成安造形大学コラボレーション・プロジェクト

アーティストのための汎用センサ自作応援講座

2001年1月 長嶋洋一


第1話

コトの起こりは、 成安造形大学での特別講義 です。これまで、 MIDIセンサ を多数、作品の一部として開発・制作している身にはなんでもない 事でも、初めてトライする初心者にとっては壁が高いものです。 そこでこのページでは、成安造形大で実際に作品を制作する人を サンプルとして、マイコンAKI-H8を活用したシステムの作り方、 センサの活用法、インスタレーションに適用するテクニック などをテキストとして整理してみようと思います。疋田クン、 上野さん、森先生、皆さん、どうぞよろしく。(^_^)

まず今回はイントロとして、2000年1月6日晩の僕の周囲を 紹介します。ぼちぼち、このページの準備も整いつつあるところ です。同時進行で見ている人も、あとからテキストとして見る 人も楽しめるように、デジカメ画像をたくさん並べたいと 思っています。(^_^)
いきなり専門的な用語が並ぶ、と当惑しないで下さい。これから、 目標としては2000年一杯かけて、次第に判っていってもらえれば、 その中から一部の人は実際に制作へ...という禁断の楽園に入り込んで いただければ(^_^;)、という内容の一端を、ここではザッと眺めるだけ、 ということですので。

ちょうど今、某大学から依頼されて、メディアアートやComputer Music やインスタレーションの「道具」として、汎用のMIDIセンサを製作する、 というところですので、詳しいことはおいおい詳解するとして、 ここでは新しい事を始める時の僕の行動(あまり初心者にはお奨め できないことも多いのですが(^_^;))を紹介しよう、と思います。この センサの話は、既にこのWebの某所で始まった「日記」にも書いている のですが、いろいろな基本的アナログ量をMIDI化して、あとのことは MAXに任せる、という方針です。MIDIとかMAXとか知らないぞ、という 人も逃げないで下さい(^_^;)。人間、何度も見聞きしていると、 不思議と解ってくるものです。

まず これ を見て下さい。なんか、もう完成してしまった装置のように見えますが、 実はこれは、製作をはじめた最初も最初、ほとんどまだケースだけです。 フロントパネルには、何やらボリュームのようなツマミと、 5ピンのDIN コネクタがあります。実はこれが MIDIです。また、その反対側には 7ピンのDIN コネクタがあります。これは特に規格というものではなくて、 たまたま僕がパーツ屋で「今回はこれでいくか」と適当に決めた(^_^;)、 センサ入力のためのものです。共通信号としてGND(グラウンド)がある ので、7ピンということは最大で6チャンネルのセンサ信号を入力する ことができます。実は、この中央のボリュームは、ここに加わる第7チャンネル 目のアナログ設定用なので、全部で7系統の入力を行えます。パーツ屋には 8ピンのDINもあったのですが、どうも抜き差しがかなりキツイので、 やめたのです。

これ がケースのパネルの反対側です。コードはコンセントに行きます。 スイッチは電源スイッチで、緑色のLED(発光ダイオード)は動作確認用 のもので、点滅させる予定です。なんか間隔があいているように 思えますが、気のせいです(^_^;)。 ...というのは嘘で、この部分 は放熱に使います。この裏に電源があるのです。
ケースはまだネジどめもしていないで単に乗せていただけなので、 フタを取ると、 このように 中身が見えてきます。まだ、ケースに穴あけして、該当する部品を 取り付けただけで、ハンダ付けもしていないのです。でも、けっこう ソレっぽいですよね。作業としてはこの穴あけまでが力仕事なので、 作業がこういう状態に進むと、なんだか嬉しくなってくるのです。(^_^)

これ は、二つのDINとボリュームの付いたフロントパネルの裏側です。また、 ケースの下側には、基板を取り付けるためのスペーサが付いています。 この部分はきちんと穴をあけてビスで止めます。この実装方法は、 金属ケースの場合には僕がこれまで必ず行っているもので、海外にまで 出ていって活躍しているマシンたちも、全てこの実装でノートラブル です。
これ はその反対側のパネルの裏側で、左にLED、右に電源スイッチとACコード の引き込みがあります。中央の黒い箱が、電源モジュールの「ゴリラ」 です。このモジュールは、実はネジ止めしていません。その秘密の 実装方法は、おいおい紹介します。(^_^;)(^_^;)
これ は、ACコードの引き込み部分のアップです。ちゃんと、一旦コードが 入った部分で結び目を作って、コードが抜けないようにします。 本当は、さらにこの結び目を「回転して捻れないように」止める のですが、このマシンでは省略しています。(^_^;)

これ は、基板のスペーサの上にユニバーサル基板を置いてみた、という風景 です。基板の穴とちゃんと位置が一致していますが(当然(^_^;))、 これはケースの底にこの基板を置いて、その穴のところにマジックで 印をつけて、そこにポンチしてドリルで穴をあけたので当然です。 こういう「現物合わせ」が、自作派の製作のポイントであり醍醐味です。 当然ですが、ここまで作るのに、設計図とか寸法メモなどは一切なくて、 部品を並べてはマジックで印をつけて穴あけしています。その場の アドリブ、ということです。(^_^;)

ちょっと悪ノリして、ユニバーサル基板の上に、意味もなく AKI-H8 を置いてみた図です。この位置になる、というものではありません。 まだまったく未定なのです。
これが、秋葉原の秋月電子のオリジナルカードマイコン、 AKI-H8 です。特別講義の時にも言ったかもしれませんが、カードサイズ ながら、これだけで初期のPC9801(16ビットパソコン)ぐらいの 性能は楽勝であります。いや、内部32ビットCPUなので、本当の 実力はもっともっとあります。
これ が、その心臓部の日立のCPU、「H8」です。世界を席巻している、 と言っても過言ではないマイコンです。(^_^)

