第1期「虎の穴」学生レポート集
2000年6月 長嶋洋一
大山真澄
公開デーを終えて
大山真澄
<システム、デザイン手法>
私が今回の企画で一番おもしろいと思ったのは、センサーを使ったデザイン手法で
す。様々な画像に音をつけて流すのはよくあることですが、センサーという作り手側
で操作を行わないスイッチで音がで、画像が変わるという手法は私にとって全く初め
てでした。準備の段階では、理屈はわかっているつもりでしたがどんな風な空間がで
きあがるのかは全く想像できず、ただただCGを描いていくだけでした。できあがっ
たものは私の想像をこえるほどのものでした。ランダムにでてくる音も画像も不思議
な音楽と雰囲気をつくり、「森海」の名にふさわしい不思議空間ができあがったと思
います。
アニメや映画などのCGアニメーションにあこがれ、この大学に入学してきたわた
しですが、今回のような空間的デザインにとても興味を持ちました。
また、裏で本番中にさえなされる先生のMAXによるバージョンアップはとてもおも
しろいとおもいます。当初は少しにしようと考えていたCCDカメラの映像を結果的
に多く取り入れたりしたのは、その場のお客さんの雰囲気を感じて初めてできたこと
です。本番の時にああすればと思うことはよくあることで、今回のようなシステムは
とてもいいとおもいました。裏の方で逆にお客さんを観察したりして・・・。万人に
楽しんでもらえるものというのは無理だけれど、こういうシステムならそれにも少し
は近づけるのかなあとおもったりもしました。
人の動きで空間が動き、その人たちの反応を見てこちらもさらに操作する。今回の
企画は企画しているこちらがわもどきどきしたり、楽しんだりできたとおもいました。
<コラボレーション>
虎の穴+先生方という大人数でアートの制作をここまで本格的にしたという面も、
私にとっては初めてでした。大きな絵を何人もで作るということは過去にも何度かや
っていましたが、空間の中のそれぞれのパーツを受け持って作り上げるというのは、
やってみたいとは思いつつ、実現されてこなかったものでした。
CGを描き始めたとき、それぞれの虎の穴メンバーが持ってくる素材も作品もぜん
ぜんばらばらで、一回共通イメージを作るために話し合いをした方がいいんじゃない
かと思うほどでした。こんなんでまとまるのかとか、共同製作って難しいなと感じて
いました。しかし、本番前日にできかがったものをみて、私は共同製作のおもしろさ
を実感しました。だんだんと不思議空間ができあがっていくなかで、それぞれの作品
が空間になじみ主張しあっている、そんな感じでした。
また、機械の配置などをみんなで話し合いながら決めていったり、なんどもお客さ
んの立場から見て確認しあったりして、意見に意見が上乗せされよりよいものになっ
ていったと思います。
共同製作というのは、競争しながら、時には助け合いながら作品を作っていくとい
う上で、自分を成長させるとてもいい機会だと思いました。人はじぶんでは気がつか
なかった視点でものごとを見ていて、そんな見方もあるのかと考えさせられるときが
よくあります。作品を作るのにいきずまったときなどはとくに、意見を言ってもらっ
たり、人の作品を見るとイメージがわいてきました。一人じゃないからこそできるこ
と、これを見つけられた気がします。
また虎の穴で作品を作りたいと思います。
<虎の穴>
「虎の穴」は、私にとってすごくありがたい存在です。私はこの学校に来る前から
受験が終わったらコンピュータの勉強をとずっと考えていたので、
大学に入って授業のほとんどが一般常識だというのに少なからずじれったさを覚えま
した。そんなとき虎の穴として様々なことを教えてもらえる機会はとてもわくわくし
、うれしかったです。基本をしっかりやるのも大切なことだと十分承知していますが
、すでに既知のこと授業でやっていると、時間がもったいないと思えてならないので
す。虎の穴は授業でもなんでもなくて、放課後などのあいた時間を利用できるので、
意欲のある生徒にはすごくいいものだと思います。いろいろな先生とも話がしやすく
