加していると面白い
こともあります。毎年あるのがセレクションへの苦情です。まぁ落ちた
人が言うことが多いのですが(^_^;)、なんであんな(内容の無い)発表
をペーパーで通すのか、とか、なんでこんなつまらない作品を選曲
のセレクションで通すのか(^_^;)、というようなのが背景にあって、
「セレクションについて聞きたい」というような質問が出ます。そして
ボス達は、「ちゃんとブラインド審査をしている」「じゃ、アブスト
ラクトでなくフルペーパーにするか(香港ICMCでは最初はこれをしかけた
ところ、世界中から文句が出て例年通りアブストラクトになりました)」
などという、お定まりのやりとりが今年もあるのだと思います。(^_^;)

さて、ぼちぼち人がやってきました。前会長のアレン・ストレンジは
いつもの帽子で陽気、と言いたいのですが、去年、奥さんを亡くして
しまってギリシャで落ち込んでいたのを引きずっているのか、ちょっと
元気がありません(^_^;)。あ、現ボスのアーノルドさんも来ました。
総会を中継できると面白いのですが、コンサート会場から使っていた
ので、たぶんバッテリがギブアップして中断になることでしょう。
平田さん、橋本先生、後藤さん、国立の学生さん、とちゃんと日本人も
ちらほら来ました。例年、このミーティングは日本人が少なくて寂しい
のですが、今回は大丈夫のようです。(^_^)
全体にギャグが飛び交い、和気あいあいという雰囲気になって
きました。

アーノルドさんがいろいろ話しています。ICMC1999、ICMA
コミッションはバンケットの通りです。そして、1990から据え置き
だったICMAの会費が、どうも値上げになるようです。(^_^;)
OHPにICMAの収支状況を書き込んで説明、などというのは、僕は
初めて見ました。でも、こうやって説明しないと、たぶん五月蝿い
会員は納得しないのでしょうね。(^_^;)
去年の財政規模は50,000ドルほどで、誰も儲けていません。しかし、
考えてみれば、世界中に会員のいる組織で毎年ICMCをやっている
(これがほとんどの活動ですが(^_^;))かなり小規模な団体ですね。
うーむ、僕はこういう経済的なことは苦手というか関心がないので、
よく判りません。(^_^;)
肝心の会費値上げですが、個人の場合には50ドルが60ドルになる、
ということのようです。倍増とかでなくてヨカッタ。(^_^)
僕は全て個人でいくつもの学会とかに入っていますが、情報処理学会
は研究会と合わせて年間14000円ぐらい、電子情報通信学会が1万円
ぐらい?。IEEEやACMとかはたしか120ドルぐらいでした。日本技術士会
なんて、なんと年間24000円です。(^_^;) それに比べたら大人しい
もんです。これで個人会員になっておけば、ICMCの参加費も会費以上
にディスカウントされるので、皆さんも入りましょう。(^_^)

ストレンジさんがICMC担当になったようで、話題はICMC1999に
移りました。会場の精華大学は「中国のMIT」だそうです。(^_^)
そしてICMC2000はベルリン、2001はキューバ、とか言っています。
ほんまかいな。僕の聞き方が悪いのかな。(^_^;)
(平田さんに聞いたら、キューバかブラジルで検討中で、来年には
 決まるのだそうです。凄いなぁ。僕には新大陸です。)
2002はスウェーデンでしたよね。
あ、ヤニさんがベルリンの件で出てきました。(^_^)
おぉ、そろそろバッテリが残り数分になったので、ここで切ります。

