第2期「虎の穴」学生レポート集

2000年9月 長嶋洋一

大山真澄

 今回、初めてパフォーマンスという形での作品づくりに加わった。インスタレーシ
ョンとは違い、短時間の中で私達の伝えたい事を伝える。新たな仲間も加わり、連画
というCG作りも新鮮な中でこの企画はスタートした。軽い気持ちで加わった「虎の穴」
での企画第二段。私は前回の反省も踏まえキチンとした目的をもって望む事にして
いた。それはパフォーマンスという作品形態を知る事と、クリエーターとしての自覚
をもって協力的に参加する事。

 公開デーでの成功の余韻も残る中、この企画の打ち出しがあった。新メンバーを含
めて十人で作業を開始する。今回は一つの連続した作品を作るせいもあり、CGは連画
という作品形態にする事に決まった。私はそのトップの五枚を作る。人の絵を加工す
る事に不安があったので、自由にやれる為にもトップ絵をやりたいと思っていた。せ
っかく連画なのだから続いたものをかこうと思った。五枚というのは少なすぎる制限
だった。フェイドインする目的で、暗い感じのものを描いて提出。のちの皆の絵をみ
て、ほんとにこんなに私の絵が変わるものかと思った。とても面白い。原画は前の人
の絵なのにあんなにも個性がでるものなのだと驚いた。やりたい放題やっている様に
見えてそれがかえっていいのか、CGは森海とは違った意味で面白さがあった。
 夏休みに入る前から、今回の企画は来る人が少なそうだと予想が出来た。私には虎
の穴の中でも比較的時間が取れた。ほとんど毎日通う事が出来、作品が出来上がるま
でのプロセスを見る事が出来たのはとてもよかった。コンピュータの上での作品がパ
フォーマンスになっていくところを見れたように思う。

 夏休み中初めて作品を見た時、面白い空気だと感じた。変化するCGと風変わりな音、
自然の音。パフォーマーの動きに合わせて時間が進んでいくようだ。先日、先生か
ら「コンピュータサウンドは暗い音楽の方が作りやすい」と聞いた。確かにコンピュ
ータの特性をいかすのならそのような音楽の方がいいのかもしれない。普通では出せ
ないような音を作る事ができるのがコンピュータで、聞いた事がないような音だから
こそ奇妙なものが多いのだと思う。普通には発生しない音が自然の音とともに流れて
くる。それがとてもマッチしているのがおかしな感じだ。ランダムでつねに違う音楽
が出来上がる。パフォーマーが慣れる前にリハーサルを止めてしまう。コンピュータ
サウンドの面白い所だ。

 今回の企画では目的が達成されたかといえばどちらともいえない。他の作品を見た
わけではないので、パフォーマンスという作品形態を理解したとは言えない。だが協
力的に参加できたと思う。コンピュータサウンドの世界はとても面白い。次回のイン
ターカレッジがとても楽しみだ。


加藤美咲

第二期虎の穴は、長嶋先生がシンポジウムの講演中に具体的実例としてミニコンサー
トを発表するにあたり、その制作のために結成された。前回と同じような共同制作の
形をとり、先生は音とセンサを、私たちはCGによる映像を担当することになった。
センサからの情報を元にMAXのパッチで処理する形態は同じだが、今回のセンサに
はパフォーマーを起用し、六箇所の関節の曲げをセンシングするMIBURI−se
nsorを使った。CGはパフォーマーの背後にプロジェクターで映し出され、リア
ルタイム画像処理ソフトImage/ineによってインタラクティブな映像として
流される。

CG制作において前回と異なる点は、「連画」という形を採用したことである。中世
日本では「連歌」が親しまれたが、「連画」はこれと似たようなものだ。虎の穴メン
バー+長嶋先生の手によって厳選された3つの詩をテーマに、あらかじめ決められた
順番でCGを描いていく。「一人5枚の連続したCG画像を制作。最後の1枚を次の
人に渡し、次の人はこれをスタートの素材として5枚のCGを制作」というもので、
第一期虎の穴メンバーが最初とトリを占め、私は一番最後に回った。一期メンバーの
制作期間は4日であるが、二期からの新メンバーはそれよりも長い。これはCG制作
に慣れていない新メンバーに時間的ゆとりを与えるためである。しかしこのために一
番手である大山が画像制作に取り掛かってから私の手元に変革したそれが届くまで、
約一ヶ月のタイムラグが出来た。その間、モチーフにした詩のイメージを保持しつづ
けるのは難しく、いざ制作に取り掛かるとき少々気持ちが遊離してしまった。画像の
制作自体は2日ほどですんだので、今回のように無形のイメージを題材にするときの
締め切りは、せいぜい2週間くらいが適当であろう。