さて、風景は一転して、 机の上 に何やらアヤシイものが並びました。実はこれが、今回、全て 製作して実験してみよう、と選んだ「センサ」たちなのです。 たいていのものは、秋月電子か、日本橋の共立電子で仕入れた 「センサキット」やセンサ関連ジャンクです。ポイントは、 高価でなく効果的である、というところです。これがアマチュア の特権ですね。(^_^)

まず最初に登場したのは、単にユニバーサル基板の上に並べて 置いてみただけですが、 ジョイスティック です。ぜんぜんそういう外観をしていないぞ、という人はモグリで(^_^;)、 実は この、 90度に直交した二つのボリュームが、ジョイスティックの正体なのです。 この底部から眺めると仕掛けがよく判りますが、ここでは秘密にして おきますので、メカを考えてみましょう。共立で250円でした。
こうやって適当なパイプを挿して2本をグリグリ操作すれば、もう気分は 鉄人28号 状態です。わっかるかなぁ、わっかんねーかなぁ。(^_^;)

同じものを二つ作っても面白くないので、こちらは ジョイスティックとテンキー としてみました。 ただし、信号線はジョイスティックの2本を入れて全部で6本 なので、どうやってテンキーの12個のスイッチを使うか、今の ところ何も考えていません(^_^;)(^_^;)。 作りながら考える、考えながら作る、これぞ醍醐味です。 どうなるかなぁ。

これ は共立電子で仕入れたワンダーキットで、 静電タッチスイッチ のセンサです。機械的に動かないエレベータのボタンのように 金属に触れるだけで、人体の励起電圧を利用して検出します。 なにか人形(思わず触れてみたくなるようなものである 必要がありますね)にこれを仕込めば、「なでると音が 出る」とか「触れると映像が出てくる」というような インスタに利用できそうです。出力はON/OFFです。

これ も共立電子で仕入れたワンダーキットで、 焦電センサ のキットです。人体から出ている赤外線をセンシング して、その絶対量とかでなく、「変化があった」という イベントを検出します。防犯用に普及したものですが、 モジュール内に虫とか動物で誤動作しないための処理 が組み込まれているので、音楽演奏のような俊敏な 動きは検出できません。ギャラリーの入り口あたりに 仕掛けておいて、来場者が来ると自動的に芸をする、 というようなインスタには使えそうです。

これ は秋月電子で仕入れたオリジナルの 超音波距離計 のセンサです。これは初代ファミコンのPowerGloveでも 使われているもので、同期させて超音波を送信・受信して、 反射された超音波の塊の遅れを計測するものです。 カメラのオートフォーカスのために、このセンサは アメリカではポラロイドが売っています。 このキットでは、超音波距離計測の結果をそのまま ディジタルデータとしてLEDで表示するので、MIDI化 するためには回路の改造というか新規設計が必要で、 出来るかどうか、ちょっと内心、燃えています。(^_^)

これ は共立電子で仕入れたワンダーキットで、 光量変化による動き検出 のセンサです。使われているCdS(硫化カドミウム)セルと いうのはかなり歴史のある光センサ素子で、受ける光量 で抵抗値が変化します。これを増幅して、最終的には 「あるレベルを越える変化があった」ということを ON/OFFでセンシングします。これも、環境変化対応型の インスタにはいいですね。(^_^)

これ は秋月電子オリジナルの 磁気検出 センサです。ホール素子という、高感度な磁気検出素子を 利用して、周囲の磁場をアナログ値として出します。 最近の電子機器や磁気メディアにとって、磁石を近くに置く というのはちょっと恐いところもありますが、たとえば ピップエレキバンを風車に貼ってグルグル回せば、 これによる磁気の変化をサクッと検出できそうです。 インスタであれば、可動部に磁石を付けて、その近くに このセンサ部だけ置いて、あとはケーブルでシステム とは離しておけばいいわけです。非接触のために、うまく いけば、故障が少ない寿命の長さというメリットがありそうです。

これ は共立電子で仕入れたものですが 加速度センサ のICです。これはキットになっていない、センサICチップだけ のばら売りですから、かなり上級編ということですが、 加速度というのはニュートンの法則によって「力」と 比例しているので、「力」という人間の行動に対応した センシングとしてはとても強力なことができる可能性が あります。とりあえず構想としては、この二つの加速度 センサを互いに90度に設置して棒の先端に取り付け、 上下左右の「指揮棒」というようなアリガチなものを 狙ってみたいと思っています。(^_^;)

以上の8種類については、とりあえず今回、ぼちぼち実験して 製作していく模様をここで紹介してみたいと思っています。 でも、ここでは公開しませんが、まだまだセンサのねたは あるわけで(^_^;)、 こういうような写真も、解説抜きでさりげなく並べて おきましょう。今までに既に作ったり実験したものもあれば、 これまで何年も秘蔵していて本邦初公開のものもあります。 これから新規テーマで挑戦していこう、というものもあります。 新楽器となってある音楽家のもとで活躍しているものも あれば、試作機に組み込まれて福祉施設で稼働している ものまであります。センサの応用範囲は広いのですね。(^_^)

...ということで第1話はオシマイです。ちょっと初回から 飛ばしてしまいましたが、以降はぼちぼちいきますので、 興味のある方はお付き合い下さい。なお、このWebにある 全てについて共通ですが、これらの資料の無断利用等は 御遠慮下さい。こういう話が必要なら、特別講座などで お呼び下さい。喜んでどこにでも行きますので。(^_^)