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いま、18:35です。ホテルに戻ってきました。さっそくPowerBook
をACアダプタにつないで充電です。(^_^)
そういうわけで、今日は晩のコンサート会場のPower Centerで、
ロビーのインスタレーションをビデオに撮りたいので早めに行きたい
ということで、テイクアウトの夕食をホテルの部屋でとることに
しました。もちろん昼に発見した「日の出」というお店です。
(橋本先生はこのお店をチェックしていたようですが、とても
 食えたもんじゃない、と言っていました。味覚の相違とか
 いうより、僕は食い物に頓着しないからでしょうか(^_^;))
およそすき焼きとは思えない「スキヤキ」と、それ以上に餃子
とは思いもよらない「ギョーザ」と、そして酒屋で仕入れた
「モスクワビール」(^_^;)とで、ここに来て以来、もっとも
充実した夕食となりました。これで全部でも10ドルしません。
さきほどちらっと、ホテル1階のレストランの入り口に片寄さん
平井さん青野クンの姿を見かけました(観光から帰ってきたの
でしょうか(^_^;))が、ここで夕食となると20ドルとか30ドル
でしょう。これは勝ったかな。(^_^;)

ICMAミーティングは、ほとんど上記で終わりでした。最後に
橋本先生がアーノルドさんに振られて、2003年はオリエンタルに
いきます、と言っていました。日本なのでしょうかオーストラリア
あたり、あるいは韓国なのでしょうか。橋本先生はICMAの、アジア
オセアニア地区のボスなのです。(^_^)

ここで整理しておきましょう。間違っていたら、ここは重要なので
後日、訂正します。(この一連のレポートは私的なものですので、
他の細かい部分の修正はズボラすると思います。(^_^;))
(ちなみに、この記事にたまたま登場しなかった日本人は、別に
 観光に行っていたとかそういう事ではないのですので、個別に
 クレームを寄せる必要はありません。(^_^;)
 セッション会場は複数パラレルでしたし、コンサート会場では
 僕はいつもかなり前の中央で集中していたので、見かけなかった
 ので何も書かれていないといっても、そこにいたかどうかは不明
 なのです。後藤さんがここに拘っているみたいなので。(^_^;)
 証言しますが、後藤さんは勤勉に参加していました。)

ICMC1999 --- 中国北京Beijing
ICMC2000 --- ドイツ、ベルリン(いい響きだなぁ(^_^))
ICMC2001 --- キューバかブラジル(凄いことになってきました)
ICMC2002 --- スウェーデン
ICMC2003 --- アジアオセアニアのどこか(^_^;)(橋本先生発言)

ということですね。いやー、ワールドワイドだぁ。(^_^)
少なくとも2003年までは、生き甲斐が明確に見えた、ということ
で、毎回ICMCに参加すると「その次」がアナウンスされて、僕の
人生は数学的帰納法のように充実し続けるわけです。(^_^)

さて、19:00を回りました。テイクアウトのトレイに盛られた
ライスは15%ほどしか食えませんでしたが、もう満腹です。
ビールも2日間の休肝日を経て美味しく飲んで、こりゃもう
コンサートは寝るしかないでしょう。(^_^;) 寝るぞ、と
固く誓って行くコンサートというのも珍しいですけど。(^_^;)
ラストコンサート、今年のICMCの思い出を走馬燈のように
巡らせつつ幸福な眠りを....(^_^;)(^_^;)。
ぼちぼち、行くことにします。続きは次の記事になります。

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ぼちぼち最終回でしょう。(^_^;)

ホテルでは、明日の朝が早いので、空港までのタクシーを予約
してもらいました。自分でわからんまま電話するより、こう
いうのはフロントに行ってその場で電話してもらうのが確実
ですね。(^_^)

なんだか今日は昼間からえらく暖かく、天気がいいからなのかな、
と思っていましたが、夜にホテルを出ると、ムッと蒸し暑い感じ。
これはどうやら、気圧の谷(といってもアメリカのはハンパじゃ
ないです。日本列島が二つ連なったぐらいの大きさです(^_^;))
の影響で、温暖前線に南から吹き込む暖かい湿った風、という
やつです。ということは、これの後から、天気予報でさんざん
脅かしているヘビーストームとサンダーストームがやってくる、
ということです。うーーむ、飛行機は飛ぶのかなぁ。(^_^;)

