Raspberry Pi 日記 (part3)

長嶋 洋一


2013年7月21日(日)

さて、いよいよSketching2013の最終日である。 昨夜は3日目にしてようやく連続6時間ほど睡眠できたが、これで日本に帰国するとまた時差ぼけである(^_^;)。 日本では日曜日から月曜日になって深夜の25時半だが、こちらは午前のセッションが始まった朝9時半である。 昨日のメモだけ、まずは忘れないうちにセッションの内職で書いておこう。

昨夜はパロアルトのダウンタウンのお店に出かけてのパーティ(スポンサーはIntel)だったが、プレゼン後ということで色々な話題で盛り上がった。 中国・深センから来たという この会社 のシニア・マーケティングマネージャーでありインタラクション・デザイナであるという若い人といろいろ話したが。なんと聞いてみると彼の年齢はちょうど僕の半分(^_^;)で、僕の下の息子と同い年であった。 意欲と才能のある若者のパワーは見習わないといけない(彼と同じ歳の頃には、脳細胞の端から端まで絞って、回路の5万トランジスタの隅々の動作まで追いかけてカスタムLSIを設計/検証したものだが、その経験こそが今の僕を成立させている)。

そして、昨日のプレゼンでは「儲かって儲かって、遂に自社ビルを建てることになった」と笑わせて喝采を浴びた、GainerやArduinoを提供して日本でもかなり有名になったSparkFun社のCEOのNathan Seidle氏をつかまえて、SUACboardを1枚プレゼントしつつ回路図を渡して詳しく解説し、これをSparkFunならいくらで作れるか、と質問した。 日本では格段に安いと話題の「P板.com」で作ったSUACboardであるが、彼によれば「相当に高いねぇ」(^_^;)という事であった。 やはり世界の潮流はもっと凄いのであった。 こうなると、SUACboardの改訂版は「P板.com」でなく、海外の SparkFunSeeed に依頼する、という可能性も検討しないといけない。 前例の無いことを避けたいSUACの事務局が対応してくれるかどうか、交渉しないといけないかなぁ。

この後、午前の前半のセッションではインテルやグーグルやPARCの研究者の強力なプレゼンが続いたが、ここで強烈な眠気が襲ってきて(日本時間で深夜1時から2時(^_^;))、なかなかに辛かった。 午前の後半では、東大からMITに来ている 川原先生 のプレゼンがあった。 家庭用のインクジェットプリンタでプリントバターンが印刷できてフレキシブル基板になる、というのは注目したい技術である。 三菱製の銀の微粒子の入ったインク?と専用ペーパー(布もOK)で印刷するということで、これはこれまで導電スプレーであれこれやってきた事の延長として何か出来るかもしれない。 その後も、Google Glassに対する話題、そして午前の最後のタイトルは「Is JavaScript a good first physical computing language?」だが、中身はBeagleBone Blackまで出て来て(これでかろうじてRaspberry Pi日記となる)、いろいろと収穫だった。

午後のセッションでは、embeddedシステムでサウンドを出す、つまりMax/MSPにセンサデータを送るのでなくてハンディ機器そのものがサウンドまで生成する、という話題があった。 確かにRaspberry PiはPdにも対応しているので、これはちょうど、MIDIだけだったMaxにソフトウェア合成のMSPが加わった1994-1995年あたりのMacの時代を想起させるが、今となってあの時代のチープなサウンドを求める、というのは、ちょっと僕には賛同できない(^_^;)。 SDカードでサンプリングする、という苦労の跡も、まぁ同じである。 CCRMAが35ドルで販売しているRaspberry PiのSDカードには、PdだけでなくSuperColliderまでインストールされているという。 リアルタイム信号処理ででギター用のディジタルエフェクタを作ったようだが、こうなると楽器メーカはますます大変そうである。 Seeed から出しているGROVEブランドで、組み込み用のMP3再生モジュールも安価だが、まぁiPodを使っている身としとては、これまたソソラレないのである。

元々はMikeが今年のShetchingに向けて振った「iiCloudで何か出来るか」・・・という話題は、NETLAB Toolkitのプロモと合体しているるので、ちょっとピンと来なかった。 Raspberry Piでもそうだが、シカテムのアプリケーションとしてサーバ連携のような方向にソソラレないのと関係しているのかもしれない。 このあたりは、Raspberry PiにSuperColliderを走らせてサウンド生成・・・というところに行けば変わるのかもしれない。 そして最後のプレゼンのタイトルは、NYUの先生なのに何故か「Hardware is Hard」であった(^_^;)。 これは国内のデザイン/アート系の大学の先生との間でもよく出てくる話題で、学生の目指すところと学生の得意・不得意がいろいろでタイヘンだ、というお話だった。 学生は実際のモノを作るよりソフトウェア(コピペ可能)に走りやすい、簡単にスマートな成果を求めたがる、サンブルコードを改変して済ませたがる・・・などという、まさに我々の業界が直面している事は、NYUの学生でも同じなのだなぁ、とヘンに感心した。 結論の提案(学生に言いたいこと)は「Become a Craftman」であった。 決して手作りのもの作りだけでなく、もちろんITを駆使するとしても、デザイナの「心」はここなのだろう。


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