、生徒の間でも情報交換の時間ができるので自分の幅が広げられるように思いました。
<プロジェクトマネジメント>
今回の企画ので一番きつかったのは時間のなさです。まだ1年生ということもあっ
て、毎日のように授業がびっしりはいっていました。みんながとっている授業もバラ
バラで空きがなく、結果的に話し合いは昼休みの少ない時間にお弁当持参で集まり、
作業は放課後6時くらいからみんなで集まって腹ごしらえし9時ぐらいまで行うとい
う、今となってはすごいとしか言いようがないようなスケジュールをみんなでこなし
ていました。いつも昼休みの後の3時間目は遅刻すれすれで、みんなで走って駆けつ
けたのを覚えています。それでも時間が足りなくて、2,3週間は休みなしで、休日
平日かまわず朝早くから夜遅くまで代わる代わる研究室へ押し掛けていました。毎日
の1時間目の授業がすごく恨めしかったです。朝起きるのがつらくてつらくて・・・・。
また、本番が近づいてくるといつも頭の中は企画で出すCGのことばかりで、授業
中もふとああしてみようとか、時間さえあればパソコンに向かっていたように思いま
す。虎の穴メンバーが集まると、自然とその話になったりして、こんな大きなことを
やらせてもらえるのがうれしくて楽しくて、生活が企画一色でした。
前日の大きなモニター運びが大変だったり、力仕事は女の子だけではつらいとこ
ろがあり、片づけはほとんど手伝ってもらう形になりましたが、何でもやろうと思え
ました。
<今後目指すこと、したいこと>
今したいことはたくさんあります。あれもしたいこれもしたいで、いろいろなこと
に興味があります。それが今回の企画でいっそう膨らんだ感じ。
とりあえず、プログラミングをしたいと考えています。とくにMAXはとてもおもしろ
いので是非マスターしたいと思っています。基本的にあまり音楽に関わってこなかっ
た私ですが、MAXを初めてさわらせてもたったとき、いろいろな音をくんでいくの
がおもしろくて、すごく興味がわきました。きちんとシステムがわかれば自分で新し
いデザイン方式が見つけられるかもしれないだろうし、幅が広がると思います。
また、ハード的な面での知識も増やさなければと思いました。今までパソコンのな
かでのソフトの面ばかりに気を取られてきましたが、今回のように大勢で一つの作品
を作るときはハード的知識がいかに大切かわかりました。自分の作品を自己満足で終
わらせたくないので、多くの人に見てもらいたいと思うほど、そういう知識は重要に
なってくるのだと思います。
今後目指すことは大きいです。自分にあった表現方法を見つけ、より多くの人に私
を見てもらいたいと思います。そのためにはたくさんの知識を身につけその中でどれ
だけのことができるのか、人はどんな方法でデザインしているのか知らなければなり
ません。大きなことをするなら、仲間も見つけなければならないし、なにより自分が
本当にしたいことを見つけなければなりません。今回の企画はその大きな一歩だと感
じています。自分がいかに無知で世界を知らないかわかることができ、これからなに
をしていけばいいかはっきりしてきたと思います。
これから私の夢に向かって前進していきたいと思います。
<SUAC/技術造形学科について>
SUACと書いてありますが、ほかの学科のことをよく知らないのでほとんど学科のこ
とかもしれません。
とにかくこの学校には驚かされます。入学式の次の登校日の時、教員連の紹介でわ
たしは「大学の先生だった人ぜんぜんいないんだ」とびっくりしました。企業の第一
線で活躍してきた方々が教員だとは聞いていましたが、
まさかこれほどだとは思いませんでした。そして松原先生の「デザインと技術をとも
に学ぶ学校」ということばに、おもしろい学校だなと感じていました。しかし、それ
は私の予想以上でした。ほかの大学の様子を詳しく知るわけではないのですが、これ
ほどまでに生徒を盛り立てていこうとなさる先生方はいないのではないでしょうか。
何か企画をしようとするとき、本来なら私たち学生が考え先生のお力を借りるか、先
生のアシスタントとして働くというのがふつうだと思います。しかし、今回の企画で