CGの制作については、一番手大山が、映画のフィルムのようなコマ送りの経過変容
型のCGであったので、ラストの私は一枚ごとに大きく変えようと考えた。具体的に
は、前の絵の一部を残し、あとは色からレイアウトからすべて変更する方法である。
これの失敗点は、ぱっと見て「連画」だとわかりにくいところにあった。枚数を重ね
るごとに他の新しい素材を用いたので、画面がうるさくなりやすく、関連性が見出し
にくかった。しかし画像が変わったときのインパクトは強く、実際の公演では山場の
場面に使用された。

音と映像が出揃ってからの全体の作品構成には諸事情があってほとんど参加できず、
ほぼ出来上がってからの細かな修正に立ちあった程度であったが、新鮮な目で作品を
捉えるには好都合だった。シーケンサーで固定された音を作り、ビデオに撮った映像
を流すものと違い、このような毎回違う音と映像が流れる作品では、構成には不確定
を踏まえたセンスが必要である。一歩間違うと自己満足の世界に陥ってしまう。常に
観客の視線でチェックするもう一人の自分が大切だ。

会場は静岡大学浜松キャンパス内の会館を使用した。シンポジウムなのだから当然だ
が、ここにはステージがない。最前列にMacなどを置いて作業ブースを確保する
と、パフォーマーの下半身が見えなくなってしまった。センサは肩と腕についている
のだからそれさえ見えていれば実演は成功なのだといっても、やはり作品としては全
身が見えたほうがよかった。照明も、プロジェクターを使う以上ぎりぎりまで落とさ
なくてはならないのだが、パフォーマーがスクリーンの手前にいるのでどうしても中
途半端な影が出来てしまう。

音は詩に合わせて自然音がベースになっている。一部に使用された風の音は、著作権
フリーの素材を長嶋研究室内にあるIndyで加工したものである。波形で表された音の
一部を切り取って自然に聞こえるようにつなぐ、一種裏技的な方法を教わった。
もうすでにプロジェクトが進んでいる第三期虎の穴では、チーム名「風虎」からわか
るように、風に重点をおいた作品になる。ぜひ二期で得たノウハウを活かしてみたい。


林文恵

果たして何をかいたものか。正直、悩むところである。
それと言うのも、今回私はメインで参加していないからだ。
主に貢献したことと言えば、前日のセッティングを手伝ったこと、
当日の照明を手伝ったこと、ぐらいのものである。
あとはリハーサルを見て「おお〜」と言っていただけのようなものだ。
CGを描いたり、作品に直接関わることはほとんどしていない。

しかし、説明を読んで、直接作品を見てきてはいる。
今回の作品は舞台中央で踊るパフォーマーが
身体に取り付けたセンサーによって得た情報で
ライブ演奏を行うものだ。
関節部に取り付け電圧で関節の曲げ情報を出力する
YAMAHAの発売するミブリを改造した
連続的に関節の曲げ情報を取り出せるセンサーを使い
そこから得られるデータを即時的に音データとして発音、
また曲の要所では同時に指揮として、
BGVと音楽のタイミングを操作する。

人間のアクションによって操られる、
まさしく音の出る楽器としてコンピューターを使っている
ところが感動である。

DTMはComputerMusicのなかでポピュラーだが
その中でパソコンは楽器と言うよりも音の出る箱、
オルゴール的位置づけにある。
もちろんエレクトーンだって今ではほとんど
音の出る箱状態で、弾くのはせいぜい右手だけ、
下手するとキータッチ一つで以前の演奏が再生開始、
なんてこともままあり、右手左手足鍵盤に音色操作とリズム伴奏、
なんてスタイルは過去のものだったりするのだが。
しかし自在にカスタマイズでき、何を使うも自由、
パソコンの可能性を引き出さないのはもったいない。
私は人間のアクションにコンスタントにリアクションを返してくれて、
ある種のニュアンスを音に乗せられるだけの余裕をもっているもの、
アクションと等価のリアクションを得られるものこそ
楽器と呼ぶことができると思う。
また、今回の作品に関しては、
人間の動きをデータとして取得するため、
踊り、動きその物が重要な要素となっている。
もともと人間の動く様と言うの人間にとって実に
刺激的な視覚体験である。
その要素と音とがリアルタイムで完全に作用しあっているというのは
ライブの場においてとても有効だということを
私は今回の演奏で目の当たりにした。
コンピュータによるそれらの実演を見られたことは私にとってプラスだと思う。