とりあえずホールについて、歩いたらもう汗だくになりましたが、
インスタの様子をビデオで撮りました。ホールのロビー内に
相互に10mぐらい離れて二人のトランペットと一人のホルンが、
エフェクタとかかけて、楽譜に指示されたフレーズ断片を対話的
にインプロで演奏します。これがまず、ロビーのよく響く空間
で混じり合います。そして、中央には台所で使う金属のボウルを
ひっくり返したものがスタンドの上にあって、そこの掲示板に
従って、来場者が参加することができます。まず、横にある
赤いボタンを押すと、その瞬間の3人の演奏がフレーズサンプリング
されます。そして、ボウルの頂上に4つあるタッチパネルを押す
と、そのフレーズが、3人の演奏にさらに混じって鳴る、という
仕掛けの作品でした。詳しい様子は、10/28の公開講演会、
あと12月の音楽情報科学研究会例会で紹介したいと思います。

さて、だいぶ閑散とした客席についたところで、初日に学内を
案内してくれた、宇陀さんがやってきました。「平賀」という
ネームプレートを首に下げています。平賀さんは情報処理学会
全国大会があるので先に帰国したので、そのネームプレートを
託したようです。Power Centerのコンサートは、一般の人は有料
なので、これがあればタダで入れます。しかし、カネを払って
聞きに来るなんて人はいるのかなぁ。(^_^;)

もう僕はビールも700ccほど美味しくいただいていましたし、
「寝てますので」と宇陀さんに宣言して(^_^;)、コンサートの
開始です。客席の日本人としては、いつもの最後列の大矢さん
と宇佐さんの現旧ヤマハコンビ(^_^;)(最後列は背中に壁が
あって寝やすいという説あり)、学生さんたち、後藤さん、
平井さんと青野クン、橋本先生、などが見えました。

● 8:00pm           Concert 13                Power Center

Patrick Dorobisz        -          3 + 11

Paul Rudy    -     Parallax 1 "Violin"

Mark Bromwich    -    Ghosts

Andre Ruschkowski   -    Les pas interieurs

Kim Cascone   -    bubbleWarp

Yu-Chung Tseng    -   Suite for Tape Alone

Jonathan Lee    -     Semblance of Ritual II

Gregory Laman    -    One Divided

というわけで、バイオリンを弾いている人がいたとか、トランペット
を吹いている人がいたとか、回転スポットライトがさらにグルグルと
音楽の間じゅう目障りに動いていたとか(^_^;)、照明の色が音楽の
間じゅう目障りに色々と変えられていたとか(^_^;)、という断片的
な記憶があるのですが、上記コンサートもまた、忘却の彼方にいって
しまいました。思い起こせば、僕には初めてのICMCとなった、1991
年のモントリオールでも、こういう現象だったように思います。
アメリカ/カナダの東海岸に近いあたりとの時差の影響なのでしょう
か。言い訳みたいですが、連日、駄目でした。(^_^;) ただ、平田
さんとも言っていたのですが、どうもPower Centerで公演された
作品には駄作が多かった、という説もありました。詳細不明ですが。

さて、ホールでは宇陀さん(あと半年、ここにいるそうです)と握手
して別れ、ホールのロビーではヤニさんと握手して「では来年、
ベイジングで会いましょう」とお別れしました。これからヤニさん
はドイツに帰って、ICMC2000の準備が大変です。僕たち音情研の
有志がICMC1993のために準備で頑張ったあの頃をなつかしく
思い出しました。(^_^) 僕は別に大したことはしなかったですが。

このレポートは帰国したら会議室にアップして、もしかすると
僕のWebにも置きますが、それでもう、今年のICMCはいきなり
過去のものとなります。やるべきことが目白押しなので、感想
とかタラタラ言ってられません。(^_^;)
ここで、もう少しだけまとめておきましょう。今年の傾向です。

「ダンス」「モーションキャプチャ」「マルチモーダル」と
いうようなヒューマンインターフェースは、やはり一つの主流
になっていたようです。発表の件数だけでなく、その発表に
集まる人の数、というのもかなり目立ちました。内容は、
単なるセンサものから、モデルもの、マッピングもの、作品
メイキングもの、と色々でした。来年どうなるか、要チェック
です。