先生方は私たちにアシスタントとしてではなく、共同製作者という立場を与えてくだ
さいました。先生に「共同製作者なんだから」といわれたとき今までとは違う、私た
ちも作品を作っていいるんだと身が引き締まる思いでした。だからこんなにも私たち
で作ったという感覚が生まれてくるのだと思いました。
また、今回の成功にはこの学校の設備の充実さが先生方の経験と知識の次に大きな
幅を閉めていると思います。入学してまもなくのわたしたちに、惜しげもなく最新の
パソコンを貸してくださいました。本番当日にも大きなプラズマディスプレイを8台
も貸していただいて、あの不思議空間ができあがりました。今回直接は結びつきませ
んが、気軽に使えるメディア室のパソコンなど、私たちが何かしようと考えたときに
すぐに実行に移すことができ、より私たちの可能性を高めてくれていると思います。
<個人的感想>
改めてですが今回の企画は大成功だと思います。一般の多くの人たちにも、受験生
にも技術造形学科がどんな学科なのか少しは理解し、興味を持っていただけたかと感
じています。そしてなにより、私たち虎の穴メンバーも大きな一歩を踏み出すことが
ができました。こんなこともできるんだ、私もやってみたいと感じました。今回の一
歩はまだ入り口にたっただけですが、これからドアをひらいていくのには大切な一歩
です。何事もやってみなければわかりませんし、なにが自分にあっているのかも発見
できません。コンピュータの世界はまだまだ躍進するでしょうし、私もそれに負けな
いくらい前進していくつもりです。まだまだ暗中模索の私で将来の私から見れば寄り
道だと思えること多いだろうとは思いますが、企画を終えた今ではそれもいいかと感
じています。たくさんの寄り道をしていきたいです。
今回の企画本当に楽しかったです。まさに木村学長がおっしゃっていた
「大いなる喜びと発見と・・・」の連続でした。次回は『知る』だけでなく
『考える』ところまでできるようがんばっていきたいです。
・・・・・私信感想
感想というより感謝です。
虎の穴に加えていただいたこと、いろいろな知識やアドバイスをいただいたこと、本
当に感謝しています。先生方、他の虎の穴メンバーありがとうございます。
とくに長嶋先生は私たちがかわるがわる研究室におじゃましていたので私的な作業
などがほとんどできなかったと思います。ありがとうございます。深い感謝の心で、
これからも足繁く研究室通いをさせていただくことだろうと思います。これからもど
うぞよろしくおねがいいたします。
川崎真澄
2000.6.5
"虎の穴"レポート
デザイン学部技術造形学科
0022009 川崎真澄
始めは長嶋先生の一声で始まった"虎の穴"プロジェクトでしたが、第一期「虎
の穴」に参加できたことを本当にうれしく思っています。
5月28日の大学公開デーに向け・・・という具合に着々と準備が進められて
いく中、まず私がやることといえば、 他のメンバーに追いつくことでした。私
以外の4人は、みんなパソコンに慣れていて、Photoshopにしろ、MAXにしろ、使
い方さえ分かれば、すぐに自分にものにしていたのに対し、私はなかなかマスタ
ーできませんでした。しかし、逆にそれが私に良いプレッシャーを与えてくれ、
いい意味で緊張感あるスタートを切らせてもらえたと思います。特にPhotoshop
については、写真を加工したり、素材集を使えたりと、私自身、とても興味深い
内容だったので、公開デーに向けて、私はPhotoshopを中心に作品を作っていく
ことにしました。
今回は、"森海"ということで、とりわけ作品の作りやすいテーマだったので、
1から始めたPhotoshopも取りかかりやすかったです。公開日前の準備段階は、
自分の作品はもちろん、ディスプレイの準備もやる必要があったため、時間の使
い方やスケジューリングが大変だと思いましたが、プロジェクトマネジメントが
しっかりとされていたため、スムーズに準備ができました。このプロジェクト
は、インスタレーションであり、さまざまな物体や道具を配置して、その設定し
た展示空間全体を作品とするものですから、自分の作品ばかりだけでなく、展示