最後に、今回の作品について、気になるところを
しいてあげればCGが完全にBGVに徹し、
同期を取ってはいるものの完全なスライド方式だったことだろうか。
ある程度のエフェクトはあるものの単調さはある。
音に制御される動き・色彩の連続やある種の自動生成される面があれば、
と期待してしまうのはやはり贅沢過ぎだろうか。

ともかくも部分的にしか関わらなかったにもかかわらず
今回のを見ることができてとても良かったというのは本当である。


鈴木飛鳥

1.はじめに
第2期虎の穴に参加しようと思ってメンバーの募集用紙に名前を書いてから、顔合わ
せなどをして具体的にどんな事をするのか分かっていくにつれて、私はPhoto
shopをしっかり使うのも初めてだったし、連画ということで締め切りを守らな
いと後の人にも迷惑になってくるなど、本当にやっていけるのか心配でしたが
自分なりに出来るだけのことはやろうとしてきました。

2.CGのこと
テーマとなる詩も自分達が抜粋した中のもので、その詩のイメージでCGを作る
ということだったけど「連画」にするということで、いまいち連画のことがよく
分からなかった私は少しとまどいましたが、私よりもCG制作の順番が前の人達
が作り出した様子を見て何となく分かってきました。
Photoshopの操作には最初は苦労しましたが、何枚か作っているうちに使えるよ
うになってきてよかったです。
反省点もあります。最初は詩のイメージに沿ってCGを作ろうと努力していましたが、
途中でCGを作ってから詩の中にそのような感じのことが無いか探したりしたこ
とがありました。締め切りが早い気がしてあせってしまい、ますます詩からイ
メ−ジすることが上手く出来なくなってしまった気がします。
それでも5枚のCGを仕上げることが出来てとても嬉しかったです。

3.音楽のこと
初めて"Wandering Highlander"の音楽を聞くとき、CGと音楽がどのような感じ
になっているのかとても楽しみでした。センサーの音はパフォーマーの動きに
よって出ていて、毎回曲が少し違う感じになって2度と同じものが出来ないとい
うことで1回1回聞くのが更に楽しかったです。
2度と全く同じ音にならない曲というのはとても興味深いです。本番はどの様な
感じになるかと楽しみにしていましたが(あとお客さんの反応も見てみたかった
です)外に立っている役になってしまったので、見れなくて(聞けなくて)残念で
心残りです…。

4.これから
第2期虎の穴に参加してみて、最近よく思うことはいつか自分もこういう作品を作
作ってみたい!ということです。が、システムとかは全くと言っていいほどわかっ
ていないので少しずつ勉強していきたいと思います。


渋谷美樹

 今回、第二期虎の穴に参加するにあたり、かなりの不安があり
自分の役割をキチンとこなす事が出来るのかどうか心配でした。
5月の一般公開日に、第一期虎の穴の展示を見に行ったので、これ
以上の事をしなければならないのかも知れない。と、思ったことも
ありました。そして、いざ自分で作品を作ってみると、やはり大変
で自分のイメージとはかけ離れているような感じになってしまいま
したが、全体を通して見たら意外と馴染んでいるような感じでホッ
としました。

 私の順番は、テスト期間の真っ只中だったのに、意外と時間があり
ました。CGを作るにあたり、かなり行き当たりばったりな作り方だった
と思います。むしろ「自分のイメージを表現するには、これをこうすれ
ば良い」と、いう事が分からなかったので、いじっていたらこうなった
という感じでした。(←ネタばらし?)CGを作る事は結構、根気が要る
んだなと思いました。フォトショップを使うことは、かなりのことがで
きる!と勝手な思い込みがあっても、使いこなせなければ、そんな事も
実現しないという事が分かったので、少し悔しい気持ちでした。

 夏休みの打ち合わせには、私事で1日しか行けなかったのでしたが、
出来上がった作品を見て、聴いて思った事は、イメージの山というよりも、
もっと壮大で、深い感じがしました。もう少しで、鳥肌が立ちそうでした。
そしてデジタルならではの効果音も、パフォーマーの思いのままに出るし
動かす角度によって違いが出てくるので、1回1回ちょっとずつ違う感じ
で、おもしろかったです。

