代打 技術造形論 (美学/人間工学の章) 2003年4月   長嶋洋一

これは、技術造形学科の看板科目「技術造形論」の講義の一部を、松原先生の代打を 学科教員で分担して行ったうち、長嶋担当の第2回「美学/人間工学の章」のテキストです。 臨時に慌てて作ったもので、学科教員が共同でコンセプトの原典としている、 Cambridge University Pressの"Design and Technology" (James Garratt, ISBN: 0521556074)の誌面を切り貼りしただけの ものですので御了承下さい。 この本については、
This is a new edition of the very successful textbook for key stage 4 students, aged 14-16, of design and technology. The new edition has been fully updated throughout - a chapter on "Products and Applications" replaces the redundant one on "Energy". Students will find it a motivating book with a strong emphasis on problem-solving. Many practical projects are included and all have been designed and made by pupils in school workshops.
という紹介があります。 全体は、Introduction、1.Stages in the design process、2.Aesthetics、3.Ergonomics、4.Structures、5.Mechanisms、6.Control electrics and electronics、7.Pneumatics、8.Materials、9.Products and applications、という章立てになっており、ここでは「2.Aesthetics」と「3.Ergonomics」が対象となります。

SUACの技術造形学科の学生であれば、この本"Design and Technology"を図書館で 眺めるだけでなく各自で購入して、 4年間かけて隅から隅まで自分のものにして欲しい、それが技術造形学科の真髄、あるいは 技術造形論そのものだ、という教員一同の願いを付記しておきます。


Chapter 2 - Aesthetics

  • デザインと美学
    広辞苑「美学」 : 自然・芸術における美の本質や構造を解明する学問

  • デザインは誰のためのものか
  • エンターティンメント Entertainment
  • 顧客満足 Customer Satisfaction

  • 機能 Function
  • 何かをデザインすること = ニーズを満足すること
  • "looks good" = 「イケてる!」←美学
  • デザインの美学は「現れる」

  • Appearance = Aestetic appeal
  • デザインは人間(の心理)に影響 influence を与える
  • 多くの人にアピールできるデザインには法則がある

Elements of Visual Design

  • Line
    もっとも基本的な要素

  • Shape
    Line で囲まれた領域
    2次元である
    長さ Length と幅 Width を持つ

  • Form
    3次元である
    長さ Length と幅 Width と奥行き Depth を持つ

  • Geometric shapes and forms
    幾何学的図形を組み合わせて複雑な形状や立体を表現(情報量の圧縮)

  • 不思議な造形

  • Free shapes and forms
    自然界に多い構造「フラクタル」
    繰り返しの入れ子構造

  • デザインされた製品の構造を要素に分解して解析する

  • インダストリアルデザインに必要な要素
    • 製造しやすい(組み立て安い)
    • 分解しやすい(修理、廃棄)
    • PLCA プロダクト・ライフサイクル・アセスメント
    • 美学的にアピール

  • Macはデザインの宝庫

  • Texture テクスチャ
  • 表面の材質と加工
  • 見た目 Visual と 触感 Tactile
  • 同じ素材でも加工方法で異なるテクスチャを実現できる
  • 光の当たり方で変わる

  • 機能の要請もある : (例)台所用品
    洗いやすいように平坦に
    落としにくいようにギザギザに

  • Colour 色
  • 視界の中のものを区別するキッカケとなる

  • The colour wheel
  • 色の3原色 red yellow blue 加算

  • (光の3原色 red green blue 減算)

  • Secondary colours
    赤 + 黄 → 橙
    赤 + 青 → 紫
    黄 + 青 → 緑

  • Tertiary colours
    黄 + 緑 → 黄緑
    ・・・

  • Full colour wheel

  • Colour Tone 色調
    色に black と white を加える→色調
    Tone Chart

  • Harmony and Contrast 調和とコントラスト
    Colour Wheelの反対側の色 :「補色」complementary colour

  • 周囲を見回して色の調和とコントラストによるデザインを調べてみよう

  • 絶対にありえない色調(とその理由)を考えてみよう
    (例) 「真っ赤な病室」「真っ黒な洗剤」・・・

  • iMacの起こした色の革命

  • Size and Weight
    色によって大きさが違って見える
    色によって重さが違って見える

  • Colour and Emotions
    色によって暖かい気分になる
    色によって涼しい気分になる
    色によって落ち着いた気分になる
    色によって興奮した気分になる
    ・・・