全体を考えなければならないという意味では、非常に難しい試みであったと思い
ます。
当日は、朝から天気が悪く、お客さんもそんなに来ないだろうと思っていまし
たが、予想を越える来客があって、しかも、私たちの"不思議空間"には人気が集
中し、石川知事さんや取材の方を含め、多くの方が来てくださいました。ただ、
来てくれる人たちのほとんどがオブジェのセンサーに気づいてくれなくて、それ
がいいと言う先生もいましたが、私としてはみんなで一生懸命作ったものだった
ので少し悔しかったです。とにかく、この"不思議空間"が大成功に終わったこと
は確かであり、とてもうれしく思いました。
今回、第一期「虎の穴」プロジェクトに参加して何より良かったのは、大学で
は1、2年後にやるようなことも、一足先に教えてもらえたことです。大学生活
でどんどん新しいことを吸収したかった私としては、大きなチャンスを与えてい
ただけたのではないかと思っています。また、平面工房などを休みの日にも使わ
せてもらったりと普段ならできないことができ、先生方をはじめ、事務局の方々
にも大変お世話になりました。
そして再び、第二期「虎の穴」の募集が始まろうとしています。第一期「虎の
穴」は一応完了というかたちになりましたが、これで終わったわけではなく、ま
だ私たちの活動は始まったばかりです。4年という長いようでとても短い時間
を、この静岡文化芸術大学のデザイン学部、技術造形学科で過ごせるというの
は、とても幸せなことだと思います。良い大学生活のスタートができたと思うの
で、この熱い気持ちをこれからも持ち続けていきたいです。
林文恵
「深海」プロジェクト・レポート
0022031 林 文恵
今回の「森海」に参加してみて、私は素直に良かったといえる。
「森海」には新しい知識・驚きを色々と与えられた。
「森海」では、センサーで人の動きを感知してプラズマディスプレイの
モニターの映像とスピーカーの音を反応として返す。
プラズマディスプレイを8台というのには正直とても驚いた。
実際に公開前日に何度もフロアを入り口から出口まで来場者と同じように
移動してみたが、一人の人間のアクションにこれだけのディスプレイが一度に
リアクションしてくれるというのは壮観且つ気持ちのいいものである。
プラズマディスプレイを8台というのは個人レベルでは絶対に無理なだけに、
この点で私は大学というものの存在に大きく感謝した。
最もこれだけの器材を一つのプロジェクトのために融通してくれるというのも、
無駄に管理が厳しい他の大学では考えられないことだ。
また、今回MAXというものを初めて知った。
多少プログラムを触ったことはあってもこういうものの存在は私は全く知らなかったし、
長嶋先生のように長けた人間にどんな利用方法があるのかを実際に見せてもらわなかったら
一体何がよ言うのかもわからなかったままだったと思う。
実際に少し触らしてもらったのだけれど、見かけや言葉は少し古臭いが、
やりたいことが自由に出来そうだと感じた。
今回は結局、練習で少しパッチを組んだだけで実際に使用するパッチは、
残念ながら学生は作らなかったのだけれど、事前にその実行方法やごく簡単なパッチの構造を
教えてもらっていたおかげで、一体何がどのように起こっているのか、
どのように処理されているのかということが多少は理解出来たので良かったと思う。
また、長嶋先生が別途行っている作業も興味深く見ることが出来た。
MAXは、機会があればぜひまた触ってみたいツールである。
またDirectorが単なるムービー用のソフトではなくれっきとしたマルチメディア用の
オーサリングソフトで、普通の上から下へ流れていくプログラムのように
ラベル付けをしてユーザーからの情報によって再生場所を移動出来るものだということも
実は今回初めて分かった。
なぜゲームソフト会社などでそれほど頻繁に名前が出てくるのか今まで疑問だったのだが
ようやく合点がいったというところである。
細かいところは別途スプリクトで指示を与えられそうだし、これならば
ゲームやビデオソフトめいたものを作のは確かに一からプログラムするより
グラフィカルで操作も分かりやすいから断然簡単になる。