 静岡大学浜松キャンパスに行ったときは、2虎に関係のない所でショック
を受けてしまいました。学食です!メニューを見て驚きでした。静岡文化
芸術大学の半額の値段だったからです!あぁ…。それはともかく当日は
本当に講演会(コンサート)に人が来るのかなと思っていたら、ぞろぞろ
と沢山の方が見に来てくれたので、パフォーマーでもないのに緊張しました。
一番後ろから見ていて、すごく充実感がありました。

 第二期虎の穴に参加して良かったと思いました。機材の接続方法は、図面
を見ても何とか分かるくらいなので、自分では頑張ったつもりでもあまり役
に立たなかったとおもいます。第三期も同じようになるかもしれませんが、
次回は、本番に出て演奏の味付け役なので、足手纏いにならないように、
そして自分にプラスになるようにドンドン吸収していきたいとお待って
います!今回はありがとうございました。次回も頑張ります!


川崎真澄

 静岡文化芸術大学に入学して、半年が経ちました。"自分のイメージと違ってい
た"と、大学を辞めていく学生、"自分はもっとデッサンの勉強がしたい"と、大
学のスタイルに疑問を持ち始める学生。あるいは、先生方の勢いに圧倒され、休
学、退学する学生も続出しています。

 そんな中、私から見れば最もやる気のある学生が多い技術造形学科では、開学
後すぐに、やる気のある学生集団、「虎の穴」プロジェクトが、スタートしまし
た。虎の穴は、当初5人のメンバーで構成され、またそのメンバーも、長嶋先生
が選ぶという形でした。私は第1期の企画から参加させてもらうことになり、選
ばれた当時はどうしていいのかよく分かりませんでしたが、今思えば最高のチャ
ンスをつかんでいたと思います。しかし、第2期からは、参加者を募集し、やり
たい学生だけが「虎の穴」に入れるというものになりました。たとえ「第1期虎
の穴」に参加していようと、待遇とか、優遇などという言葉はなく、新生「第2
期虎の穴」メンバーとして参加者を募るものです。だから、1虎であったとして
も、2虎は参加しなくてもいいし、やる気がなければやめればいいし、全ては自
分の気持ち次第です。そして、集まった学生は9名。長嶋先生、林さん、
Performerの鈴木さんを含めれば総勢12名という、第1期からさらにパワーア
ップしたメンバーが揃いました。

第2期「虎の穴」"Wandering Highlander"for Performance and Live ComputerMusic

 まず、今回の企画が第1期と大きく異なる点は、学外で作品発表を行ったとい
うことです。「電気関係学会東海支部連合大会」が静岡大学で開かれ、長嶋先生
の発表する作品にCG/CO-Creatorとして参加させてもらい、12名によるコラボ
レーションにふさわしい場を設けていただきました。また、Performerのダンス
によって音楽と映像が動く仕組みも第1期「虎の穴」"森海"にはなかった新しい
試みで、非常に新鮮な気持ちで作品制作に取り組むことができました。

 私達、9名のCG/CO-Creatorは、CGの静止画を創作するのが中心的な役割で、
私は、第1期で初めて出会ったPhotoshopのソフトを使用することにしました。
1虎の時は、李先生に指導していただいたことを基に、慣れない使い方で、"こ
うしたらどうなるだろう?"とか、"なんとなく触っていたら偶然にもうまくいっ
た"というようなことを感じながら作品を制作してきましたが、第2期ともなれ
ば、ある程度自分が頭で考えている作品により近いものができると思ったからで
す。しかし、簡単に1人1人がCG画像を制作するのでは、コラボレーションとは
言えません。そこで、作品コンセプトを統一させるために、まずは長嶋先生の研
究室にある何十冊にもわたる詩集の中から3つの詩を選び出し、それを作品全体
のイメージとしました。3つと言っても「山」という言葉が共通して詩の中に含
まれており、9人それぞれが好きなものを選んでよいという意味では、CG制作に
束縛もほとんどなく、逆にテーマがあって私としては非常に制作しやすかったで
す。また、連続した5枚のCG画像を1人が制作したら、最後の一枚を次の人が原
画として、また5枚のCG画像を制作、この作業が9人目まで続く「連歌」ならぬ
「連画」の方法をとりました。1虎メンバーは、経験者として1,2番手と8,
9番手を担当し、私は1番手の画像を引き継ぐ2番手を担当しました。1虎であ
ったとは言っても、制作する前から原画があるというのは難しく、1枚目の画像
制作には時間がかかりましたが、なかなか経験できない良い機会であったと思い
ます。ただ、この方法は、前の人からの原画を受け取らない限り、作業を進める
ことができないため、テスト期間に制作する人もいれば、夏休み中に制作する人
もいて、長時間を必要とするものでした。この9人による作業が進む中、長嶋先
生は作曲を何日もかけて制作されており、また私達のCG画像の修正から全体構成
までを手がけてくださいました。