  • Colour Association 色の持つ(社会的)意味
    赤 危険
    黄 注意
    白 清潔
    大衆の暗黙的合意(社会的常識)はデザインにおいて無視できない

Principles of Visual Design

  • Proportion プロポーション
    複数の要素の組み合わせによって全体が構成されている
    それぞれの要素の相対的なサイズ
    それぞれの要素の配置 arrangement

  • デザインが目的に叶い、機能を実現していれば、 おのずとProportionはGoodになる
    (人間にとって自然)
    (合理的な「美」)

  • 自然の中のプロポーションが美しいのは何故か

  • 黄金比 Golden Mean Proportion について

  • 黄金比を計算しよう

  • バランスBalance
    • Symmetrical (鏡像)対称
    • Asymmetrical 非対称

  • 自然界の中にある放射状のバランス Radial Balance
    「バランスに気付くこと」はデザイナにとって重要なこと

  • Harmony and Contrast
    色彩だけでなく、デザイン全体にも「調和とコントラスト」は重要
    • コントラストにより調和を強調
    • 注目Attention を喚起する
    • 「生き生きした感じ」を演出

  • カーネギーの鉛筆

  • Pattern
    形状の繰り返しによる美的な装飾

  • モチーフ Motif
    繰り返しの要素となるLine, Shape, Form, Texture, Colour, etc
    2次元モチーフはグリッドパターンや定規で作れる

  • モザイク模様 Tessellations
    デザインの連結 interlock によって平面を充填する

  • M.C.エッシャー

  • パターンは機能の要請から自然に出来るものもある
    (例) 煉瓦の壁、運動靴の空気穴

  • 3次元パターンは標準化されたユニットの繰り返しにより出来る

まとめ

  • この Chapter では、デザインの現れと美学に影響するいくつかの要素を 学んだ

  • 他にも色々なデザインの美学的要素がある
    • 環境の影響(生まれと育ち)
    • 個人的な経験(物理的/心理的な経験)
    • 同年齢集団の影響(友人の好き嫌い)
    • メディアの影響(ラジオ、テレビ、雑誌、インターネット)
    • ファッション(受け入れられたものはグッドデザイン)
    • 旅行(異国に行き異文化に触れる)
    • 教育

  • 他にデザインの美学的要素を考えてみよう

Chapter 3 - Ergonomics

  • 人間工学 Ergonomics の定義の一例

  • 人間とその作業環境との関係を人間の形態、生理、及び心理面から研究する科学
  • 人間が取り扱う機械器具・道具あるいは環境などを、人間にとって使いやすいものになるように設計したり改良したりする科学
  • 人間の身体的・精神的能力とその限界など人間の特性に仕事、システム、製品、環境を調和させるために人間諸科学にもとづいた知識を統合してその応用をはかる科学

  • 我々がデザインするものの多くは人間を対象とする

  • 人間のいろいろな身体行為を理解する
  • 人間の健康と安全について理解する
  • 人間そのもののデザイン要素を理解する

Design for People

  • Introduction
    • 必要な機能を仕様 Specification として明確化
    • 使用する「人」を考慮する
    • 年令 age
    • 性別 gender
    • 健常者able-bodied か 障害者 Handicapped か

  • Total Design
  • Size
    計測 Mesurements
    人体計測 Anthropometrics

  • Movements

  • 人体の「動き」にもいろいろある
    • 自然な動き Natural Body Movements
    • 制限された動き Restricted Movements

  • Body Fatigue 身体疲労

  • Balance

  • Space

  • Senses 感覚

  • 五感

  • Size, Shape and Form

  • Surface Finishes 表面の仕上げ

  • Supporting Surfaces 表面による支持

  • 「熱い」「冷たい」への対応

  • 騒音と振動

  • 視覚的要素

  • 重さ

  • デザインの練習
    1. 自分のペンを注視しなさい
    2. 良く書けますか、使いやすいですか
    3. 持ちやすいですか
    4. 長時間使っても疲れませんか
    5. 他の質問事項をたくさん考えなさい
    6. 次にそのペンを机の上に置きなさい
    7. それは止まっていますか、落ちないですか
    8. ポケットに入れて大丈夫ですか(危険、汚れ)
    9. 「YES」と答えられる質問事項をたくさん考えなさい

  • 練習問題(宿題?)