Hand Roll Piano をMIDI化してみました

2004.7 長嶋洋一


NIME04 の受付の部屋に、上のように置いていたものがあります。 ハンドロールピアノ (以降HRP)というもので、NIME04でのウケ狙いに購入してみたものです。 ただし実際にNIME04が始まると、下のようにHRPはどこかに追いやられてしまいました(^_^;)。

これは49鍵で和音も出るというスグレモノなのですが、残念ながらMIDIが ありません。そこでHRPを解析・改造して、MIDI出力にしてみました。 今日(2004.07.03)になって山野楽器のサイトを見てみると、 「8月下旬に61鍵盤バージョン発売予定。 パソコンや電子楽器と接続できる端子付、「エリーゼのために」などデモ曲搭載。 価格等詳細決定次第お知らせいたします。」 とあったので、なんだこれなら無駄だったかなぁ・・・という気もしますが、 とりあえずこれを知らずに改造しましたので、いつものように紹介します。

ただし今回は、詳細な回路図とAKI-H8のソースの公開はやめておきます。 初心者にはちょっと難しいのと、ケース内に収める規模ではちょっと制限が あって、鍵盤の最低音域の8鍵と最高音域の9鍵の出力をカットしている、 という中途半端な仕様のためです。


まずは「作業前」ということで、HRPの全景を撮りました。

そして、まったく回路図も資料もないので、解析してみるために、とりあえず 開けてみました。この段階では、果たして改造ができるのかどうかも不明です。

基板の上には集積回路はたった2個、オーディオアンプのICと、あとは全ての処理を 行うCPUだけです。CPUはパッケージにも入っておらず、基板上にマウントされて樹脂で固めて ありました。これがキースキャンからアサイナ、ソウトウェアシンセサイザまで 担当していることになります。

目標としては、HRP本来の機能は失わない、つまり壊さないで、HRPと しての動作はそのままにして、ここからMIDI出力の情報を取り出す、 という作戦です。 まずはオシロを出して、とりあえずCPUの周辺を調べてみました。 CPUのセラロックは3.58MHz。これで8音ポリのソフトシンセとする のは、なかなか優れた技術です。

自分でHRPを開ける人は、電源とGNDに注意して下さい。HRPの電源スイッチは ちょっとトリッキーで、OFFにした状態だと、電池のGNDラインが浮いて、基板の GNDパターンに電池の+6V側がつながる(^_^;)、という回路になっています。
これは解析にも邪魔なので、電池を取り外し、外部ACアダプタから+5Vを 供給することにしました。 この場合、アンプのICの電源は+6Vから+5Vになりますがまったく問題 ありません。HRPのCPUには、+6Vから10Ωの抵抗を経て電源が供給されて、 端子で+5.1Vほどだったので、この10Ωをショートして直接に+5Vを与える ことにしました。

そして、オシロで当たりをつけてみると、HRPのCPUの15-22ピンの部分が、 シート状の鍵盤をスキャンした結果のデータラインであるらしい、という事で、 ここから8ビットのデータラインを取り出してみました。
このデータを74HC573でラッチして、ラッチパルスを探ってみると、 HRPのCPUの39-40-1-2-3-4-5のラインらしい、という事が 判りました。インバータで反転したラッチパルスでラッチしてLEDを 付けてみると、見事に鍵盤に対応したLEDがスタティックに点灯しました。

これで、どうやら改造は出来そうだ、という見通しが立ちました。 ただし、なんとかこのケースにAKI-H8まで収めたい、ということで、 電池ケースの部分を取り去って空間をあけました。

この時点での最初の構想は結果としてはちょっと甘くて失敗するのですが、 邪悪な電源スイッチを除去すると、とりあえずガンガンとハードを作っていきました。 ACアダプタは、ジャンクの携帯電話充電器用の小型軽量のものを活用しました。

上記の回路は失敗版ですので注意して下さい。ただし573は最終版でも バッファとして活用できました。MIDI出力の74HC05は例によって 空中配線となりました。

とりあえずハードが出来たつもりの段階となり、いつものように、AKI-H8の ソフト開発の環境を取り出しました。 G3PowerBookでVirtualPCを走らせて、その中でWindows98の環境で DOS窓で作業します。 MIDI出力のチェックのために、Maxの走るPowerBook2400cも登場です。

AKI-H8が走ること、MIDIが出ることなどは確認できましたが、この時の構想は 動かない(HRPのCPUのダイナミックスキャンの情報は得られない)事が判明 しました。 そして翌日となり、新しい構想による回路の制作となりました。 ラッチ573を正直にデータ数だけ並べる、という、いわば「ラッチの RAM化」です。いよいよ空中配線も佳境となりました。

そしてソフト開発に没頭すること1時間、遂に改造は完成しました。 HRPのシステムの鍵盤スキャン信号をハックしてラッチしている関係で、 綺麗でないラッチパルスのブロック(最低音域と最高音域)は、1鍵を押しても 2音の信号が出てしまうということで、残念ながらこのMIDI出力をカット しました。しかし、3オクターブ、36鍵の情報が、HRPの正常動作を邪魔せずに MIDI化して出力され、さらにケースに入ってしまったのですから、 まずまずOKというところでしょう。

・・・ということで、MIDI出力付きのハンドロールピアノの完成です。

・・・お疲れさまでした。(^_^;)








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