Directorは今度是非使ってみたい。
それから、作業の進行についてなのだが、これは実際の現場作業では
やはりある程度分担を明確にしておかないと効率が悪いというのを実感させられた。
データ制作自体においてはCGだ、ムービーだ、MIDIだとわかれていたし
結局のところそれぞれ個人作業だったから良かったけれども、
オブジェ制作への参加や講義室でのレイアウト作業は無駄が多かったように感じる。
人数が多くなれば全員の一致が難しくなるのは当然で、
みんなが意見を出し尽くした時に「じゃあどうするのか」とか、あるいは
どうしようもないときにある事柄については最終的に誰が指針になるかとか、
いい加減な程度で標は欲しかったかもしれない。
例えば「レイアウト」「来場者シュミレート」
みたいにどんな立場でものをいうか、ある分野について誰が重要か、
多少目印的なものがあった方が良かったような気はした。
決定権みたいなものを作ったり完全に分担してしまうと共同作業の醍醐味がなくなってしまう
とは思うので嫌だけれど、最終的に楽な方へ流れたり、中途半端に折半して解決したくはない。
打ち合わせや企画や発案段階においても同じ事で、夜8時まで残って何があったかと言うと、
連絡事項があってみんなで団欒しておしまい、というのはちょっとつらかった。
ただ逆にそれでみんなとも仲良くなれたし、悪いことばかりではなかったけれども。
あと、みんなと同じ作業をしたことでCGやスクリプトに触るのが全く初めてな人も
いるということに初めて気が付いた。そして、その人間が芸術的素養やセンスで
初めてでもあれだけのデータを作れるというのも驚きだった。
残念なのはこうして苦労したプロジェクトで、実際に当日来場してくれた人に
思うように面白さが伝えられなかったことだ。
中にいる分にはみんな感心しているし、理解しようと作品を見ているが、
いったん外に出ると緊張が緩み本音も出る。
当日大半の時間外で座っていた私はその本音のいくつかを聞いたのだが、
一番多かったのが「何が不思議だったの?」というものだ。
異口同音、全く同じ事を皆が言うのである。
また、「さっぱりわからなかった」というのも多かった。
原因の一つとして恐らくは、一度に入場する人が多すぎて自分の動きに
対する反応を如実に得られなかったということ、また反応回数が多すぎて
画面の切り替わりが激しすぎ殆ど作品が視認されていなかったことがあると思う。
そのことでどんな作品なのか全く全容が見えなかった人や
ただのビデオ作品だと思って出ていった人が少なくないようだ。
切り替えが早いので、音と画面が同期しているために、「画面が変わったから音が出た」
という認識になってしまったのかもしれない。
もう一つの原因としては解説を殆どの人が読んでいないというのもあるのかもしれない。
大概は駅前のびら撒き同様にそのまま折りたたまれてしまう。
事前に内容を知るのは邪道という人もいるかもしれないが、既に入場する人が多すぎて
純粋に自分のためだけにリアクションを得られない状況にあっては、
設定されたその空間にどんな風に入る事が出来るのか、雰囲気が分かるようなものかどうかは重要である。
そして目を引くようなものにしてあれば、「さっぱりわからなかった」ということにはならなかったと思う。
これから暗い中に入ろうというのに入り口で渡すのにも問題があったかもしれない。
でも、この解説用のチラシをもっと見やすくすればよかったととても思う。
学術的で格好はいいが素直に読みやすい分かりやすいとはいえないものではあったような気がする。
不親切な感じのするデザインなのだ。
少なくともそこにも視覚的デザインをほどこす余地はあったのに、
全く失念していたのは残念である。
ただ興味深いのは殆どの子供が「センサー→画面+音」という構造に気が付いていたことである。
視線が低い所為でセンサーが目に入るのかもしれないが、それにしても殆ど全員というのはびっくりだ。
子供はやはり純粋に今自分に与えられた情報だけを自分の中で結びつけて
考えようとするものなのかなあ、と感心した。
兎も角も今回の「森海」プロジェクトへの参加はたくさんのものを与えてくれた。