 夏休み後半には、Performerの鈴木さんが実際にセンサを洋服に装着して、その
動きやセンサの接触具合を細かくチェックする作業が続き、これが以外と大変で
した。センサは、肩、手首、ひじ、に全部で6つ着けられ、彼女の動きに応じて
音楽とCG画像が変化する、非常にデリケートなものです。少しでも接触が悪かっ
たりすれば、出るはずの音も出なくなってしまうし、彼女のダンスが音楽と映像
にマッチしていないと作品として成り立たなくなってしまいます。だから、一応
全体の構成が完成してからも、長嶋先生を先導に、本番さながらのシミュレーシ
ョンを何度も何度も繰り返して、よりすばらしい作品に近づけようと調整を行い
ました。しかしやはり、人間同じものを繰り返し見ていると、どうしても新鮮さ
を失いがちになってしまうものであるから、疲れた目を擦ったり、何度も伸びを
したりと、とにかく「初めてこの作品を見る人」の目をつくろうとみんな個人個
人に努力していました。苦労の甲斐があって、最終的にできあがった作品は完成
度の高いものとなり、9月17日の当日もわりと落ち着いて準備を進めることが
できたと思います。

 Performerの人がセンサとして音楽と映像を動かすということは、作品全体は同
じであっても、センサが人間だけに一回一回が違うものになるため、実際はとて
も怖いけれど、おる意味人間だけにしかできない非常におもしろいセンサです。
そのおもしろさを引き出すには、できるだけ基本的な動きを決めておく必要性が
あります。何度もシミュレーションを行ったのもそのためだし、だからこそ、本
番は冷静にいることができたのだと思います。

 第2期「虎の穴」に参加して、私はまた、新たな驚きと、発見と、知識を得る
ことができました。最近サークルや講義で大変ですが、そうであっても、"虎の
穴に参加する価値"がここにあるのではないかと思いました。虎の穴メンバー以
外の人も含めて、この大学がやる気ある学生と、やる気ある学生に喜んでついて
きてくださる先生方であふれていることを、とてもうれしく思います。第3期
「虎の穴」も、さらに飛躍し、それに並行して虎の穴メンバーも、どんどん新し
いことを吸収していくことでしょう。時には教え合い、時には良きライバルとし
て、お互いを高めていくことのできる「虎の穴」が、今後も大きく成長していく
ことを願っています。そして私も、虎の穴にどれだけ食らい付いていけるか非常
に楽しみです。


北嶋めぐみ

<はじめに>

 今回の「虎の穴」は、前回の「一虎」に比べると達成感が明らかに違った。
 それは、製作期間の長さや、作成したCGの枚数などが原因だろう。

 とにかく今回の「虎」は、楽しかった。
 沢山興味があることが学べたからだ。

<連画>

 今回出すCGは、「連画」といって、前の番の人が作成したCGと予め選んで
おいた詩を組み合わせ、CGを作成するといったものだった。
 しかも、自分が作るCGの数も5枚と、前回よりも格段に増えた。さらに、そ
れら作成したCGは、何かしら内容が続いていなければならない。
 それで無ければ「連画」の意味をなくしてしまうからだ。

 前回の「虎」では、私は一作品しかCGを作ることが出来なかった。その頃の
私は、CGを何で作るのかも分からなかったからだ。
 しかし、それから数ヶ月で、私は画像加工がある程度できるようになった。
 学校の授業で習ったことと言うより、自分がパソコンを持ち、常に学習できる
ようになったためだろう。

 そのため、今回のCGリレーは、私にとって、楽しいものだった。

 前の人から五枚のCGを渡された時、私はどこまでそのCGを加工しようか悩んだ。
 しかし、ほんの少しの変化では面白くないと思い、盛大に変化をつけることにした。
 それにより、私のCGは音楽の盛り上がる場面で使用されることとなった。

 そして、五枚のCGは、フィルターや効果のテストでもあった。
 私は今まで使ったことのない効果などを積極的に使い、変化に富んだ、しかし
連続しているCGを作成することができた。
 それにより、フォトショップの使い方にも慣れ、CGデザインの感覚も、何と
なく分かるようになった。

