技術造形学科2004前期
Shockwave試作作品集長嶋洋一
技術造形学科3回生前期選択科目「音楽情報科学」は、例年、Max/MSPをプラットフォームに 音楽心理学、視覚と聴覚、などのテーマで実験をしてきました。
そして技術造形学科3回生後期選択科目「インタラクティブシステム論」では、例年、 Max/MSPに加えてDirector/Shockwaveをプラットフォームに加えて、「ゲームを作ろう」を 合言葉にしてきました。しかしこの問題点として、後期のたった半年ではDirector/Shockwaveをろくに理解できない、 使えないうちに終了してしまう、という課題があり、本年度はパターンを変えてみました。 つまり、前期にまずはDirector/Shockwaveを体験してみて、後期にはさらに音楽情報科学 的なテーマに深入りする、というように両方をミックスして順序を変えたわけです。 このため、前期の課題としては、以下のようにアナウンスしました。
* 課題(1) インタラクティブなコンテンツの試作 * 課題(2) 視覚/聴覚の錯覚に注目したコンテンツの試作 * 上記いずれかを、DirectorまたはMax/MSPにより制作するそしてここに紹介するのは、技術造形学科の3期生で受講した学生たちの提出した 課題作品(Director)を、Shockwave化したものです。 チュートリアルのサンプルのキャストを替えただけのちょっと淋しい内容の作品、 パソコンがハングアップする不良品(^_^;)などの一部は紹介省略、 さらに細部のバグなどを手直ししたものもありますが、基本的には提出作品そのままです。
たった1-2ヶ月程度しか触れていないにも関わらず、技術造形学科学生の 吸収力とセンスにちょっと感動しました。 これで、後期に引き続き、サウンドを入れたりLingoを活用してより高度に なっていったら・・・と思うと、大きく期待させる作品もいくつもあります。以下、簡単なコメントとともに紹介します。
朝倉 和也クンの この作品 は、分岐の連続でいろいろな結果に行く、という典型的なものです。 これをトコトンまで複雑化していくためには、go to frame だけでない 工夫が必要になってきます。
池谷 優さんの この作品 は、「逃げもの」ゲームですが、アイテムによって大きさを変化させたり、 水平方向と垂直方向の変化も楽しめます。ここに後期、サウンドを入れたり、 シーンの変化にランダムを取り入れれば、ちょっとハマるものになるかも。
太田 和樹クンの この作品 は、正しい「オレンジ」のスペルだけをクリックせよ、というシンプルなもの ですが、心理学的には、 「動くモノに文字情報(知的情報処理の対象)が付加されること」の面白さ (移動する画像に同時に読み取って判定すべき情報が加わっている) が潜んだものとなっています。
小出 悠美香さんの この作品 は、まだランダムもサウンドもないシューティングゲームですが、既に 小出ワールド全開、いい味を出しています。 なかなかクリアできないので、ループしているパターンで待ち伏せ してしまうのが自分でも悔しいです。(^_^;)
齋藤 祐クンの この作品 は、ほとんどLingoチュートリアルのサンプルをそのまま利用した状態のものですが、 独特のタッチとヒット画面が印象的です。 ここからどう、「意外性」を演出して発展するかを期待します。
酒井 香さんの この作品 は、「逃げもの」プラス、クリックしないシューティング(食べモノ)ゲームで、 これもサイレントならでは、のいい味を出しています。かつての 「ドキドキ棒」と同じ楽しさがあります。
清水 知美さんの この作品 は、インタラクティブ無し、錯覚ナシ、これぞ Director のアニメーションだ、 という典型的サンプルです。前期はこの程度でお茶を濁して、果たして後期に どんなものを作ってくれるか、と期待して(プレッシャーをかけて)紹介しておきます。
鈴木 力哉クンの この作品 は、「なんでもこなす男」の面目躍如、ほぼ完成された 体育会系(マウスクリックをひたすら連打)ゲームです。 一瞬、マウスの連打によって力士とかショベルカーが動くのでは、 と逆に錯覚したのですが、まぁ今回はこんなものでしょうか。
高塚 紀枝さんの この作品 は、テキストベース、中途半端な(選択肢の少ない(^_^;))ランダム、 モノトーン、というシンプルな小品です。 気に入らない場合には何度でも、というのが「占い」の本質を突いていて いいですね。
田久 真弥クンの この作品 は、サンプルスクリプトを応用した単純なシューティングゲームなのですが、 僕は最終ステージでどうしてもクリアできません(;_;)。個々のキャストはモノクロで 単純なグラデーションなのに、動きと合わせて立体感が出てくるのは面白いですね。
田中 宏樹クンの この作品 は、ゲームねたでなくて、視覚の錯覚テーマに直球で勝負です。 スクリーンを凝視して、たまにクリックしてみて下さい。 赤と緑の補色パワーと残像をお楽しみ下さい。良い子は見つめないで下さい。(^_^;)
中村 友紀さんの この作品 は、マルチメディア室の作業PCで見た時にはいいカンジのBGMが鳴って いたのですが、残念ながらキャストをインポートしていなかった(リンクのみ)らしく、 BGM無しバージョンとなりました。でも、マウスのクリックのタイミングで 擬似的にランダムを生成する、という手法は立派です。
西村 陽一クンの この作品 は、ゲームねたでなくて、アニメーションによる視覚テーマとなっています。 放物運動と等速直線運動のもたらす印象のコントラストと、フラッシュ(閃光)効果が 生きています。
原田 和美さんの この作品 は、クリックのチェックと座標の移動、というLingoのシンプルな実例と なっています。このサンプル改良版からオリジナルにいかに飛躍していくか が勝負です。
藤田 義雄クンは、視覚の錯覚テーマに驚異の6連発です。 いずれも古典的な視覚の錯覚をDirectorでリアルタイム化しました。 この作品 と この作品 と この作品 は、単純に見るだけのアニメーション、 この作品 と この作品 と この作品 は、画面中央付近にマウスカーソルを置くと凄いことになります。 僕はOHPシートに印刷した2枚を重ねてずらして説明したのですが、 こちらの方がより鮮明です。
牧野 美奈さんの この作品 は、典型的な「逃げもの」ゲームですが、これもなかなか油断すると やられます。これで縦方向に障害物が来たらどうなるんだろう。
松永 玲衣子さんの この作品 は、独特の世界が気に入りました。基本的にはマウスクリックのタイミングに 依存したシューティングゲームですが、敢えて小さなキャストを拡大して 低解像度にした画面、失敗した時のシュールな展開などもツボにはまりました。
三浦 佑介クンの この作品 は、ゲームというのでもなく、マウス操作に対応してアニメーションが変わる、 というものなのですが、独特の世界のテイストがとてもいいカンジです。 オタクなのか、デザイナーなのか、たぶんオタクなデザイナーなのだろうな、 と妙に納得しました。
三嶽 侑美さんの この作品 は、これも典型的な「逃げもの」ゲームですが、Lingoで判定するマウスの位置を 「反転」しただけで驚異的に難しいものになりました。1面だけでも難しく、 2面、そしてLAST STAGEとクリアするには、必殺の裏ワザを使わないと無理でした。
吉垣 慎哉クンの この作品 は、「『赤』と書かれた青い文字」など、実体の情報と内包している情報が 矛盾している時に起きる混乱のマガーク効果にもつながるものです。 実際には、ランダムを使っていないのでゲームにもなっていませんが、 この分野での可能性を感じさせます。誰かもっとトライして欲しいテーマです。
・・・皆んな、ご苦労さまでした。後期も頑張ろう。(^_^)