最初はいつのまに自分がプロジェクトに組み込まれたさえわからない状態だったが、
今、参加してよかったといえるのは確かである。
加藤美咲
虎の穴レポート
0022008 加藤美咲
学科ごとの教員・生徒の初顔合わせのとき、長嶋先生はいらっしゃらなかった
が、かわりにプリントが配られた。興味のある人は研究室に遊びにおいでという
ような内容のもので、私はそれを読んで、この先生がこれから教えてくれること
が私の一番学びたいことだと思い、できるだけ早く研究室に行こうと心に誓っ
た。結果行けたのは数日後のことだが、実は私が一番乗りだった。もう数人は来
ているだろうと思っていたので少々驚いた。そこでいろいろとお話をして、私の
前途には、さらに広い世界が展開していることを知った。私は目標を失ったが、
それはより高次の目標を探すための模索期間に入ったということだ。未知のもの
に触れることは面白い。征服するには困難がつきまとうが、だからこそ達成の喜
びがあるといえる。俄然やる気が出た。そのやる気が認められたので、私は「第
1期虎の穴メンバー」に選ばれたのだ。「虎の穴」とは、やる気のある人たちの
集団のことなのである。
今回のインスタレーションでは先生が5人の生徒を選んだが、次回からは志願者
を募る。やる気のある人なら入れるし、なければ入れない。失って出ていく人も
いるかもしれない。他のことに興味がうつったなら、それはそれでいいのだろ
う。しかし私は興味を失うヒマもない。そうでなくても学ぶことは多いというの
に、イベントは次から次へとやってくるからだ。そのうちまた忙しくなる。で
も、あの忙しさが楽しい。最終的には技術造形学科のほぼ全員が参加するように
なるといいと思う。そうしてなにかでかいことをしてみたいもんだ。技術造形学
科は他学科に比べると小人数だが、そのぶん小回りがきくし、皆でなにか企画を
うちたてて行動するなら、ちょうどいい人数なのではないだろうか。
第一期「虎の穴」プロジェクト、゛森海゛について
便宜上、CG製作、ビデオ編集などの割り振りを決めてはいたが、基本的にスケ
ジューリングからなにからすべて皆でやった。ただし、初めてのインスタレーシ
ョンで、時間もないこともあり、骨子を作ったのはあくまで先生で、私たち生徒
は言われるままだった部分も多い。次回からこれらはすべて学生たちの手で行わ
れるという。私ひとりでできる気はとてもしないが、意欲のある人が何人か集ま
れば可能だと思う。
森林公園にロケに行ったのは、長嶋先生以下、大山、北嶋、私の4人である。シ
ダと松ばかりで私の期待していたようなうっそうと生い茂る森ではなかったが、
なかなかに面白いものが撮れた。撮ったものはあとで研究室に持ち帰り、いちい
ちキャプチャして静止画像として保存した。これは後に繋ぎ合わせ、編集して、
ムービーとして使った。
他に静止画像ムービーとして使われたのは、生徒製作のCG作品である。主に
PhotoShopなどのソフトを使用し、専門家の李先生の指導を仰いだが、不慣れな
者もいて、及ばずながら私が教える側にまわったりもした。自分でも知らなかっ
た機能を使えるようになり、とても有意義だったと思う。やはりソフトを使いこ
なすのに必要なのは慣れだ。時間をかけて毎日練習していけば、どんなソフトだ
って手足のごとく使えるようになるのだ。このようなイベントは、自分のスキル
を高めるいい機会だ。一つ残念なことは、学校に使えるパソコンが少ないという
ことだった。先生の研究室に数台、マルチメディア室に1台、平面工房に2台し
かない。しかも他の先生方も28日に向けて作品を発表なさるというので、見事
に取り合いになってしまった。授業で使うようになったときに最新の物を入れる
という話だったが、自宅にパソコンを持っていない者は、学校が唯一触れる場所
なのである。CG製作のたびに長嶋先生をPHSで呼び出すのは、なにより先生が大
変だったと思う。このようにして苦労して作ったCGは、HPのほうに展示して
ある。まだまだ中途半端で手直ししたい部分も多々あるが、これからどんどん増
えていけば、見栄えのするイラストギャラリーになるのではないかと思う。