片寄さんによれば、MITのデータドリブン、というのは注目だ、
ということでした。データ駆動という情報処理のパラダイムは
別にそれほど新しいとは思わないのですが、しかしこれも、
来年のチェック項目でしょう。片寄さんはこの路線でいく、
と言っていました。

ちなみに僕の「ねたノート」ですが、このレポートのあおりを
受けて記載量は少ないのですが、内容は豊富です。作曲がらみの
ネタで、しかしシステムとしてうまく実現するとペーパーのねた
となりそうなアイデアが二つ、出てきました。さっそく今年の
暮れあたりから挑戦します。(^_^)

また、それとは別に、来年応募するペーパーのネタで、既に
タイトルまで決まってしまったものが一つ、できました。(^_^)
それから、反則ネタで、もう一つ、ペーパーのネタがあります。
これは来年でなくてもいいのですが。(^_^;)

さらに、コンサートの方では、ICMFで初演した、東野さんに笙
を吹いてもらった作品を、まずは応募します。参加することに
意義があるので、僕は落ちてもこうやって応募を宣言して応募
します。(^_^;) 審査員の趣味との整合という永遠の課題が
あるので、まぁこれは宝くじみたいなものです。あと1件、
作品でトライしたい旧作改訂のアイデアもあります。今から
まったくの新作というのは、ちょっと時間がないでしょう。

そして、研究にも作品にも関係した、ICMCとは関係ない来年の
活動のアイデアも出てきました。(^_^) これはいずれ、皆さん
に紹介できるかもしれません。

ということで、だいぶ今年も収穫は豊富でした。具体的なネタ
というよりも、なにより世界の先端の熱気に触れる、というより
熱気にあてられることで、よーしこのタフでクレイジーな世界
で頑張ろう、という元気が沸々と湧いてきました。(^_^)
日本ではちょうど情報処理学会全国大会があったのですが、
比較しては酷ですが(^_^;)、音楽情報科学研究会とか情報処理
学会全国大会の音楽情報科学セッションに一生参加し続けて
いてもそこは井戸の中。絶対にICMCに追いつくどころか世界
を知ることは不可能だ、とは自信をもって僕は言い切れます。

こんな駄文を延々と書いているのも、皆んなでbit別冊を出した
のと同じ気持ちです。世界の仲間を知りましょう。研究者は
個人的にはロックとかポップスとかジャズのファンで、あんな
ヘンなコンサートは嫌いだよ、という人も実はたくさんいます。
作曲家は、なんで半分はあんな難解でマニアックで理解不能
なテクニカルペーパーセッションがあるんだよ、と不満に
思っている人も実はたくさんいます。(^_^;)
でも、ICMCに繰り返し参加するうちに、あのヘンな音楽が
聞けてきたり、もろ専門的なペーパーセッションの内容は
ともかく思想が見えてくると、喜んでコンサートに皆勤
する純然たる研究者、喜んで判らないペーパーセッションに
皆勤する純然たる音楽家、というのも、本当にたくさん、
いるのです。そして当然、この両者はコラボレーション
のチャンスをいつの間にか共有します。音楽家と組んで、
具体的な公演プロジェクトを目指すことで本当に進展
する研究があります。研究者と組んで初めて実現することが
できた具体的な作曲があります。これがICMCなのだと
思います。(^_^) 研究者の世界では、IEEEとかACMとか、
あるいは芸術家の世界ではアルスエレクトロニカとか
ブールジュなどに比べて、ICMCは偏っています。(^_^;)
ICMCでの発表が何になるのか、と懐疑的になれば、もう
冷静に去るしかないかもしれません。でも、だてに20年も
続いていないです。僕はこのICMCとの出会いを本当に感謝
しています。そして、まずは来年、次のICMCに向けて
いきたいと思っています。(^_^)

ご愛読ありがとうございました。今年はフライトスケジュール
がタイトなので、去年のように空港のカフェで追加を徒然なる
ままに書く、ということも無いと思います。明日は早いので、
もう寝ます。10月6日23時12分。日本はもう既に10月7日で、
正午過ぎの12:12ですね。(^_^)