<パフォーマンス>

 次に私が興味を持ったのはパフォーマンスだった。
 「二虎」の計画が始まったばかりの頃は、私がパフォーマーをやる予定だった
が、結局バレエを習っている鈴木さんにお願いすることとなった。
 さすがに「踊り」を専門的に習っている人の動きは違って、様々な音の効果が
生まれた。
 パフォーマーの体に取り付けられたセンサーがその人の動きをひろい音を出す
仕組みだったが、センサーを付けるためにパフォーマーはコードを付けて踊らな
ければならなかった。
 そのため、動きが制限される。しかし、その限られた動きの中でも、パフォー
マーは様々なバリエーションの音を作り出した。
 パフォーマーが音を演奏する一番のポイントは、そこではないかと思う。
 作られたコンピュータの音楽に、魂がやどるような、そんな音だったからだ。

<MAX>

 今回もまた、説明には図が利用された。「一虎」の頃には全く意味が分からな
かった図が、だいたい読めるようになっていたのは、嬉しかった。
 まだMAXを使えるようにはなってはいないが、少しずつ勉強して、自分でプ
ログラミングできるようになりたい。

<おわりに>

 このように、今回の「二虎」は、前回に比べると格段に進歩することが出来た。
 これから「虎」は続いていくだろうが、その度に進化をしていたいと思う。

 様々な勉強が出来たプロジェクトだった。


田森聖乃

< 虎の穴に入った理由>
 私は正直に言うと虎の穴に入る段階では、この虎の穴が具体的にはどんな事を
するのかといいうことをはっきり理解できていなかったように思います。勿論、
はっきり理解していないなりにもCGやコンピュータ・サウンドには興味があった
けれど、虎の穴をやってみようと思った一番の理由は、とにかく自分の知らない
事を多く経験していきたいと思っていたからです。一つでも多くの経験をして、
いろいろなことを自分の中に吸収したいと思っていました。

<CG作りについて>
 今回は「詩」をテーマとしてCGを作るということで、「詩」を作っている言葉
からいろいろイメージして絵にしていく作業は、とても楽しいものでした。しか
し、まだパソコンもろくに触ったことのない私にとって、イメージした絵をCGで
表すというのはとても大変なことでした。CG作りは、すべてが手探り状態で、自
分のイメージした絵がなかなか思い通りに描くことが出来なく、パソコンにはせ
っかくいろいろなことが出来る機能がついているのに、使い方が分からなければ
全く無駄になってしまうことを痛感しました。これから、いろいろと勉強してい
かなければならないと思います。
 そして、みんなの作ったCGを見て、自分では思いつかなかったような描き方の
作品などがあり、いろんな発見をさせてもらえました。

<作品について>
 私は、未完成ではあったけれどCGと音楽とパフォーマンスが合体した作品を最
初に見たとき、素直にスゴイと思いました。今までにそのような作品を見たこと
はなかったし、新しい発見をした感じでした。
 そして、作品を仕上げていく中で思ったのは、連画というものの難しさでし
た。私自身は自分の作品に、それなりにつながりがあったつもりだったけれど、
いざ出来上がった作品の中では、あまりつながりが感じられず、少し心残りにな
った感じです。連画は、他の作品との関わりも関係してくるもので、なかなか難
しいものだと感じました。
 作品については、CG、音楽、パフォーマンスというそれぞれが一つでも作品と
して成り立つものが合体しているだけあって、いろんな要素を持つ深い作品だと
感じました。音楽だけで表現できてることに、さらにパフォーマンスが加わって
いたりして、より良く表現できていると思いました。このことは、私のこれから
の創作などにも生かしていきたいと思います。

<感想>
 私は、いろいろなことを経験したいと思い臨んだ第2期 虎の穴で、望んでいた
通り自分が今まで知らなかった様々なことを経験することができました。自分の
中の世界も少し広がり、本当に良かったと思います。ただ、時間がなかったり、
パソコンの操作が良く分からなかったりして、自分自身の十分な作品ができなか
ったので、次があるとすれば自分の納得できるような作品を作りたいです。ま
た、初参加ということもあって、全体で作品を作っていく段階で、あまり積極的
に意見が言えなかったので、次は、どんどん参加していきたいです。
 これから、この経験を生かしていきたいし、チャンスがあればもっといろんな
経験をしていきたいと思っています。