それから、映像だけでなく、音も重要な要素だ。サウンド系はBGMと、センサ
に反応して起こるイベント対応サウンドの二つに分かれる。ここでは生徒の林が
シーケンサを使ったBGM作りを担当した。その他の潮騒や鳥の声などは、長嶋
先生の手による。
サウンド作りにも使われ、全体的な制御統制を担うのが、MAXというソフトで
ある。BGMと背景映像を流しながら、センサからの反応をトリガーとしてサウ
ンドを起こし、なおかつ映像も変える。CCDカメラを取り付けてディスプレイ
に自分の顔が映るようにしたのは、訪れたお子様たちにも大人気であった。これ
だけのことをすべてMAXは行えるのだ。ボックスを作って線でつなぐだけとい
う簡単な作業でプログラミングができるのがMAXの利点だが、それ以外にもす
ごいことがある。インスタレーションの展示の間中、センサの向こうで長嶋先生
がパソコンを開いていたことに、見に来た人は気づいただろうか。先生はそこで
ずっと自ら組んだプログラムをカスタマイズしていたのである。作ってそれで終
わりではなく、ライブで刻一刻とくみかえていける能力を、このMAXは持って
いるのだ。
…しかし、イベントが終わって、私たちがそれも手足のごとく使えるようになっ
たかというと、かなりの不安が残る。先日少々いじらせてもらったが、ほとんど
覚えていなくて、自分は何がわからないのかわからないというどうしようもない
事態に陥ってしまった。こちらの方面は当分先生に頼らねばなるまい。とりあえ
ず何がどうなっているかぐらいはぱっと見てわかるようにしたいものだ。いずれ
自分の得意な分野を確立して、「これなら任せろ」といえるようになりたい。せ
っかく機械と機会があるのだから、使わなければ損だと思う。
長嶋先生は、ソフトもハードもOKという国内でも稀有なエンジニアであるそう
なので、当然ハードも手作りである。今回では、センサからの情報をMAXにM
IDIで送るマイコンシステムを開発し、その完成の場面に私は立ちあえた。そ
の日は遅くまで粘って、ソフト面のアルゴリズムの完成までこぎつけたのだ。バ
グ取りという動作を、私は初めて見た。プロの人はこういうふうに動くのかと、
間近で見ることができたのは感動であった。この大学のいいところはこれだと思
う。仕事がナマで見られるし、質問すればすぐに答えが返ってくる。まさしく百
聞は一見にしかずという格言通り、何冊本を読むよりも、長嶋先生に一回質問し
たほうがはるかに実りがある。卒業までにどれほど多くの先生方にコバンザメで
きるかで卒業後の進路が決まってくると思う。人数の少なさがこの場合嬉しい。
センサを隠すオブジェの製作になると、アドバイザという形で協力してくれる佐
藤先生の指揮下に入った。実はここの作業が一番楽だった。なぜなら木材加工室
には危険な機械が多く、私たちができることといったら掃除とやすりかけと組み
立てと色塗りくらいのものだったからである。頭を使わず、ただ指示に従うこと
のなんと楽なことか。それでもやはりオブジェ製作は佐藤先生の仕事で、私たち
は単なるお手伝いというスタンスは寂しい。どうせならデザインの段階から手伝
いたかった。…あまり役に立てるとは思えないけど。木材加工室にいると、11
階とは違って色々な人が見に来てくれるし、一人の作業ではないので、楽しい。
なによりプロの佐藤先生の作業を見守るのは面白かった。断面を斜めにするなど
の小さな工夫や、物に対するこだわりなどが、プログラミングよりも理解しやす
いところからみると、私はひょっとしたらこっちのほうが向いているのかもしれ
ないとも思う。興味が技術にあって、才能(というより資質?)が造形にあるの
であれば、学科の目指す「どちらにも精通しているデザイナー」も、そう遠くな
い日に実現するのかもしれない。
目下私の目標はソフトを使いこなすことである。MAXやDirectorなど、少し触
っただけでは歯がたたないものは、毎日でも触りに行きたい。実際はいろいろと
煩雑なことが多くて足繁く通うことはできないが、またイベントが始まれば、研
究室に入り浸るようになる。それが楽しみだ。
北嶋めぐみ
|