情報処理学会チュートリアル参考資料 AKI-H8による呼吸センサ 1999年7月 長嶋洋一
作曲家・笙奏者の東野珠実さんの依頼で、彼女の「息」に
注目したプロジェクトに関連したオリジナルセンサを
作ってみました。
医療計測機器の呼吸センサを利用した、小型ポータブルな
MIDIブレスセンサで、全ての完成まで1日半で簡単にできた
のですが、センサが高価なので、そうなかなか作れないかも
しれません。(^_^;)
まずは基礎編として、
こちらもあわせて
ご覧ください。
さて、またまたAKI-H8によるオリジナルシステムの開発です。
これ
が、いつもの開発スペースです。要するに自宅の自室です。
そして、
これ
が今回のセンサです。すでに本来のケーブルをあっさりと
切断してしまっていますが、本来は、心電図計とか脳波計に
接続して、呼吸のリラックス状態をモニタするものです。
抵抗値の変化するビニールチューブがあるだけのもの
ですが、この2本セットで5万円もします。(^_^;)
センサのアップは、 この ようになります。伸びすぎて壊れないように、リミットの長さの 伸びないビニール線が付いています。ピンク色のゴムは、 身体に巻いて固定するためのものです。 このセンサの抵抗値は、張力ナシの状態で1KΩ、限界まで引っ張った 状態で2KΩという変化をしました。ただし、どうセットしても、 フリー状態から限界までをダイナミックレンジとするような 「呼吸」というのは不可能です。そこで、わずかの抵抗変化を 検出するために、東野珠実さんのための笙ブレスセンサを 作った時に使った秋月電子の「圧力センサキット」の回路を、 そのままイタダキでまずは試しに作ってみることにしました。 まぁ、そんな程度のノリでもいけるのが、アナログのいいところ です。(^_^)
とりあえずは秋月電子の回路を流用するので回路図はナシ、と くれば、もういきなり製作開始です。 これ は、いつものようにケースとかコネクタをストックから出してきた ところです。今回は、センサを含むブリッジ回路部分を長く本体まで 伸ばしたくない、ということで、ごく小型のケースにブリッジ(OPアンプの バッファまで)を組んで、そこからいつものAKI-H8ケースにボルテージ フォロワ出力の低インピーダンス電圧出力として伸ばす ことにしました。胸と腹のセンサをまとめた小型ケースは、 たとえば腰のベルトにしまえるようなイメージです。 ということで、まずはドリルで 穴あけ です。今回は二つともケースがABS樹脂なので、卓袱台を 出すまでもなく、ゴミ箱の上空での空中穴あけ、という アバウトなものでした。(^_^;) 穴あけが済んだら、 こう いうふうに、サブBoxには中継ケーブルとセンサのコードを、 本体にはLEDと電源スイッチと中継ケーブルとMIDI出力 コネクタのケーブルを差し込んで、なんとなく全体の イメージをつかみます。なんせ回路図も何もナシで 行き当たりばったりでやっていますので、こういう作業で 確認しておかないと、後で「穴が足りなかった」(^_^;) などと悲惨なことになります。 そして、ユニバーサル基板をケースに合わせて カットします。 これ で、製作のスペースが限定されたことになりますから、 あとは空中配線になってもなんとか、その空間に回路を 押し込む、という事になります。ちょっとサブBoxが 小さかったかなぁ、とここで一瞬、躊躇しました。(^_^;) しかし、 こう やって、AKI-H8とOPアンプを入れてみると、なんとなく 「いけそう」にも思えます。OPアンプは4回路入りの BA10324を二つということで、これ以上にICが増えなければ なんとかいけるかな、と進めていきました。
ところが、ICは確かに1チャンネルで1個なのですが、なんと作りながら
回路図
をよく見ると、オフセット調整とゲイン調整で二つの
半固定抵抗が必要になり、
この
ように、全部で4個のヘリカルポテンションメータが
並ぶことになりました。この状態でなんとか押し込める
のですが、かなりピンチです。(^_^;)
秋月電子の気圧計キットの回路をそのまま流用し、抵抗も
手元にたまたま無いものは「330KΩも220KΩも、まぁ誤差と
しては同じようなもんやろ」(^_^;)というノリでとりあえず
作ったのですが、なんとテスターで出力電圧を計測してみると、
単電源OPアンプの限界で+3.8Vまでですが、見事に出力の
電圧が出てきていました。
さて、ハードがとりあえずできてしまったので、回路図もないので、
忘れないうちにソフトを開発してしまわなければなりません。
このように
2台のPowerBook2400が並びました。左は2400/180の
ノーマルですが、右のは、320MHzのG3(バックサイドキャッシュ
1MB)にCPUが替わっていて、さらにHDDも4GBです。これは
iBookよりも美しいスペックです。なにより、シリアルポート
があるのが重要です。(^_^;)
開発では、右側のPowerBookの画面内にWindows95を走らせて、 このように AKI-H8のフラッシュROMライタをシリアルポートから接続 します。これで、Mac内のWindows内のDOS窓で開発用のバッチ を走らせると、ほぼワンタッチで簡単にテストプログラムを 開発してダウンロードしテストランを繰り返せます。 2台のPowerBookは このように、 右ではAKI-H8の開発を、左ではMIDI出力のモニタをMAXパッチで 走らせます。これで簡単にソフトを完成に追い込めます。(^_^)
AKI-H8のソースプログラムとしては、
この
ようになりました
センサを実際に胸と腹にセットして、適当に胸式呼吸と
腹式呼吸をしてみた例として、MAXで見ると
このように
なりました。
使い方としては、ピンク色のセンサセット用のゴムひもを調節して、
胸や腹がへこんだ状態でわずかにオフセットがある(例えばデータ
として5とか10程度)ように、張力をかけておくことです。
そうすれば、呼吸によって胸や腹が膨らむと、データとしては
増大して反応します。センサがゆるゆるだとデータが出て来ません。
このセンサは、東野珠実さんのプロジェクトにおいて女性ボーカル の芸術的モーションキャプチャリングの一つとして使われる予定で、 作品は1999年秋に発表の予定です。 皆さん、どうぞ御期待下さい。(^_^)
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