高木慶子

 今回のこの2虎のプロジェクトへの参加は私にとってすべてが新鮮であり、未
知なものだった。まずCGを制作する際にとった「連画」の手法が初めて知った
手法だったし、音と映像とパフォーマンスという3つの要素を1つの作品に融合
させる形というのも初めてであった。

 前の人から受け取った画を、詩からくる自分のイメージにつくり変えていくこ
とは、大変面白かったけれど、またその反面、悩まされる点でもあった。私一人
だけでCG制作をするというと、全体の流れや構成が頭の中で出来上がって、そ
れを描いていくという感じになるが、連画の場合は最初他の人のイメージが私の
中に入ってくる。それにどう私のイメージを溶け込ませるか、上にのせるか、変
化させるか、と考えるところから始まり、そして、自分がつくった画面も次の番
の人の手により新しい姿へと変わっていく。連画はそれが面白く感じたところで
あり、また、実際に自分のところへ回ってきてみないとわからない、つかめない
という怖さ、楽しさみたいなものもあるものだなと思った。加えて、この作品で
は皆同じ3種類の詩というコンセプトで始まったので、それぞれの画面や音、パ
フォーマンスに個々の世界が広がっていて良かった。ただ、やはり個々につくら
れたモノを1つの演奏の中にまとめあげることが困難である。統一感を全体に出
そうとすると、やはり始めに何か決め事を作っておかなくてはいけないし、逆に
それをしない場合、多少ばらつきが出てもやむを得ない。3つの詩を選んだこと
は結構絞り込んだようで、まだまだ奥深い、広いものだと皆の作品をみて改めて
思った。

 今回はCGを制作するにあたって、私より前の順番ですでに制作している人
達のCGを見てしまっていたところもあるので、その分”見えない楽しさ”とい
う面が欠けてしまっていたかもしれない。 CGをつくるのに使ったフォトショ
ップも、画面を自分の理想に近づけることに必死で、逆に振り回されているばか
りだったような気がする。もっとたくさんの加工を覚えて、自分なりの表現の仕
方や幅広い使い方を発見出来るようになっていきたいと思う。

 そして、今回のこのセッションに使われたシステム、機器も私は耳にしたこと
のない名前のものばかりだった。MAXというソフトが作品のすべてをコントロ
ールしているものだった。音、音量、タイミング、切り替わりなど、あらゆると
ころでMAXが制御をしている。その中で私が興味を持ったのは、毎回音や画像
の並びを変えている乱数だ。数字が不規則に変わっていくことで、いつも作品は
違うモノとなっている。一度した演奏は二度と繰り返すことができない。これが
あるからこそ、生でやることに意味もあり、更にその場にパフォーマンスとの緊
張感も生まれてくるのだと思う。インタラクティブ・メディア・アートという言
葉も今まで全然聞いたこともなく、その意味もわかっていなかった。だが、今回
の静大での発表をみて、その場の生の空気を感じることができた。私たちは本番
だけでなく、何回かの打ち合わせ等を通して演奏を見て聴いてきたが、前にもあ
げてあるとおり、毎回が違った作品になっていた。乱数によって組み合わされる
映像、音、パフォーマーの操作による音も加わって異なる仕上がりを見せる。だ
から、毎回見ていても、飽きというものが来なかったような気がする。それにか
えって「今回はいい感じ」とか「今は映像の流れがいまいちだった」とかいうよ
うに比較がしやすいというのがあった。乱数によるところは、本番でうまくいく
かどうかという賭けみたいなものがあったが、毎回違うものを見ることによっ
て、その作品をいろいろな角度から見られたと思う。
   
 この作品ではみることもするし、聴くこともする。眼と耳と両方から情報が入
ってくる公演だった。やはり公演であるなら記録に遺されたものをみるというの
ではいけないと思う。生であるからこそ、伝わるものがある。生でやることはリ
スクも多いが、伝わるものも圧倒的に多いはずだ。それが演じる側とみる、聴く
側とのコミュニケーションになり、インタラクティブ、つまり対話するという公
演が今回のプロジェクトで理解できた。私は2虎に入って色々と得たものがあ
り、参加して本当に良かったと思った。


竹森由香

 CG制作の感想

  連画について
 最初に CGによる連画をすると聞いたとき、正直 わたしは大変戸惑いまし
た。わたしにとっては、ほとんど始めてといって良い CGの制作でしたし、ひ
との作品に手を加えて作品を作るというのも これまで経験したことがありませ
んでした。また、テーマである詩を意識しなければいけない ということもあ
り、大変 緊張しながらの作品作りでした。なかでも、わたしを 最も苦しめたの
が、次の人へのバトンタッチです。期限内に 作品を次の人に渡さなければいけ
ないというタイムリミットは、わたしにとって かなりのプレッシャーになって
いたように思えます。
 しかし、実際にCGの制作を始めると、連画は 思っていたよりずっと楽しいも
のだということに 気付かされました。心配していた、前の人の作品に手を加え
るという作業も、予想していたような 戸惑いはまったくなく、意外なほど すん
なりと 作業を進めることが出来ました。また、5つの作品を 少しづつ変化させ
ながら作っていくというのも面白かったですし、他の人たちが 作品をどのよう
に変化させていくのかというのも大変楽しみで、 わくわくしながら見ていまし
た。連画により 全体を通して1つの流れを作ることで、連続性のない1つ1つ
の作品を集めたものよりも、共同作業による作品であるという実感を 強く感じ
られるような気がして、そこが良いなぁ と思いました。
 しかし、1人が 時間をあまり長く取れないということで、作品を 最後までじ
っくり作ることができなかったことが 残念でした。

  詩について
 今回 取り上げられた3つの詩、『遠き山見ゆ』『またある夜に』『目醒め』の
中で、わたしが一番惹かれたのは『またある夜に』 でした。なぜ、わたしが こ
の詩を一番気に入ったのかというと、詩の内容は勿論、リズムが心地よく、言葉
の響きが とても奇麗に感じられたからです。そのため、はじめに 詩が配布され
た時点で、CGの制作は 特にこの詩を意識して進めようと思いました。
 CG製作に当たり、詩のしっかりとしたイメージを作ることが必要だとと思
い、まずは 詩をじっくりと読むことから始めました。この作業はとても楽し
く、この詩の内容について あれこれ考えているうちに 時間があっという間に過
ぎて、気が付けば 肝心のCGを作る時間が 少なくなってしまっていました。で
も、読めば読むほど この詩のことを好きになるような気がしていました。

  CGの制作について
 CGを作る前に、まずは素材となる写真探しから始めました。わたしは この詩
に対して、白っぽいイメージを持っていたので、霧の写真などを中心に探してい
ました。しかし、実際に使ったのは 海の波打ち際の写真でした。この写真を選
んだ理由は、まず写真自体を気に入ったことと、くもりの日の海の 少しよどん
だ空気が、詩の持つ どこか不安定な印象と似ていたからです。そして、永遠に
寄せてはかえることをくりかえす波と、この詩にでてくる「私」のイメージとが
わたしの中でオーバーラップしたような気もしました。
 始めに、白っぽいイメ−ジをもったのは、忘れられてしまったような なくして
しまったような、この詩の持つ喪失感や 虚無感を、白という色で表現したいと
思ったからです。しかし 実際始めてみると、5つの作品全部を白っぽいもので
統一すると、変化が分かり難いということがわかりました。また、同じ様な作品
ばかりに、わたし自身も飽きてしまったので、「ひとり ひとりを夕ぐれに なぜ
待つことをおぼえたか」という一節から、夕日の写真を 使うことにしました。
 慣れないCGの制作は、予想以上に大変な作業でした。作っては消し、作って
は消しの繰り返しに、正直 とてももどかしさを感じましたし、時間がないこと
への焦りも感じました。しかし、それだけに 出来たときの嬉しさは大きかった
と思います。加えて、夏休みが待っていたということもあり、まさに肩の荷を下
ろしたという感じがしました。残念ながら、作品のできは100%満足できるも
のではありませんでしたが、全体を通して楽しく作業出来た点は良かったと思い
ます。
  
  Wandering Highlanderについて
 わたしは 事前の準備に参加することが出来なかったので、完成したWandering
Highlanderを初めて見たのは、学会当日のリハーサルのときでした。CGとコン
ピューター・サウンドとパフォーマーの鈴木さんの動きが合わさったWandering
Highlanderの完全版を見たとき、静大の講義室の中に、まったく違った不思議な
空間が生まれたような気がしました。この世界をみんなで作ることが出来たと思
うと 少し感動しました。また、こういう時の感動は ひとりで作品を作ったとき
よりも共同作業で作ったときのほうが、ある意味大きいのではないのかとおもい
ました。今回の第2期虎の穴の活動で見つけた 自分に対する課題を 意識しなが
ら、第3期虎の穴の活動を頑張りたいと思います。何とぞ御指導御鞭撻のほどを
よろしくお願い致します。